「……誰だあんた」
武器までは抜かないがいつでも戦闘態勢に入れるようにホルスターに手をかける。するとその女子生徒はゆっくりとこちらに近づいてきて約3mぐらいの位置で止まった。
「貴方が『天童 京介』くん?」
「……そうですけど?」
「そっか、それじゃあ
そういうや否やいきなり、銃弾が飛んできた。義眼すら反応出来ずに右肩に一発食らってしまい、その場に膝をついてしまう。だが、相手が何かをした挙動どころか残心すら見えずに困惑してしまう。
「急になんなんだ……!」
俺は痺れた右腕を庇い、時間を稼ぐ。
「天童君が私たちにとって邪魔な存在でしかないから……排除しようと思ってね?」
優しい声色でそんな怖いことを言う女子生徒を敵と断定して義眼を解放する。
「もし、これで実力差が分かったらこれ以上はキンジに関わらないで欲しいんだけど……」
「……キンジだと……?」
(あいつをその名前で呼ぶやつは身内か余程仲のいいやつしかいない。だが、あいつにこんな可愛い知り合いは居たか……?)
そんな考えが頭の中でぐるぐると回るがその合間を縫って再び女子生徒が何かをする。今度は義眼が働き、時間が引き伸ばされた中で普通に銃を抜いて引き金を引くのが見えた。
(そういうことか……!!)
あまりの早撃ちに目が追いつかなかったのだと実感しながら脚部のスラスターを撃発し一気に距離を詰める。だが、それを読まれていたのか女子生徒の三つ編みが不自然な動きをして正面を薙ぎ払うような挙動に入った。
(なっ!?しまった……!)
動作をキャンセルすることができず、何か金属のような物で殴られ後方へ吹き飛んだ。何回か地面をバウンドしてようやく起き上がり、女子生徒の方を見る。
「……俺の行動パターンでも読んでるのか……?」
「ふふっ、さぁどうでしょう?」
ニッコリと笑う女子生徒とは対称に俺は少し考えていた。この分だと確実に行動が読まれている。そう思い俺は少し搦手を使うことにした。
「じゃあ……こいつはどうだ?」
そういうと右腕を地面に叩きつけ、コンクリートを粉砕しその破片を女子生徒へと飛ばす。その攻撃を捌き切れないと判断したのかその場から動き、攻撃範囲を抜けて再び、あの早撃ちで俺を狙ってくる。
だが、それをされる前に脚部スラスターを撃発し一気に加速して間合いを詰める。あと一歩のところで引き金が引かれるがその射線から無理やり体を捻って弾丸を回避する。
無理やり、体を捻ったせいで次の行動に移ることが出来ずにその女子生徒に向かって体当たりをすることになった。結構な勢いで地面を転がり、やっと止まったところで俺は覆いかぶさっていることに気づく。
「……っ!」
「……」
至近距離で見つめ合うことになってしまい不覚にも胸の鼓動が高鳴るがそれを意図的に押さえ込もうとする。だが、その隙を突かれて巴投げの要領で後方へ投げられてしまった。なんとか空中で体勢を立て直し、受け身を取ることに成功する。
「……あんな体験は初めてね」
その女子生徒は起き上がるとほんの少しだけ顔を赤らめて俺を見ていた。
「そりゃどうも……!」
俺も起き上がってその女子生徒と相対する。
「ふふっ、実は私は既に
「……それはどういうことだ?」
その女子生徒はそれだけ言うとどこかへと去っていった。俺はその後ろ姿を追いかけようと思ったが、追いかけるには既に見失った後でひとまず帰ることにした。
「ただいまー」
「あっ、ケー君おかえりー!」
玄関を開けると何故か理子が飛びつく勢いで俺に迫ってきた。咄嗟のことで身体を回転扉の要領で回し理子を回避する。
「へぶっ!?」
避けられたことで理子は玄関の床へとダイブしたのだった。
「うぅ……避けられた……」
「あーうん、すまん?」
ひとまず手を差し出して理子を起こそうとする。理子はにへぇと笑いながらその手を取って起き上がりそのままリビングへと消えていった。
「ただいまー」
「あっ、お兄さんおかえりなさい」
リビングに入るとティナが笑顔で出迎えてくれたが、俺の制服についた泥汚れを見るや否や笑顔が曇った。
「お兄さん……また襲撃されたんですか?」
「また……あぁ、まただな」
俺は鞄を下ろしながらそう返す。すると理子もそれに反応したのか俺をじっと見つめる。
「……もしかして三つ編みの女の子?」
「ああ、なんでわかったんだ?」
「
理子はいつものふんわりした口調ではなく冷たさを感じるような声色でそう言った。
「知っていたって……どういうことだ?」
「察しが悪いな京介、私は元『イ・ウー』だぞ?」
「……つまりあの子は『イ・ウー』のメンバーってことか」
そう言われるとあの強さも納得がいく。
「名前は『カナ』というか……京介の知り合いだぞ?」
「は?俺にあんな美少女の知り合いは居ねぇよ」
「本名は、『遠山 金一』」
「は!?」
名前を聞くと俺はキンジのお兄さんだということがすぐにわかった。小さい時に遊んでもらった記憶もある。
「だが、あの人はシージャック事件で……」
「その時に『イ・ウー』と合流したんだよ」
「……そういうからくりだったのか」
そう言われると何となく納得がいった。
「……で、なんで金一さんが俺を?」
「さぁな?そんなことは知らないよ……でーそれよりも!勝ったの?負けたの?」
理子は態度を一変させていつものテンションで勝敗を聞いてきた。
「……負けたよ」
「えーまぁそうだよねーあの人結構強いから」
「……そうだな」
俺はさっきの戦いに悔しさを滲ませながら着替えを済ませるのだった。