後頭部の鈍い痛みに神経を刺激されて目を覚ますと殴られたままの状態で地面にうつ伏せに倒れていた。ゆっくりと立ち上がり痛む後頭部を抑えて周りを見渡す。さっきの戦闘で崩落した一部の壁以外は特に壊れることもなく健在だった。
「我ながらにして……してやられたな……」
ほとんど歯が通らず虎の子のロケットパンチも初見で防がれてしまった。右腕を失った状態でどこまでやれるかは分からないがキンジとアリアの元に急ぐために駆け出した。幸いなことに微かに聞こえてくる
そして最後の扉を開けた時に目に入ったのはキンジが脇腹ギリギリでホームズの持った剣を凌いだ所だった。そして独奏曲が終わり辺りは静寂に包まれる。
「なぜ……まだ立っている?君といい天童くんといい、本当に驚かされるよ」
「お褒めに預かり光栄だぜ、ホームズ!」
キンジはその体勢からヘッドバットを繰り出し世界一の頭脳に綺麗に決まった。
「くそ……!頭も硬いのかよ!」
「ふっ、私は頑固だからね……!」
すると今度はホームズからのヘッドバットにキンジが仰け反る。だが、キンジは踏みとどまり強烈な一撃をホームズにくらわせた。その威力に耐えきれなくなったのかホームズは仰向けにゆっくりと床へ崩れる。
「……どうやら君たちには予言では言い表せない何かを持っているみたいだね……」
そういうホームズの体はどんどん歳を老いていた。
「緋弾とは……受け継いでいくもの……だからこそ、アリアくん、君には……『緋弾のアリア』という名を授けよう」
ホームズはゆっくりと起き上がって部屋の端へと移動する。そしてこちらを振り向くと杖の先端で床を軽く叩いた。次の瞬間、地面からミサイルが顔を覗かせた。
「馬鹿な……ICBMだと……!?」
「キンジくん、アリアくん、天童くん……昔から言うだろう?『老兵は死なず消え去るのみ』と」
ホームズはミサイルの先端に位置したコックピットに飛び込んだ。
「曾お祖父様待って!!」
発射炎を上げて飛び立とうとするミサイルに二本の小太刀を突き刺してクライミングのようにゆっくりと登るアリア。そしてそれを追いかけるようにギリギリで近侍が外壁にしがみついていた。
「キンジ!アリア!降りてこい!!」
俺は飛び乗ることが出来ないと早々に察してキンジとアリアに呼びかけるも届くことは無く、むしろ噴射炎に巻き込まれて体が宙を舞った。
「あっ……やべぇ」
あまりの強さに俺の体は易々と持ち上げられてそのまま海の中へと飛び込み、水面に叩きつけられた衝撃で意識を失ってしまった。
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その後、俺は近くにいた金一さんとパトラというイ・ウーの元ナンバー2に助けられ、遅れてキンジとアリアが空から海へと着水した救助した。そのあとは武藤の操縦する水陸両用機に乗せられて、東京へと戻りようやくまともな日常に復帰することが出来た。
「それにしても派手にやったのだ!」
「まぁな……ロケットパンチもしたしな」
「そのシーン見たかったのだ!!」
目を輝かせながら平賀さんが詰め寄ってくる。
「すまんな、録画するのを忘れてた」
「むー!ま、いいのだ!それよりも、義手をもっと高性能にするのだ!」
平賀さんは無邪気にさらりと凄いことを言ってのけた。元々の義手すらかなり高性能だったというのにさらに性能が上がるとなるとかなり期待ができる。
「ちなみに天童くんの義手に関してはあややも本気でとりかかるのだ!もう、不良品とは言わせないのだ!」
確かに他の人からは平賀さんの作ったものは確かに高性能だがよく壊れるという噂を聞いたことがある。現にキンジのベレッタも3点バーストなのに2発ほぼ同時に出るという訳の分からない不良に悩まされているらしい。
「ということなので、3日は待って欲しいのだ!その間に仕上げるのだ!」
「分かった、じゃあ3日後に取りに来るよ」
そう言って俺は平賀さんに前金を渡して工房を後にした。そして向かった先は都内にある公園だ。そこについてしばらくすると目的の人物が見えてきた。
「よう、ティナ」
「お久しぶりです、お兄さん……♪」
出会ったティナはいきなり俺の腹に抱きついてきた。傍目から見ると物凄い構図になっているだろう。周りの人から誤解を受けないようにするためにそっとティナを剥がす。
「……嫌……でしたか?」
「そうじゃないんだが……俺が警察のお世話になってしまうからな……」
この歳で前科もちなんぞ真っ平御免だ。ともかく、ティナとのデートを約束して今日は、ゲームセンターに行くことになっていた。なんでも新作のアーケードゲームをしたいらしい。
「それでですねお兄さん、このキャラが……」
ティナが最近ハマっているアニメの話をずっと聴きながら目的地に向かう。
「およ!ケー君じゃん!お出かけ中?」
「理子か、そんなところだ」
「こんにちは理子さん」
ゲームセンターに行く途中に理子に会うとは思っておらずちらっとぶら下げているビニール袋に目を向けるとそこにはプライズの商品がいくつも入っていた。
「それ……いくらで取ったんだ?」
「んー諸々込みで……1000円ぐらい?」
「ほぼ1発かよ……」
「りこりんにかかればこのくらい朝飯前よー!」
「理子さん……かっこいい……!」
「いや、真似しちゃダメだからな?」
理子に尊敬の眼差しを向けるティナにさらりと釘を打つが恐らく効果はないだろう。
「あっ、そう言えば今日稼働の新作ゲーム、かなり人が居たよ」
「あーやっぱりそうですよね……」
「そんなに人気なのか……?」
「どちらかと言えば話のネタづくりとかのたぐいじゃないかな」
ゲーセンって奥が深いんだな……としみじみ思ってしまった。
「そうですね……残念ですが……別の機会にします……」
「別に待ってもいいぞ?」
「いえ、ゲームはいつでも出来ますけど、お兄さんとのデートはあまり出来ませんから……」
そう言って顔を背けるティナは少し赤くなっていた。
「おー愛されてますなー私も愛されたいなー?」
「……うるさいぞ理子……」
俺も理子のその言葉に少し恥ずかしくなってしまった。
「理子さん、よろしければ一緒に回りませんか?」
「えっ!?でもティナちゃんの独占の時間だよ……?」
「こうして理子さんと会ったのは偶然ではないと思うので一緒に楽しみませんか?」
ティナの対応があまりにも大人すぎて2人の高校生が揃って罪悪感を感じるレベルだ。
「……うん!一緒に行くよ!」
こうして理子も交えた3人で休日の都会を満喫するのだった。
これから先はオリジナル展開が多くなると思いますがお付き合い宜しくお願いします。