ひとまず俺達は席を確保して適当に買った食べ物を並べた。
「どれも美味しそうに見えます……!」
「こういう雰囲気だからって言うのもあるけどな」
「それにしても……本当によかったのかい?」
少女が今更ながらそんなことを言ってくる。
「別にいいですよ、困った時はお互い様ですし。それよりも自己紹介をしませんか?」
「そうだね、僕の名前はエル。エル・ワトソンだ。こう見えて高校二年生だよ」
「あっ、俺と同級生ですね。俺は天童京介です」
「同い年なら敬語とか大丈夫だよ」
「そうか、それなら楽になる」
同い年だと知ったワトソンに敬語を使うのをやめ、直ぐに口調を崩す。
「すごいね……その変わりよう」
「そうか?ま、素がこれだしな。それよりもこの子はティナだ」
「ティナです、よろしくお願いしますねエルさん」
「ああ、ティナちゃんよろしくね?」
ニコッとティナに笑いかけるとティナも満面の笑みで応えるのだった。
「自己紹介も済んだことだし食べようぜ」
「いただきますー!」
「食べようかな!」
そして買った料理に手をつける。どこかチープな味はするものの、こう言った場所で食べるということがスパイスになりとても美味しく感じる。
「うんうん!この焼きそばって料理は美味しいね!」
「お兄さんったこ焼き美味しいですっ!」
「二人とも満足しているようで良かった」
気がつけば料理がどんどん減っていきあっという間に平らげてしまった。
「さてと、食事も済んだことだし……聞きたいことがあるんだが」
俺はワトソンに目を向けながらそう言った。食後の紅茶を楽しむワトソンがきょとんとこちらに目を向ける。
「何を聞きたいんだい?」
「別にそんな怪しいことじゃない、ただ……ワトソンは武偵なのか?」
すると一瞬にしてワトソンの纏う雰囲気が鋭くなった。
「へぇ、その理由は?」
「まずは否定しろよ……なに、シンプルなことだよ振り返った時の体重移動で分かったのさ」
「なるほど……そういう京介も武偵かい?」
「ま、自慢じゃないがな」
俺は何食わぬ顔でお茶を飲み進める。
「来月からここの高校にお世話になるからね、その前に出会えたことが幸か不幸か分からないけど……その時はよろしく?」
「そうだな、ワトソンにどんな事情があるか知らないが……なるべく首を突っ込まないようにする」
「はは、そうしてくれると助かるよ」
ワトソンはにこやかな笑顔を浮かべながら紅茶を飲む。
「ところで……君には僕のことがどう見える?」
「は?」
ワトソンの急な質問に対し、内容の意味もわからず思わず聞き返してしまった。
「つ、つまりだね!僕の見た目がどう見えるかって話だよ!」
「どうって言っても……可愛い女の子としか……」
「か、可愛いだと!?」
俺の答えに過剰に反応するかのように急に頬を赤くしてもじもじとし始めるワトソン。その様子に、俺とティナは思わず顔を見合わせる。
「……俺の思い違いならいいんだが……お前、男のフリをしようとか思ってないよな?」
「な、なななんのことだい?」
「いや動揺しすぎだろ……」
そんなワトソンの反応に思わず頭を抱えてしまった。
「悪いことは言わない、辞めとけって」
「悪いけどそうはいかないんだ、色々と事情があってね」
「……なら仕方ないな」
「随分とあっさり引き下がるね?」
「そこはまぁ、人には色々な事情があるわけだしな」
俺は特に聞くこともせずにお茶を含む。
「ワトソンさんはどこ出身なんですか?」
「えっと……イギリス出身だよ」
「イギリスですか……!海外のことをもっと聞いても良いですか?」
「別に構わないさ!」
そしてティナとワトソンの2人で会話が盛り上がり俺もたまに混じりながら会話をしているうちに気がつくと既に日も傾いてきた。
「なんだかんだ話しているうちにもう夕方になったな」
「沢山お話出来て良かったですっ」
「僕もここまで会話したのは久しぶりだよ」
ティナにとっては未知のことを沢山知れたことがとても楽しかったらしく充実したようだった。
「あの……もし良かったら……また会えますか?」
「いいよ!連絡先を交換しようか?」
「ありがとうございます!」
「いいってことさ!京介もしとくかい?」
「俺もか?別に構わないが」
こうして俺とティナはワトソンの連絡先を手に入れ、ティナとワトソンはまた会う約束をしていた。
「京介は……来月からよろしくね」
「そうだな、よろしく頼む」
「ふふっありがとう」
ニコッと笑うワトソンの笑顔が夕陽に照らされてとても眩しく見えた。帰り道、ワトソンが車で送ってくれると言ったがそれはさすがに断って、俺とティナは電車で帰ることにした。
「今日はたくさんいいことがありました……!とてもいい一日でした」
「それは良かった、まぁ思わぬ縁も繋げたしな」
帰りの電車でそんな話をしながら外へと目を向ける。たまにはこういう休みも悪くない。そんなふうに思ってると肩にちょっとした重みがかかる。そちらの方に目を向けると疲れたのかティナが寄りかかって目を瞑っていた。
「……ゆっくり出来て良かったよ」
そんなティナを起こさないように俺は再び外を見るのだった。
部屋に帰る時には既に周りも暗くなっていて部屋に帰り着くと何故か部屋の鍵が開いていた。訝しげに思いながらゆっくりと中に入ると靴が2足ほど置いてあり誰かが居るようだ。
「……ティナ」
「はい、分かっています」
既にティナは持ち歩いているグロックを抜き準備を整えていた。俺は拳を握りインファイトに備え、一気にドアを開けた。
「うわぁお!?」
「っ!!」
ドアを開けた瞬間に手前にいた人物が首を目掛けてナイフを振るう。それを知覚すると右腕でナイフの刃の部分をかち上げ攻撃を避ける。
「お兄さん!」
「ケー君!」
2人から呼ばれて攻撃をやめるとそこに居たのは、理子と遥姉さんだった。
「京介、相変わらず乱暴ね?」
「……遥姉さん、来るなら一言いってくれよ」
「ま、京介の腕前を試したいのもあったからね」
それだとしても性格が悪い。口には出さないが。
「ところで……理子はなんでここに?」
「彼氏の家に理由がなくていちゃいけないんですかー?」
グリグリと頬を指で突き刺してくる理子。割と痛いのだが。
「わ、分かった、分かったからその指やめろよ!」
「ふっふっふっ」
分かってくれたのか指をどける理子。
「理子は分かった、で、遥姉さんは?」
「え?身内の家に理由無しでいたらダメなの?」
「……さいですか」
俺は理子と同じ答えを返す遥姉さんにため息をつきガックリと肩を落とすのだった。