と思うのだが、今更なのでしょうがないよね。
崩壊する古城。
瓦礫の山。
崩れ去った古城の姿が、森の中央に無残にもさらされていた。
雨の巨大匣兵器である、
上空からその光景を見て、高笑いをするジルと、その隣に静かに佇むオルゲルト。
一瞬でヴァリアーの仮拠点の古城を潰したことに、心底愉快そうに笑う自分の主を静かに見守るオルゲルトだが、突如眼下の瓦礫の山という光景に違和感を覚えた。
何か動いたような影が見えた気がした。だがそれよりも、土埃がもうもうと立ち込める瓦礫の山だったのだが、だんだんと視界が晴れてきた中、瓦礫と瓦礫の間から人の気配を感じた。
怒気、殺気、威圧。
それらが混ぜ合わせたような鋭い視線がこちらに向けられていた。
散乱する瓦礫の中にあったのは、高級そうな椅子と、その手前に置かれる机。
そしてそこに深く座る人物。体を預けるように背もたれにもたれ掛かり、肘掛けに左腕を置き、机に足を置いて、右手には赤いワインの入ったワイングラス。
ワイシャツに黒いネクタイ、他のヴァリアー幹部と違って首元に毛皮のついていない隊服を方から掛け、傷跡のある顔の、黒髪の隙間から覗く目には、なんとも言えない威圧の光が宿っている。
かつて、ボンゴレ10代目となるべくして、沢田綱吉と死闘を繰り広げた、独立暗殺部隊ヴァリアーの隊長。
XANXUS!
ワイングラスを持つ右手が輝き、それと同時に手に持ったワイングラスが独りでに砕け散る。
自らの怒りを表しているかのようなその光景と、獰猛な猛獣のような眼光は上空に佇む二人を鋭く見ていた。
***
「ボスとベル兄が交戦し始めたか」
通信機から漏れる音に耳を傾けながら、考魔はリヴォルバーに弾丸を込める。
ボスはうるさいという理由で自分の通信機を潰したが、瓦礫の山となった古城には倒れているヴァリアーの隊員も何人かいるが、その際にそやつらの使用していた無事の通信機も幾らか存在する。
ボスからの音声は拾えなくても、周りにあるいくつかの音声を組み合わせてその場の状況はある程度理解することができる。
まあ理解するといっても、単純にボスVSベル兄+執事という対決なのだがな。
ガンガンガン!
「ぐああぁ!」
「く!攻めろぉ!!」
「うおおぉ!」
ガンガンガン!!
あの程度であれば、ボスなら勝つのも難しくないだろうな。
死ぬ気の炎を込めることのできるボンゴレⅦ世の銃の威力は、折り紙つきだからな。
ガンガンガン!!ドゴオオォ!!
「があぁ!!」
コオォ、ドガン!
「うわあぁ!」
「がはぁ!」
ボスの手に宿る憤怒の炎は、リングの炎とはまた別種類の死ぬ気の炎。その特徴は、圧倒的な破壊力。素手から放つ光球型の憤怒の炎は、十二分に威力は高いが、銃弾に圧縮して放つことで、さらに威力と応用性をあげ、高速移動すらも可能にするという。
もっとも、そこまで俺自身も詳しいわけではないがな。
ズガン!ギュイィン!ドドドドドドドド!!
「「「「ぐああぁあ!!」」」」
けど、話を聞いていると、執事意外二人とも座ったまま戦うらしい。
随分と余裕だけど、大丈夫なのか。座ったまま戦うのは王子の特権らしいが、そんな戦いはしたくないな。座ったままで戦うとか、ベル兄って肉弾戦があまり得意じゃないのかもな。
リアルファイトしたら隣の執事の方が勝ちそうだ。実際は無いだろうけど。
片手で白い銃を打ちながら、弾切れを起こした黒い銃を一旦ホルスターにしまい、ポケットから取り出した弾丸を宙にばらまき、素早く黒い銃を抜いて薙ぐよう振い、一瞬でシリンダーに弾丸をフルに装填する。そのまま両手で線を描くように反対方向へと銃弾を放つ。
その度に紫色の炎の纏われた弾丸が敵を打ち抜き、地面へと落とす。
わらわらと出てくるミルフィオーレの兵隊に対して、片方の銃の引き金を引くと、銃口から飛び出す丸い紫色の光。敵の元へと行く前に光が一際強くなり、一瞬で無数の小さな光の散弾となり、大量に飛行する敵へと雨のごとく小さな炎の弾丸が迫り、次々と兵隊を撃ち落としていく。
すでに森の木のしたには、気を失うミルフィオーレの兵隊が、死屍累々と大量に倒れふしていた。
かすかに聞くと、どうやらボスを激しく怒らせたらしいな。
沢田綱吉。
その名前を聞くたびに、ボスはあの時を思い出し、怒りがこみ上げる。
ヴァリアー内では10年前にあったリング戦のことは禁句になっているらしく、俺とフランはその当時にその場にいなかったが、結構面倒な状況になっていたらしい。
けど最終的に中学生にボス候補の座を奪われた、というのであれば怒りもごもっとも。
もっとも、ボスにはボンゴレの血が流れていないため、元々候補でなかったらしいが。
昔骸を倒し、ボスを倒した沢田綱吉。
まあ骸を最終的に追い詰めたのは光努らしいが、そこは割愛。
一度見てみたいな。この時代では見る機会は数回だし、10年前の姿は見たことないからな。
ザザザ!
通信機に溢れる雑音の中から音を拾う。
巨大な岩の塊が砕けるような音に、唸りをあげる猛獣の声。
この声は、明らかに奴らの象とコウモリの声じゃない。
ということはボスの匣アニマルか。大空の属性の波動を持つボスの匣。そもそも大空の波動を持つ者が圧倒的に数が少ないため、俺自身もあまり大空の匣を知らない。
持っているのは、せいぜいボスとキャバッローネの跳ね馬、そういえばイリスにも一人いたな。
ガンガンガン!
わらわらと出てくる敵だが、あらかた西の地点の敵は片付けたし、城の方へと戻るか。
それまでにまだ戦っていてくれれば、珍しいボスの匣兵器が見れそうだ。
『ガオオォォォォ!!』
一際大きい猛獣の唸り声が聞こえた。
「これは、間に合いそうにないな。ん?」
視界の隅に見えたのは、黒く移動している物体。なにやらキラリと光ったと思ったら、ベルの王冠だ。城に戻るところみたいだけど、次々出てくる兵隊に面倒してるらしいな。
せっかくだし、合流するか。
***
恐怖。
圧倒的な力の前に、ベルの双子の兄であり、ミルフィオーレの6弔花、嵐のマーレリングの保持者であるジルは、恐怖を覚えずにはいられなかった。
ベルとフランを瞬殺して(実は幻覚だったけど)、そのままのノリでヴァリアーの拠点の古城を破壊し、ボスであるXANXUSとの戦闘にまでは案外楽にこぎつけられた。
ここまでは、よかった。
だが、XANXUSの匣兵器は、想像以上に強力な力。
真っ白な立髪と体毛に、その鋭い眼光に宿る王者のような風格。
世界でも4種しか存在しない大空のライオンシリーズの一つ。
多くの匣兵器は、程度はあれど複雑な構造を極めている。
その為、匣によってはコピー可能なものもあり、ミルフィオーレはそういった匣を量産して多くの兵隊達が活用している。
が、種類が少なく、極めて複雑な構造を持つ大空のライオンは、能力や構造に謎が多く、未知数な部分が多々あるという。
そのうちの一体が目の前に現れたことに驚きはしたが、驚いたのはそのことだけではなかった。
オルゲルトの
大空の炎の特性は、〝調和〟!
全ての
その為、瓦礫の山と同じように、その体を石化させた象だったのだが、それだけでは終わらなかった。石化したあと、調和するどころかヒビがはいり、ボロボロと綻び始めた。
一時はジルの嵐コウモリの超炎派による静かな攻撃により、XANXUSとベスターに傷を負わせ、石化が解けたものの、次の瞬間、ベスターの鋭い咆哮とともに、その姿を石に変え、さらにはボロボロの瓦礫と化した。
そして、自らにわずかとはいえ傷を与えたジル達に対して、XANXUSは本気で怒りを覚えた。
その瞬間、顔中に傷跡が浮かび上がり、全身にも同じように傷跡が浮かび上がる。
昔、クーデター時にボンゴレ9代目に付けられた傷。XANXUSの怒りが頂点に達した時、その傷は浮かび上がる。かつてボンゴレボスの座を奪う戦いをした沢田綱吉も、怒りで力を増幅させるXANXUSには、遥かな苦戦を強いられた。
ジルとオルゲルトがさらに驚いたのは、ベスターの全身にも黒い模様が浮かび上がったこと。
タイガーパターンと呼ばれる横縞の模様であり、白い体毛の所々に浮かぶ黒い模様は、体や顔、手足の全身に渡り発現し、その姿を変えた。
「ベスターは、ライオンでもトラでもねぇ」
そう言うXANXUSの言葉に目の前の動物を見るが、その特徴はどちらにも酷似しながら、どちらとも違う特徴の二つを併せ持つ動物。すぐには出てこないが、オルゲルトにはその動物に少し心当たりがあった。
希に、ライオンとトラの種を超えた異種交配により、その2頭の特徴を併せ持つ別種の子供が生まれるということを。虎の模様を持つライオン。
これこそ、XANXUSの匣兵器!
そこからの攻防は、もはや一方的だった。
ジルの匣兵器である
自らの持つ死ぬ気の炎が弱かったため、圧縮して放つという新技をして驚異的な攻撃力を叩き出した、ボンゴレⅦ世と同タイプのオートマチック拳銃。そこからはなたれた炎によって、嵐コウモリは一瞬で全滅した。
銃口から硝煙の放つ拳銃を構えるXANXUSに、ジルにはもはや太刀打ちできる力は残っていなかった。
オルゲルトと
そしてその余波は、後ろにいたジルにも届き、その身を固い石へと変えていく。
勝ち目が無い、かなわない。そう思うジルには、もはや王位正統後継者の王子のプライドなど、どこにもなかった。
白蘭と話をつけてやる!
ボンゴレのボスの座が欲しいだろ?
ミルフィオーレボンゴレ支部のボスにしてやる!
今以上の戦力を手に入れられる!
沢田綱吉を倒せる!
しかし、ジルの必死の誘惑の言葉も、XANXUSの耳には全く届かなかった。
「俺が欲しいのは、最強のボンゴレだけ。カスの下につくなど反吐がでる」
ピシピシ。
XANUXSの言葉のあいだにも、ジルの石化は進んでいく。
「内部にどのような抗争があろうと、外部のドカスによる攻撃を受けた非常時においては、ボンゴレは常に―――――」
その手に構える銃に炎をこめ、光の輝きが強くなる。そして照準を、上空にいるジルに向けて、その引き金を引いた。
「一つ!!」
放たれる弾丸が、炎の筋を描きながら敵を貫き、煌々と輝く爆炎となって、炎を散らしたのだった。
終ぞ、座したままのXANXUSの足を、地に付けることは叶わずに。
ヴァリアーも終わったし、次はチョイスどうしようか考えよっと。