時同じくして、イタリア戦線の場にも白蘭が現れた。
現れた白蘭はぼやけ、透けているようなホログラムの映像だった。倒された敵の持つ通信端末等から映し出しているにすぎず、本人がここにいるわけではない。
だがこの世界の支配者の存在感は、ツナ達その場にいるものに驚愕を呼び込んだ。
『ボンゴレやイリスの誇る最強部隊の本気が見れちゃったりして、前哨戦としては相当有意義だったよね♪』
飄々とつかみどころの無い笑顔でしゃべる白蘭に対して、前哨戦という言葉にいくぶかしげる。前哨戦、ということなら、この後に本当の戦いが控えていると、暗に言っている。
白蘭は知っていた。
入江正一が、自分を騙していると。
まさかボンゴレ側に組みしているとは思っていなかったが、入江が敵になるのは白蘭の中では想定の範囲内だった。
『しっかし正チャンもつくづくもの好きだよね。こんな中学生に、世界の命運を預けちゃうなんてさ』
世界の命運?スケールが大きすぎる、というには、白蘭の言葉は真実味を帯びていた。
「世界の命運なんて。白蘭っていうのは世界の支配者だったのか」
と、そんな話の腰が折れるような無遠慮な発言をした光努を、白蘭は相変わらず飄々と楽しそうに見た。
『やあ、君が白神光努君だね。
「ああ、
ただの会話。初めて会った者どうしたから、なんらおかしくない会話。
にもかかわらず、周りの空気が異常に重くなった気がしたのは、気のせいだろうか?
どこか白蘭の瞳には、品定めするような好奇心の色、わずかに警戒するような色、考えの読めない色がうごめいていた。
『そうだ、君達イリスにも関係ある話だし、ちょっと聞いてくれないか?』
「イリスにもねぇ。続けてどうぞ」
『うん♪じつは本当のところ、このまま戦力を思い切り投入して、君らを殲滅させることは簡単なんだよ』
白蘭の言うとおり、壊滅寸前のファミリーを潰すのに、ミルフィオーレの兵隊は数が多い為、人海戦術という手が割りと使える。
『でもここまで楽しませてもらったし、信頼してた副官に裏切られたとあっちゃ、リーダーのプライドに関わるだろ?だからそろそろちゃんとやろーと思って』
そう言って白蘭は楽しげに笑って細まったその瞳を開き、全員に告げた。
『沢田綱吉君率いるボンゴレファミリーと、白神光努君率いるイリスファミリー、そして僕のミルフィオーレファミリーの、正式な力比べをね』
正式な力比べ。白蘭の口にした言葉に、全員が驚きと疑問符を浮かべる。
『
「待ってください白蘭サン。そう簡単に行くでしょうか?」
白蘭の言葉を若干遮るように、入江が話す。
その表情には先ほどの驚きや焦りはなりを潜め、どうにか現状を冷静に再分析して自信を持ち直したといったところである。
その自信の根拠は、マーレリングを持つ6弔花。
6弔花の内、イタリア戦線のジル、メローネ基地のγ、グロ、幻騎士、そして入江正一。この5人が既にボンゴレによってやられた。正確には入江はやられてないが、ボンゴレ側についたので同じような事。それにより、すでに7つのマーレリングの内5つを失っているということになる。
だが、そのことを告げても、白蘭は相変わらず飄々とした態度を変えなかった。
『う~ん。ま、それが本物ならね♪』
バキン!!
「!!」
白蘭の言葉の終わりと同時に、入江の指にはめられた晴れのマーレリングが、音を立てて砕けた。その光景を見たコルがポケットから取り出したのは、グロから拝借した雨のマーレリングだが、入江の手のマーレリング同様砕けていた。
『もちろんそれもランクAのスッゲー石なんだけど、
今までマーレリングと思っていた物が偽物だったことに、入江は驚愕していたが、光努、リル、コルのイリス組は内心、ラッキーA級の石ゲットとか場違いな事を思っていたのは内緒である。
「だったら本物のマーレリングはどこにあるんだ?」
『いい質問だね、光努君♪実は正チャンには内緒で他に組織してあるんだよ』
その言葉の終わりと同時に、ホログラムの白蘭の背後に現れるように、空間投影型の映像が映し出された。全員が見えるように映しだされた巨大な映像は6つに分割され、それぞれに別の人物が映し出されていた。
鋭い眼光を持つ、無精ひげと、燃える炎のような赤髪の男。
波打つウェーブの髪型をした、顔に傷跡のある男。
ミントグリーンの髪の長めの髪を、後ろで縛り、シルバーのピアスを嵌めた優しげ
な雰囲気の男。
膝下まである、海のような水色の髪色をして、静かに眠る幼い少女。
深く黒いローブをかぶり、鬼のような仮面をした人物。
そして、その身を拘束具で縛り、この中で最も異常な雰囲気を出す、怪しく瞳を光らせる人物。
普通の人にも見えれば、明らかに異常な人物にも見える6人のの人物。怪しげな雰囲
気は、本当に人間かと疑わしくなるような人物も存在している。
映し出した映像を背に、白蘭は気分よく高らかに告げる。
『彼らが本物のミルフィオーレファミリー6人の守護者にして、真のマーレリング
白蘭は語る。
ただ腕っ節の強い人間を集めても、たかが知れている。なぜなら、この時代における戦いの重な要となっているのはリングの炎。そしてリングの炎を生成するのに必要なのが、より強い人の〝覚悟〟の力。
だからこそ白蘭は探した。
ただ強いだけの人間でなく、常人離れした覚悟を持つ人間を。マフィア内とは言わずに、世界中から探し出して、見つけ出した。
『世界は広いよねー。例えば彼』
そう言って映像の中の6人の内の一人、赤髪の男を示す。
その男の映像と、その隣に映し出されたのは、山に囲まれた緑豊かな町の姿だった。
『ご覧のように大自然に恵まれた大変美しい故郷の出身なんだけど、「覚悟を見せてくれないか?」といったとたん―――――――――故郷を捨ててくれたよ』
言葉を切ると同時に映像も切り替わり、その映像を見たとき、ツナ達は息を飲んだ。
白い雲の浮かぶ青色の空は、真っ黒に染まり、緑の木々の生い茂る豊かな山は全て頂上から赤い炎と溶岩を吐きだし、麓の町は粉々に壊滅していた。森は燃え盛り、もうもうと黒い煙と灰を、周りの山々は空へ向かって立ち上らせている、地獄絵図の姿がそこには映っていた。まったく異なる光景だが、その形、場所、信じられなかったが、最初に見た映像と同じ場所だということを、否応なしにツナ達は悟った。
「!?吹き出したマグマの中に何かいるぞ!」
映像を注視して獄寺が叫ぶと同時に、映像の一部が拡大された。
燃えるような赤髪の男が、まるで露天風呂にでも入るかのようにタオルを頭に載せ、溶岩の中に体を沈めて岩に体を預けていた。しかもいい湯加減ならぬ溶岩加減なのか、口笛を吹きながら入っていた。
もはや真6弔花は、人間の枠組みを超えた存在だと示していた。
(黒い空、噴火する火山・・・・か)
そんな中、光努の目に映るのは、空と山の二つ。どこか不思議な、懐かしさを出すような光が、光努の瞳に映っていたことに気づくものは、誰もいなかった。
『更に彼ら一人一人には5000名の部下と、選りすぐりのA級
楽しそうに笑いながら言う白蘭だが、その事実は驚愕の一言。
今までA級は、マーレリング保持者の6人しかいなかったにもかかわらず、幻騎士やγ級の兵隊が真6弔花に100名ずつ、計600名いると言っている。
片手の指にも満たないA級に苦戦させられたツナ達としては、その数値は遥かに絶望的、さらにはその上の真6弔花の存在まである。
(真6弔花一人でメローネ基地を超える部下と戦力を所有してるのか。今更ながらミルフィオーレの兵力は圧倒的だな)
壊滅前のボンゴレ以上の兵力。もともと戦闘する人間の少ないイリスと比べれれば天と地程の差がある。そう考えると、白蘭が人海戦術を使ってこないというのはある意味ラッキーなことなのかもしれない。今はまだ大丈夫、という意味でのラッキーだが、
「白蘭サン!力比べって、一体何を企んでるんですか!!」
『昔、正チャンとよくやった〝チョイス〟って遊びを覚えているかい?あれを現実
にやるつもりだよ』
〝チョイス〟?その言葉に疑問符を浮かべる者がほとんど。光努も記憶からその単語の意味が、〝選択〟を表していることを理解するが、その名に該当する遊びを知らなかった。
だが、それで遊ぶという白蘭の言葉を聞いた入江だけが反応を示していた。
『詳しいことは10日後に発表するから楽しみにしててね♪それまで一切手を出さないからのんびりするといい』
10日後。長いようで短い1週間と3日。
10日が過ぎたら、戦いが始まるということを、白蘭は楽しげに笑って告げた。
『君らとはもっと話していたいけど、君達はもう逃げないとね。そろそろこメローネ基地は、消えるから』
「消える?」
『正しくは基地に組み込まれた超炎リング転送システムによって移動するんだけどね』
超炎リング転送システムとは、死ぬ気の炎を膨大な動力源として、物体を他の場所へと移動させる、端的に言ってしまえばテレポーテーションシステムである。
しかし、死ぬ気の炎を使うミルフィオーレの最先端科学といえど、完璧な移動ができるわけでなく、まだまだメローネ基地程の巨大な質量でなければできないことと、莫大なエネルギーと時間がかかるため、一生に一度見れるかどうかの装置である。
『楽しみだね、10日後♪』
そう言ってホログラムの姿を消す白蘭と同時に、基地の奥から目もくらむような閃光が立ち上ってきた。見たことのに輝かきだが、先ほど白蘭の言っていたテレポーテーションということを全員がすぐに直感した。
しかも、今からどうあがいても逃げようがないことを。
「皆、大丈夫だ!どこかに掴まれ!!」
光を眼前に、そう叫ぶ入江の言葉と同時に、研究室ないの人間は力の奔流を受け詰めるように、その場に伏せるものもいれば、壁やなどに掴まれその身を固定させた。
そして光がいっそう輝きを増し、メローネ基地は目もくらむような莫大な閃光によって包み込まれた。
***
光が晴れると同時見た光景は、入江正一の研究室と、本来基地のあった場所。
文字通り、そこにすでに基地は
むき出しの地面の断層と、本来メローネ基地があるべき場所には、巨大な空洞ができ、闇に紛れるように空洞のそこは真っ暗な色が広がり、深い深い穴を形勢していた。
構造上壁際にあった研究室は、地面にめり込むようにして取り残されていた。
「極限にここはどこだー!!」
「あれって、10年前の了平?」
場の雰囲気にそぐわぬ元気な声。短めのスポーツ刈りに鼻の頭に貼られた絆創膏。並盛中の制服をきて両手にバンテージを巻いたその少年は、笹川京子の実兄、笹川了平だった。明らかにツナ達の知っている10年前の姿。その証拠に、右手の拳の指に嵌められた指輪、日輪の太陽の刻印が施されたシルバーのリング、晴れのボンゴレリングを備えていた。
この研究室が移動しないで取り残されたのは、了平が現れ、ボンゴレリングが7つ揃ったことによって結界が作り出されたから、と入江に説明された。
了平がこの時間このタイミングで交代するのも計画のうちだったらしく、入江の裏切りを見抜いた白蘭と同じで入江も白蘭のしそうなことの何割かは見抜いていたそうだ。
「しかし大変なことになりましたね。あの6弔花より上の戦力がいるとなると、いまの我々でどう戦えと・・・・」
が、雲雀の側近である草壁は深刻そうな顔をして、皆の疑問を代弁する。
戦う、といったが、正直彼らは通常の6弔花だけでも結構手一杯だった。後10日で、
一体どうすればいいのだろうか。
普通に考えれば、戦力としても圧倒的な差があるため、無謀な戦い。
それはリボーンも感じていることだった。
だが、入江はそうは思っていなかった。
「成長した君たちなら彼らと渡り合える!君達の成長なくして使いこなせない、新たな力。今こそたくそう、ボンゴレボスから君達への贈り物だ、心して受け取ってくれ!!」
壁のスイッチを動かすと、白く丸い装置の中央部分がゆっくりと開いた。その中は光の輝きに包まれていたが、そこから飛び出した7つの者は、それぞれボンゴレのボスと守護者となるツナ達の手元でそれぞれ止まった。
各属性の色にちなんだ、橙、赤、青、紫、黄、藍、緑の7つの炎の塊は、静かにその姿をツナ達の手元で表した。
格式高いボンゴレの紋章の刻まれた、匣!
この時代のツナ達が、10年前の自分たちに向けた贈り物。きっと使いこなせると信じて、後を託す証。
ボンゴレ匣!
煌々と燃える炎と共に手の中に収まる匣は、澄んだ彼らの瞳に写し出されいた。
次から休憩中の10日間!
10日の間にいろいろとできたらいいな。