特異点の白夜   作:DOS

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チョイスも中盤戦!
あと何話で終わるかな………


『紅い刃を少女は振るう』

 

 

 

神器、それは人知を超えた力を秘める、神が作り出したとされる道具の総称。

イリスファミリーが見つけ出して、他のマフィアや組織に触れ回ることがないように独自に情報遮断をした秘匿物質。

 

無論、そのすべてが歴史の紐を解けば、誰でも聞いた覚えのあるような逸話があったり、製作者は永遠の謎とされていたり、その物にまつわるおぞましい話がついてきたりと、諸説あるが実のところ、その実態はほとんどが謎に包まれている。

イリスファミリーはそういった謎を解明することも生業としている。

 

驚異的な頭脳と力を持つイリスファミリーが総力を挙げたとしても、そうして見つけた神器の総数は、わずか4つ。

 

ボンゴレ同様に長いイリスの歴史を遡っても、どれも一筋縄ではいかない。そしてその中には、どう考えても知識と力だけでは手に入れることができない物すらあった。まるで誰かがそこにそっと置いたかのように、何者かの意図がそこに介入していたかのようだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

シャン!

抜き放ったのは、銀色に光る刃。刃こぼれの一つも見当たらない、素人にもわかる名刀。一瞬、刃から抜き放った威圧感に、モニター越しにとはいえ観戦していたバジル達は息を飲んだ。

 

「リル殿のあの刀。あれは一体………」

 

わざわざ匣として持ち歩いていない刀を持っていたので違和感があったが、その存在感は並みの刀では出せない存在感。バジルのつぶやきに、後ろにいたスクアーロは獰猛そうに口角を上げた。

 

「あれは、天國刀(アマクニトウ)だぁ」

「天國刀?スクアーロ、お前はあの刀のことを知ってるのか?」

「まぁな。昔クルドの野郎に少し聞いただけだが、確か数百年以上昔の刀鍛冶が作ったとされる刀だぁ。その力は、イリスの神器に匹敵するといわれるな」

「な、数百年前の刀!そんなものが」

「ゔお゙ぉ゙い!面白れぇもんが見れるぞ。あいつらの使う、剣技はなぁ」

 

そういうスクアーロの顔は、いつもと違って若干楽しそう。その様子に、どうやらリルの使う剣技を見たことがある様子。

 

「そうだな、俺も久しぶりに見るな。10年前はクルドしか使ってなかったからな」

「リボーン殿も、リル殿の剣を知っているのですか?」

「ああ。あいつらが使うのは、変則二刀流の剣刀術、『デュアルコード』」

 

リル、コルの使う剣は、『デュアルコード』と呼ばれる基本二刀流の剣術。

しかし、その中には一刀流で使う剣技も含まれている。

 

 

嘗て、遥か昔東西にその名をはせた二人の剣士が、己の技を持ち合い、一つの流派として統合させたといわれる剣技。

その型は『壱』~『陸』の合計6種類。

 

それぞれの二人の剣士の特徴を反映させた剣技は、『壱』『弐』『参』を夜の型、『肆』『伍』『陸』を朝の型と分類された。

 

その中で、『壱』と『陸』は、それぞれが夜と朝の奥義とされる技。そして『弐』~『伍』が、夜と朝の一刀技と二刀技と分けられる。

 

山本と模擬戦をしたコルが使用したのは、『夜ノ型参(コードサード)・月天山』。これは一刀流での刀の使い方を主とする剣。

 

「そしてもう一つ、あいつらの剣には自分達で編み出した剣、7番目の剣が存在する」

 

画面に映るリルは、楽し気に笑い、幻騎士と対峙していた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「じゃあ幻騎士、続きしようか」

 

鞘から抜き放った天國刀。チョイスが始まる10日の間に、光努とコルとともに手に入れた一振り。神器というわけではないが、その力は神器級。

真正面から対峙する幻騎士も、警戒の色を高める。

 

瞬間、リルから一筋の光とともに、真っ赤に燃え上がる死ぬ気の炎が辺りに揺らめく。

溢れ出す、リルの刀を持つ手にはめられた嵐のDリング。そこからほとばしる嵐の炎は、周りの幻覚すらもチリチリと燃やしていく。その純度、さらに炎圧共に、もはや常人の域をはるかに逸脱しいるような気がした。だがしかし、その炎がリルを中心に綺麗な球体状になる。次第に、その炎が縮んだと思ったら、すべての炎が一瞬でリングへと納められたしまった。

 

わざわざ自分で出した炎を、再び戻すなど、幻騎士としてふざけるなといいたい行為だが、次の瞬間にその表情は驚愕へと変わった。

 

漆ノ型(セブンスコード)彩式(サイシキ)紅赫刃(コウカクジン)!」

 

まるでそこに、血を垂らしたかのように、見えない何者かが塗りつぶすように、リルの持つ天國刀が根元から徐々に赤く染まっていく。

 

その光景に観覧していた者達は驚きながら、すぐに刀の切っ先までその刀身を真紅に染め上げた。

 

(なんだ、あの刀の色は……)

 

幻騎士も見たことがない技。

嘗て、イリスファミリー第一戦闘部隊『アヤメ』のリーダーであるリルとコルの父親であるクルドと戦った時には見ていないであろう技。

 

警戒するに越したことはない。自身の周りにある幻覚をざわざわと揺らめかせ、リルの襲撃の前に、誘導爆発物質の幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)を突撃させた。

 

通常なら幻覚で姿を隠した海牛は見ることができないが、リルはそこから来るのがわかっていたかのように、その場を跳躍した。

 

「何!?」

 

さらには、滞空していた剣を足場にさらに跳躍、そしてさらに滞空してた別の剣を一本取り、雷の炎を纏った。両手に持った嵐の刀と雷の剣。

 

リルは一直線に、幻騎士のいる場所の上空から攻めてきた。

 

(俺の居場所が分かるだと!?だが、その程度、もう一度へし折ってくれる!)

 

ビルの壁面の樹木、幻覚の中から抜け出てきた幻騎士は、自身の持つ幻剣(スペットロ・スパダ)を振るった。相対して、リルは左手に持つ、雷の炎を纏る洋剣に力を籠める。

 

朝ノ型伍(コードフィフス )降り注ぐ双雷(ドゥッシャートゥヴォートルデォン)!」

 

左手に持った洋剣を、右から左へと振り払うように振るう。瞬間、リルの持つ雷の洋剣と、幻騎士の幻剣が交差する。

 

だが、鍔競合いも一瞬、すぐにバキリと剣が中ほどから再び折れてしまった。

硬化の特性のある雷の炎を纏っているとはいえ、先ほどから爆発を受けすぎた洋剣。流石に限界が来たのだろう。だが、リルの瞳は、それすら見越した攻撃を見据えていた。

 

(右手の刀だと!だが、もう一度防御を――――)

 

左手の剣を振り払い、受けられたら同時に円運動のように右手の剣を振り払うリルの剣。

 

二刀流で初めて使える連続斬りの技を、幻騎士は再び受け止めようとしたが、瞬間、リルの右に持つ刀身が赤く染まる天國刀を見て、背筋にぞくりとした悪寒が這った。

 

(あの刀、受けるのはまずい!!)

 

とっさに、幻覚から抜け出したその場を離脱する。

それと同時に、リルの右手にある天國刀が、幻騎士の先ほどまでいた場所を切り裂く。

 

『!!』

 

離脱した幻騎士は、自身の背後を見て驚愕した。

幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)》の攻撃で多少の穴があったとはいえ、雷の炎によって何十倍にも硬化されたビルは一棟、横一文字に()()()()()()()()

 

切り裂かれたビルは崩れ、次第に倒壊して瓦礫を噴出した。

ビルが倒壊したことで、幻騎士は道路に降り立ち、同様にリルも剣を蹴って道路に降り立ち対峙する。降り立った幻騎士は、注意深く油断なく、リルの天國刀を睨みつける。対してリルは、剣が交差するような模様の描かれた匣を手に持つと、中ほどから折れた剣が二本と、滞空していた二本の剣が中へと収納され、リルは匣をしまう。手に持ったのは、赤い刀身の天國刀のみ。

 

「なるほど、その刀。強大な死ぬ気の炎を圧縮して刀身に籠めている、というわけか」

 

警戒するような幻騎士の言葉。

リルは自身の持つ嵐の死ぬ気の炎を刀身に圧縮して籠めることで、爆発的な力を実現している。嵐の特性の〝分解〟は、圧縮により極限まで高められ、触れるもの全てを〝分解〟し、切り裂く力を発揮する。

 

通常の刀であれば、こんな無茶な炎の使い方をすれば刀事態がボロボロになって使い物にならなくなるが、それを補うだけの強度と切れ味を誇るのが天國刀。さすが、神器級と呼ばれる名刀。

 

リルの炎によって、刀身は真紅に染め上がった。

普通に纏うだけでなく、外部に漏れださないようにと精密的に炎操作も含まれている為、傍目には焼き鏝のようにも見えるが、逆にそれが刀身に触れるやばさを物語っている。

 

(あの刀では、幻覚ごと幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)も切り裂かれる。面倒だな)

 

雷の炎で硬化されたビルすら容易に両断する天國刀の威力は、幻騎士の匣すらも容易に切り裂くであろう。つまり、防御はほぼ難しい。自身の持つ幻剣で受け止めることもできるかどうか。

 

(ならば、近づかせなければよい話)

 

幻剣を握り直し、静かに幻騎士はリルを見据え、霧の炎を練りこんだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「すごいです!まさか十年前のリル殿がこんな強者に成長しているとは」

 

驚嘆の声を上げるバジル。最も、十年前でもそこらの構成員よりかは強いリルとコルであったが、実はバジルはリル達とはほとんど面識が無い。中には面識あるものもいるが、実力はどうか?と言われたらそこまで特筆すべき解答ができない。

 

「当然だぁ。あの親バカのガキだからなぁ」

 

若干不機嫌そうなスクアーロと、先ほどからの言葉にバジルは疑問を投げる。

 

「スクアーロはリル殿の父親と面識あるよう聞こえるが、戦ったことがあるのですか?」

 

実はディーノとリボーン、他多数も気になっていた質問にバジルが聞いたので「よし、よく聞いた!」みたいなことを思ったのは余談である。十年前から割と気になっていたことだが、スクアーロは昔強い剣士と戦いまくったという話を聞いたので、ならば有名どころの剣士は全部コンプリートしているのではないか?その中には当時イリスファミリー唯一の剣士のクルドも含まれているのか。という疑問である。

 

「確かに戦ったことあるが、10にも満たねぇガキの頃の話だぁ。今やれば俺が勝つ」

「とか言ってるけど、実際のところどうなんだろうね。そもそもパパどこにいるか知らないけど」

「だがスクアーロとクルド殿の対決は拙者も見てみたいです」

「俺もみてみてーぞ。どっちにしろどちらかボロボロなるしな」

「おいおいリボーン。それもそうだが随分とひど…………コル!?お前どこから出てきた!」

 

ディーノが驚いた通り、いつの間に会話に参加していたのはコル。

揺れる黒髪。左手に、蒼海を思わせる柄糸の巻き付けられた刀を握り、静かに佇む刃のような少年。画面で刀を振り回している少女と同じ顔だちをした少年コルは、周りが驚いている最中」、マイペースに無表情を貫いていた。

 

「それで、スクアーロはパパといつ戦うの?」

「いやいや、そんな話はしてたけど!それよりコル、お前どこから!ここってボンゴレの観戦室だろうが!」

「なんだ知らなかったの。イリスとボンゴレの観戦室って同じ建物だよ?」

 

その言葉に愕然とするディーノ達。確かに観戦室から直接フィールド内に干渉することはできないため、別にイリスとボンゴレが一緒でも問題ないといえば問題ないが、まさか同じ場所で観戦していたとは夢にも思わなかった。

 

ちなみに、場所はボンゴレ観戦室のすぐ隣の部屋。部屋から出れば給湯設備も整っている、割と快適な観戦室だが、一度でて廊下を歩いて隣の部屋に行けば、イリスの観戦室に入ることができるのである。ちなみに造りは基本どのファミリーも同じである。

 

「ちなみにルイはそこのソファーで寝転がってる」

「うわ、本当にいた!」

 

少し部屋の端にある対面式のソファ。背中を向けた側に寝転んでいたので、こちらからは見えなかったのはしょうがないが、いつの間に入ったのやら。

 

こんなところでも寝転がっているのはルイらしいといえばルイらしいが。

ガチャリ、と唐突に扉が開き、誰かが入ってくる。この場にボンゴレ側は全員そろっている為、おのずと何人かは誰が来たのか予想がつく。

 

 

「なんだコル、それにルイも。こんなところにいたのか」

 

 

黒髪に黒いスーツと黒い瞳。少々呆れたような声を上げつつ、よどみなく歩く男性、黒道灯夜は、中ほどまで歩きそこにいるメンバーを見渡す。

 

リボーン、バジル、ディーノ、スクアーロ、フゥ太、ビアンキ、ハル、京子、イーピン、ジャンニーニ。そして戦闘していない守護者の了平、ランボ、雲雀、クローム。

 

(今更だけど本当にボンゴレ側は人多いな)

 

自分たちの観戦室には自分を含めてコル、ルイ、ハクリの計4人しかいない状況なので、やはり少し呆れている。

 

対して、灯夜を初めてみる面々が割と多いので、皆一様にどういう反応をすればいいのか困るものもいる。若干何名か、灯夜を殺意的ににらみつける人物もいるが。

 

「俺をにらむのはいいが、いいのか?今モニターは少し面白いことになってるみたいだが」

 

その言葉に、モニターの戦闘に目をやるとモニターには、二人の人間の戦闘が見えた。

しかし次の瞬間、確かに少し面白い事態に発展した。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

(なんか、妙だな)

 

山本武は、少し違和感に苛まれていた。相対したミルフィオーレガロファーノ隊の死神。シーツをかぶった妙な姿、下手なお化けの仮装のような姿は確かに妙。だがそんな違和感ではない。先ほどから、山本と死神は幾度となく斬りあう。

 

といっても、死神の持つのはナイフのみ。シーツの中からナイフ類の刃物を投げ続け、山本はそれに対して避けて弾き死神に刀を振ると、死神はナイフで防御する。それの繰り返し。

 

最初にナイフを雨のように振らせて切りかかってきたのには驚いたが、それ以外は普通に対処が可能。左程苦戦、という程でもない。

 

死神の動きも、素早いわけでもトリッキーなわけでもない。確かに山本の刀を受け止めるほどに身体能力も高い。それに雲の炎も純度が高い、何よりこのチョイスに参加しているだけあってその実力の高さがうかがえるが、どうもそこまで強い感覚が見えない。

 

攻撃が単調、しかしなぜか、だんだんと死神がイライラしているような気がした。

 

「……やってられませんよ!!」

「は?」

 

いきなり叫びだしてナイフをばらまく死神。口調は丁寧だが、どうにも限界だという感じがひしひしと伝わるような言葉だ。

 

「だいたいなんですか!このシーツは!マントでもフードでもなくてただのシーツですよ!しかもこの髑髏、模様が入ってるのではなくただ縫い付けてあるだけ!手抜きにも程がありますよ!」

「え、あ……ああ、まあ………お気の毒に…」

 

いきなりのことに、山本もなんて反応すればいいのか困った。山本にしては珍しい反応である。ばらばらとナイフを幾本もシーツから落としつつ、腕が自身の顔あたりのシーツを握る。

 

「龍も倒れた今、この布も必要ないですね」

 

握るシーツに力を込めて、一気に振り払った。

 

 

ドゴオオォォン!!

 

 

いや、振り払う直前、死神の隣のビルの壁面が爆ぜた。もはや雷の炎で硬化されているとは思えないほどにたやすくコンクリートが爆発し、死神は瓦礫の山に埋め尽くされた。一瞬の間に起こったその光景に、山本は本当に珍しく唖然としていた。

 

「お、おい死神ー、無事かー」

 

しかし返事はない。ただの屍のようだ………。

いや死んではいないが。

 

再び、ビルが破裂する、それと同時に、夕焼けのような真紅の閃光が見えた。

 

「うおっと、危ねぇ!」

 

とっさに飛びのいた地面に一文字の切り傷が走ったが、綺麗にコンクリートが両断されているのをみて少しぞっとした。それと同時に、コンクリートを突き破って巨大な木の根がうねうねと現れた。

 

後ろへと跳び、木の根から距離を取り刀を構える山本。眼前の少し離れた道路の中央からは、バキバキと地面を突き破り大樹が現れた。

 

「ふん、貴様も俺に再び出会うとは、運の無い奴だな」

 

低い言葉と共に、大樹の周りに立ち込める霧。サラサラと何かが溶け込むように、大樹の中から出てきた人物に、山本は驚愕に目を見開く。

 

「お前は、幻騎士!」

「九死に一生を得ておきながらこんなところで惚けているとはな。止めを刺してや――っ!」

夜ノ型参(コードサード)紅月抜空(あかづきばっくう「)

 

ズバアアァン!!

言葉を途中で止め、その場を飛びのくと、地面から生えた大樹は一瞬で真ん中から両断され、さらには真紅の炎によって燃やし尽くされた。

 

「あれは、嵐の炎!?」

「誰かと思ったら、武やっほー。何してるの?」

 

驚く山本の上から聞こえる声。上空から壁を蹴りつつ降りてきたのはリル。

柔らかな黒髪を揺らしながら、ブーツに固定されたプレートアーマーをカシャリと揺らし、軽やかに降り立つ。その右手に握る刀の刀身は異様なほどに紅く染まっていた。

 

(血……てわけじゃねぇな。あの赤い刀。なんかやばそうだ)

 

流石山本、といっても山本でなくても、普通の刀でないのは見ただけでわかる。

それに、先ほどの幻騎士の幻覚であろう大樹を一刀両断して燃やし尽くした光景を見ただけに、敵じゃなくてよかったと内心ほっとしたのは内緒である。

 

「俺はさっきまで死神ってやつと戦ってたんだけど、つーかあいつ大丈夫か?絶対今の爆発に巻き込まれたと思うけど」

 

山本の言葉にふむ、というふうにリルは空いた左手を顎に当てて辺りを見渡す。今見える敵は、目の前で幻覚と共にある幻騎士ただ一人。

 

つまり、

 

「ナイス武!一人撃破だね♪」

「え、ちょ、そんなんでいいのか!?ここやりーって喜ぶところか!?」

「偶然でも倒せたんならラッキーじゃない?」

「あ、あ~うん、まあそうかもしれないな」

 

割とあっさり納得する山本だった。

 

「納得しないでください!あと私はまだ生きてます!」

 

その言葉と共に、ビルとビルの間から姿を現したのは、黒いシーツを被った死神だった。

 

見たところ、といってもシーツを被ってるので全体が見えるわけではないのだが、これと言って戦うに困るような負傷はしていない様子。不意打ちのごとき爆発を食らってしっかり無傷で逃げ延びるのは流石の一言だった。

 

「あ、確か死神。今見ても手抜き間半端ないよねあの格好」

 

ぐさりと突き刺さるような一言を会ってリルは思い切り出した。無論リルからしたら別に悪気があるわけでなく事実を言っただけなのだが、むしろそれがタチが悪い。心なしか死神が小刻みに震えているような気がした。若干お怒りなのかもしれない。

 

「今度こそ外しますよ?いいですね?今度は邪魔しないでくださいね?わかりましたか!」

「それじゃあ幻騎士、第二ラウンド始めようか」

 

チャキリ。

 

「ふん。山本武もろとも切り刻んでくれる」

「二人とも話を聞いてください!」

(あー、俺どうしたらいいかな……)

 

やはりめずらしく、若干外から山本は少し乾いた笑みを浮かべながら、静かに一人空を仰ぐのだった。

 

 

 

 

 




最初はそんなつもりなかったにも関わらず、なぜか書いていたら死神が少し不憫になってしまった。不思議だ!
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