特異点の白夜   作:DOS

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『一番大ピンチ大賞授与』

 

母アリアより、大空のアルコバレーノを襲名したユニには、母と同じ、代々大空のアルコバレーノに受け継がれる短命の呪いと同時に、先を見通す力、不思議な力が備わっていた。

 

それは短い寿命の中で年々衰えている為、今この状況のユニも数年前と比べてそこまで先の事を見る事は出来ない。そうでなければ、川平不動産に侵入したトリカブトも察知することができたのだが。

 

しかし、数年前からユニには、とある光景が、決して変わる事のない未来の情景が見えていた。

 

森に佇み、仲間と言葉を交わす光景。

 

まさに、今の光景を、ユニは遥か昔から予知していたという。

 

そしてこの予知には続きがある。

 

白蘭との決戦。

後数時間後にやってくる夜明けと共に、最後の戦いが始まる。

 

白蘭も、ユニのように自身の能力が衰えているからこそ、表面上は出さないが必死になってユニを捕獲しようとして、次の戦いに全力を懸けてくる。

 

今まで最大のピンチではあるこの状況だが、実は当時に最大のチャンスでもあった。

 

白蘭は同時間軸の並行世界に存在する自身の思惟を共有する能力を持っている。

しかしそれは言い換えれば、全ての並行世界に存在する白蘭という人物は、全て同じ人物であるという事。

 

当たり前のことに聞こえるが、本来並行世界は可能性の世界。

入江が未来を変更して10年後に行った時に、大学生の未来とミュージシャンの未来があったように、同一人物であろうともそれはもはや別の人生を歩んだ別人だ。

 

しかし、白蘭は違う。

同じ思考回路を有し、同じ考えを思いつき、同じ決断をする。

それは本来繋がらない白蘭の本体が、横繋がりとなっている。

 

つまり、並行世界の白蘭を一人倒せば、それだけで全ての並行世界の白蘭も同じように打倒されるという事だった。本来なら他の並行世界の自分が死のうが、さらに別の並行世界の自分とは一切関係ないが、白蘭は違う。

 

並行世界を覗けるという能力があるからこそ、彼はたった一人の人物として全ての並行世界の上に立っている。

 

ただ一人。

この世界の白蘭を倒すことで、全ての並行世界が平和となり、恐ろしい未来の来ることない現実が戻ってくる。

 

そうしたら、当初の目的通り、過去へと帰ることもできるのだった。

 

ユニのその言葉を聞いた時、過去からやって来た者達は一様にして同じくほっとした安

堵と、喜びの表情を浮かばせたのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「ふにゃぁ!!」

「ギャウゥ!!」

 

小さな獣の転がし合い。

正確に言えば片方が一方的にもう片方を攻撃して、攻撃された方はびくびくと怯えている。

 

澄んだオレンジの大空の炎を纏う天空ライオン(レオネ・ディ・チェーリ)Ver.V(バージョンボンゴレ)と、荒々しい赤い嵐の炎を纏う嵐猫(ガット・テンペスタ)Ver.V(バージョンボンゴレ)の二匹だった。

 

無論、攻撃している方が嵐猫(ガット・テンペスタ)の瓜。獄寺のボンゴレ匣だった。

 

「こら!瓜!なんて恐れ多い事を!」

 

ご主人と違って、匣アニマル達は自由本坊。

本来ならありえないような光景、瓜がナッツに喧嘩を売るという構図は中々に面白い。対するナッツは、まるでツナの性格そのもののように、戦闘時以外である今はびくびくと怯えて、ツナに飛びつき後ろに隠れている。

 

「こいつ、戦う時以外はめちゃくちゃ臆病なんだ……」

「ツナみたいだねー」

「うっ!」

「つまり普段はダメって事だ」

「ひどい!」

 

リルの軽い発言が若干ツナの胸に突き刺さるが、当然の如く無情に追い打ちをかけるリボーン。

 

殆ど二重人格じゃないのか、と思うようなツナの普段バージョンと戦闘バージョンだが、実際どうなのか怪しい物であった。

 

「それじゃあ、とっとと始めてくれ」

 

そう言ったγのそばからは、彼の匣アニマルである黒狐(ネレ・ヴォールピ)、コルルとビジェットが現れる。

 

この場にいる匣アニメルはナッツと瓜だけではない。

 

ラルの所有する雲ムカデ(スコロペンドラ・ディ・ヌーヴォラ)のザムザに、バジルの所有する雨イルカ(デルフィーノ・ディ・ピオッジャ)のアルフィン。

 

了平の所有する晴カンガルー(カングーロ・デル・セレーノ)Ver.V(バージョンボンゴレ)漢我流(カンガリュウ)

 

クロームの所有する霧フクロウ(グーフォ・ディ・ネッビア)Ver.V(バージョンボンゴレ)、ムクロウ。

 

そしてランボの所有する雷牛(ブーファロ・フールミネ)Ver.V(バージョンボンゴレ)牛丼(ぎゅうどん)

 

これほどに匣アニマルが一堂に会する事などめったにない。精々ツナ達ボンゴレファミリーがチョイスに向かう時、転送システムに炎をぶつけるのに見たくらいだろうか。

こんな場所でなぜツナ達だけでなく、γも匣を展開しているかといえば、今後の作戦の為。

 

バジルの匣であるアルフィンは、ブレインコーティングという技が存在する。

実際のイルカは脳化指数と呼ばれる脳重量が人に次いで高く、潜在的に知能が高いとされているが、匣アニマルの雨イルカは実際に知能が高くなっており、その知能を生かした雨イルカ独自の技術がブレインコーティング、またの名を〝ボックス間コンビネーション発動システム〟。

 

高い演算能力を持ち、脳波を飛ばして匣アニマル間の知能を繋ぐ事ができる。

 

簡単に言うのなら、自身の考えを一瞬で相手に伝えられる。

 

口頭て伝えるより、ジェスチャーをするより、相手が自身の考えを一瞬で理解してくれるという事は、通常の連携よりも、より高度な連携を可能し、さらには時にコンビネーション技や必殺技を生み出すという。

 

この事を、使用者のバジルもツナに作戦参謀を任された入江も、γが言うまで今の今まで忘れていたという。

 

「あー、猫じゃらし持ってればよかった」

 

そして、ここまでの匣アニマルを見たリルの感想が、これである。

 

「あ、そこに生えてたけど使う?」

「やった!流石コル!ほーら、おいでおいで」

「ふにゃう!?……ふ、ふしゃー!」

 

いつの間にかその手に猫じゃらしを握っていた弟を賞賛し、リルは手元に寄せてパタパタとふる。

 

だが、なぜか瓜は一瞬驚いたのかびくりとしたと同時に、徐々に珍しく獄寺の方へとたじろき威嚇の構えを取った。

 

「うおっ!瓜どうした?」

 

獄寺も、普段は自分に爪を立てる瓜が自分の元へと来る事に驚いていた。

 

「意外だな。お前は動物に好かれやすい方に見えるんだがな」

 

そんな光景を見て、岩にもたれかかっていたγの言葉。

嘗てイリスとジッリョネロに交流があったため、γも少なからずリルとコルを知っている。と言っても、最後にあったのはおよそ数年前なので、今現在のリルをどの程度知っているかはわからないが、安静にしている今の状況と本人の性格などから、どちらかと言えば好かれやすい方と推測したのだった。

 

そして、その推測は少なからず当たっている。

リルはどちらかと言えば動物に好かれやすい方だ。

にもかかわらず、匣アニマルたちは一応にリルに近づこうとしない。いや、リルだけでなく、コルにも。

 

「どういうことだ?」

「多分これの性だと思うよ。天國刀。あと、リルの場合は手首のそれもね」

 

かしゃりと、座っている為自身の横の地面に置かれた天國刀を鳴らすコル。そしてその指先には、リルの手首に嵌るブレスレット、パンドラの劣化匣(スカートラディパンドラレプリカ)

 

そして原因となるのは、おそらくその中で眠る神器炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)。瓜をはじめ、匣アニマルがリルとコルに妙に近寄らない原因はここにあるだろう。

 

匣も神器も炎を扱った武器と捉えるのであれば、神器の存在は匣の上位格ととれるから、という推測もあるが、実際の所は分からない。

ただ、避けられたリルはしゅんとなってはいるが。

 

「ところで、結局リルが使った神器ってのはどんなもんなんだ?」

 

思い出したようなリボーンの言葉だが、事実作戦会議とブレインコーティングなどの話題ですっかり忘れていた。

 

リル自身の技量も超一流と言えるが、それにプラスして持つ装備も異常。トリカブトを単独撃破する程の、神器の力とはいかほどな物か。

 

炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)、またの名をクラウ・ソラス。多分一般的にはこっちの方が聞き覚えがあると思うよ」

「確かに」

「うん、俺でも聞いた事あるよ」

 

少し珍しい部類のツナの発言だが、おそらくゲームか何かのワードで出てきたのであろう。一般的に神話系統に出てくる単語は使いやすい部類だからか。

 

「これは光努と一緒に、チョイスが始まる前の期間で取って来た物だ。それは天國刀もそうだけど……本当に面倒だった」

 

途中から、なぜかすごく疲れた様な表情をするコル。

表情変化に乏しい彼にしては珍しく、隣のリルも笑ってはいたが、当時の事を思い出したのか、若干苦笑いになっていた。

 

そんな光景に、意外な所で京子とハルはそういえばと、チョイス前の期間に出かけた光努達が帰って来た時、光努も妙に疲れた様な様子だったのを覚えていた。彼曰く、トレジャーハントに行ってきたというが、とんでもないお宝を探していたらしい。

 

「神器と一口に言っても様々だが、炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)の力の一つは自動攻撃。そもそも、俺の作った『飛翔す(ヴォーラ・スパータ)る炎剣(゙・ディ・フィアンマ)』は、こいつを元にした匣だからな」

 

リボーンの推測通り、似たタイプの武器と思ったが、やはりルイは神器を参考にしたらしい。

 

そこで一つ疑問だが、この神器を手に入れた時期とリル達が『飛翔す(ヴォーラ・スパータ)る炎剣(゙・ディ・フィアンマ)』の匣である『4本のグラジオラス(グラディーオロ・クアットロ)』を使用した時期が一致しない。神器を入手した時期の方が遅いのに、匣があるとはどういうことか。

 

だがその疑問も、すぐにルイが答えてくれた。

 

「元々イリスにあった神器の文献を見て参考にしたからな。まあその後に光努達が炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)を手に入れてきたから少し精度あげられたけど。……実は精度上げなかった通常の匣で幻覚は破れなかったかも、とは口が裂けても言えないな」

「いやいや言っちゃってるよ!ていうか私それ初耳なんだけど!?」

「あれ、声に出てたか」

「すごい分かりやすくしゃべってたよ。ていうかルイ!一歩間違えたらリルチョイスで大ピンチだったよ!?」

「一番大ピンチ大賞だったお前が何を言っている」

「うぐっ!」

 

あまり自覚していないルイの言葉が入江に突き刺さった。

実際に入江には風穴が空いたのだが。

 

「い、いや!それを言うなら光努君だって今まさに大ピン……あ」

「「……………」」

 

ずーん、と擬音が付きそうな勢いで、リルとコルの二人のテンションがガタ落ちした気がした。

 

思わずしゃべった失言に気づいた入江だが、すでに遅かった。和らいだけどあまり触れない方がいいワードもあったのだ。

 

だが、そこに凛とした、柔らかな声音がかかった。

 

「光努さんなら、大丈夫です。リルさん、コルさん」

 

白い帽子とマントに身を包んだ少女、ユニだった。

その言葉は自信をつける為に作り出した言葉などでなく、彼女にとっては確信の持てる言葉。それは先を見通す力を持った、ユニだからこそ言える事なのだろう。

 

力が衰えていると言っても、いまだ全て消えたわけでは無い。その瞳は見えない空間のそのさらに向こう側を覗き、起こりうる未来を予知していた。

 

「私はいくらかの未来が予知できますが、それとは別に、確信をもって言える漠然とした未来もわかります。それが、白神光努という人物が、再び私達の前に現れるという事」

「てーことは、光努の奴あのパンドラの匣からどうにかして出てくるって事か」

「はい」

 

ユニの皇帝の言葉に皆安堵を、中でもリルとコルは実に嬉しそうだ。

もう一つ、その言葉の中に含められた意味に、ルイはふむと思案する。

 

(ユニの前に、てことはまだ白蘭に捕まる前。つまり夜明けの開戦から始まって、戦いの途中で光努が出てくる、って事か)

 

すっと目を細めるルイは、普段の面倒そうな表情など一切なく、技術主任としての顔を出している。そして、ユニの言葉の中から、本来無いはずの情報を引き出す。

ただし、それが本当に正しいかどうかわからない。それでも、時期を推定し光努の出現予想を立てられるというのは、流石だった。

 

「ユニ、今の所予知はもう視えねーのか?」

「いえ、おじさま。本来なら今の予知は無かったと思いますが、おそらく白神光努という人物が未来に来たから起きた影響だと思います。わずかながら視えたんです。そしてもう一つ視えた予知では彼が、私達の誰かの命を、運命を救ってくれる」

『!?』

「けど、分かるのはそれだけで、どういう結果に終わるのか、誰を救ってくれるのか、それは今の私にはわかりません」

 

小さくなる言葉と、わずかに哀しそうに目を細めるユニ。

漠然としている、としか言いようがない。誰かしらの危機を救ってくれる白神光努。

だが、この後白蘭達との最後の戦いがあるから、誰が一番危険かはわからない。むしろ全員もれなく危険と言いたいところ。

 

ユニの予知は必ずやってくる。

それは皆が実際に経験したわけではないが、この場の誰もが疑っていない。

 

誰かの危機を救う、それは裏を返せば、誰かが危機にさらされるという事。

その事を理解していたのは、入江やルイ、リボーンにラル。だが、口には出さない。

もしそうだとしても、その予知を覆すことができないのは理解している。寧ろ、それを踏まえて作戦を立てる必要も出てくる。

 

といっても、最も危険な役割を用意するつもりなんて毛頭ないし、助けてくれるの前提で危険にさらすつもりも無い。

 

彼らの作戦の上で前提となるのは、誰も欠ける事無く、戦いに勝利する事。

それを念頭に入れ、新たに作戦会議が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「そういえばリル、クラウ・ソラスはトリカブトの位置がわかるのか?」

「多分分かると思うよ。というよりあの子には幻覚は効かないと思うし、トリカブトの位置教えてくれたの」

「なあコル、あれって剣の話をしてるんだよな?」

「そうだよ。実は神器っていうのは誰でも扱えるわけじゃないんだ」

 

リボーンとリルの会話にて、リルの言葉が妙な事に突っ込む獄寺。

まるで剣に意志があるようなリルの言葉。

 

しかし、彼女の実弟であるコルには、その言葉の真意はある程度理解できていた。

ある程度、というのは、彼が神器を保持していない事が起因する。

 

「神器は世界中に封印されている。封印を解く方法は神器によって異なるが、封印を解いたものにしか使えない。だから、炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)もリルにしか使えない」

「なるほど。専用の武器、まあ俺らのボンゴレ匣みたいな物か。しかしそれなら納得だな。幻覚が見破れるんなら、トリカブトに攻撃を当てるのも難しくねーだろうしな」

 

納得したような獄寺。

基本的に幻覚は機械を欺け無いとされているが、超一流の術士は機械をも欺く。

だが、その幻覚でさえ、神器を欺くことはできなかった。それが、トリカブトの敗因の一つ。

 

そう、一つ。

 

「ああ、それと、そもそもトリカブトって僕やリルにとってはそれなりに相性がいい相手だってのもあったね」

「えっと、どういうことだい?」

「トリカブトの面は呪具の一つだよ。いってしまえばヘルリングとかと同種の物体。あれは遥か昔に存在した術士が、己の魂を仮面に移して長い年月を生き抜く呪いの面。だからあの面を壊せば、トリカブトは消滅する。逆に言うなら、あの面を壊さない限り、トリカブトは消滅しないんだよ」

 

その言葉に、一様納得すると同時に妙な不気味さを味わう。

 

ヘルリングは理解している。幻騎士が使用していた霧の最高峰のリングでもあり、精製度は優にA級。だが、その特異性は自身の魂と精神をささげてリングに喰わせ、絶大な力を引き起こす契約の指輪。6つあるリングには、どれもそのリングを生み出した術士やそれに準ずる者達の呪いが降りかかっており、持っているだけで効力を発揮するという。

 

コルの説明に思い出されるのは、去り際の桔梗とブルーベル。

トリカブトがやられたと同時に回収してその場を離脱したが、その手に掴まれていたのは割れたトリカブトの面と、耳なし芳一のように文字を体中に刻まれた僧侶の姿。

あれはトリカブトの面を被せ、トリカブトの魂がこの世界に顕現する為の触媒、生贄にされていたという。

 

他人の体を乗っ取り時を生きる幻影の巨人にぞっとしながらも、すでに本体の面は切り裂く倒された事にほっと一息つくのだった。

そしてそういえばと、獄寺はコルに尋ねる。

 

「だがよぉ、トリカブトの仮面とやらが呪いのアイテムだってのは分かったが、それとお前達の優位性はどう関係あるんだ?」

「そいつは、こいつらの父親、〝魔天剣豪〟通称〝魔剣〟のクルドにある。そうだろ?」

 

獄寺の疑問に言葉を挟み込んだのは、γ。

しかしながら、γはリルとコルとは過去に面識があっても、実はその父親、『アヤメ』のリーダーには面識が無い故の確認を込めた疑問符を付けた言葉だったが、その推測は正しかった。

 

「俺もあったことはある。あいつの〝魔剣〟という字名はただ化け物のような剣技を持つからではない。実際にあいつは、魔剣と呼べる物を所有している。それもおそらく、コルが言った呪いの呪具の一つであろう物をな」

 

寝たきりだったラルの言葉に、リルとコル以外は驚きを顕わにする。

聖剣や魔剣などそんなもの、作り話の中だけにしかないと思っていたが、実際にヘルリングという呪いの呪具が存在するとなると、あながち作り話と斬り捨てられない。

 

事実聖剣とは別だが、神器と呼ばれる剣も存在する。それに、ラル・ミルチという人物は基本冗談は言わない性格だ。

 

「ラル、リルとコルの父さんにあった事あるの?」

「ああ。昔CEDEF(チェデフ)の仕事で対峙した事がある。正直敵としては関わり合いになりなくない部類の相手だな」

 

ラルの所属しているボンゴレ門外顧問組織。

とある状況下で彼女は『アヤメ』のリーダークルドと、まともに対峙した経験が過去にあった。

 

この場所にいる人間の中で、おそらく対峙した事あるのはラルのみ、会った事だけあるというのなら、リボーンもそうだが、会うと対峙するはまた別。

 

実際は、対峙してすぐに誤解とわかり戦ったわけでは無いのだが、その数舜の間で、ラルに冷や汗を流させたと言う。

 

「つまり、こいつらは子供の頃から呪いアイテムに囲まれて今では呪いアイテムセンサーみたいな感じになったって事か」

 

獄寺が若干瞳をキラキラさせながら、ラルが言いたい事を簡潔にまとめた。

意外と宇宙人や地底人にUMAなど、不思議な道具や都市伝説などのオカルト系に対して大変興味を持っている獄寺の為、呪いのアイテムという単語に反応したのだろう。

最も、脱線した会話をしてこないのでこの場の誰もそこに突っ込む者はいないのだが。

 

ちなみ、リル達が両親と過ごしていたのは光努が来るよりももっと前の話。数年とはいえ、呪具の近くで過ごしていれば、それなりに耐性などが付与されるという事だろう。

 

さらに言うのなら、リルの神器はその感覚を増幅させる。光の属性を持った炯然たる剣(クレイブ・ソリッシュ)は、闇を纏う呪いの面にとって持ち主をレーダーに変える程の力を持つ。

 

「まあここらへんはトリカブトに一番効いたけど他の人にはどっこいどっこいだね。見た感じもうミルフィオーレに呪具は無いだろうし」

「例えそうだとしてもリル、君は負傷者だから前線に参加させるつもりはないけどね」

「一番の負傷者が何言ってるのさ正一」

「今は君も似たような物でしょ。ついでに言えば獄寺君、バジル君、了平君、ラル・ミルチ、それに太猿に野猿も負傷者だから前線での戦いは無しだよ」

 

その瞬間、入江に全員からブーイングが飛び交った。

全員戦闘に入りたいというのは一致しているが、参謀の入江はそれを冷静に分析した。この場所に来るまでも来てからも、平静を装っていた者達の内面を、寝ていたにも関わらずに冷静に見抜くのは、流石にメローネ基地の指揮官だっただけの事はある。

 

ラル・ミルチや了平、太猿に野猿など最初からダウンしていた者、トリカブト戦で攻撃を受けた者などは分かるが、獄寺とバジルも、トリカブトがユニを連れて店から出る直前、背後からうけたブルーベルの爆発による傷が残っていた。

 

しかし、例え傷があろうともそれで戦意が消えてなくなる玉じゃない。

それに負傷者を全て下がらせれば、防衛ラインを張る事すらできなくなる。

 

この作戦において、敵の最終目標であるユニのいる場所では戦闘が発生しないように、その前、ミルフィオーレとボンゴレイリスの中間での戦闘が望ましい。

 

攻撃の余波の届かない位置。

しかし、現在負傷していない前線で戦える者を出すのであれば、ツナ、γ、コル、この3人だけとなる。

 

流石にこの3人で真6弔花各個撃破をするのは無理がある。敵には白蘭もいるし、最後の真6弔花とやらもいるのだから。

 

「少なくとも、この3人の内一人はユニと一緒にいてほしい。というわけで、綱吉君お願いするよ」

「え!?俺!?で、でもそれじゃあ他の皆は真6弔花と戦いに行くんでしょ!?」

「大丈夫。戦うといっても、基本的に初撃で落とすように作戦を組むつもりだから」

 

理由としては、先も述べたようにこの場の大半が怪我人だから。

真6弔花は全員無傷な為、正々堂々と決闘形式のような戦いでもしようものなら、確実にこちらが敗北する。

 

しかし怪我はしていたも覚悟が薄れる事は無い。

故に、本体の状態とは関係ない匣兵器の破壊力を最大限に生かし、敵を仕留める。ユニを狙い白蘭達が攻める側であり、反対に防衛する側であるこちらとしては、奇襲しやすいのが幸いだった。

 

「後はどういうペアにするかだけど……。真6弔花はおそらく3手に別れて、3方向から攻めてくると思うんだ」

「という事は、俺達も3チームに別れてそれぞれを迎え撃つ、と」

「だったらγ兄貴!俺は兄貴達と同じチームで行くぜ!」

「ちょ、野猿。それは――」

「ああん!?」

「そ、早計過ぎるから……もうちょっと、よく考えた方が……」

 

元々が気が弱い気質だからか、野猿の威嚇に若干言葉が尻すぼみに小さくなるが、それでもしっかりと言う辺り彼の子供の頃からの精神的な成長がみられる。

いや、いい年した大人が子供に威嚇されている時点で少々情け無いが。

 

「一人は俺が担当する。雲ムカデ(ザムザ)は敵を捕獲するのに向いているからな」

「けどラル!その体調じゃ……」

「沢田、お前はユニを守っていろ。動く分には問題ない。それより捕獲した後は、圧倒的な火力で敵を即殺する必要がある」

「だとしたら、確実に仕留める為には遠距離で攻撃できる一番高い火力……獄寺君の赤炎い矢(フレイムアロー)と、γの黒狐(ネレ・ヴォールピ)、後はコルの剣術による遠隔斬撃だね」

 

遠距離で攻撃できる物なら、野猿と太猿による嵐の炎を飛ばせる黒鎌、そしてリルの4本のグラジオラス(グラディーオロ・クアットロ)があるが、威力という点では先の3人に劣る。

戦力を均等に分配するか、それとも火力を一点に集中し確実に仕留めるか。

 

「じゃあ隼人とγはラルと一緒に仕留めてきなよ。あとリルも。僕は一人足止めとかしてるからさ」

「ちょ、コル!それってコルの負担大きくない!?それにリルも行くの!?」

「どっちにしろ負傷した隼人やラルも出るなら、火力は多い方がいい。動かないだけなら問題ないでしょ。ていうか止めても行きそうだし。それに、僕達ならどの敵に当たるか分かるからね」

「どういうことだ?」

「僕だったら雨と雷、リルだったら嵐と雷みたいに僕らは主となる炎かどうかが気配で分かるんだ」

 

迫る炎を感じ取る事ならこの場のだいたいができる事だろうが、その種類を見極めるとなるとほぼ不可能に近い。

 

しかし、リルとコルに関してはそれは自身の炎と同種かどうかと限定されるが、判断がつけられる。

 

リルとコルの主は2種類あり、これは珍しいタイプでもある。獄寺のように複数の属性を持つ者は多くは無いがそれでもいる。しかし大半が獄寺のように、主となる属性と、それより炎圧が低い複属性の炎に分けられる。2種類の炎が同炎圧で扱えるとなると割と珍しく、それによって二人は、剣術と環境などの影響か、それぞれ2種の属性を把握できるという。

 

つまりは、現状雷の真6弔花の姿を見せないとしたら、迫るブルーベルとザクロの位置が把握できる。

 

「そんなわけで、リル達はザクロお願い。僕はブルーベル止めてるから」

 

必然的に、後は太猿野猿組が桔梗の迎撃に向かう。無論、ここには残りの戦力、失敗した場合の戦闘担当でバジルと了平が入る予定だ。

 

しかし、コルの足止め発言には皆一様にあまり肯定的ではない。

 

「コル、止めるって言ってもどうするつもりだい?分かってると思うけど、相手は君の技を攻略してるんだよ?」

「リルとトリカブトの戦いは少し見たけど、天國刀(これ)があれば少なくとも完全攻略はされなくなる。だからまあ止めてる間に、他は仕留めてきて助っ人きてね」

 

コルは無傷で今現状、万全の状態で挑める戦力の一人。イリスの『シャガ』に所属する戦闘部隊の一員。とはいえ、必ず真6弔花を一人とはいえ止められる保証は無い。

 

だからこそ、後は信頼するのみ。

 

誰が負けて、誰が勝つかは誰にも分らない。

 

作戦会議は始まったばかり。

ここから、さらに深く考えを張り巡らして行く。

 

後数時間、夜明けの決戦は近い。

 

 

イリス、ボンゴレ、ミルフィオーレ。

 

 

長い未来の戦いは、今最終局面を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 







『おまけ』


コル「そういえば正一」

入江「……ごめん、その先は言わないでほしいな」

コル「僕の役割は足止めって事だけどさ」

入江「コル!?聞いてる!?ていうかその先言わないで!」

コル「別に、仕留めても構わないんでしょ?」

入江「妙なフラグ立てないでよ!」

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