特異点の白夜   作:DOS

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『クリーニング・オフ』

 

 

 

 

 

その日は、いつも通りの日常だった。

 

「うわあぁ!誰か助けてぇ!!」

 

ツナが叫びながら、子犬に追いかけられるという、ある意味久しぶりの様にも感じるいつも通りの光景だった。チワワでさえ怖がる自他ともに認めるダメツナ。今回は子犬とはいえ、背後から追いかけるブルドックはまさに恐怖の対象。

 

ツナにしてみたら、一般人がライオンに追いかけられる様な恐怖だ。

ライオン(ナッツ)をパートナーにしているツナが何を言ってるんだという話だが、まあ普通に自分に吠えてくる獣が怖いんだ。

 

「相変わらずダメツナだな。世界広しと言えど、小型犬に追いかけられる中学生はお前くらいだな」

「言ってないで助けろよ!」

「やれやれ、もっとすごい経験をしてるって言うのに、変わらない」

 

脱獄囚(ムクロ)暗殺部隊(ヴァリアー)敵対マフィア(ミルフィオーレ)など様々な強敵と戦ってきたツナではあるが、相も変わらず怖い物は怖い。その変わらなさは、ある意味美徳とも言えるが。

 

ツナに括り付けた紐の先、(たこ)に変化したレオンに捕まって空から悠々と眺めているリボーンに助けを期待するツナだが、この程度で助けてくれるわけがない。

 

逃げ続けたツナの先、並盛神社に向かう階段を上がる所で、ブルドックは急にピタリと止まり、怯えた様に前後反転して逃げ出した。その様子を上空からリボーンは見ていたが、気づかないツナは一心不乱に階段を駆け上がる。

 

その上がった先に、さらなる恐怖があるという事を。

 

ヒュヒュン!ギイィン!

 

「うわぁ!一体何!?」

 

階段を駆け上がり境内に立ったツナの目の前に、何か鋭い物が一瞬通り過ぎた。何事か、と思ったがその正体はすぐにわかった。

 

「お!ツナじゃねぇか!今ちょっと取り込み中だから離れててくれ」

「余所見なんて、余裕だね」

「恭弥!ほらツナだ、一旦休憩しようぜ」

「僕には関係無いね」

 

目の前で繰り広げられている戦いは、キャバッローネファミリー10代目ボスのディーノ、並中最強の風紀委員長にしてボンゴレ雲の守護者(本人未認証)の雲雀恭弥。

 

元リボーンの教え子であり兄弟子のディーノは、ヴァリアーとの闘いにおいて雲雀の家庭教師を務めた事がある。最も、群れるのを嫌う孤高の守護者である雲雀は、リング戦までひたすらあらゆる環境でディーノと1対1で戦い続けるというトレーニングを続けただけではあるが。

 

そして雲雀本人的には師匠面するディーノが気に入らないのと強者と戦える為、定期的に嚙み殺す為に戦いをしているという。ディーノも呆れ果てた孤高っぷりだが、それに付き合うディーノもディーノで大概面倒見が良い。

 

大抵は並中の屋上で戦っているが、今回は並盛神社の境内で2人は毎度恒例の戦いをしているという。近くで戦いを観戦しているのは、ディーノの部下であるキャバッローネファミリーのロマーリオのみである。

 

ちなみに、ヴァリアー編の時から今に至るまで定期的に戦うディーノと雲雀にツナはややドン引きである。

 

「………雲雀さん、相変わらずのバトルマニアなんだ。ていうかディーノさんもよくやるね」

「ま、ディーノも雲雀の扱いがうまくなったが、ツナと同じでまだまだって事だな」

「ていうかリボーン!なんで助けてくれなかったんだよ!」

「子犬に追いかけられて助けを呼ぶなんて、恥を知れダメツナ」ブン!

「痛ってぇ!!」

 

地上に降り立ち、ハンマーに変形したレオンによって、弁慶の泣き所を強打されたツナは思わず蹲る。リボーンによるスパルタ指導は、今なお健在だった。

 

「お前も雲雀を見習って、もっと自分から強者に立ち向かう努力をしろ」

「嫌だよ!なんでわざわざ自分から危険に巻き込まれなきゃいけないんだ!」

「小さなブルドックを危険と思うなんて、やっぱりまだまだ………ん?」

 

やれやれと言うリボーンだが、途中で言葉を中断して背後に視線を向ける。

その様子に訝しげるツナだが、同様に雲雀とディーノもリボーンと同じ方向、つまり並盛神社に続く入り口の階段へと視線を向ける。ツナも、誰かが階段を登ってくるのを感じ取った。

 

そして僅か数秒で、境内に1人の人物が上がって来た。

 

「おや、これは珍しい人達がいますね。アルコバレーノリボーン、キャバッローネのディーノ君にロマーリオさん。そしてボンゴレ10代目綱吉君とその守護者雲雀君。いったい、これはどういう集まりですか?」

 

その人物を、この場の全員が知っていた。

良く知っている物、名前と情報だけ知っている物、名前は知らないが会った事ある物、ただ数度の会話しかした事無い物。そこは様々ではあったが、相手は一応この場の全員を知っている。

 

青黒い髪を揺らした、端正な顔立ちをした20代半ば程の男性。

シャツやジャケットなど、あまり特徴的ではない普通の恰好、肩にかけたバッグもおかしなところは見当たらない。強いて言うなら、腕に着けた立方体の様なアクセントのブレスレットが特徴的くらいか。

 

男は実に自然体にこの場に立つが、逆にそれが怪しく思える。

当然、ツナ達の情報を知る者など限られている。一般人としてはあり得ない。

つまり、この男は一般人ではない。無論、それはツナ達も良く知っていた。

 

「槍時か。久しぶりだな。並中でのヴァリアーとの戦い以来だな」

「そうですね。まあ、僕は光努に頼まれて少し手伝いに行っただけで、あまり大した事はしてないですけどね」

 

男の名は、海棠(かいどう)槍時(そうじ)

イリスファミリー戦闘部隊『アヤメ』のメンバーである槍使いの男。威圧的な他のマフィアと比べたら随分と温和であり、『アヤメ』の中でも基本常識的。その常識さは初対面のツナに〝いい人〟と称される程だった。

 

槍時の登場に、ディーノも雲雀も思う所があるのか一旦戦いの手を止めた。

まあ思う所と言っても、ディーノ自身何度か槍時と会って話した事があるので、別段敵対心を抱いているわけでは無い。キャバッローネにとっても、イリスはいい取引相手である事には変わらないから。

 

問題は雲雀の方にある。

 

「おい恭弥。なんでそんな殺気まみれで槍時を睨んでるんだよ。誰これ構わず喧嘩仕掛けるのやめろって」

「別に誰でも良いわけじゃないよ。この人、前に僕の得物を横から邪魔したからね。代わりに、今僕と戦ってもらう事にしたよ」

 

それはヴァリアーとの、大空のリング戦の事。

途中説明を省略して、リング戦に託けて攻めてきた造墓会のメンバーである〝道化師〟ジャンピエロと雲雀は戦う事になった。

 

雲雀はその前までの戦いで浅くない傷を負いながらも、両者共に引かぬ戦いを繰り広げていたが、その後参戦してきた槍時によって戦いは中断された。まあ実際、毒から回復したばかりであり、ベルとの戦いでの傷やプレギエーラとの構成員との戦闘、出血多量につき気力のみで戦っていた状態である雲雀が優勢とも言えなかったので、中断させた槍時の判断は間違ってなかったが、それはそれで雲雀の心情的に納得できる物ではない。

 

ちなみに、その後槍時はすぐにいなくなったので、そのイライラをディーノにまとめてぶつけて戦いを挑んだのは余談でもある。

 

とりあえず、雲雀には槍時に戦いを挑む理由があった、という事だ。

 

突き刺す様な殺気を出す雲雀だが、流石に槍時は少し困った笑み浮かべるが全く持って自然体のままだ。槍時的には光努の頼みでもあり善意の行動だっただけに、どう対応したら良い物かと思ってるのだろう。

 

「はぁ、たく恭弥は。それはそうと槍時、どうしてこんな所に。ここは並盛神社だぜ?」

「ええ、並盛神社に用があるので間違い無いですね。掃除に来たんですよ、ほら」

 

そう言って槍時がバッグから取り出したのは、バケツ、雑巾、タワシ、折り畳み式のモップ、などなどの掃除道具だった。

 

「ええ!?本当にただの掃除道具だ!」

 

イリス戦闘部隊『アヤメ』のメンバーという槍時からありえない物が出てきた事により、ツナは普通に驚く。しかし、マフィアの中では槍時が最も常識的と感じるだけあって、ある意味普通に似合うとも思ってしまった。

 

槍時(そうじ)だけに掃除(そうじ)が似合うってか。ツナも言うようになったな」

「言ってないよ!俺の心の中を読むなって!」

「まあまあ。僕も掃除は好きですので、別に構いませんよ」

「槍時さん予想以上にいい人だ!」

 

柔和に笑う槍時に、感動するツナ。最近では自分の周りは物騒になったから、感動と癒しを与えてくれる人が貴重になりつつあった。ちなみに癒しナンバー1は笹川京子一択とはツナ談だ。

 

「………………そう、なら今日はいいや」

「んな!恭弥!?」

「並盛の風紀の為に動くなら、今日は見逃してあげる。でも、次は戦ってもらうから」

 

そう言って興が覚めたのか、そのまま階段を降りて行って雲雀は並盛神社を後にした。

その光景を、茫然と見つめるディーノ。とはいえ雲雀が戦いを途中で中断するなんて、ディーノからしてみれば中々にレアな光景なのは間違いないだろう。

 

しかし同時に、並中をこよなく愛する雲雀であり、並盛全土自身の縄張りか所有物の様に振舞う雲雀。実際に並盛町の秩序は風紀委員によって保たれているといっても過言ではないが。

 

その為、今回並盛神社を掃除に来たという槍時の行動は雲雀的に割とポイントが高い。よって、今回個人的な恨みは置いておいて、並盛の為に見逃した、という事である。

 

「まさか、雲雀さんが途中で戦いをやめるなんて………」

「ま、並盛大好きなアイツらしいな。でも槍時、神社に掃除に来たのはいいけど、お前がわざわざこの場所に来るのはどういう理由だ?お前と並盛神社に関係あるなんて、初めて聞いたぞ」

「あ!そういえばそうだね!一体槍時さんどうして!?」

 

その言葉に、槍時は少し考え込む様に瞑目するが、特に問題は無いか、そう結論を出し歩み始める。

 

「この日本には、初代イリスファミリーの遺産と呼ばれる建物が2つ存在します。〝夜明殿〟と〝奈落殿〟の2つ。その1つの所在が、この場所なんですよ」

「「なっ!?」」

「初代イリスファミリーの遺産、だと?俺も初耳だな」

「ええ、それはイリスの機密事項の1つですから。まあ喋っても特にデメリットは無いのですが。とはいえ、あまり吹聴しないでくださいね。出ないと、口封じをしないといけませんから」

 

口元に1本指を当てて薄く笑う槍時の雰囲気は変わらないが、その中には先程までは欠片も存在しなかった小さな威圧感を少しだけ覘かせる。

 

興味本位か、神社の中に入っていく槍時の後に続くツナ達。拒まないという事は特に問題ないらしく、槍時も前へ前へと進んでいく。

 

「初代イリスファミリーの中枢は、現在と同じようにボスとボス代理、それに3人のメンバーをそろえた戦闘部隊と同じ構成をされています。まあ初代以降ボスの不在と例外的な状況によって戦闘部隊の数が増える事はありますが、基本は同じです」

 

例外的な状況とは、10年後のミルフィオーレとの戦いの時の様な、全面的に危機に陥った場合など。その様な時には、第二戦闘部隊『シャガ』の様に、通常1つの戦闘部隊を増やしたりする場合もあるという。

 

とはいえ、基本の原型は同じ。

 

ボスである白神光努。

ボス代理のナンバー2である黒道灯夜。

戦闘部隊『アヤメ』のリーダークルドと、メンバーの獄燈籠、海棠槍時。

 

この5人こそが、イリスファミリーの中枢ともいえる戦力であり、それにプラスして現在は技術主任のルイや医療主任などいるが、基本はこの5人。

 

初代イリスの時代も、この構成と同じであったとされている。

 

「初代イリスファミリー戦闘部隊、その3人のメンバーが遺したとされている物の1つが、この並盛神社の地下に隠された〝夜明殿〟です」

「うっそぉ!?並盛神社の地下にそんなものが隠されてたなんて初耳だよ!?ていうか、並盛神社の地下って未来でボンゴレのアジトがあった場所だよね!?」

「正確には、雲雀が組織する風紀財団のアジトだったけどな」

「いや、そうだけど!」

「それは単に、建築時見つからなかっただけですよ。地下と言っても、本当に土の中にあるわけではないですから」

 

並盛神社、その床下を開き階段を降りる。

その先には、御神体が祭られているかのような祭壇が置いてあるが、祭壇の中央には小さな鍵穴。槍時が取り出した小さな鍵を鍵穴に差し込むと、ガタンと音がした。

 

「うわぁ!開いた!」

「いちいちビビり過ぎだぞ、ツナ」

「安心しろって、俺もリボーンも槍時もいるんだ。予想外の最悪の事態があっても、なんとかしてやるよ」

「えぇ、そんな事言っても………」

 

怖い物は怖い、と言うツナだが、どうせ何かあってもリボーンが助けてくれる事は滅多にないし、ディーノの部下であるロマーリオが外で待機しているのでこの場にいないというのも理由の1つ。

ディーノは部下が近くにいないと戦闘能力が半分以下に激減する、部下の為に力を発揮するある意味究極のボス体質。そんな事もあって、怪しげな雰囲気の神社地下でツナはややおびえ気味なのだった。

 

しかし、そんな気持ちも、開いた先の空間に立った時に吹き飛んだ。

広大な自然を見た時の様に、精緻な技巧の果てに生み出された作品を見た様に。

ありもしない風が全身を吹き抜ける様な、不思議な感覚をツナは味わった。

 

「ここが、初代イリスファミリー戦闘部隊『ビフレスト』の1人〝七代(ななよ)舞刀姫(ぶとうひめ)〟と謳われた剣士の刀が眠る〝夜明殿〟です」

 

そこは、草原だった。

広大な草原、そしてその上に浮かぶは、満点の星空の浮かぶ夜の空。

そして草原の上に佇むは、1つの社。全てに木材と石を使用したであろう質素な作りだが、所々に備えられた装飾は緩やかに優美な雰囲気を、星の下に荘厳に佇む姿は、まさに神秘的と呼ぶにふさわしい姿だった。

 

そして社の奥に扉越しに微かに見えるのは、1本の刀。

全身を鞘事鎖が巻き付けられ封じられているが、その威圧感は並大抵の物ではない。ただそこにあるだけで、圧倒的な存在感を放っている。ツナがそれ程の物を見たのは、ここ最近では未来でのみ。

10年後のリルの持つ神器『純然たる剣(クレイブソリッシュ)』を見て以来か。

 

「夜空………!俺達は地下に入ったはずなのに、これは一体………」

「え!え!?どいう事!」

「こいつはスゲーな」

「間違い無いですよ、ここは地下。ただ潜った扉の先は、パンドラの匣の技術が使われた別空間、と言った方が正しいですね。これと同じですよ」

 

そう言って見せる様に腕を持ち上げると、その腕に下がったブレスレットが視界に入る。立方体の様なアクセントの入ったブレスレット、その姿に見覚えが、3人にはある。

 

(あれは、未来でリルが持っていた、神器を封じていたパンドラの劣化匣(スカートラ・ディ・パンドラ・レプリカ)。こっちの時代で、未来の知識を経たルイ辺りが造ったのか。ん?だが、細部形状が異なる気がするな。同じ物じゃないのか?)

 

少しだけ訝しげるリボーンだが、当の本人である槍時はサクサクと草原を進み、社の前に佇んで丁寧に、祈る様に手を合わせる。

 

よく見れば、社の扉にはイリスの紋章があり、初代イリスファミリーの遺産というのは間違いないだろう。

 

数秒瞑目して祈りを捧げた槍時は、掃除道具を取り出して草原の上に置いておく。

そしてくるりとツナ達の方を向いて、柔らかく笑った。

 

「では掃除を始めましょうか。もちろん皆さん、手伝ってくれますよね?」

 

その笑顔は、ここまでの柔らかさと異なり有無を言わさぬ迫力があった気がすると、後にツナは語るのだった。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございます。掃除を手伝ってもらったおかげで、予定より早く切り上げる事が出来ました。感謝します」

「槍時は、この後別の仕事でも入ってんのか?」

「いえ、そもそも今日は休暇(オフ)なので、日本にいたのでせっかくだからと来たまでですよ。ま、後はもう1つの遺産の掃除はまた今度にしますけどね」

「〝奈落殿〟って言ったっけか」

「ええ、まあ。それではディーノ君と綱吉君も、また。もしかしたら、そう遠くない時にまた会う事になるかもしれませんが」

 

そう言って、槍時は神社の境内を降りて行った。

 

「あ、待てよ槍時!ロマーリオが車を回してるから送ってくぜ!ツナとリボーンも、またぬわあああぁ!」

 

そう言って足早に、ディーノも槍時の後を追いかけて走っていくが、階段を降りて見えなくなった所で叫び声が聞こえた。大方、また足を滑らせて落ちたのだろう。先ほどまで部下のロマーリオは境内にいたが、車を取ってくる為に下に行ってこの場にいないのが不運だったとしか言いようが無い。

 

「ディーノさん、大丈夫かな………」

「ま、いつもの事だ。大丈夫だろ。掃除して疲れたし、俺達も帰るぞ」

「疲れたって、リボーンは横から眺めてただけだろ!」

「生徒の仕事をとっちまうのは、家庭教師としてはよくねーからな。これも経験だ」

「ただ掃除しただけなのに何が経験だよ!」

 

いつも通りの何気ないやり取りをしながら、ツナとリボーンも帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「わざわざすみませんね。せっかくですので、お言葉に甘えさせていただきます」

「そいつは構わないけど、俺達イリスの部外者にあんな場所見せても良かったのか?あの社に祀ってあった御神体は、初代イリスファミリーの遺産の刀、もっと言えば神器の1つだろ?」

 

ロマーリオの運転する車の中で、丁寧に礼を述べる槍時に、ディーノは尋ねる。話題は、あの社〝夜明殿〟の中身について。

 

ディーノが思い出すのは、ヴァリアーとの闘いにおいて〝棟梁〟ウィーラの所有していた、小さな槌。後で槍時から、それがおそらく神器の1つであろう事を聞いたが、少なくともあれと同質の威圧感を、封印越しにディーノは感じた。

 

そして、その直感は正しい。

 

「やはり気づきますか。ええ、お察しの通り、あの刀は神器の1つ。しかし、特に問題はありませんね。ディーノ君も見た通りに、あれには封印が施されています。それも、初代イリスが自ら施した封印が」

「何?」

「あの刀に限らず、世界にいくつか初代イリスが施した封印が点在しています。しかし、それを扱える物は存在しません。唯一可能なのは、初代イリスと同じ炎を持つ者」

「つまり、現時点で光努にしか解けない封印って事か」

「はい」

 

初代イリスの時代に、いくつか神器を収集していた事もあったという。にも拘らず、この時代にはほとんど残っていない。放置するだけでどれだけ災厄を呼び込むかも不明な物質な為、失くした、なんて事は無いだろう。それに本来神器とは人知を超えた神域の武具。破壊されて減った、などと考える事自体もナンセンス。

ではなぜこの時代にほとんど伝わっていないのか。

 

それは、初代イリスが消える前に再度封印を施したから。

 

それは誰にも解くことができない封印。その為、未来でも白蘭はいくつか並行世界の知識で場所を特定しようとも、そもそも封印が解けない為に使用を断念した神器の話もある。

 

並行世界を覘きあらゆる不可能を可能とする白蘭でも、明らかに不可能な事が存在する。

 

 

唯一造られたボンゴレ匣の詳細が分からなかった様に。

 

特異点と称される、白夜の炎を手に入れる事が出来なかった様に。

 

白神光努の情報を並行世界で手に入れる事が出来なかった様に。

 

初代イリスの施した封印を、白夜の炎なしに解けない様に。

 

 

故に、槍時としては特に知られても問題なかった。

例え知ろうとも、誰にも扱う事が出来ないのだから。。

 

「そもそも、あの空間も一応鍵が必要な場所ですからね。()()の技術を、少しアレンジした物ですし」

 

そう言って見せるのは、腕に嵌まるブレスレット。立方体の様なアクセントの施された、異質なブレスレット。

 

「それは確か、パンドラの匣(スカートラ・ディ・パンドラ)を参考に作ったって言う………」

「ええ、パンドラの疑似匣(スカートラ・ディ・パンドラ・メタ)。なんでも入る不思議な箱。昨今のゲーム風に言えばアイテムボックスと言った所でしょうか。といっても、今は1つ入れただけで容量一杯ですけどね」

 

柔らかく笑う槍時。

しかし、ディーノにはその中身が何となく想像がついた。たった1つの物しか入れる事が出来ないのではなく、容量をフルに使わないと入れる事が出来ない、たった1つの物質。しかし、それを特にこの場で言及する事は無かった。

 

それもまた、イリスの機密の1つであると察したから。

 

「そういえば、このタイミングで日本にいるのは、例の式典に出席するからですか?」

「ああ、知ってたか。ま、せっかくの晴れ舞台だしな、早めに準備も必要だからな。イリスにも招待状行ってるんじゃないのか?」

「さて、どうでしょうか。そもそも光努はまだ帰ってきてませんしね。まあ、その時は灯夜さんの判断に委ねますけど」

「なるほどな。まあ、楽しみにしてるぜ」

 

軽い談笑する槍時とディーノを乗せた車は、緩やかに並盛の町を走るのだった。

 

 

 

 




未来編までのキャラ紹介をつくろうかな。
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