(クフフフ。予想以上にクロームが成長されていますね。一体何をしたのですか?)
「なーに、ただ地獄巡りしただけだよ」
(それはただというには重すぎる気がするのですが・・・・・)
「前世に六道輪廻回ったやつが何を言う」
(それもそうですね)
六道骸は、基本的に
クロームは、元々不幸な事故にあった少女。
重要な内蔵を多く損傷し、もはや命は風前の灯だった。
それを救ったのが、六道骸。希にいる、骸と波長の会う人間とは、精神世界の中で会話を行える。偶然精神世界を散歩していた骸と、意識不明中だったクロームの精神が出会った。
そして骸は、自らの力で作り出した幻覚の内蔵を彼女に与えて、その命を繋いだ。
その際に骸の能力である六道輪廻の力もいくらか彼女は使えるようになり、
が、動く分のエネルギーも幻覚に回しているとはいえ、それも常時できるわけでもない。
そんな時にでたのが光努。
光努の精神世界に入り込み、そこから外を見るという提案。
骸は、光努とはなぜか波長が合う以前に、入り込むのに抵抗が全くといっていいほどないらしい。余分な力を使わずに観戦するにはもってこい。もちろん、肉体的主導権は光努から奪えないのであしからず。
それでも、光努の『六』の文字が入り赤く染まった右目が、爛々と輝いているようだった。
「それで、クロームは結局勝てると思うか?」
(そうですね。勝てる・・・とはやはり言い切れないですね)
格闘家と幻術士が戦ったとき、通常なら幻術士が勝つ。
ただし、それはかなり荒っぽく見た場合。
通常なら、幻覚を仕掛ける前に倒すという方法、もしくは幻覚に理解のある格闘家であれば、相手の幻覚に対抗する術を身に付けることも、幻覚が通じないこともある。
幻覚を知らないのであれば、防ぐすべなく、知覚を全てコントロールされて敗北となる。
まるで、銃と剣が戦うのがごとく。
銃は剣より強しという言葉があるが、剣で銃弾を防ぐ技術があるものには通じない。
今回の場合を例えるなならば、マーモンが持つのはガトリング砲、クロームが持つのは、サブマシンガンと刀。使い方次第かもしれないが、正直勝つのはまだ難しいかもしれない。
それほどに、マーモンの幻覚能力は高かった。
(それでも簡単に負けるクロームではありませんし、もう少し様子見しましょう)
「それで、お前はどうする?出るか?」
(クフフ、もう少ししたら、ボンゴレ達を驚かせて差し上げましょう)
「スッゲー疲れるんじゃなかったのか?」
(アルコバレーノとも戦ってみたいですし、それに連中の驚く顔が見てみたい)
「アホか・・・」
(まあクロームならもう少し大丈夫でしょう)
「でも確か幻術を幻術で返されたらやばいんじゃなかったのか?」
(確かに、通常の術士同士の衝突の場合、幻術を幻術で返された時、知覚のコントロール支配される。だけど)
「だけど?」
(クロームは、まだ完全に支配されていない)
***
シュウゥ。
「あれ?なんか霧が出てるような?」
不意にツナが言った。
他の面々も、周りを見てみると、まだまだかすかだがあたりに白いもやのようなものたち込めているような気がした。
が、かなりかすかなのと、そこまで周りを見るほど余裕がある者は割と少ない。
なぜなら、今も現在、クロームとマーモンの作り出した幻術合戦が続いたから。
だが現状、クロームが押されているように見える。
クロームの身体能力は格段に上がっていたが、幻覚と同時進行で使い続けている今、そろそろ体力が尽き始めていた。マーモンの幻覚を、幻覚と体術を合わせて破壊するという荒業を使っていたが、その分体力の消費も大きかった。
「!これは・・・」
「むむ?この霧は?」
だが、その二人をもってしても、不可解な現象。
どこからか、霧のようなな白いもやが、だんだんとフィールド内に増えていった。
(お疲れ様です、クローム)
(骸様!)
(さすがに僕の作った幻覚の内臓じゃ、体力的にもきついでしょう)
(そんなことは・・・)
(少し休みなさい。後は―――)
霧は深く表れ、クロームを包み込んだ。
一体何事かと思われる中、だんだんと霧が集まっていき、クロームの全体を隠し渦を巻く。
(――僕に任せなさい)
トン!
霧の中から、棒の柄が出て床を突いたかと思うと、地面がひび割れていき、真っ直ぐにマーモンの元へと向かっていった。
「ムギャ!」
霧に目を奪われていた為、モロに攻撃を喰らったマーモン。倒れてしまったがすぐに態勢を立て直して渦巻く霧を睨む。
そして、霧がだんだんと晴れてきたと思ったら、中にいた人影が姿を現した。
特徴的な髪型の黒い髪。先程までいたクロームの影はなく、明らかにクロームより体格のよい、というか別物の体格の男性。黒い手袋に握られた三叉槍と、その右目は赤く染まり、『六』の文字が記されていた。霧が晴れた今、クロームは見当たらず、そこに佇む男は口を開いた。
「クフフ、随分いきがっているじゃありませんか。マフィア風情が」
霧の中から現れたのは、六道骸本人だった。
***
「骸も無茶をするな、ていうか過保護なこった」
視線の先にいるのは、氷漬けの骸。
足元から頭の上まで、すべてが氷漬けになり止まった状態の骸と、対峙しているマーモン。
骸の登場に、誰もが驚きを隠せなかった。
前に黒曜ランドで骸と死闘を繰り広げたツナや隼人はもちろんのこと、鉄壁と謳われた
その為、幻覚だと思われる骸の正体を暴くため、マーモンの幻覚によって氷漬けにされた。
そして無情にも、幻覚のハンマーを作り出し、氷漬けの骸を破壊するために迫ったマーモンだったのだが、
ズバン!
「おっ」
「!」
「え!」
「!?」
地面から生えた植物のツル。氷漬けの骸に近づいたマーモンに大量に絡みつき、ツルの多くから蓮の花を咲かせた。
「クフフ、だれが幻覚ですか?」
一瞬で氷を溶かして自由を取り戻す骸と、ギリギリと万力のごとき力でツルに締め付けられ、苦しんでいるマーモン。
「なんて・・・・力だ・・。く・・・苦しい!」
これはマーモンにとっても予想外。
骸は脱獄に失敗して、最下層の牢獄に今も投獄中という情報。その為、今いる骸はクロームが作り出した幻覚であり、オリジナルとは程遠い偽物侮っていたのだが、今見せつけられた幻覚能力の強さは、明らかにクロームよりも高い。
今この場にいる骸は、本物だと言わざるを得ない状況。
「さあどうします?アルコバレーノ。のろのろしてるとグサリ・・・・・ですよ」
「ムゥ!図に乗るな!」
蓮の花の咲いたツルを振りほどき、幻覚能力を解放するマーモン。
空中に浮いているマーモンの周りに、幾人もの同じ姿のマーモンの姿が大量に現れた。
「惰弱な」
ズバババン!!
骸の右目の数字が『四』となり、目に炎が灯ったかと思うと、見後な槍捌きを発揮して、大量に浮いていたマーモン自身の幻覚を一瞬で仕留めた。
「あの目の炎は!
「ムムゥ!あの女といいお前といい、格闘のできる術士なんて邪道だぞ!」
第四の道、修羅道。
自身の格闘能力を上げる力。
骸の六道輪廻の能力であり、術士の
その力は、最強の風紀委員長である雲雀とも、ほぼ互角の戦いができるだけ高い。
しかもクロームの場合は、地獄めぐりによって格闘能力がさらに向上しているため、通常の骸が使う修羅道よりも格闘能力が高くなっている。これはさすがに骸も吃驚の成長ぶりだった。
「人間は何度も同じ人生を繰り返すのさ。だから僕は集めるんだ、金をね!!」
ぐにゃり!
「わぁ!床が!」
景色が歪んだ。もはや天井は天井でなく、床は床でない
窓も床も天井も、扉も何も関係なく、上下左右すべてがごちゃまぜになったような空間が出現した。もはや手加減をするほどの余裕はマーモンになかった。アルコバレーノとしての力を発揮して、体育館全体に強力な幻覚を仕掛けた。
「バイパーの奴、力全開だぜ、コラ」
「そーするしかねーだろーな」
床が床でなくなったため、相棒の鷹のファルコにつかまり宙を飛ぶコロネロと、それにつかまり一緒に浮いているリボーンの二人。
先ほどよりもはるかに強い幻術だが、リボーンの表情には、危機や焦りなど微塵も感じられなかった。
「クハハハ、強欲のアルコバレーノですか。面白い!だが、欲なら僕も負けません」
そう言って、地面とも壁ともつかない場所に三叉槍の柄を当てると、火柱が飛び出た。
360度ごちゃまぜの世界から、大量の溶岩が吹き出したかのような火柱に蓮の花。
上から下から左右から、斜め上から前から後ろからと、あらゆる場所から火柱が出現し、もはやツナ達だけでなく、ヴァリアー側もこの先程までの高度な幻覚合戦よりも遥かに高いレベルの幻覚に驚愕を隠せない。ベルやレヴィも驚きをあらわにしていた。
「とった!」
それでもなお、自分の姿の幻覚を弾丸のように骸に飛ばし、槍を回転させて受ける骸だったが、隙間から小さなマーモンの幻覚が入ったと思ったら、だんだんと膨らみフードが広がり、骸を全身から飲み込んだ。そして外からマーモンの相棒の巻きカエルであるファンタズマが、大量の刺を、マーモンの巨大なフードに飲み込まれ、動きを封じられた骸に向かってフードごと突き刺した。
「ああ!」
「骸さん!!」
ツナも、犬や千種も焦りの声を上げる。
だが、捕まえた当の本人から、一番の焦りの声が聞こえた。
「・・・・バカな!」
ブワァ!
内側を突き破り、現れたのは骸。
大量の植物と、綺麗に咲き誇る蓮の花。
優雅に佇み微塵の焦りも見られないその姿。骸とマーモン。アルコバーレのとして最強と謳われた力をもつマーモンと、前世で地獄道を巡り身につけた幻覚能力を持つ骸。どちらも超一流の術士だが、二人の間には圧倒的なほどに能力に差がついていた。
「堕ちろ、そして巡れ」
幻覚能力・・・骸>マーモン>クローム
身体能力・・・クローム>骸>マーモン