「しぶといね、君」
「そういうお前も、ね!」
キィン!
ジャンピエロの手に持つ薄いリング状の武器と、雲雀の持つ鋼鉄製のトンファーがぶつかり、甲高い金属音を上げる。
チャクラムと呼ばれる、古代インドの敵を切り裂く事を目的とした投擲武器。
薄い円盤状の形に、中央には穴、外側には刃がついた武器。
だけど、ジャンピエロの持っていたチャクラムは、通常のチャクラムと少し違っていた。
通常、外側だけ刃がつき、中央の穴に指を引っ掛けて使う。が、やつの使っているチャクラムは外側と内側、両方に刃がついている。その為、ジャンピエロ本人も切れないためなのか、おそらく手を覆っている手袋も防刃製である。
身にまとっている白いローブの裾からいくつものチャクラムを取り出し、投げつけては雲雀はトンファーで防ぎ、そのまま持って攻撃を仕掛ける。
身を捻るように、握ったチャクラムを振り回し、距離をとって投げつける。
トンファーを巧みに動かしまわし、攻撃を躱して攻撃を仕掛ける。
タッ!
床を蹴り、後ろに下がるように跳んだジャンピエロが、両手を振るうように動かすと、何枚ものチャクラムが上下左右、変化球のごとく雲雀へと向かっていった。
カシュ!
「甘いよ」
キイィン!!キィン!キィン!
トンファーの中から、ベルとの戦いで見せたギミック。刺の付いた分銅が先端に取り付けられた鎖。それをトンファーごと回転することで盾にし、チャクラムを防いだ。
しかもそのまま回転を維持し、ジャンピエロに向かって特攻する。
鎖を振り回すことでリーチも長くなり、遠心力で破壊力も増す。敵を倒すために問答無用で校舎の壁等を破壊していく。
「しぶといなー」
無感情な声でしゃべるジャンピエロと反対に、雲雀は獰猛そうに楽しそうに口角を上げる。
「安心しなよ、すぐに壊してあげる」
「その怪我で?それはどうかな」
再び手元に何枚ものチャクラムを指に挟む。
ジャンピエロの言う通り、雲雀の体には怪我が多い。
ベルフェゴールとの戦いで、ワイヤーとナイフによっていくらか切り刻まれた傷が意外と深く残っている。その為、体中のあちこちが切り傷で出血しているが、そんなことは関係ないとばかりに動いているのが雲雀。
一応応急処置で止血はしたが、出血でいくらか体力が落ちているのに、それでも動き続けるのはさすがの一言。だが、相手が相手だけにその力はいつまで持たせられるのか。
刺付き分銅を先端に付いた鎖を振り回し、勢いを付けてジャンピエロの顔面に向かって飛ばす。素早く飛んできた分銅に、ジャンピエロは静かに手にチャクラムを挟んだままで動かした。
ギャギャ!!ギン!!
「!」
自ら飛んできた攻撃に触れるように手を動かしたかと思ったら、直径20センチ程のチャクラムを、針に糸を通すような正確さで分銅から通して鎖に引っ掛け、そのままチャクラムを殴りつけて壁へと突き立てた。
チャクラムの穴に鎖を通して壁に固定され、一瞬雲雀の動きが止まった。
その隙に、鎖を手でつかんだまま、雲雀に向かってチャクラムを振るう。
片方の鎖を掴まれたことにより、同時に片方のトンファーの動きが止まった。
カチリ。
だが、瞬時に掴まれた鎖とトンファーを切り離し、回転するようにして残りのトンファーと鎖を振り回し、チャクラムを落とす。
しかしジャンピエロの方も、雲雀の切り離した鎖を振い、雲雀の残りの鎖と絡ませた。
「えい」
切断!
鎖を掴んで詰め寄り、鎖を途中からチャクラムをふるって切断した。
短くなった鎖を切り離し、一度距離をとって再びトンファーを構える。
対するジャンピエロも、手に持った鎖を放り投げ、再びチャクラムを構える。
お互いに、最初の構えに戻った。
廊下の周りの壁や床は、切り傷と破壊痕が多く残り、お互いに対峙する。
最初と同じ光景だが、体力的にも、最初から傷のあった雲雀が圧倒的に不利。
なんとかここまで耐えたが、それも雲雀の屈強な精神力と、意地でも相手を倒そうとする性格が幸いしたため。一歩間違えれば、すぐに相手にやられる状況には変わりない。
緊迫した空気の中、二人は同時に何かを感じ取った。
かすかだが、何かが近づいてくる音。
二人して一層身構えた瞬間、二人の横の廊下の壁が吹き飛んだ。
***
「おらあぁあ!!」
「「!」」
乱射!
XANXUSの持つ銃の輝き。片腕はツナの零地点突破によって凍らされたが、残った左腕にしたのは必ずしも不足の事態とは言えない。
確かに攻撃の幅は両手よりも下がったが。その分より多くの炎を一箇所に溜め、放出することができるようになった。一発一発が両手で打つよりも遥かに強い炎を打ち出していく。
だがそれでも、不利なのには変わらない。
両手の銃から炎が出せないため、炎噴出による高速移動と攻撃の二つが両立できなくなった。
移動するか撃つか。一丁しかない銃により、選択するしかなくなる。
そして選択したのが攻撃。
攻撃は最大の防御のごとく、荒々しい炎があたりを包み込んだ。
一切の攻撃を許さず、満足に動けないために先に殲滅する。それがXANXUSの選択した攻撃の方法。
もちろん、その対象には〝棟梁〟のウィーラとツナの二人が入っている。
「厄介な炎の威力だな、XANXUS。だが、もはや動けなさそうだな」
ダッ!!
地面を踏み鳴らし、ウィーラが動いた。
XANXUSがお構いなしにと炎の弾丸を撃つが、躱しながらXANXUSに接近して槌を振り上げる。反応がやはり遅れたXANXUSだが、その間に人が割って入った。
「させない!」
すぐさま炎を噴射してウィーラとXANXUSの間に入って立ちふさがる。
そのまま、本来XANXUSが受けるべきだった槌を受け止めた。
「どけ、まとめて潰すぞ」
(くっ!こいつ、なんて力だ)
ジリジリと押し切られそうなツナ対し、ウィーラはツナの後ろを見てつぶやいた。
「沢田綱吉・・・そこ、危ないぞ」
後ろから溢れんばかりの炎が突っ込んできた。
XANXUSに向かったウィーラと、二人の間に入ったツナ。
現在三人の位置は、まさに一直線に並んだ状態。
とすれば、XANXUSにしてみれば二人共まとめて吹き飛ばす大チャンス。
「くっ!」
咄嗟に〝零地点突破・改〟の構えを取り、後ろを向いてXANXUSの炎を受け止める。
その瞬間、ツナの腹部に横から衝撃が走った。
「!」
横からぶつかったのは、槌。
見なくてもわかる、ウィーラの振りかぶった槌によって、ツナは横へと吹き飛ばされた。
「XANXUSの心配をするとは、お人好しな奴」
そのままツナを無視して膝をついているXANXUSの元へと行く。
等のXANXUSは力を使い果たしたのか、銃を持った右手を降ろしたまま、膝をついてうつむいている。
手に持った槌を振り回し、XANXUSに詰め寄ったウィーラは、槌を振り上げた。
「XANXUS!」
吹き飛ばされたツナは、すぐさま空中で炎を噴出して方向転換し、XANXUSの方へと向かおうとしたが止まった。
うつむいたXANXUSから一瞬見えたその目。
どこまでも鋭く、野獣のようなその瞳は、まだ疲れ果ててなどいない。明らかに強い意思の見える目。
槌を振り上げたウィーラが、振り下ろした瞬間、転がろうようにしてXANXUSは避けた。地面へと槌を振り下ろし、轟音を響かせるその威力は強い。
だが、XANXUSは転がるようにしてそれを避け、そのまま銃をウィーラへと向けた。
途中で攻撃をやめたのは、力を使い果たしてたのではない。
数を撃っても当たらず、自分で動くこともできないのであれば、当たる距離まで相手に来てもらえばいい。
そしてタイミングを図った。攻撃をした瞬間。大きく振りかぶり、攻撃した後に一瞬の硬直ができるのを待った。
そして、そのタイミングは来た。
周りが全てスローモーションのように見える中、すでに至近距離のウィーラへと照準を定めたXANUXS。
ウィーラが再び降ろした槌を振り上げようとするよりも速く、その引き金を引き、フルに溜めた炎を吐き出した。
ダアァン!!
燃え上がる炎の弾丸が、ウィーラの顔を直撃した。
否、そう見えた。
「!」
その顔は無事。咄嗟に首を傾けてかすめるだけにとどめた。
恐るべき反射神経。もはや、XANXUSには炎を打てるだけのエネルギーは残されてなかった。
「これでジ・エンド。ま、必然だったな」
そう言って再び槌を振り上げるウィーラに、XANXUSはぼそりとつぶやいた。
「・・・これで、さっきの借りはなしだ、ドカスが」
「!」
咄嗟に後ろを向いたウィーラは、空中に浮かぶ者に目を向けた。
円形状に巨大な炎を収縮し、その手の中に納める。
そして、勢いよく額から死ぬ気の炎を灯し、その両手は先ほどよりも遥かに高い炎が灯されていた。
「ああ。ありがとう、XANXUS」
(さっきのXANXUSの攻撃は、このためのものだったのか)
空中に佇むツナを見て、自然とウィーラの口元に笑みが浮かんだ。
XANXUSのフルチャージの攻撃は、ウィーラを攻撃するためのものではなく、避けるのを見越して、その後ろの空中にいたツナへと撃ったもの。
そして、そのツナが〝零地点突破・改〟によって、吸収するための炎。
しかも吸収したツナがパンクしないようにある程度の加減がされている。
XANXUSのように、荒々しく燃え盛る死ぬ気の炎。
だが同時に、落ち着きのある静かな炎。
矛盾しているようだが、そう思える程に強大な炎をツナは纏った。
「来い、ウィーラ。お前の狙いはボンゴレリング。俺が先に相手になってやる」
XANXUSではなく、自分と先に戦え。ツナはそう言った。
もはや戦えぬXANUXSへの矛先を、自分へと変えるように。
だが、
「沢田綱吉。必要なのはボンゴレリング。ハーフを持つお前と、XANXUSの二人のリング。先に、こちらをもらおうか」
ギイィン!!
再び振り下ろした槌に、何かがぶつかった。
咄嗟のことに、思わず目を見開いたウィーラとXANXUSの見たのは、二人の間にたって槌を剣で受け取める人間。
ヴァリアー御用達の黒ずくめの隊服に、左手の手首から先は義手が壊れなくなっている。反対の右手に握られた剣が、相手の槌の柄にぶつかり受け止め、その銀色の髪が風に揺れた。
「てめぇ、スクアーロ」
「よぅボス。随分と派手にやられたな」
スクアーロは、二人の間に入り込んでXANUXSを守った。
「スクアーロか、お前に用は無いのだが」
「う"お"ぉい!てめぇに用はなくても、俺にはあるぜぇ、〝棟梁〟のウィーラ」
「ほぅ」
「うちのボスが、世話になったみてぇだなぁ!」
ギャイイィン!!
振り払った剣を槌の柄で受け止めて、ウィーラは一度距離をとった。
そしてスクアーロも、自身の持つ洋剣の具合を確かめつつ、構えた。
(さてと、どこまで持つか。しばらくもってくれよぉ)
スクアーロ自身の剣ではなく、急ごしらえの剣。その為、相手が相手だけに心もとないが、それでもスクアーロは戦う。
8年前の『ゆりかご』で、スクアーロはXANXUSを守ることができなく、XANXUSは氷漬けにされた。あの時自分が動けたのなら、XANXUSが9代目に凍らされることはなかったかもしれない。何もできなかった悔しさが残った。
だが、今はまだ生きてる。守ることができる。
XANXUSと比べるもなく、自身もボロボロなことは知っていた。
だが、それがどうした?
まだ動ける。剣を振るえる。XANXUSの前に立てる。
ならば、やることは決まっている。眼前の敵を倒す!
「・・・・・・」
それまで槌を構えていたウィーラだが、唐突に手を降ろし、くるりとスクアーロに背を向けて反対方向のツナへと足を進めた。
「う"お"ぉい!どこへ行きやがる!」
「あまり命を散らそうとするな。正直リングの持たぬお前と戦う必要性な無い。だから先にあちらのリングをいただく。もしもそのあとでまだ立ち向かう気があるのなら」
顔だけをわずかにこちらに向け、強大な殺気を放った。
「まとめて潰す!それが、俺にとっては必然だからだ」
「!」
押しつぶされるような重圧。これまで幾千もの殺気を受け、修羅場をくぐってきたが、こいつは確かに強い。
スクアーロの経験と野生の勘がそう思わせた。
地面に降り、炎を灯したツナは、ウィーラと対峙した。
「さて、待たせたな。沢田綱吉」
「ああ、行くぞ。〝棟梁〟ウィーラ」
二人一気に接近し、それぞれの武器である、拳と槌を振りかぶった。