リリカル世界に魔王さま進出   作:エビノカラアゲんまいはー

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一旦一区切りとなるお話です。
今回はあの人たちもちょっとだけ出るよ!


8話

From:ミッドチルダ中央区画

 

 

機動六課解散翌日。

 

 

スバルとティアナに手を引かれ、なんか軍の施設っぽい所に連れられる。

二人が所属してた機動六課は昨日時点で解散した筈だが、俺なんかを連れ込んじゃって良いのかな?

やって来たそこには、年若い少年少女達がいた。

大人もいるが、それでも20代前半といった見た目だ。

この前の事件で見かけた人達も何人かいるので、この子達がスバルの仕事仲間なんだろう。

顔を知らない子達は怪訝そうな顔をしているが、ズバッとスバルが切り出す。

 

「皆さん、紹介します!こちらが、この前のJS事件で手伝ってもらったリム姉です!」

「俺は男なんだけどな……ゴホン、あー、俺はリムルと言う。ここにいるスバルとティアナの昔馴染みみたいなもんだ。よろしくな」

「あの時はあんまり話できなかったけど、随分別嬪さんなんやなぁ。10年前に活躍した凄腕の嘱託魔導師、地上の影のエース。リムル・テンペストって、アンタの事だったんやな」

 

最初に反応したのは、この部隊で一番高い階級章を付けた、この前ゆりかご前で出会った女の子だった。

 

「よくそんな前の事を知ってるな」

「リムルさんの事は、今でも管理局の語り草になってますから」

「うへぇ……」

「あたしはここの部隊長やらせてもらってた、八神はやてって言います。2度目ですけど、お会いできて光栄ですわ。リムルさん」

 

はやては部隊長をやってるだけあって、出来る女の貫禄を持っていた。

魔導師としての実力もかなり高そうに見える。

次に反応したのは、茶色の髪をサイドテールにした年長組の女の子だ。

 

「そうなんですか!?私は元スターズ分隊隊長の高町なのはって言います。リムルさん、もし良かったら是非私たちと模擬戦しませんか!?」

「あー……気が向けばな?」

 

随分と向上意欲の高い子みたいだな、なのはは。

相手にするとちょっと面倒なタイプな感じがしたので、次に移る。

 

「私はフェイト・T・ハラオウンです。元ライトニング分隊隊長です____」

 

こんな感じで、サクサクっと各々自己紹介をした。

最後は、シグナムがこっちに一歩踏み出してくる。

 

「以前にも自己紹介をしたが、私は元ライトニング分隊副隊長のシグナムと言う。私からも是非、模擬戦をお願いしたい。ゼストに打ち勝ったという貴方と手合わせ出来るのは非常にありがたいからな」

 

シグナムは最初に会った時と変わらず、凛とした風格を持ち合わせていた。

 

「ああ、アンタか。あの時の事は感謝している。嫌な役目をさせちゃって悪かったな」

「いや……私も武人だ。誇りある騎士として、彼の最期に立ち会えたのは嬉しく思う」

「そっか」

 

こういうのは、いつまで経っても慣れないな。

逝ったゼストの事を思い浮かべる。

最期の最期まで、自分勝手な奴だったが……シグナムの言う通り、誇りある騎士として最期を迎えられたんだと思う。

俺は、自分の頰をバチン!と叩く。

 

「よし、わかった!お前達との模擬戦、受けて立ってやる!全員まとめてかかって来い!」

「!」

「感謝する!」

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

Side:スバル

 

 

この日。

初めて、リム姉の強さを知った。

あたしが小さい頃に一度だけ、ゼストおじちゃんに勝っていたのは見て知ってたんだけど……

相対すると、その理不尽さがよくわかる。

 

戦闘開始直後、宙に浮かぶリム姉を見て……あたしはギョッとした。

たぶんだけど、機動六課の全員が同じ気持ちだったんじゃないかな?

 

砲撃魔法の大規模展開。

おそらくは、1発1発が、なのはさんのディバインバスターに匹敵する威力。

それが、リム姉を中心にして100以上は展開されていたのだから。

 

それからは、阿鼻叫喚だった。

間断なく降ってくる砲撃を、みんな必死になって避ける。

 

ヴィータさんからは、「防御しようなんて考えるなよ?そんな事すれば、固まった所を狙い撃ちだ!」と指示されたが、そんなの言われるまでも無かった。

全力でガードすれば、2〜3発は耐えられるだろうけど……おそらく、一度足を止めたら数十発の魔力弾が襲ってくるって直感的にわかったから。

 

それにしても、隊長陣は流石だ。

あの砲撃を掻い潜りつつ、各々が攻撃を開始している。

 

けれども……

 

シグナムさんや、ヴィータさん、フェイトさんが接近するや否や、リム姉は武器も持たない手足で迫るフォワード陣を吹き飛ばした。

さらに、吹き飛ばした直後は砲撃魔法の連射で追い討ちしてる。

その隙に、センターガードのなのはさんとはやて部隊長が遠距離砲撃を撃ってたけど……

 

「嘘っ!?」

 

どういった手品なのか……砲撃はリム姉の手前で軌道を180度変えて、なのはさんとはやて部隊長に襲いかかってた。

しかも、この間あたし達への攻撃は一切緩んでない。

 

一人、また一人と撃墜され……最後は、なのはさんとはやて部隊長、リム姉の集束砲撃魔法(ブレイカー)のぶつかり合いで模擬戦は終了した。

更地になった訓練場で、最後に立っていたのがリム姉ただ一人だったのは、もはや冗談なんじゃないかと笑わずにはいられなかったよ……

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

模擬戦終了!

 

「いやー、みんな結構鍛えてるじゃん。良い部隊だな、はやて!」

「いやいやいや、一人で全滅させた本人がそういうこと言います!?」

 

なんだなんだ。

褒めてるのに、素直に受け取らないのは失礼だぞ?。

 

「あはは……まさか二人分のブレイカーを相殺されるとは思いませんでした……はぁ」

「私たちも……攻撃全部、いなされちゃった……」

 

なのはとフェイトが沈んでいるが、別に落ち込むことはないと思う。

充分に強かったと思うよ、マジで。

ほんと、よくあそこまで保ったものだ。

 

「私も、まだまだ剣の腕を磨かなくてはな……次こそは一太刀、届かせてみせる」

「あたしのグラーフアイゼンも、今度は踏み台になんてさせないぜ」

 

シグナムとヴィータは、リベンジに燃えている。

やる気があって結構な事だ。

 

「あたし達は、避けるので精一杯でした……あはは……」

「いや、おかしくないですか!?デバイスも使わないで、なんであの数の砲撃を制御出来るんですか!最後にはブレイカーまで撃ってたし!理不尽だぁ……」

 

スバルは茫然自失してるっぽい。

ティアナはヤケになったのか、俺の理不尽さに対してプリプリと怒っている。

 

「これが、地上の影のエース……戦闘力は確実にオーバーSと言われてるリムルさんの実力……」

「うぅ、なにもできませんでしたぁ〜……」

「きゅくるー……」

 

年少組とフリードは呆然としたり、無力さを嘆いていたり。

そんなこんなで、今回の模擬戦は終了したのであった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

Side:リムル

 

 

「そういえばさ。フェイトにちょっと聞きたい事があるんだよ」

「はい、あの……どうしました?」

「うーん……もしかしてなんだけどさ。フェイトのミドルネームのTってテスタロッサだったりしない?」

「え?……あ、はい。その通りです」

 

なるほど。

名前を聞いて得心がいった。

そりゃ似る訳だよな。

良い土産話が出来て口元がニヤけるのを自覚しつつ、俺はフェイトの耳元に近づいて言葉を紡いだ。

 

「そっか……プレシアとアリシアは、今は元気でやってるぜ?」

「え……?」

 

フェイトが呆けた顔をし、なのはとはやてがピクッと反応したのに対し、俺はさっと身を翻した。

 

「じゃ、またな!機動六課の諸君!」

「ちょっ……リム姉!?」

「リムルお姉ちゃん!?」

「スバルとティアナも元気でな!」

 

スバルとティアナが呼びかけてくるが構わず《異世界への門(ディファレントゲート)》を開く。

機動六課の面々が驚いた顔をしているが、この際無視だ。

 

「待ってください____!」

 

フェイトが焦ったように叫ぶ。

だが、いきなり会わせても、おそらくプレシアは心の整理ができないだろう。

会わせられるまでには、もう少し時間が必要だと俺は判断した。

 

「悪いな、フェイト。今はまだ、会わせられる時期じゃないんだ。今度ウチの国に招待するから、その時にでも会って話をしてやってくれ」

 

最後にそう言い残し、魔法陣の光が強くなるのと共に俺はこの世界を後にした。

 

「えっ?えっ?リムルさん、あんた一体何者なんやーーー!?」

 

俺が居なくなったその場には、はやての本気の叫びが響いていた____

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

それから暫くの間、フェイトを中心としてリムルの捜索が行われたが、成果は出なかった。

第97管理外世界《地球》出身との情報から、現地の協力者、アリサ・バニングスと月村すずかの協力の元、捜索しても結果は出ず。

結局、リムルの地球出身という話は嘘だったんじゃないかという結論になって、捜索は終了したのであった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

From:《魔国連邦(テンペスト)》、迷宮(ダンジョン)内、研究所

 

 

「クフフフフ。おかえりなさいませ、リムル様」

「おう、ディアブロ。出迎えご苦労さん」

 

優雅に目の前の執事が一礼する。

こいつはディアブロ。

俺の配下の中でトップクラスの実力を持つ、悪魔だ。

 

「プレシアはいるか?」

「プレシア殿でしたら、いつもの場所にて作業中でございます」

「そっか。あんがと」

「クフフフフ。もったいなきお言葉です」

 

いつもの場所っていうと、魔導具開発の研究所だな。

プレシアにはそこで魔石に代わる高密度エネルギー体の開発研究を行ってもらっている。

本人が言うには、迷宮(ダンジョン)内は特段に魔素濃度が高く、また竜種であるヴェルドラの協力も得られるので、案外さしたる時間もかけずに開発は成功するであろうとの事。

話が少し逸れてしまったが、今日はそんな活躍をしているプレシアに話があるのだ。

お、プレシア発見。

 

「よっす、プレシア。今ちょっと時間いいか?」

「あっ、リムル陛下!はい、今でしたら大丈夫です」

 

そう言って微笑むプレシア。

30代と言っても信じられそうな見た目の彼女は、実は60代だったりする。

最初に会った時と比べて、随分と若返ったモノだ。

俺は病気に蝕まれてた身体を治してフルポーションを飲ませただけなのだが……

今ではお肌ツヤツヤ、シワもほとんど見えない、若奥様状態になっていた。

何があってそうなったのかは不明だが、女性とは不思議なものだなぁとしみじみ思う。

おっと、また話が逸れた。

さて、本題に入るとしようか。

 

「ミッドチルダでフェイトに会ったよ」

「!……それで、あの子はどうしてましたか……?」

 

プレシアの声が震える。

 

「幸せそうにしてた。今では大切な家族がいるって」

「……そう、ですか。……よかった……」

 

おそらくだが、プレシアはフェイトに対して負い目を感じている。

過去の記録を見た限りだと虐待のような事もしてたみたいだし、仕方ないだろうが……

それでも、切り込む事にした。

 

「俺はそのうち、フェイト達をこの国へ招待しようかと思ってる」

「!!……そ、それは……」

「悪いけど、これは決定事項だ。その上で、プレシアに聞くぞ。お前はあの子に会う気はあるか?」

 

プレシアは押し黙ってしまった。

本人に会って謝りたい気持ちと、そんな事をしてもただの自己満足なんじゃないかという気持ちがせめぎ合っているように見える。

 

「申し訳ありません、陛下……少し、考えさせてください……」

 

か細く、頼りない声で、彼女が返事をした。

俺はそれに頷くと、軽くプレシアの肩に手を置く。

 

「うん、じっくり考えてくれ。ま、俺の予想だと、会ってもそんなに悪い事にはならないと思うよ?気楽に考えてこうぜ」

「フフ……陛下の仰る事なら、本当にそうなりそうですわね。……ありがとうございます、リムル陛下」

「おう」

 

俺はニシシと笑って、その場を後にした。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「あー!リムル、今までどこ行ってたのよさ!」

「そうだぞ、リムルよ。折角我らで”デバイス”とやらを作ってみたのに、見せびらかす事ができないではないか!」

 

プレシアの研究所を出ると、早速やかましいのに捕まった。

妖精王女で俺と同じ魔王のラミリスと、竜種で俺の友達のヴェルドラだ。

というか、気になる単語が聞こえたような……

 

「ん?デバイス作ったって……マジで?」

「クアハハハ!驚くがいい、リムルよ!」

「アタシと師匠の技術の真髄を!」

「「セーット・アーップ!!」」

 

カッと二人が光に包まれる。

これは____!

なんと、目の前には服装の変わった二人がいた。

ヴェルドラは黒騎士然とした格好になり、ラミリスは魔法少女っぽいようなファンシーな格好になった(元々ファンシーな感じだけど)。

その服装の効果は、耐衝撃、対魔法と、立派な防護服になっていた。

 

「おお、バリアジャケットを再現したのか!それで、デバイスには他にどんな魔法を登録してるんだ?」

「クアハハハ、もちろん用意してあるとも」

「見ててよね!ミラージュハイド!」

 

言葉と共に、ラミリスの姿が消える。

 

「クアハハハ!ラウンドシールド!」

 

ヴェルドラが目の前に光の盾を出す。

解析してみたが、驚くことに本当にデバイスが全て自動で処理を行っているらしい。

この仕組みは……

 

「なるほど。刻印魔法を使ってるんだな。薄い魔鋼のプレートに刻印して、複数枚をデバイスの中に入れてるのか」

「もう見破るか。流石だな、リムルよ」

「まあ、これくらいのサイズのデバイスだと、5枚くらい入れるのが精々なんだけどね」

 

ふむふむ。

プログラミング言語といった高度な文明の無い中では及第点といった所か。

 

「今後の課題は、魔鋼プレートの小型化と刻印魔法の自由な書き換えって所かな?」

「うむ。しかし……自由度で言ったらやはりリムルの真言変換魔法(アナグラムマジック)の方がやはり高い」

「そうなんだよねー。真言変換魔法(アナグラムマジック)は発動までにイメージしなきゃいけないから、速さで言ったらデバイスなんだけど、デバイスは魔法の数を増やしたい場合どうしても大型のを作る必要があるのよね」

 

そう……今の課題は正にそこなのだ。

 

「となると、今後は刻印魔法の書き方も変えていく必要があるな。たとえば、魔法を立体的に刻印して、その中に複数の魔法を持たせたりしたらどうだ?」

「なるほど!それで魔力を通す場所によっては使える魔法が変わったり____」

「クアハハハ!その仕組みであれば我にもわかるぞ!後は魔鋼をそのように加工する技術が必要だな____」

「ふむ。それだったら、こんなやり方はどうだ____?」

 

などなど……どんどん議論を進めていく。

議論の途中でシュナに捕まって仕事に向かったりもするが、まあ概ねいつもどおりだ。

こうして、《魔国連邦(テンペスト)》での日々も過ぎていく。

向こう(ミッドチルダ)の連中ともそんなに時間をかけずに再会するだろう。

フェイトには悪い事をしたが、もう少し待ってほしいと思う。

俺だって、懐いてくれる子供達にまた会いたいしな。

 

「ま。また今度って事で____またな」

 




これにてストックが無くなりましたので、毎日更新は一旦終了となります。
これからも書き上がり次第随時更新していく予定ですので、よろしくお願いします。

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