更新はあいも変わらず不定期ですが、楽しんで下さると幸いです。
がたんがたんと荷台が揺れる。帝都へと向かう馬車の上には三人の人間がいた。内二人は帝都へ商品を運ぶ商人であり、交代をしながら馬を操りゆったりと帝都へ馬車を進ませている。そして残りの一人は荷台の端の方で顔に羽根付き帽を乗せてスヤスヤと心地好さそうな寝息を立てていた。
「お客さん! あと半日程で帝都に着くよ。俺らはここらでメシにするがあんたも一緒にどうだい?」
商人達が快活な声でそう訊ねると先程まで寝息を立てていた人物はすぐに身体を起こし、商人達の誘いに食いついた。
「それはいいですね。ありがたく同伴させていただきます」
そうして既に停車した馬車の荷台から姿を表したのはとても顔の整った美人であった。金糸のような髪をショートカットに整え、大きく切れ長の目の中には宝石のような蒼い瞳が輝いており、美少年とも美少女とも取れる両性から人気が出そうな中性的な顔立ちである。ただノースリーブのシャツの胸元は大きく豊かな膨らみがあり、その人物の性別を物語っていた。
服装はホットパンツにヘソが見えているノースリーブシャツ、黒いマントに黒い羽根付き帽、腰にはレイピアを吊り首には小さな鐘のついたチョーカーを身に付け、皮のロングブーツを履いている。そんな誰もが見惚れそうな彼女は馬車から飛び降り、食事に誘ってくれた商人達へと向かっていった。
「全くこんな別嬪さんと一緒にメシを食えるなんざ一昨日までは夢にも思わなかったな。どうだウチのせがれの嫁に来ねえか? せがれも嫁も大歓迎だと思うぞ」
商人から受け取った軽食を頂きながら、笑ってやんわりと断る。
「あはは、お気持ちはありがたいですが遠慮しておきます。ボクみたいな可愛げのない女よりも息子さんに見合った可愛い女性は沢山いると思いますよ」
「いやいや、ガーランドさんのような綺麗な女の子なんて今まで会ったことがないぜ。お前もそう思うだろ?」
「ああ、間違いなく人生で一番の美人さんだ。もう少し若けりゃ今の嫁じゃなくあんたに結婚を申し込んでたよ。いやぁ残念残念!」
そしてゲラゲラと笑う商人を見て楽しそうにクスクスとガーランドと呼ばれた少女は笑う。
「でもまさかこんな綺麗な子に命を助けられるとは思わなかったよ。」
「ああ、まさかこの道で危険種が出るなんて今までなかったからな。あんなに強いなんて思わなかったぜ!」
ガーランドがこの馬車に乗るきっかけとなったのは危険種が馬車を襲っていたからであった。通りすがった縁だからと危険種を倒して助けると、ぜひ護衛として雇わせてくれと頼まれた次第である。目的地も同じ帝都であり、初めて行くため道も自信がなく報酬も中々良かったので快く引き受け、現在に至る。
「そういえばガーランドさんは帝都へはどういった目的なんだい? 一旗上げようってのならやめておいた方がいい」
「ああ……あそこは魔境だからな……。初めて行った奴には煌びやかな世界に見えるが、命が惜しかったら長居しない方がいい……」
そんな商人二人の態度の変わり方にどういうことだと思いつつ、自分が向かう目的を述べる。
「帝都には人に会いに行くんです。ボクの母様の古い知り合いで、一度会っておきたいと前々から思っていたんです」
「そうか、くれぐれも注意しておいてくれ。昨日今日の出会いだが、顔見知りが亡くなるのは辛いからな」
暗い話もこれでおしまいといった様子で話題を変え、そこからは楽しそうに談笑しながら食事を再開したのであった。
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「ここが帝都か……凄いなぁ……」
ガーランドが帝都に着いたのは昼を少し過ぎた頃であった。一緒にここまで来た商人と別れた後、街の中は人、人、人で溢れかえっておりその活気のよさがガーランドを圧倒していた。
「まずは宿に向かうかな。母様の親戚が宿をやってるって言ってたけどどこにあるんだろ?」
辺りをキョロキョロするが、とても街が広く建物が多過ぎるため今どこにいるのかすらも分からなくなってしまっていた。
屯所を探そうにも何処へ向かえば良いのかわからず、帝都を警備する兵隊も近くには見当たらない。さてどうしたものかと考えていると近くから弱々しい声が聞こえた。
「お腹……空いた……」
そこには長い艶やかな黒髪の少女がお腹を鳴らしながらトボトボと歩いていた。おそらく自分と同じ最近外から来た者なのであろう。そういった親しみやすい余所者オーラを醸し出していた。
「キミ、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」
帝都に来て、彼女はおそらく一日は過ごしているだろう。一日もいれば少しは道に詳しいかもしれない。そんなことを思いながら話かけるも、反応は冷たいものであった。
「……何? 私から巻き上げられるお金なんてもう少しもないわよ」
そんな事を言いながら此方を恨めしそうに見てくる。たかりと思われてしまったようだ。
「そんなんじゃないよ。キミ、帝都の外から来た娘でしょ? ボクもさっき来たばかりなんだ。同じ田舎者同士仲良くしない? 良かったら少し遅いお昼を奢るよ」
最初はこちらを猜疑心でいっぱいの目で睨んでいたが、空腹には勝てず小さい声で「お願いします」と呟いた。
場所を料理屋に移したガーランドは目の前の少女の食べる勢いを楽しそうに見ていた。嬉しそうに食べる姿はとても可愛らしかったからである。……決して会計の事を頭から追いやろうとしたからではない。
此方の視線に気付いたのか少女は一旦食べるのをやめ、少々不安そうに聞いてきた。
「本当に良かったんですか? 私お金も全部騙されて持っていかれちゃったし、何も返せる物はないですよ」
「ああ、その事は心配しなくていいよ。お互い初めての帝都なんだ。郊外出身のよしみでの助けと思ってくれたら嬉しいな」
「でも、何も返せないのは……」
「そうだなぁ……よし! 今回の食事代は出世払いで返してくれればそれでいいよ。これでどうだい? サヨさん」
サヨと呼ばれた少女は少し考える仕草を見せていたが、踏ん切りが付いたのか彼女の普段のものであろう性格へと変わった。
「分かりました。絶対に将軍になって今日の恩を返しに行きます。それと敬語なしで話してもいいですか? どうも慣れなくて……」
「全然構わないよ。お互い歳も近いだろうし、友達と話す感覚で接してくれると嬉しいな」
「ありがとう。それじゃこれからよろしくね、ガーランド」
「ああ、こちらこそよろしく頼むよ、サヨ」
そして少女達はお互い笑顔で握手を交わしあった。
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「へえ、それじゃあ幼馴染三人組で帝都目指してやって来てたんだ。いいなぁ、ボクもそういう幼馴染欲しかったな」
食事も落ち着いたのか食べるのはやめ、お互い身の上話に花を咲かせていた。
「でもあの二人とは野盗の襲撃で離れ離れになっちゃったの。はあ、タツミは兎も角としてイエヤスが心配だわ。あいつ方向音痴だもの。ここまで来れるのかしら?」
「あはは、二人の事をとても信頼してるんだね」
そんなガーランドの言葉にサヨは当たり前だと言わんばかりの顔をする。
「当然よ。あの二人が野盗や危険種ごときに負けるはずがないわ。なんたって私の次に強い二人なんだから」
そんなサヨの顔は心なしか赤かった。それに気付いたガーランドは少し意地悪な笑みを浮かべ、訊ねる。
「それでタツミ君とイエヤス君、どっちがキミの恋人なんだい? もしかして両方かな」
その言葉を聞いた瞬間、サヨの顔は見て分かるくらいに真っ赤になった。とても可愛らしいものである。
「な、な、何言ってんのよ! どっちも恋人なんかじゃないわ! ただの幼馴染よ! それ以上でもそれ以下でもないわ!」
「でも気になってはいるんでしょ? この際正直に気持ちを吐いちゃいなよ」
ニコニコとするガーランドに怒ろうにも怒れず、ぐぬぬと唸りながらも諦めたのか、頰を赤らめながら小さな声で呟いた。
「最近……その……タツミがカッコいいなって思うようになって来てる」
その顔は恋する乙女のものであった。自分だけ恥ずかしい思いをするのは嫌らしく、ガーランドにも同じような質問をする。
「私ばっかり聞かれるのは不公平よ! あなたにもいるでしょ、気になってる人とか。聞かせてよ」
「残念な事に同年代の男の子は近くにいなかったんだ。昔は母様の用事で遠くに行った時なんかは仲の良かった男の子もいたけど、それっきりあっていないからね。だから気になってる子はいないかな」
それを聞いて少し残念そうにするものの、彼女が帝都へ来た理由を思い出し、にやけ始めた。
「ここには人に会いに来たって言ってたけど、もしかするとその仲の良かった彼に会いに来たんじゃないの」
そんな勘ぐりをするサヨを見て楽しそうに微笑み、それを否定した。
「あはは残念。その彼とはそれっきり連絡も取り合えていないからね。今もどこにいるかすらも知らないんだ」
ふと外を見るとだいぶ日が傾いていた。そろそろお開きにして教えてもらった警備隊屯所に向かった方がよさそうである。
「っと、そろそろボクは屯所に行って宿への道を教えて貰いに行こうかな。サヨちゃんはこれからどうするつもり?」
その言葉にサヨはバツの悪そうな顔をする。それもそうであろう。一文無しなのだから。
それを見たガーランドは少し意地悪な質問だったなと思い、少しの助けとばかしに硬化の入った小さな袋を手渡す。
「え? これは?」
「今日の分の宿代だよ。意地悪な質問をしたお詫びさ。これもキミが将軍になった時に返してくれればいいよ」
食事も奢ってもらった上に宿代も出されるとサヨもかなり申し訳ない気持ちになる。しかし、これを断るのも好意を無碍にしているように感じるため、感謝の気持ちを述べながら受け取った。
「あはは、困った時はお互い様さ。明日からはどこかでバイトをしながら軍へ入る方法を探すといいよ」
そう言って席から立ち店主を呼んで代金を払う。それに伴ってサヨも席から腰を上げた。
「今日の恩は忘れないわ。絶対にいつか返すからそれまではどこかに行かないでね」
「フフ、その時を楽しみにしているよ。しばらくは帝都にいるつもりだからその間に返してくれたら嬉しいな」
そしてお互い熱い握手を交わし、別れた。
「親切な言葉を口にする人にはくれぐれも気を付けてね〜。ボクが言えたたちではないけど」
ガーランドの最後の言葉にも手を大きく振って返事をして遠くへと姿を消した。それを見送ったガーランドは日が沈む中、道に詳しいであろう警備隊の屯所へと向かっていった。
余談であるが、美少女二人が店から出るとすぐに、賑わっていたお店の客の半分以上が店から出ていったのは、本人達は知らない。
現時点ではイエヤスもタツミもまだ帝都には到着していません。
果たしてガーランドが会いたいと思っている人物とは一体!?(タイトルから目を逸らしながら)
因みにガーランドは英国や独国では女性名としても使われます。日本語では『花冠』を指し、その花冠に含まれる意味には『成功』『勝利』などがあるのです。
決してFFから持ってきた訳じゃ無いですよ……(ボソッ