大将軍のルピナス   作:うどんこ

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俺のターンはまだ終わってないぜ!
という訳で3日連続投稿です。明日も投稿されるのかって?
それは作者にも分からぬのじゃ……
今回主人公出てきてねぇ……むさいおっさん二人しか出てきてねぇ……


第3話 オネストの部下が一晩でやってくれました(嘘)

 

──ブドー大将軍宛ての手紙が届いた。その知らせを聞くや否や、オネストはすぐさま宮内へとその関係者を呼びよせた。

 オネストの私室にはこの部屋の主である身体の至る所に贅肉を蓄え、悪意を孕んだ顔の男と、この知らせを届けた男、オーガの二人が集まっている。実際には天井裏にはオネストお抱えの私兵、羅刹四鬼が居り、合図一つでオーガの首が飛ぶのだがそんな事を本人は夢にも思っていない。

 

「それで、これが貴方の報告にあった例の手紙ですか」

 

 オネストの問いかけに首を縦に振って答える。それを確認したオネストは手紙を手に取ると、封を開けることもなくただじっと封蝋の印を見つめていた。

 

「……はて? この家紋、どこかで見た事あるような気もしますが覚えてないですね」

 

 どうやら封蝋に付けられた家紋で差出人を確認しようとしたようだ。しかし確認したものは記憶に残っていないものであった。これだけでもオネストにとってはかなりの収穫である。こういった家紋は有力者のものは全て熟知していると自負していた。覚えがないという事は、余程注意する必要もない弱小貴族か、もしくは今はもう使われていない()()()()()()のもののどちらかであるはずだ。前者とは考えにくいためほぼ確実に後者である筈である。

 

「中身は確認しなくても良いんですかい?」

 

 考え事の途中に無粋な声が邪魔をする。凍り付くような視線を送ってやるとすぐに口を塞いでくれた。もし、それでも馬鹿みたいに口を開いていたら、思わず合図を送ってしまう所であった。

 

「ムフフ、良い事を教えてあげましょう。私クラスにもなるとこの封蝋一つで手紙の中身が大体予想出来るのですよ。今回のこの手紙、おそらく私が知らなくても全く問題のなかった内容の代物でしょう」

 

 その言葉を聞いてオーガは青ざめる。オネストに無駄な時間を取らせたのだ。下手をしなくても首が飛ぶかもしれないのだ。

 そんなオーガを見てオネストは、相手を安心させる為に優しく語りかける。

 

「いえいえ、貴方を別に責めている訳ではないのですよ。むしろ感謝しているくらいです。私が貴方の立場であれば絶対にここへは届けなかったでしょうから……」

 

 皮肉を言っているオネストにオーガは許しを乞いたかった。これは確実に怒っている。そう思わせるような言動に思えたのだ。

 

「この手紙を持って来たのは外から来た若い娘だったんですよね? しかも手紙を確実に届けてくれるか分からない所に手渡しと来た。今の帝都の現状を少しでも知っている者であれば間違いなく犯さないし犯させないミスです。そんな者が今の帝都の状況を憂いて、何か協力を仰ごうしていると思っているのですか?」

 

 ウンウンと首を振りながら、その場で小さな円を描くように歩き回る。

 

「つまり、何を言いたいのかはですね……」

 

 オネストの冷たい視線がオーガを貫く。オーガはもう既に生きた心地がしなかった。頭の中はこの手紙を持って来た一人の娘への罵詈雑言の嵐であったが。

 

「貴方はたかが世間話程度の内容しか書かれていない手紙を、私の貴重な時間を割いてまで持って来たという事ですよ」

 

 オネストの耳元でのその言葉は、オーガの呼吸を止めるのには十分な重さがあった。

 

 

 

 

「……ただ、受け取り人はブドー将軍。書かれている内容は普通ではないでしょうがね」

 

 オーガは急変したオネストの態度に付いて行けず口をポカンと開けて呆けていた。それもそうであろう。先程まで身の毛のよだつ静かな怒りを見せていたのに、今は悪戯が成功した時の狸のような表情で笑っているからである。

 

「だから言ったでしょう? 貴方には感謝していると。たとえこちらに害が全く無いとはいっても、益もないとは言っていないでしょう? こういったものは案外途轍もない情報を持っていたりするものなのですよ」

 

 そう口にするとようやく鋏を取り出し、封蝋を崩さないよう封筒を開封し始めた。

 

「今はなき旧家の家紋、帝都に対する知識の希薄さ、そしてブドー将軍と親密な関係の持ち主……一人だけ心当たりがあるのですよ。いずれ他者に蹴落とされると確信していた為、ほとんど注意しておらずあまり詳しくは調べなかったのですがね。あのブドー大将軍がまだまだ若い頃、執心していた年の少し離れたとある武官の愛娘が。それが帝都から追放されてから今になって連絡を寄越して来た。しかも若い女に手紙を持たせて。さて、手紙を持って来た彼女、一体ブドー将軍とはどういった関係なのでしょうねぇ……」

 

 封筒を開けそこから手紙を取り出す。そこに書かれていた内容は──

 

「貴方がいなければ知ることが出来ませんでしたね。大手柄ですよ、オーガ帝都警備隊隊長。さて、謝礼は幾らあれば足りますかね?」

 

 

────────

 

 

 手紙を一通り読んだオネストはこれからどうするかを考えていた。ブドーが()にどういった対応を取るかで計画は変わるからだ。

 そんな考えに更けているオネストへまたしてもオーガが口を開いてしまっていた。

 

「その手紙は結局どうするんですかい?」

 

 二回目ではあったが、機嫌の良いオネストは特に気分を害する事なくその疑問への答えを教えてくれた。

 

「もちろんブドー将軍には届けるつもりです。彼にはこの手紙を読んで頂かないと困るんですよ。そうしないと今考えにある計画を実現できませんからね」

「え? このまま渡すんですか?」

 

 既に封は開けてしまっている。このまま渡すなど既に中身は読んだと伝えるのと同義である。そのような真似をして大丈夫なのであろうか。

 

「これを読むまでは封筒も封蝋も偽造して、開封してない風を装おうかとも思いましたがやめました。このまま本人に手渡します。ただ、本文はほんの少しだけ変えさせて頂きますけどね」

 

 手間を加えるなら未開封を装えるよう全て偽造した方が良いのではないのだろうか。そんな考えが顔に出ていたのか、オネストはこちらを見て溜息を吐いてきた。

 

「ブドー将軍には私が中身を見ている事を知っていてもらう為です。本文の偽造を疑われるやも知れませんが、一部分以外はそのままにするつもりなのでそれ程心配要らないでしょう」

 

 そして楽しそうに机の上に置いた手紙に目をやる。

 

「それにしてもこれを書かれたご婦人はかなり快活なお方のようですね。もし今も帝都に居られたのならば、あのブドー大将軍が尻に敷かれていたかも知れません」

 

 そしてオーガへと視線を移す。

 

「さて、今回の事は他言無用ですよ。知られて困る人物はブドー将軍とその娘さんだけですが、それでもどこから伝わるか分かりませんからね。くれぐれも気を付けてくださいね」

 

 そして礼金を送る事を約束し、オーガをオネストの部屋から帰らせた。そして天井へ向かって声をかける。

 

「さあ貴方たちに任務です。筆跡を真似出来る方を連れて来てください。そしてブドー将軍の娘の観察をお願いします。それと観察だけですのでくれぐれも手を出さないで下さいね。これは3日程で十分です。どのような人物か知られればいいですから」

 

 そして天井から人の気配が二つ消えた。行動を開始したようである。そしてオネストは、再び手紙へと目線を向けると、歪んだ笑みを浮かべた。

 

「さて、この方はブドー将軍に娘と親子の会話を楽しんで欲しかったみたいですね。娘さんも父に迷惑が掛からぬよう自身が実子だと名乗らないだろうとの事ですし、そうならない為の配慮だったんでしょうねぇ……」

 

 そして視線を移す。ブドーの居住がある方向へと。

 

「しかし残念でしたね。貴方の思惑通りには事は進ませません。ブドー将軍には娘が『誰が父親かを伝えていない』と伝えておきますから。あの真面目な大将軍の事です。自分が父親だと間違っても娘には伝えられないでしょうね。

 そんなお互いがすれ違っている時に娘さんを私の手元に置いたら、一体どんな愉快な事になるのでしょうか。今から楽しみでたまりません」

 

 人の形をした悪魔は、ただ一点、ブドーが今いるであろう方向をずっと見つめていた。




○母の理想

ガーランド→ブドーは自分の事を知らない、伝えると迷惑だろうから言えない。

ブドー→実の娘がいる事を知った。娘も自身が父という事を知っており、一度でもいいから会いたがっていた事を知った。

結論:ファザコン、親バカの誕生

○オネストの思惑

ガーランド→ブドーは自分の事を知らない、伝えると迷惑だろうから言えない。

ブドー→実の娘がいる事を知った。娘は父が誰かを知らないらしい。正体を伝えると混乱するかもしれないし、拒絶されるかもしれないから言えない。

結論:すれ違い通信する鈍感親子の完成

今回の話の流れのダイジェスト版です。え? 分かりにくい? …………

因みにガーランドの母にもちゃんと名前あります。
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