ここはある組織の拠点の一つ。そこに彼、ビルクは窓から見える景色を何も考えず、ただぼーっと見つめていた。
「今日もこちらにいたのですか?」
ビルクに話しかけたのは、メイド服を着た女性だった。
「……クルーガーですか、どうしたんだい?君がここにいるなんて珍しいですね」
「今日は死線として例の計画のお手伝いに来たのです」
「ああ、福音計画で。それは大変そうですね」
「ふふ、そんなことありませんわ。ビレク様は何もなさらないのですか?」
「俺がなにかしたことがあったかい?」
「ありませんわね?私が入ってから一度も。……ビレク様は一体どのような立場なのですか?誰に聞いてもわからないのですが」
ビレクのことを知るものはいない。誰もが入った時からいることは知っているが彼が結社でどのような立場なのかは知らない。そしてその容姿も謎だ。ナチュラルブロンドの髪に藍色の瞳、灰色の騎士服の上に黒いコートを着ている。別にその姿がおかしいわけではない。何十年も前から変わっていないのがおかしいのだ。彼は変わらず二十代後半の年齢に見える。その不気味さもあって彼に話しかける者は少ない。それこそ蛇の使徒や執行者といった結社でも上の者しか話しかけない。
「ふふ、だろうね。蛇の使徒、執行者、雑用、盟主様。いろいろ言われましたね。どれか正解かもしれないし、違うのかもしれない」
「私には教えてくださらないのですか?」
「君かい?君は駄目だよ。今の君は結社のクルーガーだけじゃないしね。俺のことはあまり広めたくないんだ」
「そうですか。……なら、私が結社の存在だけになったら教えてくださるのですか?」
「それはどうかな?そんなこと言ったら蛇の使徒や執行者の人達が知らないのはおかしいじゃないか。彼らが嫌いでクルーガーのことが好きならありえなくはないが」
「あら?ビレク様は私のことがお嫌いなのですか?」
「君のことは別に嫌いじゃないよ。他の人達にしてもそうさ。……けど、僕はどうしても人間という種を好きになれない」
「なぜですか?」
「ふふ、そこから先は教えられないな。いずれは教えるかもしれないが、今はその時期ではない」
「それはいつですか?」
「そうだな……世界の始まりの時、かな?」
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クルーガーが去った後、僕はまた外を眺めた。
「いや~随分と今日は機嫌がいいね♪」
ピンクのスーツを着た少年がどこからともなく現れた。
「カンパネルラ、覗くのは止めろといつも言っているだろ?」
「はは、ごめんごめん」
カンパネルラはなんとも思ってないように笑った。
「お前は変わらないな、昔から」
「ビルクも変わらないよ。相変わらず僕を子供扱いする。……君は今も後悔してるのかい?」
カンパネルラは少し悲しそうにして聞いた。
「……お前はしないのか?あの頃はなにもかもが美しかった。人も世界も」
「……してるさ。だからこそ僕らは…」
「……そうだな」
「もうすぐだよ。ビレク……」
「ああ、もうすぐだ……」
さて彼は一体何者なんでしょう?
次回更新は遅くても来週の火曜にはします。
ではでは~