ハッカーズメモリー THE Revenge of girl   作:ハナバーナ

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EP0.5 差し伸べられる手

「な、なんだよお前!!」

 

売人の男は、突然戦いを止めに入った長身の青年に文句を吐く。青年はしりもちをついていたレイラに近づくと制服の襟をつかんで起こす。

 

「……デジモン・キャプチャー、持ってねえのか?」

 

「は、はい…‥‥なんか、すいません。」

 

自分には謝るべきことなどないはずなのだが、なぜか初対面の青年にレイラは謝ってしまう。青年はふっと笑うと、自分のデジヴァイスのコンソールを操作する。するとレイラのデジヴァイスに、何かのデータが送られてきた。

 

「デジモン・キャプチャーだ、やるよ。それがないと始まらねえからな。」

 

「…‥どうも。」

 

こうもあっさりとデジモン・キャプチャーを手に入れられたことや、見ず知らずの自分にデジモン・キャプチャーをくれた青年に、レイラは放心する。一方で青年は売人の方を向く。

 

「‥‥騒がせちまって悪かったな。こいつは連れてくぞ。」

 

「おい待てよ! いきなりあらわれるなり邪魔しやがって! お前一体どこの-----」

 

「よせって!!」

 

レイラを引っ張りこの場を後にしようとする青年を、売人は追いかけようとする。しかしそれを、売人の仲間が止める。

 

「やめたほうがいい、あいつは……『御島龍司』だ。」

 

「み、御島!? 御島ってあの……!」

 

売人は青年‥‥龍司の名を聞いた瞬間、顔を青くするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クーロンの出入り口付近まできた龍司とレイラ。レイラは色々あったからなのか疲れ、ぐったりとへたり込む。

 

「大丈夫?」

 

そんなレイラの元へ駆け寄ってきたのは、レイラが闇マーケットで買った三体のデジモンだった。

 

「‥‥そいつらはお前に懐いてるみてえだな。使ってやれよ、これも何かの縁だ。」

 

「はあ…‥。」

 

とりあえず、気に入られたことを理解したレイラは、三体のデジモンの頭を優しくたたいてやる。

 

「…‥それで、なんでお前はデジモンも持たずにあんな所にいやがったんだ?」

 

龍司にそう言われたレイラは一瞬顔を下に向けるが、すぐに顔を上げて立ち上がり、龍司に事の経緯を説明する。それを聞いた龍司は腕を組みながら考えるようなしぐさをする。

 

「…‥なるほどな。それでお前は、てめえのアカウントを狩ったハッカー、志賀ヨウジを追って、

 あんなところに来ていたわけか?」

 

「簡単に言うと、そうです。」

 

「無謀だな。」

 

龍司の現実的な答えは、今のレイラの心にグサッと突き刺さる。

 

「EDENは、世界でも最先端の技術力で作られた仮想空間なんだぞ。つまり、志賀ヨウジは

 凄腕のハッカーなんだ。」

 

「う、ううん……。」

 

「お前が追っている相手は、トップクラスの技術者すら欺く国際レベルのサイバーテロの

 犯罪者ってことだよ。カタギのガキが一人でどうこうできる相手じゃねえ。」

 

龍司に正論を言われ続け、レイラはガクッと肩を落とす。心なしか、電脳空間だというのにレイラの口から生気が抜けていく様が龍司には浮かんでしまう。

 

「それがわかったら、もう諦めるんだな。…‥普通の生活に戻れ。」

 

そう言って龍司は立ち去ろうとするが、龍司の言葉にレイラの体がビクンと震えたことに、当人は気づかなかった。

 

「…‥それは嫌です。」

 

「‥‥なに?」

 

「あたっあたしは、普通の生活を取り戻したいからここにいるんです。貴方は、親切で言っている

 のかもしれませんけど、ここであきらめたら、あたしは、濡れ衣を着せられて、後ろ指を指され

 続ける人生を送らないといけなくなるんです‥‥! だからあたし、戦いますよ! やめろなんて

 言われても、今あるつまらない誇りを懸けて、自分のアカウントを取り戻します…‥!」

 

レイラは恐怖で全身を震わせながらも、決意のこもった瞳で言い切る。龍司はそんなレイラを見て、頭をポリポリと掻く。

 

「めんどうなガキだな。だが‥‥悪くねえ。」

 

「え…っ?」

 

「実を言うとな、志賀ヨウジは俺の獲物でもあるんだ。俺は便利屋でな、あるスジから、

 奴の調査を依頼されている。このEDENのハッカーは、志賀のようなクズばかりじゃあ

 ねえってことさ。俺達も、俺達の依頼人もな。」

 

「‥‥そうなんですか?」

 

説明を受けてレイラは、体の震えが止まり、キョトンと首をかしげる。切り替えが早いなと龍司は思い、同時にこんな考えも浮かんだ。

 

「お前‥‥俺と一緒に来るか?」

 

「!?」

 

「ウチに入れてやってもいい‥‥もちろん、実力は見せてもらうがな。」

 

「でも‥‥あなた方もその…ハッカー、なんですよね?」

 

「ああ、だからよく考えろ。俺と一緒に来るってことはお前もハッカーになるって事だ。

 てめえの面に唾吐いたやつと同じものに、てめえもならなきゃいけねえ。偉そうに

 言っちゃいるが、ハッカーってのはつまるところ、同じ穴のムジナだ。」

 

「…‥‥。」

 

「だがもしそこまでの覚悟があるってんなら…てめえのメンツをつぶされた借りを、てめえで

 返したいっていうんなら…俺達、ハッカーチーム【フーディエ】が力を貸してやる。」

 

龍司に言われ、レイラは考える。先ほどまで自分は、ハッカーには頼らないと考えた。それになるというのはもっと嫌だった。しかし‥‥

 

「それでも…‥あたしは、自分の証明を取り戻したい…‥!」

 

決意したレイラは自分の伊達メガネを外し地面に叩きつけ、勢いよくそれを踏み潰す。オドオドするだけの自分という殻から抜け出すと主張したいかのように。そんなレイラの鋭い目を見た龍司は、ニッと笑う。

 

「よく言った。」

 

その言葉だけでも、今のレイラを歓迎するには十分だった。レイラに付いていくと決めた三体のデジモンも、ワイワイと騒ぎだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後 あるチャットのコミュニティルーム

 

そこにいるアバターは三体。

悪魔の外見をした【テン・ハンドレッド】

蝶の外見をした【ばたふらい】

おちょぼ口の丸いキャラクター【ama】

 

テ『こんなちゃちいチャットルームをハッキングして集会なんて、クライアントは大げさだな。』

 

a『なんで普通にEDENでやらないんです?』

 

テ『ジコケンジヨクってやつなんじゃない?』

 

ば『ここのセキュリティレベルは低くない。けどデジモンプログラムなら、容易。』

 

テ『それが新世代チーム・ザクソンの方針。連中に言わせりゃオレ達はロートルだ。』

 

a『不満があるなら傘下を下りればいい。ハッカーは自由なんでしょう?』

 

そんな会話をしているうちにチャットに降りてくるアバターが一体。

緑色の体をしたドラゴン型アバター【ドラゴンブック】

 

テ『クライアント様はなんて?』

 

ド『アカウント狩りに関わっているハッカーを始末する。』

 

テ『いいじゃん! 正義の味方のオレ達にぴったりのオシゴト。』

 

ド『…‥‥。』

 

ば『どうしたの、お兄ちゃ…‥リーダー?』

 

ド『この仕事、新人にやらせる。』

 

a『!?』

 

テ『試験ってわけ?』

 

ば『危ないよ、新人には無理、絶対無理。』

 

ド『それは俺達だって同じだ。ハッカーとして生きる以上相応の覚悟が必要だ。』

 

テ『いいこというねえ。』

 

ば『……‥。』

 

ド『サポートはしてやる。やるのか、やんねえのか…‥お前が決めろ。』

 

a『………‥』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  a『やる!!』




これにてプロローグ終了。次回から本格スタートです。
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