ハッカーズメモリー THE Revenge of girl   作:ハナバーナ

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遅れての新年あけおめです。やっと一話を投稿できました。


EP1 路地裏のハッカー達

多くの人々が行きかう池袋。その中を、背にマークの付いた青いコートを着た一人の少女が歩いている。付いているチャックもきっちり締めており、フードをかぶっていてよく顔が見えない小柄な少女は、『フーディエ』という名と、お調子者の蝶のキャラクターが貼ってある看板のあるネットカフェに入る。

 

「いらっしゃいませー……ああ君かー。オーナーから話は聞いてるよ。フーディエのメンバーは

 無料だってさ。」

 

レジの女性店員に言われた少女は一礼した後、ドリンクコーナーのカフェオレを一杯淹れて空いている個室に入る。そしてEDENのログインパスワードを入力すると、カフェオレを一口飲んでふうっと息を吐く。その後パソコンから最終認証の合図が出され、少女は首にかけていたヘッドホンを耳に装着する。直後に来るのは、データの中を駆け巡るような感覚。少女からしてみれば、日常茶飯事の感覚。その感覚が続くのはほんの数秒、一瞬瞬きすれば、自分の意識はデータの世界。少女は今、データで構成された電脳世界に、浮いてるのだ。

 

「……はぁ。」

 

それはまるで落ち込んでいるかのような息の吐き方だったが、少女‥‥天沢レイラの表情は、むしろ安堵に近かったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンダークーロンLv.1

EDENの廃棄エリア、クーロンの一つであるアンダークーロンのLv.1エリアに降り立ったレイラ。直後、端末のデジヴァイスであるヘッドホンのトーク機能に着信が入る。レイラには相手が、予想できていた。

 

「はい、天沢です。」

 

『着いたな。こっちの声は聞こえるか?』

 

「はい、良好ですよ龍司さん。」

 

『よし、千歳はどうだ?』

 

『なんか画像データが乱れてんだよなぁ。龍司、俺の顔見えてる?』

 

千歳と呼ばれた調子の良さそうな声の青年は、龍司に質問する。レイラは映像が乱れているため、よく見えない。

 

『こっちは問題ない。エリカ、お前は?』

 

『見えてるよ、お兄ちゃん。』

 

次に聞こえるのは龍児の妹と思われる少女の声。こちらも映像が乱れており、顔が見えない。

 

『その子とEDENとの画像通信ラインだけ、ノイズが走ってるみたい。デジタルウェイブの

 影響かもしれないけど、音声通信には問題ないよ。』

 

『なら仕事に問題ないな。』

 

『けど場所によっては保証できないし、今回はやめておいた方がいいんじゃない?』

 

『ははっ、お嬢は優しいね~。新人ちゃんが心配?』

 

『そういうんじゃないから…‥。』

 

と、茶化している会話が何やら聞こえるが、いっそのこと表情も見せてほしいなとレイラは思った。

 

『さっきも言ったが、リスクは覚悟の上だ。全員、ターゲットはわかるな。』

 

『バッチリ把握してますよっと。標的の名は【志賀ヨウジ】。チーム無所属のハッカーで、

 アカウント狩りで荒稼ぎしてるって話だろ?』

 

「(志賀ヨウジ…‥!)」

 

自身のアカウントを奪ったと思われる男の名を聞いたレイラは、ギュッと拳を握る。

 

『クライアントはEDENを騒がすハッカーを許さない。志賀への制裁をお望みだ。』

 

「制裁って、どんな?」

 

『見つけたらボコってアカウント壊せって事。同じやつで二度とログインできない…事実上、

 楽園追放ってやつだな。それを正義のハッカー集団である俺達が行う。腕が鳴るねえ。』

 

『…‥私たちは、あくまでサポートだからね。』

 

エリカが一応、千歳にくぎを刺しておく。

 

『レイラ、先ずはクーロンにいるハッカー達から、志賀の情報を集めろ。怪しい奴を見つけたら、

 千歳の作ったマルウェアを仕掛けるんだ。情報を一時的にハックできる。』

 

『情報収集は俺専門ってね!』

 

『いいか、これは試験だ。てめえの覚悟、俺達に見せてみろ。』

 

「…‥了解。」

 

『おっほ、やる気十分!』

 

『お手並み拝見。』

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

さっそく情報を集めるレイラ。意気込んでは見たものの、情報収集である故、動きはそれほど派手ではない。かっこつけにコートのポケットに手を入れ、話しかけるだけである。

 

「志賀? 知らねえよ。」 「最近はしゃいでるチームだっけ?」 「うちのチームはいる?」

 

…‥まあ、それだけで簡単に手に入るなら苦労はしない。クーロンにいるハッカーは少ないわけではないが、全て空振りだった。レイラは軽く落ち込みながら、次に志賀について知っていると思われる目つきの鋭い男に話しかける。

 

「すいません。志賀ヨウジって人のこと、知りませんか?」

 

「‥‥いや、知らねえな。分かったらとっとと消えな。」

 

男に言われ、レイラは一礼してその場を去る。だが‥‥レイラは見逃さなかった。志賀の名を聞き、一瞬だけではあるが動揺していたこと。何より、座っていたのにレイラが去った直後に立ち上がり、歩き出したことを。レイラはデジヴァイスを耳にかけて操作し、千歳からもらったマルウェア(通称ハチドリ)を気づかれないよう、男のデジヴァイスに仕掛ける。

 

「‥‥志賀、俺だ。お前の事を探ってるやつがいる。この伝言を聞いたら連絡をくれ。」

 

距離はあったが、ギリギリで内容を聞いたレイラは目を細める。そして男が見えなくなったのを確認すると、すぐさま龍司に連絡を入れる。

 

『何かわかったか?』

 

「挙動がおかしかった人に、マルウェアを仕掛けました。その人、志賀に連絡してました。」

 

『上出来だ。恐らくそいつは、志賀とつながっている。』

 

『警戒されると厄介だぜ、どうする?』

 

『私がやる。30秒ちょうだい。』

 

エリカがそういうと、ピッピッと何かを操作し始める。レイラは何をしているのかわからないため、首をかしげる。

 

『レイラの仕込んだハチドリちゃんを経由して、志賀の位置情報を割り出してるのさ。

 通信記録から逆探知欠けて、端末情報拾って-----------』

 

『見つけたよ、そのエリアの最奥にいる。』

 

千歳がレイラに説明している途中で、エリカの逆探知が終了する。レイラは呆然とする。

 

「…‥それで30秒って早くないですか?」

 

『すげえだろ? 解析処理に関しちゃ、お嬢は玄人だぜ?』

 

『奴を追いつめるぞ。俺もそっちに向かうから、お前はそこで待機だ。』

 

『んじゃ、俺とお嬢は待機だな、がんばれよ。』

 

一通り話が終わった後、龍司と千歳の画像が消える。しかしエリカの画像だけは消えず、エリカはレイラに話しかける。

 

『‥‥‥別に心配してるわけじゃないけどさ…‥気を抜かないことと、お兄ちゃんの言うこと、

 ちゃんと聞きなよ?』

 

「‥‥‥うん、ありがとう。」

 

『‥‥‥このこと、お兄ちゃんと千歳には内緒だよ? なんか、恥ずかしいから。』

 

そんなエリカの小さな約束に、レイラが返そうとしたその時、空気を読まない声が一つ。

 

『お嬢、俺達まだ通信切ってないんだけど?』

 

『あう‥‥。』

 

『わざわざ言うな馬鹿。』

 

『い、い、いるの分かってたもん!』

 

緊迫した状況とは思えないそんな三人のやり取りに、レイラはクスッと微笑した。

 




次回から戦闘開始です。
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