ハッカーズメモリー THE Revenge of girl   作:ハナバーナ

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EP3 VIPルームの天才

「ここまでくれば安全だな。」

 

志賀を取り込もうとした巨大なアンモナイトから、クーロンの出入り口付近にまで逃げてきた龍司とレイラ。追いかけてこなくなったのを確認した龍司は安心し、レイラは疲れからか、壁にへたり込んでいた。

 

「エリカ、千歳、聞こえるか? …‥くそ、さっきよりデジタルウェイブが乱れてる。」

 

「はあ、はあ……なんなんですか、あれ?」

 

「さあな、デジモンとも、マルウェアともどこか違うようだったが‥‥どうも最近は、クーロンは

 おろか、EDEN全体が騒がしくなってきてるな。面倒ごとにならなきゃいいが。」

 

「…‥‥。」

 

レイラは龍司の言う予感に不安を感じると同時に、アカウントを奪った犯人が志賀じゃなかったことにガッカリし、フードを深くかぶって座り込んでしまう。

 

「たかだか最初の手掛かりがハズレたくらいで、ショゲてんじゃねえよ。奴がハズレなら、

 次の手掛かりを探せばいい。」

 

龍司の言っていることはわかる。しかしレイラにとっては、一世一代の大勝負と言っていいほど命がけだったのだ。それをたかだかで済ませられるほど、レイラという少女は強くなかった。レイラは顔を下に向けるままである。

 

「それとも、もう諦めるか?」

 

「!! それ、は‥‥。」

 

「それもいい。今後は今日みたいな危険が何度も付きまとってくる。やめるのはお前の自由だ。」

 

それに対する返答に、迷いはなかった。折角イメチェンしてまで、ハッカーへの道を選んだのだ。レイラは龍司に誘われた日の決意を思い出し、すぐさま立ち上がって頬をパンパンと叩き首を横に振る。そんなレイラに、龍司は苦笑する。

 

「…‥なら、いつまでもシケたツラするのはやめるんだな。少なくとも、これからお前は

 一人じゃねえ。」

 

「そ、それじゃあ…‥!」

 

「試験は合格だ。ギリギリ及第点ってとこだがな。お前はこれから、俺達フーディエの

 メンバーだ。」

 

『やったな、レイラ!』

 

合格を受けたレイラの表情は明るくなり、デジヴァイスに移しておいたベタモン達も彼女同様喜ぶ。

 

「店に戻るぞ。あいつらが待ってる。」

 

「はい。」

 

龍司の指示を聞いたレイラは、出入り口からログアウトする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネットカフェ・フーディエ

 

「ふう‥‥。」

 

現実世界に精神をもどしたレイラは、デジヴァイスを首にかけ、疲れからか大きく息を吐く。そしてぬるくなっていたカフェオレを飲み干し、席を立ちあがって部屋を出る。横には龍司が、待っていたかのように立っていた。

 

「お疲れさん。千歳を呼んでくるから、先にエリカの部屋で待ってろ。奥のVIPルームだ。」

 

そう言って龍司は、店の出入り口の方へと歩いていく。レイラは店の奥にある扉の方を向く。

 

「(そういえば、龍司さん以外の二人には初めて会うかも…‥。)」

 

レイラは龍司と出会ってから今までの間、フーディエのメンバーとはチャットで会話していた。今着ているフーディエの制服であるコートも今いるカフェとは違う場所で龍司から受け取ったため、龍司以外の顔を知らないままなのだ。志賀の件の時も画像が乱れていたため、レイラからは顔がわからなかった。

 

「‥‥‥ここ、だよね?」

 

レイラは店の最奥にある『VIP』と刻まれた札の貼ってある部屋の前で止まる。レイラはゴクッと唾を飲みこみ、ドアをコンコンとノックする。

 

『…‥誰?』

 

「あの、新しく入りました天沢…‥です。」

 

『…‥お兄ちゃんが行けって言ったの?』

 

「は、はい。」

 

『‥‥いいよ、入って。』

 

ドアの奥からエリカと思われる少女の声が聞こえ、許可をもらう。レイラはドアノブに手をかけ、ゆっくりとあける。

 

「失礼しま~す。」

 

言いながらレイラが入ったVIPルームの中は店内同様薄暗く、いたるところに電子機器やぬいぐるみ等が置かれていた。そしてレイラの目の前にはいくつものパソコンモニターを操作している、膝と肩に大きさの違う白いぬいぐるみを乗せた少女がいるのが分かった。恐らく彼女がエリカだろう。エリカは振り向いて数秒レイラの方を見ると、すぐにパソコンの操作に戻る。

 

「えっと‥‥。」

 

「適当に上がって。あっ、もちろん土足禁止だから。」

 

エリカに言われ、レイラは入り口のドアを閉めた後、靴を脱いでエリカの後ろに正座してエリカを見る。青いおさげに黄色い瞳、自分よりも背が高いであろうエリカは、自分なんかよりもよっぽど美少女だろうという劣等感を抱き、レイラは彼女をまじまじと見る。そんな彼女の強い視線を感じたのか、再度エリカが振り向く。

 

「‥‥そんなにジロジロ見ないでほしいんだけど?」

 

「しゅ、しゅいましぇん!」

 

「…‥なんかいろいろ緊張してるみたいだけどさ、私を王様扱いとかじゃなく、普通に

 接してくれた方が楽だから。」

 

「普通‥‥?」

 

「タメ口の方がいいって言ってるの。お兄ちゃんの話だと君、私と同い年くらいだし、

 普通にエリカでいいから。」

 

と、不機嫌そうな表情で答えるエリカ。その原因が今の自分にあると注意されて分かったレイラは、息を吐いて落ち着く。

 

「あ、あたし天沢レイラっていうの。よろしくね‥‥エリカ。」

 

「‥‥うん、そっちの方が私としても気が楽。今後もそんなに、かしこまらなくていいから。

 でも…‥メメたんに傷を付けたら、許さないからね?」

 

半目でそう注意するエリカだが、レイラにはそのメメたんがなんなのかわからなかった。それを察したのか、エリカが先程膝においていた大きく白いクジラのようなぬいぐるみを見せる。

 

「このぬいぐるみ。私のユーザインタフェースのためのインプットデバイス、キーボード。」

 

「えっ、それってキーボード?」

 

「そう。そして肩に乗ってるのがアウトプットデバイスのトト、スリッパがモーリー。」

 

「スリッパにまで名前が‥‥。」

 

「メメたんは私の親友。親友をキズモノにするのは、許さない。」

 

なんだか誤解しそうな単語が出てきたことに頬を引きつるレイラ。このままではなんか駄目だと思い、ジョークを言おうとする。

 

「…‥じゃあ、もしあたしがメメたんを傷つけてしまったその時は‥‥。」

 

「その時は…‥なに?」

 

「あたしが…‥メメたんの代わりになってあげる!!」

 

と、自信満々で胸を叩きながら恥ずかしい事を言いきることに成功したレイラ。対してエリカは、

 

「…‥ごめん、すごく気持ちが悪い。」

 

レイラにそう毒を吐き、レイラはガクンと膝をつく。レイラの雰囲気和まし作戦、失敗である。

 

 

 

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