今年ももう終わりですね。
今年1年、投稿作を読んでくださった方々、ほんとにありがとうございました。
「デビュー♪」
なぜ彼女が上機嫌にスキップをしながら俺とレッスンスタジオからの帰り道を歩いているかと言うと、あの後、武内さんからいろいろ説明を受け卯月がアイドルになれるということを正式に知ったからだ。
「あんまりはしゃぎすぎないでねー卯月さーん」
ルンルンでスキップをしている人の隣を歩く身にもなってほしい。
「ご、ごめんなさい、諒くん
でも、嬉しいじゃないですか!ついに私、デビューですよ♪」
「わかったわかった、わかったからスキップをやめてください…」
「あ!あそこにお花屋さんがあります!
少し寄ってみてもいいですか?」
「いいけど、お金持ってきてないぞー」
「大丈夫です!私は持ってきてますから」
卯月に誘われ、〈flower shop〉と書いてある小洒落たお店に入ると…
そこには色鮮やかな花がいくつもあった。
(なんか、センスがいいお店だなぁ)
そんなにお花は詳しく無いんだけどね。
「いらっしゃいませ」
迎えてくれたのは、綺麗な黒髪でロングヘアーの女の子。
見た感じ、歳は俺らとあまり変わらなさそうなのだが、とにかく"美しい"の一言に尽きるような素敵な女の子だった。
「諒くん、どの花にしましょうか」
卯月がとてもキラキラした目で花を見ながら、俺に尋ねる。
「うーん、俺は花は詳しくないけど、たしかにどれも綺麗で迷うな」
「ですよね、とても決めきれませんよぉ」
2人揃って悩んでいると…
「誰かに贈り物ですか?」
さっきの美人店員さんが卯月に尋ねる。
「はい!…って言っても自分用なんですけどね」
すると
「この花なんかどうでしょうか」
一つの綺麗な花を勧めてくれた。
なんて花だろう?
「これはなんて花なの?」
「アネモネです。えーっと、花言葉は"期待"、"希望"。
そんな感じかなと思ったから」
「なるほどー」と関心している俺の横で、卯月は
「これください!!」
即決だった。
その日の夜、武内さんから俺の携帯に電話がかかってきた。
『夜分遅くにすみません...武内です』
「こんばんわ、どうかなさったんですか?」
『高田さんが島村さんと仲が良いというのをお聞きして、1つ提案かございます。』
「は、はぁ」
『我が社、346プロ アイドル部門のプロデューサーをやってみる気はありませんか?』
「…………はぁ!!?」
思わず大声で聞き返してしまった。
『無理にとは言いませんが、島村さんが配属されるシンデレラプロジェクトのアイドル全員の仕事を見るのは私1人では限界がありますので、もしよろしければ高田さんに私の"補佐"という名目で入社していただき、何人かのアイドルをプロデュースしていただきたいと思っています』
「お、俺が!?
アイドルをプロデュース!?
やったことないのに無理だよ!」
『心配ありません、アシスタントもおりますので、わからないことがあれば何でも聞いていただければお答えします』
「で、でも……」
『ご検討お願いします。"すぐに答えを"とは言いませんので、少しお考えください』
「わかりました」
『それでは、失礼します』
プツ ツーツーツーツー
と言われ電話が切れた。
☆☆☆
先日の武内さんからの電話があって以降、俺と卯月は毎日のようにレッスンスタジオに通っている。
武内さんは毎日顔を出しに来てくれるが、卯月が
「今日は何をしましょうか?プロデューサーさん!」
と聞くと
「今日は……レッスンをお願いします」
と言うだけだった。
俺は少し疑問に思うことがあり、 武内さんがスタジオに来た時に質問をしてみた。
「そのシンデレラプロジェクトってやつの欠員ってさ、何人いるんですか?」
「3人です。補充の内の1人は島村さんですが、あとの2人はまだ…」
「そ、それなら、卯月のデビューはいつになるんですか!?」
「欠員補充の3人が揃ってから残りのメンバーと合流しようと思っていますので、それからだと思います」
「そ、そんな!!
それまで卯月はずっとここでレッスンってことですか!
そんなの結局、今までと何も変わらない!」
「諒くん、お、落ち着いてください」
「申し訳ありません。ですが、残り2人の内の1人は今から交渉しに行くところです」
「そうなんですか!?
プロデューサーさん、私たちもその子との交渉について行ってもいいですか!?」
ん?私"たち"?
「あのー、卯月さん?私"たち"って俺も入ってるのかな?」
「もちろんです!」
「なんで俺も交渉に付き合うことになってるのかな?」
「諒くんが私のプロデューサーだからです!これから一緒にアイドルする人と話すことも仕事ですよ」
「なんでそれ知ってんだよ!てか、まだプロデューサーやるなんて言ってないだろ!?」
なぜ卯月がこの事を知っているのか不思議に思い、視線を武内さんの方に向けると………
右手で首の後ろをさすりながら下を向いている。
(お前かーーーー!なんで話しちゃうかなぁ?これ、断れなくなるパティーンじゃん)
案の定、
「え…やってくれないんですか…」
とても悲しげに、こちらを見つめてくる卯月。
こうなってしまうと勝ち目が無い。
「わかった、やるよ、やりますよ!」
投げやりな感じだけど、俺はプロデューサーを引き受けた。
でも、やるからには卯月のためにも頑張るぞ。
「ありがとうございます、諒くん!!」
卯月が突然抱きついてきた
「ばか!やめろ!苦しいだろ!」
照れる気持ちを抑え、抵抗する。
「これから一緒にがんばりましょうね!諒くん!」
そう言った卯月の笑顔は眩しすぎるくらいだった。
****
そして、武内さんと卯月と共に、欠員補充の候補だというその子の元へ…
武内さんについて行くと、見たことのある花屋についた。
「まさか……」
その"まさか"だ。
花屋から出てきたのは、先日、卯月と俺が寄ったときにアネモネを勧めてくれた黒髪ロングの美少女。
「え………?」
彼女は不思議そうに俺と卯月、そして武内さんを見ている。
「武内さん、交渉中の子って彼女なの?」
「はい」
まじかよ………。
こんな偶然あるもんかね…
とりあえず、彼女の犬の散歩先である近所の公園で俺達は話すことにした。
「可愛いわんちゃんですね!
お名前聞いてもいいですか?」
卯月が美少女に尋ねると
「は、ハナコ」
彼女は答えてくれた。
ふーん、ハナコって名前の犬なのか、ちっちゃくて可愛いなぁ。
小型犬ってやっぱ癒し要素多めだよな。
「ハナコちゃんっていうんですか!この間はお花を選んでいただき、どうもありがとうございました!ハナコちゃん!」
卯月よ、お前はどこまで天然なんだ……
話の流れから"ハナコ"は犬の名前だろう……
「ハ、ハナコは犬の名前」
彼女が気まずそうに言う。
「わ、わぁぁぁぁ!す、すみません!」
「…凛、
彼女の名前が聞けて、卯月はとても嬉しそうだ。
「よろしくお願いします!渋谷さん!」
「凛でいいよ」
「じゃ、じゃぁ、よろしくね!凛ちゃん!」
「よろしく、えっと…」
「卯月って」
「よろしく卯月。
で、あんたはなんて呼べばいいの?」
いきなり"あんた"呼ばわりかよ。まぁ、いいけどさ。
「諒でいいよ。高田諒、よろしく」
「わかった。よろしく、諒」
とまぁ、軽く自己紹介も終わったところで、何から話そうかと考えていたら…
「これから、一緒にアイドル頑張りましょうね!凛ちゃん!」
「「え?」」
まさかのシンクロしてしまった。
それもそうだろう。
彼女、渋谷凛は交渉中なだけであって、「アイドルをやる」なんて言葉は1度も言っていない。
「わ、私まだアイドルやるなんて言ってないんだけど…」
「え、えぇぇぇぇぇ」
卯月の落胆の声が響くのであった 。
「「「…………」」」
それから、無言の間が少し続き、気まずそうに凛が口を開く。
「卯月はさ、なんでアイドルになりたいの?」
たしかに、もっともな疑問だと思う。
俺は昔から聞いてるから知ってるけどさ。
「夢なんです!キラキラした衣装を着て、キラキラしたステージに立って、あんな風になるのが私の夢なんです!」
と言って卯月が指さす方には大きなビルに"高垣楓"が映っている。
卯月が目指してるのは、高垣楓や他の有名アイドルが立っている舞台なんだよな……。
プロデューサーとして、どんな形で力になれるかはまだ分からない。
だけど俺も全力で頑張るさ。
だって………
"卯月の夢"は"俺の夢"でもあるから。
その後も公園で少し話し、解散となった。
~後日~
俺と卯月は武内さんに呼ばれ、あるカフェへ行くことになった。
卯月はその日は日直で少し遅れることになったので、俺だけ先に行くことに。
「ここかな……?」
教えてもらったカフェに着き、中に入ると……………
待っていたのは武内さんではなく、渋谷凛だ。
そして、俺は察した
(まさか、武内さん、俺に交渉させる気なのか?)
凛がこちらへ気づく。
やるしかないな…
「まさか、諒が来ると思わなかった」
「うん、俺も予想外だったよ」
「で、呼んだのって何の用?」
「アイドルのことだと思う…」
凛の表情が急に険しくなる。
「帰る」
「ま、待ってくれ凛!
少し話を聞いてくれ!」
帰ろうとする凛を必死で止めた
「何?」
「凛ってさ、将来の夢とかあるの?」
「そんなのまだ無いよ」
「じゃあさ、凛は今、楽しい?」
「……そんなこと、諒には関係ないよ」
「関係ないけどさ、今の凛って少し前の俺と似たような雰囲気をしてるんだよね」
「どういうこと?」
「やりたいことも夢や目標も決まってなくて、
「何それ、意味わかんないよ」
「俺には分かる。自分がそうだった時と今の凛は、なんか似てるから」
「"そうだった"ってことは、諒は何か見つけたの?」
「あぁ、見つけたよ。
俺の"それ"は、プロデューサーとして、卯月の夢を1番近くで応援することだ。
俺もさ、最初は乗り気じゃなかったし、プロデューサーなんてやるつもり無かったんだ。でも、今はプロデューサーになることにして良かったと思ってる。
アイドルになるのは、卯月の小さい頃からの夢なんだ。
あいつの夢だからこそ、幼馴染みの俺が1番側で応援してやりたい」
「………」
「凛が、もし"それ"を探しているなら、一緒に見つけに行かないか?
俺が言っても説得力は無いかもしれないけどさ、俺も手伝うからさ。
だから凛、一緒に踏み出そう!」
少し熱く語りすぎてしまった…
これはまずいか??
「わかった、そこまで言うなら一緒に見つけに行こう。でも、やるからには途中で辞めるなんて、私は嫌だからね」
「おう!」
そこへ卯月がちょうどやってきた。
「お、遅くなってすみません!」
走って来たのだろう、息切れが激しい。
「私、アイドルやるよ。改めてよろしくね、卯月」
凛が卯月に言うと卯月は目をキラキラ輝かせて答える。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
それを見て、凛の交渉に成功した喜びに浸っていると、凛が
「あんたが私のプロデューサー?」
と俺に向かって言ってきた。
「お、おう!
高田諒だ、改めてよろしく!」
手を差し出すと
「渋谷凜、改めてよろしく」
俺達はガッチリと握手をし、渋谷凛の交渉成功の喜びを改めて感じたのだった。
2話でした!
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