渋谷凛の交渉に成功した後、家に帰ると武内さんから電話がかかってきた。
『夜分に申し訳ありません……武内です。
渋谷凜の交渉成功おめでとうございます。そして、ありがとうございました』
「い、いえ。てか、なんで来なかったんですか!?
凛と2人きりだったときは気まずすぎて死ぬかと思いましたよ!!」
『申し訳ありません、オーディションがありまして…。ですが、そのオーディションで先程、最後の1人が決まりました。これで全員揃いましたので、明日にでも顔合わせをしておきたいと思うのですが、予定は大丈夫でしょうか?』
「大丈夫だと思いますよ。ちなみに、最後の1人ってどんな人なんですか?」
『会ってもらうのが1番早いのですが、活発そうで元気な方ですよ』
「そ、そうですか」
活発そうで元気な子か、仲良くやっていければいいな。
「明日はどこに行けばいいんですか?」
『都合が合うのであれば、午前10時に346プロへ来てください。もちろん、島村さんも一緒にです』
346プロってけっこう大きな会社だよな、行くの割と緊張する…。
『渋谷さんにも、お伝えください』
「わかりました、じゃあ明日の午前10時に行きます」
『では、お願いします』
「それじゃあ、失礼します」
プツ ツーツーツー
切った。
その日の晩飯。
「母さん、俺346プロでアイドルをプロデュースすることになった。」
俺がカミングアウトしたら
「ゲホッゲッホゲホゲッホゲホ」
母さんは盛大にむせた。
「あ、あんたが!?アイドルをプロデュース!?
な、なんでまたプロデューサーに?」
「卯月がアイドルのオーディションに受かって、その時に346のプロデューサーさんが、1人でアイドルを見るのは限界があるから何人かをプロデュースしてほしいってさ」
「へぇ~、よかったじゃないの。それに、卯月ちゃんが受かったことが何より良かったわね!」
「あぁ、卯月が受かってホントに良かった。でも、俺のことは……よかった…のか?」
「よかったに決まってるじゃない!あんた、野球辞めてからは他の部活にも入らず、家でゴロゴロしてるだけだったから母さん、息子がニートになるのかと思ってヒヤヒヤしてたのよ」
「ニートにはならねぇよ!!」
この人、息子になんてこと言うんだ!
たしかに、休日はニートみたいな生活を送っていたけど、俺は就職欲はあるぞ!!
「ま、まぁ、そういうわけでこれから忙しくなると思う」
「わかったわ。でも、やるからにはちゃんとやりなさいよ!母さん、応援するから!」
「ありがとな。頑張るよ」
寝る前、卯月に連絡しないといけないことを思い出し、慌てて電話をかけた。
『は、はい、もしもし』
「よぉ、卯月」
『珍しいですね、諒くんから電話をかけてくるなんて!
いつもは私からかけているのに』
「まぁな、というのも武内さんから連絡があってな。
明日の午前10時に346プロに来いってさ
最後の1人が決まったから、プロジェクトのメンバーで顔合わせがしたいんだとさ」
『わ、わかりました!
楽しみですね、諒くん!
どんな人たちなんでしょうか~』
「そうだなー。みんなアイドルになる人たちだから、きっと凄い人たちばっかりなんじゃないか?
まぁ、会ってみるまで分かんないけどさ。とりあえず、また明日な。、
今日は早く寝るんだぞ?」
『わかってますよ~!
それじゃあ、おやすみなさい』
「おう、おやすみ」
あれ?何か忘れてるような……
まぁいいか。
****
翌日、予定通りの時間に俺と卯月は346プロの前に来ていた。
「大きな建物ですね~!!」
「だな……」
卯月の言うとおり、めちゃくちゃデカい建物で言葉も出なかった。
「おはよ、卯月、諒」
「おはよ、凛」
「おはようございます。凛ちゃん!」
タイミングよく凛も合流。
あれ?なんか不機嫌そうなんだが……。
「プロジェクトの皆さんにお会いするの楽しみですね!凛ちゃん!」
「そーだね。それより、諒、なんで昨日の夜に電話してくれなかったのさ?」
「え?」
「え?じゃないよ、プロデューサーから『高田くんから連絡が来ていると思いますが、午前10時に346プロに来てください』って今朝言われたんだけど。私、諒からは何も連絡もらってないよ?」
「あ……………」
まずい、忘れてた。
完全にご立腹ですね…。
と、とにかく謝ろう。
「ごめん!完全に忘れてた!」
「プロデューサーから連絡無かったら、私今日は来れないとこだったんだよ?」
ごもっともです。
「ほんっっとすまん!このお詫びはいつかするから!…な?」
「いいよ。許すから、次からはちゃんと連絡してよね。」
「は、はい。気をつけます…」
凜とやりとりをしていると、気まずそうにしていた隣の卯月が
「ふ、ふたりとも!そろそろ入らないと遅れちゃいますよ!」
「だ、だな!入るか」
せっかく早く来たのに、遅刻なんてしたら元も子もないからね
建物の中に入ると大きなロビーだった
3人でロビーの広さに驚いていると
「大きなシャンデリアだね~」
「そうだな……ん!?」
振り向くと卯月と凜以外にもう1人女の子が立っていた。ショートカットでいかにも活発そうな彼女は、おそらく歳は俺らと同じくらいだろう
武内さんの言ってた"元気そうで活発な子"ってのはこの子のことなのかな?
すると彼女は346の社員を見つけると
「本田未央、本日から346プロ新人アイドルになりました、よろしくお願いします!」
と次々に挨拶をしていく。
"本日から"アイドルになったってことは、あの子で間違いないと思う。
そんなことを考えながら俺と卯月と凜は武内さんに呼ばれた30階に行くために、エレベーターの前へ
エレベーターの扉が開くと先客が1人。優しそうなおじさんだ。
「何階かね?」
「30階です」
扉が閉まりかけたその時、
「の、乗りま~す!!」
と、さっきの子が扉に激突…
そして、その子も乗り、5人で上に向かった。
おじいさんとあの子は途中で降りてしまったが、俺たちは30階に着き、少し歩くと〈シンデレラプロジェクト〉と書かれた部屋があり、中へ3人で入り待つことにした。
ガチャリ
入ってきたのは武内さんと、さっきの子と、スーツに緑のベストを着た美人の女性だ。
「「「おはようございます」」」
「おはようございます、早速ですが紹介します。
昨日お伝えした、シンデレラプロジェクトで一緒にアイドルをする最後の1人、本田未央さんです。では、本田さんお願いします」
早速、武内さんが紹介してくれた
「本田未央、高校1年生!よろしくね!」
「島村卯月です!高校2年生です、よろしくお願いします!」
「渋谷凜、同じく高校1年生、よろしく」
「高田諒だ、俺も高校2年生、よろしく」
「え…ふたりとも年上だったんだ」
と凜が意外そうに言ってきた
「そんなに意外か?」
「いや、諒は言われてみればって感じだけど、卯月は同い年かと思ってた」
自己紹介が終わったところで本田さんが
「んー、"しまむー"に"しぶりん"、あと"諒ちん"だね!」
「「「え?」」」
同時に聞き返してしまった
変なあだ名を付ける趣味でもあるんだろうか…。
「こちらが、シンデレラプロジェクトのアシスタントの千川ちひろさんです」
「千川ちひろです、わからないことがあったら何でも聞いてくださいね。
あと、みなさんこれ差し上げますね」
千川さんは笑顔でスタミナドリンクを渡してくれた
これ俺らは対象年齢は大丈夫なのか・・・
「では、これから私は高田さんと各部署に挨拶、それと諸々の手続きを行ってきますので、みなさんは自由にしていただいてけっこうです。では、また後ほど連絡します」
「んじゃぁ、後でなー」
と言って武内さんと346の部署や事務を巡ることに…
「私は高田さんの入社の手続きを済ませてきますので、その間に高田さんは各部署に挨拶をお願いします」
え?1人で挨拶行くの!?
「は、はい、わかりました」
心細いが、1人でやるしかない以上、やるしかない。
「新しくシンデレラプロジェクトのプロデューサーになりました、高田諒です。よろしくお願いします」
と言ってお辞儀をする、というのを何回やったかなんてもう覚えていない……
それにしても、346にこんなにアイドルがいるとはね。
各部署、それぞれにさまざまなアイドルがいて、346プロという会社の大きさ改めて感じさせられた。
****
挨拶回り中の出来事………
「新しくシンデレラプロジェクトのプロデューサーになりました、高田諒です。よろしくお願いします」
「お!?新入りのプロデューサーか!?
丁度いいところに来たな!」
そう言ってきたのは、見た目も性格もかなりやんちゃなアイドルの向井拓海だ。
「む、向井拓海!さん!?」
「お?知ってんのか。拓海でいいよ、それより、腕相撲しようぜ!」
「は?」
「腕相撲だよ!やったことあんだろ!?」
「あ、ありますけど、なんで腕相撲なんですか?」
そりゃ疑問に思うだろう、なんせ初対面の人に腕相撲を挑まれるのは人生初なもんで…
「いいだろ!なんでも!うちの部署にアタシより強いヤツがいねぇんだよ!あと、アタシに敬語は禁止な。"さん"も無しだ」
突然の敬語禁止条例…
まぁ、本人の性格もあるだろうし、その方が彼女も話しやすいんだろう。
「わかったよ、た、拓海」
「それでよし!じゃあ準備はいいか?」
「お、おう!いつでもこい!」
突如、開催された俺と拓海の腕相撲1本勝負。
「いくぞ諒、レディー、ファイト!」
拓海のかけ声とともに、凄まじいパワーが右腕にかけられた
「くっ、拓海強くないか!?」
「ふ、まだまだぁ!!」
たしかに拓海は強いが、女の子に負けるような俺じゃない。
さぁ、本気を見せようか!
「くっっ、諒てめぇ、手加減してやがったな!?」
「相手の実力を測るのも戦略のひとつさ、じゃぁ、いくよ拓海!」
力を入れ、拓海の方へ腕を倒しはじめる。
「うぉぉぉぉぉぉあぁぁぁ!」
拓海が雄叫びをあげながら踏ん張っていた、だが、健闘虚しく余裕で俺の勝利だった
「お、おまえ、なかなかやるな
諒とは仲良くなれそうだな、向井拓海だ。改めて夜露士苦ぅぅ!!」
「お、おう、こちらこそよろしくな拓海」
なぜか拳を2人で合わせ小さな友情が芽生えたのであった。
どうだったでしょうか!?
感想など是非お願いします!!
やる気が………………………出ます!!