Game m@ster & Cendrillon   作:井浦むょ

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俗に言うDパート。
つまるところ短い。


#2-4

 

stage:passage

 

 

 

 

 床を叩く靴音。

 病院の中とは思えぬ忙しなさと騒がしさは傍から見ても緊張感を感じるほどだった。

 白衣をなびかせ髪が揺れ、すらりと伸びた足が淀みなく回り続けている。

 まさしく彼、桜庭薫はいつになく気が立っていた。

 数分前を辿ると、休憩中の彼を苛立たせたのは屋外からの騒音であった。

 桜庭薫という男は静かな場所を愛する男であり、自分の時間を害されることに対して人一倍敏感である。

 それほどの人間が激しい騒がしさと地鳴り、窓を揺らす謎の現象で彼の心を酷く苛立たせるのは当然のことだった。

 とは言うものの、彼とてその騒がしさに奇妙なものを感じないわけではない。

 読みかけの論文を閉じマグカップに残されたコーヒーを飲み干して席を立ち、自分を苛立たせるものを突き止めるべく歩を進めた。

 それが、蓋を開ければ目を覆いたくなるような庭の荒れ様と、暴れ回る怪物。

 窓から見えるその異形は人の世に存在するとは思えない奇怪な形をしており、自分の目を疑うほどだった。

 自分の常識を覆すような状況に動きを止めていた桜庭であったが、化物が地に倒れ伏すと共に彼の思考は再び輝きを取り戻した。

 だがその時彼が目にしたのは患者――本田未央が地に投げ出された姿だった。

 その瞬間、彼は廊下を駆け出して――とまではいかないものの、普段の彼を知る者からすれば信じられないほどの忙しさで彼の元へ向かっていた。

 彼自身、自分が何故その場に足を向けているのかを理解してはいない。

 言ってしまえば、彼は医者。傷病者が危険な場所にいたとしても彼のような人間がわざわざその場に赴く理由はない。

 そのはずなのだが。

 彼の頭を巡るのは昨日の出来事。

 担ぎこまれた患者はうら若き少女で、聞けばアイドルを目指しているのだという。

 勿論、彼が医者になった理由を鑑みればアイドルという職業に興味を持つことはあってもアイドルそのものに興味を抱いているとは思えないため、これが後の彼の人生に影響を与えるとは思えないのだが。

 兎にも角にも彼の患者はアイドルで、彼が医者として説明責任を果たしたのはほんの数人。

 親、患者、雇用主。

 そして、プロデューサーという男。

 彼が去り際に見せた得も言われぬ雰囲気が彼の思考を掠めていた。

 たったそれだけの理由。

 論理的ですらない非生産的な動機。

 確信めいたその感覚と自分が下したとは思えないその感情的な判断が、まさに彼の不安を一層煽っているのだった。

 

 

 そんな彼と黎斗が出会ってしまえばどんなことが起きるかは想像するべくもなく、

 

「っ! おい!」

 

 珍しく、声を荒げていた。

 廊下を歩いていたのは、

 ジュラルミンケースを携えた檀黎斗。

 座るもののいない車椅子を押す本田未央。

 明らかに異様。

 

「桜庭先生ですか。随分と忙しい様子で」

「お、ドクター。お疲れ様です!」

 

 なんら気にした風のない二人。

 まるで自然体。

 それはあまりにも不自然で、桜庭の見た目を疑うような光景も、さも当然のように振舞う檀黎斗という男も、彼をしてみれば全てが全て何もかもを物語っているとでも言うような白々しさ。

 言うならば――黒。

 およそ色の足す余地のないほどに塗りたくられたキャンバスのように彼のみで完成された色。

 

「……君は病人なんだ。あまり出歩かないほうがいい」

 

 だが彼はその気を抑える。

 感情に身を任せるべき内容ではないのだと本心で理解しているからこそ、今この瞬間彼が口にしたのは至って何気ない当たり障りない反応だった。

 

「あはは、ごめんなさい……」

 

 一転してばつの悪そうな笑みを浮かべる。

 

「やっぱり怒られたじゃんプロデューサー」

「予想はしていたさ」

「一声かけたほうがよかったんじゃないの?」

「それまでに君が消滅されたら私が困る」

「確かに今日明日って言われたけどさ……」

 

 彼を目の前にしてのその会話。犯行の主犯ともいえる檀黎斗に悪びれた様子はなかった。

 

「いや、もういい。随分と顔色が良いみたいだからな」

「さすがはドクター! 未央ちゃん完全復活しちゃったみたい!」

「そうか……それはなによりだ」

 

 今この場である必要はない、そう判断した彼は小さく眉を上げるだけに留めた。

 

「ん? ドクターはわかってたの?」

「いや、何も知らないさ」

 

 彼はそう返し、黎斗へと視線をやる。それだけで彼女は悟ったのかそれ以上言葉を紡ぐことはしなかった。

 

「母親に一報入れておくといい。今も不安を抱えているだろうからな」

「そっか! ありがとうドクター!」

 

 感謝の言葉を述べ、黎斗に車椅子を押し付け桜庭の横を通り過ぎていく。

 

「本田君の病室で話でもどうかな?」

 

 檀黎斗は笑みを浮かべ、桜庭へと問いかける。

 

「君は……何を知っているんだ?」

 

 そう訊ね返してみたところで、桜庭の横を通り過ぎ廊下を歩いていく彼の表情は変わらない。

 何を知っている。

 何を。

 何で。

 どうして。

 

 

 彼の求めて止まない答えがそこにある。

 それが、どんな現実で。

 彼の運命を容赦なく動かすほどのものだとしても。

 

 

 桜庭は、彼の後を追った。

 

 

 

 

 

 

stage:sickroom

 

 

「さて……桜庭先生」

 

 ベッド脇に置かれた椅子に座りもったいぶった様に語りかける黎斗。

 

「一から十までと言いたいところだが、時間がない。手短に頼む」

 

 壁に背を預けてそう言った桜庭は病院の勤務医であるために本田未央という一人の患者に付きっ切りになると言うことはできない。

 というよりは、彼の医者としてのポーズのようなものだろう。できることならば自分の職務を後回しにしてでも事情をすべて聞いてしまいたいというのが本心に違いない。

 

「何が知りたいのかな?」

「治療に関すること。今はそれだけで十分だ」

「……では、これを」

 

 彼はテーブルに置かれたジュラルミンケースを手元に寄せ、ばちりばちりと鍵を外して蓋を空ける。

 

「なんだそれは?」

 

 最もな疑問を黎斗へと投げかける桜庭。

 医療器具かと思えばよくわからないものが入っている始末。疑問が沸くのは当たり前だ。

 

「これは、仮面ライダーに変身するためのガシャットとドライバーだ」

「仮面ライダー……」

「そうだ。Nウイルス、もといバグスターウイルスを切除することを可能としたゲームキャラクターのようなものだ」

「ふざけているのか?」

 

 彼のその説明が桜庭の表情をさらに険しいものに変えた。

 

「私の開発を受け入れられないのならそれはそれで構わない」

「……続けてくれ」

 

 嘘出鱈目に聞こえるような黎斗の説明であるが本田未央の病気が快復した点について理由としてあたりをつけるならば彼以外いないという状況に、反論の言葉を呑み込んだ。

 

「このドライバーとガシャットを使えばウイルスを患者から分離して切除することが可能となる」

「………」

「成果ならば本田君が示してくれているだろう?」

「君が治療したのか?」

「そうだ」

「医者でもなんでもない君が?」

「医者でなくてもライダーへ変身することができるからね」

 

 次第に表情は曇り力なく頭を倒し俯く彼に先程の覇気は感じられなかった。

 

「と言っても、ライダーシステムとの同調率が悪ければ能力が落ちてしまうからね。

 医療行為に従事できる人間は限られるだろう」

 

 限られるのというのは嘘に過ぎない。

 ライダーシステムは後天的に適合させることが可能であり、それに同調率だとかそんなものはおそらく存在しない。あるとするならば、ゲームであるそれをいかに上手くプレイするかとかそんなものだろう。

 

「それは……僕にもできるのか?」

 

 頭を上げた彼はそう尋ねる。

 何かを決意するように向き合った彼の目は、さっきまでの覇気のない雰囲気など消し飛ばすほどに力強く見えた。

 

「可能さ」

 

 少し間を置いて黎斗は答えた。

 といっても、彼の言葉が善意によってもたらされたものであるかはかなり怪しいところだが。

 なにしろ彼が宝条永夢や鏡飛彩といったドクターにドライバーを渡した経緯と言えばあくまでも自分のゲームの準備に必要だったためと言えば語るべくもないだろう。

 

「だったら――」

 

 扉を叩く音が聞こえた。

 からからと引かれた扉から顔を出したのは、他ならないこの部屋を利用する彼女で、

 

「? もしかして盛り上がってた?」

 

 雰囲気を察したのか―というよりも病院だからか―いつもより少し落としたトーンで、未央は尋ねた。

 

「いや、粗方終わったところさ」

 

 ケースを閉じて帰り支度を始める黎斗。

 彼の目的は達成されたわけで、これ以上話すことなどないのだろう。

 

「まだ話は終わってないぞ」

 

 といっても主治医が黙ってるわけないのだが。

 

「終わったさ。これ以上知りたいのなら事務所にでも足を運びたまえ」

「待て檀黎斗!」

 

 入れ替わるように部屋を去っていく。

 追って桜庭が部屋の外に出てみれば、彼の後姿は見えなかった。

 

「なんなんだ彼は」

 

 彼への不満が残っているようで落ち着いた声色とは言えない様子で呟いた。

 

「なんなんだろうねえ……」

「彼はいつもあんな感じなのか?」

「まー自分勝手なのは確かですよ」

「そうか……」

 

 黎斗の態度や行動をいくらか知っている未央からすれば黎斗の行動もいつも通りには違いない。

 だが付き合いの少ない桜庭をしてみれば、あまりにも自分勝手という評価が下されたのはそれほど不思議ではなかった。

 

「すまないがこれで失礼する」

 

 時計はいい程度に時間が進んでいた。

 

「どうぞお構いなく」

「それと、事務所の場所を教えてくれないか? まだ聞きたいことは山ほどあるからな」

「それくらいなら」

 

 ベッド脇に置かれたメモ用紙にさらさらと筆を走らせて、ぴっと破く。

 

「感謝する」

 

 渡された紙は胸元に仕舞われる。

 

「いえいえそれほどでも」

「どうせすぐに退院できるだろう。暇を持て余すだろうが我慢していてくれ」

 

 扉に手をかけ、思い出したように振り返る。

 

「それと、快復おめでとう」

 

 部屋の扉を閉めると桜庭は歩き出す。

 床を叩く靴音に忙しなさはない。

 

 だが着実に。

 確実に。

 桜庭は、自身の願いに近づいている。

 

 

 

→→→next stage!!!

 






・Nウイルス
 2000年問題にて誕生した人体に感染するコンピュータウイルスがエグゼイド本編とは 違う流れで人類に影響を与え始める。そのためゲーム病のように分離切除は不可能だったが、黎斗がなんやかんやしてゲームエリア内のウイルスにバグスターウイルスのような分離機能を付加させることでこの時空でもウイルスの治療が可能となった。

・MEGGLE LABYRINTH(メグルラビリンス)
 エネミーから逃げつつ戦いつつ迷路を進んでいくダンジョン踏破系アクションゲーム。ゲームイメージは○ックマンや○ンバーマン。そのくせ武器が手斧だと蛮族系冒険者にしか見えない。
 まあラビリンスと言えばクノッソス宮殿とミノタウロスのイメージが強いのでしょうがない。勿論、作ったゲームには別武器は存在する。某狩りゲーでもパッケージキャラは大剣持ってるけど他の武器だって使えるし。

・タブロスバグスター
 メグルラビリンスに出てくるボスキャラ。獣人系のキャラクターだが、○ュウレンジャーのせいで青い獣人がモチーフみたいになってしまう。名誉のために注釈するが、青いのは狼であって、牛は黒い方である。しかも黒い方はロボットである。47話を見てるときは仲間ボコボコにされすぎてバッドエンドかと一瞬思った。

・ガシャコンハチェット
 メグルラビリンスガシャットにおけるメイン兵装。手斧。
 作中には出てこないが柄の長い戦斧モードが存在した。これはドライブが好きな私の趣味。絶対ベルト殺すマンと化す。イッテイーヨ!

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