木場君はリアスに拾われなかった様です   作:最初の晩酌

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聖女と堕天使

鴻上との電話後、イザイヤは来るであろうアーシアを向かい入れるための準備を整えていた。

 

「まあ、こんなものでいいかな?」

 

それなりの量の料理を作り、それをどんどん机の上に乗せていく。全てを作り終えると同時に家のインターホンが鳴る。

 

「はい?」

「えっと、アーシア・アルジェントです!鴻上さんにここにくれば良いと言われてきました!イザイヤさんはご在宅でしょうか」

 

流暢な日本語が玄関から響く。イザイヤは流石に、完璧に教え込まれただけのことはあるなと思いながらドアを開け、アーシアと対面する。

 

「僕がイザイヤだよ。鴻上さんから事情は聞いてる。いらっしゃい、もう君を向かい入れる準備はできているんだ」

「はじめまして、先程も言いましたが、もう一度。私はアーシア・アルジェントと言います。今後、ここでお世話になりなさいと鴻上さんに言われました。それとこれを渡してくれとも」

 

そう言って、アーシアは持っていた2つのアタッシュケースをイザイヤに渡す。中を確認するとカイザギアとデルタギアが入っている。イザイヤはそれを受け取り、アーシアを部屋の中に案内する。

 

「こ、これは!?」

「僕が作ったんだ。アーシアさんがうちにくるお祝いだよ」

「そんな!私なんかのために?」

「客人はもてなすものだって何処かの本に書いてあったし、そうでなくても今日から同じ家に住むんだからこれくらい当然だよ」

 

それを聞いたアーシアはなぜか泣きはじめてしまった。どうしたのかとイザイヤが聞くと

 

「すみません。『魔女』と呼ばれる様になってからこんなに優しくされたのは初めてなので」

 

と答えた。鴻上も優しかったが、そこまで頻繁にあっていたわけではない上、彼が多忙であることを考えると確かにアーシアは誰かに料理を振る舞われる事なんてなかったのかもしれない。イザイヤは知らないが、アーシアは鴻上のおかげで『魔女』と呼ばれる原因となった一件を受け入れ、よく考えれば自分も悪かったと吹っ切れている。が、嬉しいものは嬉しい。アーシアが泣き止むのを待ち、その後料理を食べようとした。しかし、再びインターホンが鳴り響いく。

 

「誰かな?」

 

今日誰かがくる様な予定はアーシアを除けばない。不思議に思いながらドアを開けると、光の矢が肩を貫いた。

 

「ぐあっ!」

「イザイヤさん!?」

 

イザイヤの肩を貫いた光の矢の持ち主はそのままイザイヤを押し込み、壁に貼り付けにする。

 

「悪いな。レイナーレ様から、そこの少女を連れてくる様に頼まれてな。恨みはないが死んでもらう」

 

突然現れたその男は光の矢を作り出し、イザイヤの首を狙う。しかし、イザイヤは咄嗟に剣を一本作り出し、それを防いだ。

 

「なるほど。神器持ちか、厄介だな。だが、その負傷した肩で私に勝てると思うな」

 

再び光の矢を作り出し、突き刺しにくる謎の男性。イザイヤはそれを掌を貫通させながらも受け止める。そう受け止めるとは思ってなかったのか、驚愕の表情を表す謎の男性。そんな状態でイザイヤはアーシアに声をかけた。

 

「アーシア」

「は、はい!」

「僕のもう1つの姿については聞いたかい?」

「はい!鴻上さんからちゃんと聞きました」

「そうか。なら、僕の勝ちだ!」

 

その『姿』をアーシアが知らなかった場合、なんとしてでも人間の状態で戦わなければならなかったが、知っているなら話は別だ。口元に笑みを浮かべ、イザイヤはその姿をホースオルフェノクへと変える。そのまま、手に刺さった光の矢を握りつぶし、謎の男性の首を絞め、持ち上げる。

 

「ガッ!?なんだ貴様のその姿は!」

「君が知る必要はないよ。それより、色々と話してもらおうかな。君も死にたくはないだろう?」

「化け物め。しかしその言い方、話せば助けてくれるのか?」

「考えてあげるよ。まあ、どっちにしろ君には選択肢はないと思うけどね」

 

そう言って、首を絞める力を強める。首の骨から軋む様な音が鳴り始める。詰まる所、イザイヤがやっている事はいつでもお前を殺せるぞという脅しである。それを理解したのか、謎の男性は何故アーシアをそのレイナーレという人物が連れてくる様に頼んだのか話し始めた。

 

「……という訳だ。嘘はついていない。さあ、話したぞ。これで俺を助けてくれるんだろう?」

「そうだね。運が良ければ助かるよ」

「は?」

 

何を言っているのか理解する間もなく、謎の男性ードーナシークの胸には灰色の剣が突き刺さっていた。それに気づき遅れた様に口から血を吐き出す。

 

「き……さま……約束が……」

「違うって?僕は『考えてあげるよ』とは言ったけど、『助ける』とは言ってないよ?まあ、でも僕もそこまで鬼じゃないし適応できればちゃんと助かるよ」

 

イザイヤがそう言い切るよりも早く、ドーナシークは青い炎に包まれ灰となった。その辺は聞かされてなかったのか、アーシアは灰とかしたドーナシークを見る。

 

「い、イザイヤさん。これは」

「使徒転生については聞いたかい?」

「は、はい。確か、オルフェノクが仲間を増やすためにやる事だと鴻上さんは言っていました」

「そう。僕、ホースオルフェノクの使徒転生のやり方は相手の胸にこの剣を突き刺す事。でも、使徒転生は誰でもオルフェノクにする訳じゃない。こうやって適合できなかったものは灰になるんだ」

 

そう言いながら、箒を持ってきて、灰を掃いて外に捨てるイザイヤ。全てを捨てた後、元の人間の姿に戻る。そして、アーシアに向き直り、声をかける。

 

「僕が怖くなったかい?」

「い、いえ、そんな事は」

「無理しなくても良いよ。どうあれ僕のやった事は殺しだからね。普通の人は怖がって当然なんだ。もし、僕ともう一緒にいたくないと思っているなら鴻上さんの所に送り返してあげるよ」

「お、思ってません!」

「そう。なら僕はそれを信じるよ。でも、どうしても無理ってなったら言ってくれ。いつでも、鴻上さんの所に送るから。さ、この話はここまで冷めちゃなんだし、早く料理を食べようか」

 

そう言って、リビングに入って行くイザイヤ。アーシアはそれを見ながら、胸の内にある多少のイザイヤに対する恐怖心をどうすればいいか考え始めた。

 

 

 




という訳で、アーシアさんはイザイヤに多少の恐怖心を抱いてしまいました。ま、しょうがないですね。

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