The beginning of "Z"ero 作:気まぐれな男
「A2、君は?」
彼女は全てを終わらせようとしていた。
「私は、まだ、やることがあるから.....。」
続けて、命令とは言い難い最後の頼みを随伴支援ユニット:ポッド042に下す。
「先に行ってくれ。」
この世界は、直に終わりを迎えるだろう。
「......了解。」
ポッドと呼ばれた者は彼.....ヨルハ部隊スキャナーモデル9号を従属化ユニットを使って抱えながら、無機質な声だが親しい友との別れのように、名残惜しそうに、何よりも感情的に彼女.....旧ヨルハ部隊アタッカー2号と別れを告げた。
9Sとの決着も既についた。ハッキングも終わりかけている。ポッドに彼の救出を頼み、人形はそこに残る。
これで良かったんだ。これで全ては終わるんだ。彼女は安心していたんだろう。人形には心がない筈なのに。創造主たる人類は、もういない。いないものの為に私達は囚われて続けていたのだ。この終わりなき戦いに。今、全てを終らせよう。
「すまないな......。」
誰にもらした言葉なんだろう。散っていった仲間達か?とうの昔に滅んだ人類か?はたまた彼か?機械生命体達か?あるいは全てだろうか?
神の塔は崩れていく。たった一人の人形を残して。
「こんなに世界が綺麗だって、気が付かなかったな…。」
戦いに明け暮れた日々が蘇る。復讐に燃えていた何も知らなかった日々。
「みんな.....今、行くよ.....。」
そう言って人形の彼女は手を伸ばす。その手の先には何が写って居たのだろうか。全てが崩壊する今となっては知ることは出来ないだろう。しかし彼女の瞳には終焉への安堵の想いが浮かんでいた。
とうとう彼女の立つ地面の崩壊が始まった。当然彼女もその崩壊から逃れられる筈もなく、共々地面が崩れ行く。彼女は安らかな表情を浮かべ、仰向けに倒れ、自らの死を受け入れた。
筈だった。
彼女の視線の先には大きな鏡が浮かび上がっていた。それはまるで彼女の死を憂いているかのように。彼女はそれに手を伸ばした。理由もなく、脈絡もなく、"導かれる"ように。
彼女は鏡に引き寄せられ、そのまま姿を消した。
その日、美しい世界ができた。同時に、一人のアンドロイドがこの世界から消失した。彼女の義体も装備も、一つの随伴支援ユニットを残し、それ以外は何も見つからなかったという。
それが彼女の終わりであり、"Z"eroからの始まりであった。
これは、人形である者と異世界の魔法使いの物語である。