The beginning of "Z"ero 作:気まぐれな男
デルフリンガーを購入してから数日が経ち、A2はデルフリンガーを手に馴染ませるために中庭で夜に使用テストをしていた。
昼間はルイズと共に授業に出る必要があるし、かといって朝も雑用があるから却下だ。
となると残りは夜だけだ。今生徒達は夕食を食べていることだろう。ちなみにA2は早めに済ませていた。
デルフリンガーは従属化出来なかった。彼自身に意志があるのが原因である可能性が高そうだが。
しかしそもそも彼を買ったのは、ルイズがアンドロイドの一般的な装備体型である武器の従属化を利用した近距離戦闘を奇妙だと評したからだ。
であれば、デルフリンガーを従属化させずに腰に差しているのがここでは一般的なのかもしれない。
しかしそれだと逆に、今までのような剣を投げたり飛ばしたりする剣技が使えないことを意味する。
そう思い、従属化ではないことを利用した居合いなどの習得に勤しんでいた。
「しっかしおめぇさん、やっぱ使い手に相応しいくらいに強いぜ。」
「.....わかるのか?」
デルフリンガーは当たり前だと言うが、A2も剣なのだから当然かとあまり深くは考えていなかった。
デルフリンガーは自分を持つ使い手の女の剣の技量が予想以上に凄まじいことに驚いていた。
使い手に選ばれたのだ、それなりに剣は得意かもしれない。それくらいに思っていた自分の心を大きく覆した。
だが自分程の名剣なんだから使い手もそれなりでないとな、と内心自惚れていた。
ルイズはその頃、夕食を食べ終わり自分の使い魔を探していた。
自分よりも早く食べ終わっていたようで、調理場付近には既にいなかった。
部屋に一旦戻ってみたが、姿が見えなかった。
心配になって辺りを探していると、中庭にいるとの情報を手にいれたので、急いでそちらへ向かう。
「居た....。」
ようやく見つけた使い魔に駆け寄ろうとするが、彼女はどうやら訓練をしているようで、ルイズはそっとしてあげようと思い、離れた場所からその姿を見守る。
「綺麗......じゃなくて!!」
自分には婚約者がいるのだと慌ててその考えを振り払う。
しかしこれではまるで自分が恋する乙女のようではないか。そう考えると途端に意識してしまい、顔が赤くなる。
しかし本当に彼女が武器を振る姿は美しいのだ。
ルイズはうぅ、と呻きながらその可愛らしい身体をじたばたとさせていた。
「向こうにいるぜ、相棒。」
「わかってるよ。」
ルイズがいることに、一人と一本は既に気が付いていた。
だが、とりあえず自分のことが優先なのかA2は動く気配がない。
デルフリンガーはやれやれと思いながら、素直に武器として振られてやることにした。
このまましばらくこの状態が続いていて、そのまま時間が過ぎていった。A2はともかく、ルイズのだらしない姿を誰かが見ようものなら、彼女の性格のことだ。凄い速さで追いかけてくることだろう。
「ッ!?」
いきなり轟音が響いた。まるで何かを叩きつけているような音だ。
音のした方向を見ると、超大型機械生命体エンゲルスにフォルムが似ている巨人が学院の壁を攻撃していた。
「あれは.....。」
「ゴーレムだぜ。しかも強力な奴のな。」
A2は流石に学院を破壊されるのはまずいだろうと思い、デルフリンガーを持ってゴーレムへと向かっていった。
ルイズも謎のゴーレムが学院の、しかも宝物庫がある壁を殴っている姿を確認した。
「何...あれ....。」
いきなりの出来事に唖然としていたが、あの巨大なゴーレムへと向かっていくA2を見て、我に返った。
「!!A2!」
事実自分よりも強いA2だが、あんな巨大なモノに一人で立ち向かっていくのは危険だと思い、ルイズも急いで追いかけた。
「A2!!」
「なんだ?あいつは。」
「あいつ、最近噂になってる"土くれのフーケ"よ!」
ルイズが焦った様子で答える。それに対してA2はルイズ程焦った様子はない。
「あいつ、遂にこの学院をターゲットにしたのね!!」
A2もその名前は少し位耳に入っていた。
何でも貴族ばかりをターゲットにして冷静に、ときに大胆に盗みをはたらくという。
そんな大怪盗に出会えたA2は、しかし興奮している訳でもなく、至って冷静だった。
「.....お前の爆発で足止め出来ないか?」
"爆発"と言われ、ルイズの眉はピクリと反応してしまうが、A2に何か考えがありそうなので素直に従うことにした。
「どうするの?」
「ゴーレムということなら、操ってる奴がいるはずだ。」
そう言って、ゴーレムを観察するA2。すると、何かあったのかその口元がニヤリとしていた。
「私はゴーレムから本体を叩く。お前は適当に足止めをしてくれ。」
「.....分かったわ。」
ルイズの了承を確認し、A2は走り出す。すると下がっていたゴーレムの腕に軽々と飛び移り、そのまま駆け上がっていった。
ルイズも負けていられずに、杖を取り出して魔法の詠唱を始めた。
ゴーレムの足を爆破され、体勢が崩れかかるゴーレムに土くれのフーケはチッと舌打ちを打つ。
(こりゃあ、早くしなくちゃね!)
そう思っていたフーケの元に、一人の女が飛びかかってきた。
「!?」
予想外の出来事だった。このまま行けば目的である"破壊の箱"を奪える筈だったが、この女はどうやら自分の邪魔をしに来たらしい。
「お前がその土くれのフーケか?」
答えない。ここで声を発したら、相手に覚えられる可能性があったからだ。
フーケは無言で何とかこの女をゴーレムから振り払おうとする。
A2は目の前のフーケの抵抗に、何とか出来ないか思考を巡らせていた。
その間にも、この女は自分をゴーレムから落としてやろうとゴーレムの身体を揺らしていた。
「クソッ!」
肝心の足場が揺れていては戦いずらい。しかも下ではルイズが足止めをしているのだから、ここで出来れば捕らえてしまいたかった。
下に居たルイズはあまり当たらないが、必死に魔法を詠唱してA2を援護しようとしていた。
「ちょっと!これはなんの騒ぎ!?」
いつの間にかルイズの近くにキュルケとタバサがいた。どうやらルイズの発した爆発音が気になって、ここに来たらしい。
「あのゴーレム....まさか土くれのフーケ!?」
「援護する。」
二人はルイズを援護するため、杖を取り出しゴーレムの破壊をしようとした。
やたらと攻撃が激しくなったのでフーケは地を見下ろした。
なんだか人数が増えていたが、自分のゴーレムには自信があったフーケはあの程度では破壊されないだろうと予想をつけた。
それよりも目の前の女だ。こいつはかなり危険だから早急に対処する必要がある。
相手に聞かれない程度にボソッと詠唱をかけ、応戦する。
しかし相手も相手で素直にやられる気はないようだ。
フーケはこれでも手練の盗人だ。相手との読み合いもそれなりに出来る方である。ましてやそれが自分の操作するゴーレムの上となれば尚更だ。
「ッ!」
フーケの魔法の連撃に腕などに飛び移りながら回避するA2だがそろそろ限界に近づいていた。
途中からキュルケとタバサが加勢したようだが、一向にダメージが入る様子がない。
足場の悪いなか、何とかフーケに攻撃を仕掛けるも魔法で難なく防御されてしまう。
これではジリ貧だ。そう判断したA2は、フーケに思い切って突撃する事にした。
フーケに向かって腕を駆け上がって近づこうとしたが、フーケの方が一枚上手だった。
A2はフーケの放った魔法によってゴーレムから落ちてしまった。
「......A2!!」
近くにキュルケとタバサがいるにも関わらず、ルイズは吹き飛ばされたA2に向かって叫んでいた。
「この!!ファイヤボール!!」
基礎的な魔法だが、ルイズには等しく爆発に変わる。
その爆発はあまり集中していなかったのか、それとも必死だったのか、フーケのゴーレムではなく壁に当たり、既に脆くなっていた壁は破壊されてしまった。
「何やってるのルイズ!!」
憎きツェルプストーからの言葉だったが、今回は完璧に自分の失態であるので何も言い返せなかった。
「....!」
やっと女を振り落とす事に成功したフーケは、地上にいたガキによって破壊された壁を見て、チャンスだと言わんばかりに口元を歪めていた。
そのまま宝物庫へと侵入し、目的の物を奪い去っていった。
A2は振り落とされてから、何とか体勢を立て直してデルフリンガーをゴーレムの背中に突き立て、そのまま滑り降りていった。
「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
デルフリンガーから悲鳴が聞こえるがA2も必死なのか、
「我慢しろ!」
これしか言いようがなかった。
ちょうどA2が地上に着地したときにゴーレムはバラバラになり、土へと還っていった。
「A2!!」
そう言ってルイズがA2に抱きつく。本人はプラグインチップに"オート回復チップ"を搭載していたから着地した頃には傷は治っていた。
しかし心配してくれる主人を安心させる為に笑顔を向けて、
「大丈夫だ。」
とだけ言った。キュルケとタバサも安心していたのか、二人への視線は少し穏やかだった。
「結局盗まれちゃったわね。」
「そうね。......ごめんなさい。」
キュルケの言葉にルイズが悔しそうに、自らのミスを叱っているかのように謝罪する。
キュルケはルイズの意外な姿に目を丸くするが、無事で良かったと返してやった。彼女らの中にも密かに友情が姿を現しているのかもしれない。
一同とりあえずこの場は解散することにした。A2はタバサが終始こちらを見ていたことに違和感を感じながらも、ルイズと共にこの場を後にした。
A2は違和感を感じていた。今までルイズと生活を共にしていたが、どうもこれまでで自分の中に彼女への過剰な保護意識が発生しているのだ。
自分は使い魔であるから主人である彼女を守るのは当然のことだ、という"義務感"なのかもしれないが、A2にはそれ以上の物があるようにも思えた。
しかし元々スキャナータイプのような小難しいことを考える人ではないA2は、とりあえずこれは"義務感"であるとして結論付けた。
主人と共に歩く彼女の左手はかすかに光り輝いていた。
プラグインチップ
アンドロイドの義体に埋め込んでいるチップ。
オート回復チップ
その名の通り、付けると自動でバイタルが回復するチップ。
デルフリンガー
その剣は、伝説の使い魔ガンダールヴが使っていた剣で、それはとてもとても強い剣でした。
その剣は、伝説の時代が幕を閉じてからもずっとずっと生き続けた剣で、それはとてもとても長生きな剣でした。
その剣は、伝説のことなど忘れられ鍛冶屋の隅に転がってしまった剣で、それはとてもとても哀れな剣でした。
その剣は、伝説の使い魔に再び巡り会うことが出来た剣で、それはとてもとても嬉しそうな剣でした。
※適当に作った話ですのであしからず。