The beginning of "Z"ero   作:気まぐれな男

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捜索隊の結成です。


捜索

後日、学院では盗みに入ったという土くれのフーケの話題で持ち切りだった。

目撃者として事情聴取を受けることになったルイズ、キュルケ、タバサ、A2は学院長室に集められていた。

事件の内容は、土くれのフーケによる宝物庫の破壊、中にあった"破壊の箱"の盗難、そして犯行の証明であるフーケによる"確かに領収した"と書かれたカード。

これは学院創設以来の大事件となり、それと同時に教師達の大失態でもあった。

愚かにも教師達はお互いに責任のなすりつけあいをしており、目も当てられない状況だ。

 

「いい加減にせんか!!」

 

その場にいたオスマンによって教師達が一斉に静かになる。中には生徒の姿を見て恥ずかしそうにしている者もいた。

 

「見苦しい所を見せてしまったが、君達に集まってもらったのは他でもない"土くれのフーケ"についてだ。君達は犯行現場を見ていたという事でここに来てもらったのだ。」

 

そう言って三人と一体の人形を見るオスマン。

そこには少し気が沈んでいるキュルケに、相変わらず無表情のままのタバサ、使い魔を心配そうに見ているルイズに、澄ました顔のA2がいた。

 

「それじゃあ、昨夜のことを詳しく伺うことにしよう。」

 

そうしてルイズとキュルケを中心とした当時の説明がなされた。

A2とタバサはそれについてあまり参加する姿勢を見せておらず、あくまで二人に任せているようである。

 

「うむ、報告のとおりじゃな。じゃが....。強力な"固定化"を施しておいたはずの壁の一部に、妙な爆発した痕のようなものがあってのお。」

 

そう言った途端、ルイズがあからさまにビクッと身体を震わせた。

オスマンはその様子に気付き、それについてはあまり言及しない事にした。

 

「ところで、ミス・ロングビルはどうしたんですか?こんな騒ぎでこの場にいないなんて......。」

 

ある一人の教師の言葉を皮切りに学院長室がザワザワとし始めた。皆ロングビルを疑っているような声ばかりだ。

オスマンが止めようとしたそのとき、学院長室の扉が突然開かれた。

 

「おおミス・ロングビル!一体何処へ行っていたんですか?こんな時に!」

 

そう聞かれたロングビルは極めて冷静に受け答えた。

 

「騒ぎを聞きつけていてから調査していました。相手はあの土くれですから。」

 

ロングビルの発言によると、近くの森にフーケの隠れ家があるという。調査のところ、怪しいフードの男が廃屋のような場所に入っていった、という情報を手にいれたらしい。

これは学院の一大事だ。王宮に連絡し、衛士隊の派遣を提案した教師がいたが、それではその間に逃げられるだろうと却下された。

それに、とオスマンが付け加える。

 

「これは学院の問題であり失態だ。これはワシらでカタをつけねばならん。」

 

と、自分達で捜索隊の結成が図られた。しかし、責任の擦り付け合いをしていた教師達からは、案の定一人も進んで参加する気配がなかった。

見兼ねたルイズは、自身の杖を高らかに挙げ宣言した。

 

「私が行きます。」

 

今度こそ捕まえてやる。爆発とゼロの汚名挽回のダシにしてやるのだ。

あまり良いものでは無いがルイズの決意は充分と言える程だった。

 

「ミス・ヴァリエール!何も生徒である貴女が.....」

 

「私も行きます。ヴァリエールには負けられないわ。」

 

生徒の身を案じたシュブルーズをキュルケが遮る。

どうやらここでは教師達より生徒の方が積極的らしいとA2は主人を見てニヤリとしていた。

彼女らに続いて、タバサも杖を掲げる。

 

「タバサ、あんたまで付き合う必要は」

 

「心配だから。」

 

キュルケを遮ったタバサの瞳は決意がこもっていた。しかしタバサの目的はあくまでA2の強さを間近で感じること、それが一番の目的だった。

 

「......では彼女らに任せるとしよう。何よりもミス・タバサはこの年にしてシュバリエの称号を授かった騎士であると聞いている。」

 

その言葉に教師達からザワザワとした雰囲気が流れる。皆その事は知らなかったらしい。

「本当なの?タバサ。」

 

タバサは相変わらず無言だ。しかし軽く頷く姿を見るに、それは事実のようだった。

「して、君はミス・ヴァリエールの使い魔という......」

 

「ニーアです。」

 

ルイズが答える。オスマンはそうだそうだと思い出したような様子だ。

 

「ギーシュ・ド・グラモンとの決闘にて圧勝したとの事は周知の事実だ。君なら彼女らを守ってくれるじゃろう。」

 

「.....あまり期待するな。」

 

相手に一度遅れをとっている以上、A2は自信たっぷりには言えなかった。たとえそれが相手の土俵であったとしても。

オスマンはそっとA2に近づき、彼女だけに聞こえる声で呟く。

 

「後で話を聞こう、ヨルハ機体よ。」

 

「ッ!!」

 

と、先程とは打って変わって警戒した素振りを見せるA2だが、老人は気にせずほっほっほと笑っている。

 

「彼女らなら心強い。必ずフーケを捕らえるのじゃ!」

 

「杖にかけて!!」

 

捜索隊に志願した者達は高らかに宣言した。フーケ捜索隊の結成である。

 

 

隠れ家のある森までは馬車による移動となった。御者はフーケについての情報を最も詳しく知っているロングビルが担当することになった。

 

「ミス・ロングビル、なぜ御者を自分で?手綱なんて付き人にやらせばいいじゃないですか。」

 

貴女は貴族ではないのかとルイズが問いかける。しかしロングビルは静かに笑みを浮かべながら首を振り否定を示す。

 

「いいのです。わたくしは貴族の名をなくした者ですから。」

 

それでもそれなりの地位を確立しているのだから少し位いいだろうとルイズは思った。

 

「だって、貴女はオールド・オスマンの秘書なのでしょ?」

 

しかしロングビルは相変わらず微笑みを浮かべている。

 

「ええ、でもオスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘らないお方ですよ。」

 

露骨に話を逸らした。あまり自分の事情に触れてほしくないのだろうか。

A2は騒ぎが起きたとき、ちょうど調査をしていたという秘書の女を疑っていた。

こうして自分が進んで御者を引き受けたあたり、何か罠の匂いを感じたからだ。

情報ではフーケは男だそうだが、自分と戦ったのは顔は見えなかったが体格は女のように感じられた。

 

「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ。」

 

キュルケがロングビルに対して問うも、ロングビルは困ったような笑みを浮かべるだけで、何も答える様子はなかった。

やはりただ事情を知られたくなくて、 彼女がフーケという訳ではないのだろうか。

とりあえずA2は、この場の誰にも言わず自分が警戒するだけに留めておいた。

 

森に入った。そこは馬車が入る程のスペースがないため、そこからは徒歩で進むことになった。

歩けるような場所と言ったら、すぐそこにある小道ぐらいである。

森というくらいだから、辺りには木々が生い茂っており、昼間だというのに少し薄暗い。

その薄暗さが不気味さを引き立てており、ルイズはプルプルと身体を震わせており、キュルケに馬鹿にされていた。

怖くないわよ!と必死に反論するが、その言葉も震えており、ロングビルが苦笑していた。

 

「目撃者によると、この先にあるようです。」

 

風が吹き抜けており、その度に揺れる木々が怪しい雰囲気を感じさせるが、A2は物怖じせずに進んでいった。

やはりあの狂った世界を生き抜いた彼女では、これくらいの恐れなどにはビクともしないのだろう。

「あ!待ちなさいよ!」

 

ルイズが慌てて先に行ったA2に付いて行くと、後ろにいた三人もそれに続いていった。

 

 

 

「あそこが.....隠れ家?」

 

「恐らくそうでしょうね。」

 

しばらく進んでいったら、開けた場所に出た。その中心には情報通り廃屋がある。

四人はその廃れた小屋の中からは見えないであろう位置にあった茂みに身を隠し、作戦会議に入った。

 

「情報ではあの中にフーケがいるとのことですが....。」

 

ロングビルは小屋を指さして言う。

 

「罠かもしれない。」

 

珍しくタバサが口を開いた。やはり他の者より経験があるからかその言葉には信憑性があった。

 

「なら私が行く。」

 

この中で最も状況対応が出来るのはA2だ。その提案に異論は無く、皆納得していた。

 

「大丈夫?」

 

「こいつがあるからな。」

 

そう言ってデルフリンガーを抜くA2。デルフリンガーもどうやら気合いが入っているようだ。

 

「それ、インテリジェンスソード?」

 

そう問うキュルケにA2の代わりにデルフリンガーが自信たっぷりに答える。

喋る剣の姿に、ルイズとA2以外の者達がそれぞれ違う反応をしていた。

 

「もしかしたら近くに潜んでいる可能性もあります。私は近くを偵察してきますね。」

 

ロングビルはそう言って、その場を離れた。

 

「それじゃあ、さっさと回収するか。」

 

そう言ってA2はずかずかと小屋の中に入っていった。

 

 

中を調べるが、これといった物は見当たらない。

ここまでだろうかと調査を終えようとしたA2の後ろから、怪しい物音がした。

 

「なんだ?」

 

物音がした所を入念に調べると、A2にとってもはや見慣れたが何故ここにあるのかという物が見つかった。

 

「これは......ポッド!?」

 

そこにはA2をしつこく追いかけ回したが、最終的に良き友になったポッド042....とはデザインが若干違うポッドが転がっていた。

すぐにポッドを起動する。恐らくこれは他のヨルハ機体が所有していたものであるはずだ。

起動したポッドは特有の無機質な声で起動時のアナウンスを再生する。

 

「当該機体、ポッド040はヨルハ機体A2によって再起動された。」

 

続けてポッドは言う。

 

「当該機体はヨルハ機体1Dに、次に起動したヨルハ機体に使用権限を譲渡する最終命令がなされている。」

 

どうやら自分の随行支援を担当してくれるらしい。

 

「当該機体は現在をもって、ヨルハ機体A2の射撃支援を担当する。」

 

「要求:ヨルハ機体A2の行動目的の開示。」

 

いつかしたやり取りがここで成されている。

A2は今度はすぐに答えてやることにした。

 

「私の現在の行動目的は、"土くれのフーケ"の捜索及び捕縛。」

 

「了解。予測範囲にマーカーを設置。」

 

A2はニヤリと笑みを浮かべ、ポッドと共に小屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 




確か1Dって最初の廃工場でアンゲルスに撃墜されましたよね?その1Dが所有していたポッドを受け継ぐことになります。

ロストした筈の彼女はどうやらハルケギニアにいたようです。
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