The beginning of "Z"ero   作:気まぐれな男

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アンドロイドも人間と同じ食事をすると仮定しています。
ジャッカスさんがアジ食べさせてきましたしね。
シカとイノシシの肉も売れますから。


食事

使い魔を召喚出来たんだという達成感と、自分の不名誉な二つ名は変わるだろうと意気揚々と部屋を出るルイズ。

しかし部屋を出た廊下で出会った情熱的な赤髪をしたいろいろと豊満な女を彼女は先程の高揚した気分はどこえやら、忌々しげに睨みつけていた。

 

「あら、"ゼロ"のルイズじゃない。」

 

「ッ!」

 

先程よりも強く睨みつけている。その顔では折角の可愛らしい顔が台無しである。

 

「ツェルプストーじゃない。おはよう。」

 

「おはよう、ゼロのルイズ」

 

ニヤニヤした様子で言っていたツェルプストーとかいう女の様子にルイズはもう限界に近かったのか、言葉に言い表しづらいほどの顔に変化していた。

その様子に流石にツェルプストーはちょっと悪いことをしたような顔を一瞬したのをA2は見逃していなかった。

ツェルプストーはその少し意地の悪い顔をA2に向けると、

 

「アナタがこの娘に呼ばれたっていう平民?」

 

「.....一応、そういうことになっている。」

 

「へぇ〜、平民を召喚するなんて"ゼロ"のルイズらしいわ。」

 

「なんですって!この※△!」

 

我慢できなかったルイズはその可愛らしい雰囲気には似つかわしくないような暴言を吐く。

そんな様子にA2は薄く苦笑を浮かべ、ツェルプストーに目をやる。

ツェルプストーは相手に出来なかったのか、噛みつきそうな犬のように歯を食いしばって唸り声をあげているルイズを無視し、A2に話しかける。

 

「アナタ、名前は?」

 

「.......ニーアだ。」

 

「そう、ニーアね。私はキュルケ、"微熱"のキュルケよ。よろしく、平民さん。」

 

「........。」

 

A2にはあまり関わりたくないタイプの人間だったため、これ以上の会話はせずに無言になる。

 

「まぁ使い魔にするんだったらやっぱりこういうのじやわなくちゃ。おいで〜フレイム〜。 」

 

キュルケにフレイムと呼ばれ可愛らしく歩いてきたのは、地球では見たこともない大きなトカゲだった。思わずA2は戦闘時の構えに移行し、近距離戦闘装備の起動を始め.....ようとしたが。

 

「大丈夫よ。この子は大人しいから。」

 

「.......。」

 

A2は構えていた体を待機状態に戻すが、視線は未だに警戒していた。

 

「それって…サラマンダー?」

 

そう疑問を投げかけたルイズに、キュルケはふふんとルイズとは対照的な胸を張って誇らしげに言う。

 

「そうよ〜。見て!この尻尾!きっと火竜山脈のサラマンダーよ。微熱の私にはぴったりだわ〜。」

 

「.......なかなかデカいトカゲだな。」

 

「.....ニーア、何してんのよ。」

 

A2は目の前のフレイムをおそるおそる撫でてみる。目の前のトカゲは、きゅるるると特徴的な鳴き声を出して気持ち良さそうにしている。

 

「ほら!ニーア!さっさと食堂に行くわよ!」

 

ルイズはこのままでは不味いと思い、A2の撫でていなかった方の手をとり、強引にこの忌々しい女とトカゲ野郎から引き剥がす。

流石のA2も、この少女の割に大きな力になすがまま引っ張られるしかなかった。

ルイズはそのまま自分よりも大きなとびきりの美人を引きずって行くというシュールな光景をキュルケに晒しながら、食堂へと向かっていく。

 

 

 

「良い!?あんな@□女に関わっちゃ駄目よ!」

 

「いや、だがあのトカゲは」

 

「ぜーーーったい駄目!!!」

 

気持ちいいからと言おうとするも、ルイズの剣幕に圧倒されA2は言葉を止める。

そのあともルイズから長ったらしくヴァリエールとツェルプストーの因縁の関係について授業してもらった。

A2の世界には既に家系や家族なんていうものはなかったから、8割がた理解出来なかったが。

 

 

 

トリステイン魔法学院 食堂

 

「ここは.....。」

 

「食堂よ。この学院では貴族たるべき教育を存分に受けているから、食事も貴族らしいものでないといけないの。」

 

2Bの記憶にはこういう時にはよくポッドが答えてくれていたようだが、今のA2にはその代わりなのか、ルイズが少しの解説を添えて答える。

そこはA2が見た光景のなかでも最も豪華と言えるような光景だった。

A2にとって食事といえるものといえば、一部のアンドロイド達が人類の真似をして余った資源で作った味など関係ないような適当なものばかりだった。

しかしこれを見るとどうだろう。食事には見た目の美しさもあるということに、A2は更に人類のことを知った気がした。

.......実際のところ、ここまでするのは一部の上流階級のみであることは夢にも思わなかったが。

そう平静を装いながらも内心驚いていたA2をよそにルイズは自分の席に向かい、付いた途端にA2に言う。

 

「椅子、引いて。」

 

「それくらい自分でやれ。」

 

そうきっぱりと言うA2にルイズは怒りで顔を赤くしていると、それに比例して食堂にいた他の生徒達から笑いが起こる。

見兼ねたA2はめんどくさそうに小さなお嬢様のために椅子を引いてやる。

まだ怒っているであろうルイズは、マナーも何もない態度で椅子に腰掛ける。

 

「.......私の食事は?」

 

流石に身分の違いというものを少しは理解したA2は、ルイズにそう問いかける。

 

「......それよ!有難く食べなさい!」

 

普通、平民如きにこんな辱めを受けさせられたら怒りでその者の食事を抜きにするほど短気なルイズは、流石に相手がとびきりの美人であるから、譲歩に譲歩を重ねて貧相な食事位は与えてやろうと思った。

.......元々用意していたものだったが。

A2は自分の食事だというこの部屋の豪華な食事に比べて、常人であれば食事と呼べないようなそれを見る。

 

辺りのテーブルや椅子を眺め、自分の席は無さそうだと判断したA2は、ルイズになんの断りもなくプレートを持って外へ出る。

 

「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!」

 

「こんなとこでは食べられないからな。」

 

流石に他の連中が椅子に座って食べているのに自分だけ床で食べるのは彼女のプライドがあったのか、ルイズの答えを聞かずにA2はその場を去っていった。

他の生徒達からは未だにクスクスと笑いが漏れていた。

 

 

「はぁ、全く.....。」

 

そう呟きながら固くて味もしないパンをA2は齧っていた。

ほぼ水に近いスープで流しこんでも、全くもって食事らしい食事の感覚がしない。A2の記念すべき初の食事は、祝い事のような豪勢さの欠けらも無い貧相なプレートに乗った固いパンと不味いスープだった。

人類と同じように作られたアンドロイドには当然味覚が存在していた。だからこんな不味いものでは満足するはずもなかった。

 

「あっ、ニーアさん。」

 

そこに朝早くに世話になった使用人、シエスタが通りかかった。

シエスタはA2の持っている貧相なプレートに乗った貧相な食事を見てこう言う。

 

「あの、足りなく無いですか?」

 

「あぁ、足りないな。だが"ご主人様"の命令でな。」

 

A2は皮肉を含めて言う。朝の出来事があったとはいえ、彼女も少しだけルイズに怒っているのだろう。もちろん満腹という意味ではなく、満足という意味でだが。

 

「だったら、賄いでいいならお出ししましょうか?」

 

使用人からの魅惑の誘いにA2はすぐに、

 

「頼む。」

 

そう言ってA2は少し軽い足取りでシエスタについて行った。

 

 

 

「ああん?食事だって?」

 

今調理場にいた二人に不釣り合いな大男が、ドスの効いた声で聞き返す。

 

「賄いを出して貰えると聞いてな。」

 

そう言ってシエスタをみるA2に、シエスタは事の経緯を説明する。

 

「.......なるほどな。あんたも貴族共に呼ばれちまった哀れな苦労人って訳だ。....よし分かった!今出してやるからな!」

 

豪快な笑いを出しながら厨房にシエスタからマルトーと聞いた大男は、暫くするといい匂いのする皿を運んできた。

「おらよ!オレらの仲間に1杯だ!」

 

その皿にはA2が見たことのない料理が盛られていた。

 

「これは.....。」

 

「シチューですよ。お気に召しませんでしたか?」

 

いや、と短く答えたA2はそのシチューという聞いたこともない料理の一部をおそるおそるスプーンですくい、口に運ぶ。

 

「.....ッ!」

 

A2は目を見開く。その様子にマルトーは少しドキドキしながらA2の様子を伺う。

 

「どうだ?ニーアちゃん。」

 

「......美味い。」

 

美味しい。今まで食べたこともなかった味にA2の持っているスプーンが先程よりも速くその艶やかな口に運ばれる。

温かい。長かった戦いで身も心も冷えきっていたというのに、このシチューはその固まった氷をじんわりと溶かしてくれているようだ。

A2は、旧世界の人類が何故料理を愛したのか、何故一部のアンドロイドがあんなヘンテコなことをしていたのか分かった気がした。

それっきりスプーンを黙々と動かしているA2にマルトーは、

 

「ガハハハハ!そう言って貰うと、料理人冥利に尽きるってもんだぜ!な?」

 

と、豪快な笑いをしながら他の使用人達にも聞く。皆一様に同じく嬉しそうな笑いを浮かべており、A2のそばに居たシエスタもとても嬉しそうな顔をしていた。

 

「こんなに喜んでいただけるなんて....。」

 

使用人達の仕事へのやる気に繋がったのか、皆先程よりもテキパキと仕事をしていた。

 

食べ終えたA2はシエスタやマルトーを始め、使用人達にお礼をしていた。

 

「ありがとう。また、来てもいいか?」

 

「当然だ!またその食いっぷりが見たいぜ!」

 

マルトーの言葉に賛同して、皆頷いていた。

 

そうして部屋に戻るために席を立とうとすると、ちょうど小さなご主人様がA2の元に来た。

 

「ここにいたの!?どれだけ探したと思ってるのよ!」

 

「.....すまないな。」

 

A2は言葉とは裏腹に微笑みを浮かべながらルイズに謝る。

その笑顔を綺麗だと思ったルイズは思わずはにかみ、顔を赤くしながら俯く。

 

「....どうした?」

 

「なんでもないわ。これから授業だから、アンタも付いてきて!」

 

そう言ってルイズに手を取られ、調理場をあとにする。

行きがけにA2はもう一度使用人達に、

 

「ありがとう。」

 

と言って、ルイズに向き直り調理場を出た。

 

 

 

 




人の心を掴むのは料理だと言います。
創造主たる人類に似せたアンドロイドも同じだと思うんです。
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