これ終わったらやっとこさマルタだ…
ロマーニャ南部ターラント郊外の軍用飛行場に銀色の翼が並んでいた。
その機は巨大で他の機、ロマーニャ空軍では最大クラスの機であるサヴォイア・マルケッティSM82カングーロが小さく見えるほど巨大であった。
バルボ「ほお、これがリベリオンの最新鋭機B-29か…」
「はい、閣下。B-29シルバープレート。
あの爆弾を投下するためだけの特別仕様機です。」
この日、バルボは新たに設立された爆撃航空団第509統合爆撃航空団を視察していた。
バルボの横で第509統合爆撃航空団司令ヴァルター・マリエンフェルト大佐が説明する。
第509統合爆撃航空団は新兵器原子爆弾投下専門部隊で装備はB-29シルバープレート30機、3個飛行隊と各種特殊地上部隊から成る大規模な部隊であった。
その上人員は各国の精鋭爆撃機乗りが掻き集められ統合という称号がついていた。
バルボ「君たちがこのロマーニャの切り札だ。
期待しているよ」
マリエンフェルト「ありがとうございます、閣下。」
バルボが褒めるとマリエンフェルトは感謝の言葉を述べる。
するとバルボが聞いた。
バルボ「ところで、いつになったら実戦投入可能になる?」
マリエンフェルト「恐らく7月初頭前後かと。
元々機材の訓練等に関しては半年前からやっていましたから全員完熟してますがパンプキン爆弾の訓練はロマーニャに来てからです。
その上パンプキン爆弾の数も限られてますから…」
この部隊は元々リベリオンで半年以上訓練が行われていたため乗員の練度は非常に高かったが原子爆弾投下のための訓練はまだ始めて2週間程度、それも訓練用の爆弾であるパンプキン爆弾の不足から数回しか投下してなかった。
バルボ「分かった、パンプキン爆弾は私が手配しよう。
我々にはもう時間がない、今、こうしている間にも共産主義者は東欧を西に西にと進んでいる。
連中がベルリンに入る前に我々がベルリンに入らなければならないのだよ」
彼らには時間がなかった、それは政治的な意味でである。
すでにオラーシャ軍は東部戦線の最終局面に駒を進めつつあった。
彼らは一気にベラルーシを解放するとポーランドに雪崩れ込みワルシャワの東側、プラーガに近づきつつあった。
オラーシャがワルシャワを制圧し、東プロイセンに入るまで、それまでにヴェネチアのネウロイを片付けなければならなかった。
だが問題は山積みだった。
マルタを奪われ背後に強大な敵を抱えることになったのだ。
---------
その頃501では海水浴にしゃれ込んでいた。
そもそも501とマルタは1000キロ以上離れている上に今のところマルタのネウロイの活動はそれほど激しくなかった。
だが喜ぶウィッチを後目にある3人は冷ややかな目をしていた。
ハインツ「海なんてクソ食らえ」
ミラー「今日だけは何でもいいから出撃したいです」
ノヴァク「マルタにネウロイがいるのにこんなことしていいのか?」
まったく泳げない3人は楽しもうという気さえなくすぐにでも部屋に戻りたがっていた。
そんな三人にバルクホルンとシャーリーが声をかける。
バルクホルン「アレックス、泳ぐ練習を手伝おうか?」
シャーリー「ハインツ、私が泳ぎを教えてやるぞ」
二人はハインツたちが泳げるようになるのを手伝おうとしていた。
ハインツ「まあいいけどさ…」
ノヴァク「トゥルーデ、いいのか?」
二人はそう言って泳ぐ練習を始めた。
唯一ミラーはリーネに教えてもらおうと思っていたがリーネたちは近くの岩場で別の訓練をしていた。
坂本「いいか、訓練だからと言って気を抜いてはいかんぞ!」
ミーナ「久しぶりだから気をつけてね」
ヤン「あー、なんだこれ?」
ニコ「なんでしょうか?」
リーネ「この訓練だったんだ…」
宮藤「またやるんですか…」
ペリーヌ「なぜ私まで?」
岩場の上にいるリーネ、ペリーヌ、宮藤、ヤン、ニコにミーナと坂本が声をかけていた。
それは一年前ハインツたちもした訓練だった。
坂本「さっさと飛び込め!」
愚痴を言う5人に坂本が叫ぶと5人は一人ずつ海に飛び込んだ。
するとすぐにニコが出てきた。
ニコ「ふう、何とかなった…」
坂本「ニコ、早いな」
坂本はニコの早さに感心する。
ニコ「ええまあ。地中海と北海で一回ずつ墜落してますから。
まだ片手折った状態で水温が一度で荒れ狂う冬の北海の中でJu88の機内から怪我をした同僚をサメから守りながら脱出して一晩凍えながら漂流するよりかはずっとマシですよ」
ニコはこの中では一番洋上戦闘経験が多く、バトル・オブ・ブリテンとマルタ島攻防戦でそれぞれ一回ずつ北海と地中海に墜落していた。
前者は衝撃で左手を折りながらも負傷した副操縦士を担いで荒れた北海の海の中を泳ぎながら何とか水面に上がりサメから守りつつ機体に装備された筏で丸一晩漂流、翌日運よくゼーノートディーンストのDo24Tに発見され救助され、後者はマルタ島攻防戦でスピットファイアの攻撃によりエンジンに被弾、何とかシチリア島を目指して飛び続けたが辿り着けず墜落、漂流した末幸運にもシチリア島に流れ着いて助かった経験だった。
その過酷な話にミーナと坂本は苦笑いする。
続いてヤンとペリーヌがほぼ同時に上がってきた。
坂本「流石だなペリーヌ」
ペリーヌ「は、はい…日頃のご指導の賜物です。
何時如何なる状況において…」
するとペリーヌの後ろから手が伸びペリーヌをつかんだ。
宮藤「ぐっ…」
出てきたのは宮藤だった。
宮藤は溺れそうになりペリーヌを掴むが更に溺れかけたリーネもペリーヌを掴み3人は仲良く沈んでいった。
ヤン「あー、大丈夫なのか?」
ニコ「さ、さあ?」
その状況にニコとヤンは心配した。
---------
それから少しして、5人は訓練が終わるとリーネはすぐにミラーの元に、ヤンとニコはエイラとサーニャに合流した。
リーネはミラーの前に寝転がりミラーに話す。
リーネ「ミラーさん、疲れました…」
ミラー「お疲れ様」
そう言うとミラーは寝転がったリーネの頭をなでる。
それにリーネはミラーに近づくとミラーの太ももに自分の足を乗せた。
ミラーはリーネの積極的な行動に驚いた。
ミラー「リーネ?」
リーネ「駄目でしたか?」
ミラー「いいよ、どうせまだ何もしてないしリーネに泳ぎ方教えてもらおうと思ったけど疲れてるみたいだから後にするよ」
ミラーは泳ぎを教えてもらおうと思っていたがこの調子では無理と思い諦めることにした。
そのそばではエイラとサーニャとニコとヤンが話していた。
ヤン「いやぁ、まさかあんな目に合うとはな…」
ニコ「ですね…」
サーニャ「大変だったみたいですね、ニコさん」
二人は訓練のことをサーニャとエイラに話していた。
エイラ「まあ私とサーニャも最初来た時させられたからな」
ニコ「そうなんですか」
ヤン「大変だな」
するとヤンが隣に座りエイラを見て思い出した。
ヤン「ところで、日焼けは大丈夫か?
北欧と違ってこっちは結構簡単に焼けるぞ。
外で1、2時間昼寝しただけで結構焼けたぞ」
「「あ」」
ヤンが日焼けのことを聞くと二人はすっかり忘れていたようだった。
ニコ「二人とも北欧出身でしたね。
とりあえずパラソル持ってきますね、確か基地から一つ持ってきたはず」
ニコは二人を心配して基地から持ってきたパラソルを探しに立ち上がった。
ニコがパラソルを探しに行ったのと入れ違いで今度は海からハインツとノヴァクがバルクホルンとシャーリーと共に上がってくるとミラーの前に倒れた。
ハインツ「はぁ…疲れた…泳ぐって結構疲れるんだな…」
ノヴァク「トゥルーデ、もう動けない…」
疲れ切って動く気力さえ失った二人にシャーリーは苦笑いするがバルクホルンはノヴァクに喝を入れる。
バルクホルン「情けないぞアレックス!
軍人たるものこの程度弱音を吐くな!」
ノヴァク「トゥルーデ…寝る」
ノヴァクはもはや言い返す気力さえなく顔を突っ伏した。
それにバルクホルンはため息をつく。
バルクホルン「はぁ、まあいい。
慣れないことをしたんだ、少し休憩しよう。
泳ぎ続けるのも体に悪いしな」
ノヴァク「体冷えるからな。それに夏風邪は治りにくいし」
話しているとバルクホルンはノヴァクの隣に寝転がった。
バルクホルン「夏風邪をひいてもアレックスが看病してくれるなら問題ない。
アレックスが風邪をひいても私が看病するから安心しろ」
ノヴァク「逆にうつすぞ、風邪。
こんな風にキスばっかりしてな」
そう言ってノヴァクはいつものようにバルクホルンにキスする。
バルクホルン「なら私が風邪をひいても同じだな」
そう言うと今度はバルクホルンからキスした。
二人はすっかり自分達の世界に入り周りの目を無視してイチャつく。
二人のイチャつきに気を遣い周りの人間は二人から目を逸らした。
そうこうしているとニコがパラソルを持って帰ってきた。
ニコ「ごめん、ちょっと探すので手間取って。」
ニコは謝るとサーニャとエイラの後ろにパラソルを立てた。
ここでふとニコは気がついた。
ニコ「ところで宮藤さん、ルッキーニさん、ペリーヌさんは?」
「「え?」」
ニコがふとこの三人がいないことに気がついた。
すぐに周りを見回すが近くにいたのは何か話しているミーナと坂本、一人で遊んでいるハルトマン程度だった。
シャーリー「おかしいなぁ…ルッキーニの奴、魚採りに行くとか言って岩場に行ったんだけどなぁ…」
リーネ「芳佳ちゃんとペリーヌさん、どこ行ったんだろ?」
3人がいない事に気がつきシャーリーとリーネは心配になりミーナと坂本のところに向かい、それに続いてエイラとサーニャ以外もミーナの元に向かった。
ミーナ「ルッキーニさんと宮藤さん、ペリーヌさんがいない?」
シャーリー「ああ、魚を採りに行くとか言って岩場の方に行ったっきり戻ってこないんだ」
ミーナはシャーリーとリーネから話を伝えられるとミーナは驚いた。
話を聞いた坂本はある事を思い出した。
坂本「確か宮藤たちも訓練後へ岩場に行ったはずだが」
ミーナ「行ってみましょう」
訓練後宮藤達も岩場に行ったという話を聞いてミーナたちは岩場に向かう事にした。
だが途中で水中に洞窟があることが分かると泳げないミラー、ハインツ、ノヴァクと疲れて泳げないリーネは置いてきぼりにされミーナ、坂本、バルクホルン、シャーリー、ニコ、ヤンだけが向かった。
そして洞窟に入るとバルクホルンが地面を触り確認する。
ミーナ「どう?」
バルクホルン「ちょっと前に誰かが歩いてる。
この奥に入って行ったんだろう。」
微かに残る痕跡から誰かが通った事を確認した。
だが目の前には二つの穴があった。
シャーリー「どっちに行ったんだ?」
坂本「二手に分かれるか」
ミーナ「分かれるのは危険だわ」
ミーナは分かれるのは危険だと思いどちらか一方から探す事にした。
ニコ「じゃあ、左から行きます?」
ミーナ「いえ、右から行きましょう」
ニコが左を提案するがミーナは右を探す事にした。
だが実は宮藤達はニコの言った左に行っていた。
その為間違った方向に向かったミーナ達はいないことも知らずに洞窟を進んでいった。
するとハルトマンが愚痴った。
ハルトマン「全く手間掛けさせるなぁ…」
シャーリー「でも探検みたいで楽しいな〜」
ヤン「だな。変なアドレナリンが出てるのがわかるよ。
実は結構こういうの好きなんだよ」
バルクホルン「全く遊びじゃないんだぞ」
ヤンとシャーリーは能天気に言うがバルクホルンが注意する。
ヤンは歴史好きであるためこう言うものは好きだった。
ふと坂本はあることの気がついた。
坂本「人口の洞窟のようだが…」
ニコ「そうみたいですね。煉瓦の材質とかからして15〜7世紀ごろですかね?」
坂本が人口の洞窟だと言うとニコが煉瓦の材質や風化度合いから時期を推察した。
それに坂本は感心する。
坂本「詳しいな」
ニコ「実は骨董品の収集が趣味で、結構この手のものは詳しいんですよね」
ミーナ「そうなのね。
私達が基地にしているところは元々は古代のウィッチの遺跡だったからこの洞窟もその一部じゃないかしら?」
ヤン「それにしては近代的すぎる。
こりゃ中世後期から近世初期だからおそらく遺跡の後に作ったんだろう」
ミーナの想像に歴史に詳しいヤンが補足する。
ヤンはこの遺跡が地上の遺跡とは別の時代のものと睨んでいた。
すると一行は大きな壺を見つけた。
ミーナ「これは随分立派な壺ね」
ミーナが感心するがその横でニコは別の事を考えていた。
ニコ「うーん、暗くてよく見えないな。
ちょっと下ろしてみるか、ヤンさん、肩貸して」
ヤン「あ、ああ」
ニコは器用にヤンの肩に上がると壺を手に取った。
ニコ「よいしょっと。うん?この壺何か入ってる」
ニコは中に何かが入っている事に気がついた。
ニコとヤンは壺を慎重に下ろすと壺の蓋を開けた。
すると中から微かにアルコールの匂いがし赤い液体のようなものが入っていた。
ニコ「もしかしてこれ、ワイン?」
ヤン「ほんとだ」
ミーナ「ワインね」
中に入っていたのはワインだった。
ふとニコが聞いた。
ニコ「で、これどうやってもって帰る?」
ヤン「持って帰る気なのか…」
ニコ「状態がそこそこいい壺だよ?
持って帰って詳しく調べないと分からないけどそれなりのお値打ち物だと思う」
ニコの骨董品コレクターの血が騒いでしまいニコはこの壺を持って帰ろうとしていた。
だがニコにバルクホルンが注意する。
バルクホルン「ニコ、それは後だ。
まずは宮藤たちを探すのが先だ」
ミーナ「ええ。多分この奥かしら」
壺は後回しに一行はさらに奥に進んだ。
すると広い部屋のようなところに入り、そこにはルッキーニ達もいた。
シャーリー「お、ルッキーニだ」
バルクホルン「宮藤たちもいるな」
シャーリー「おーい!何やってたんだよー!」
シャーリーたちを見たルッキーニ達もシャーリーたちに声をかける。
宮藤「シャーリーさん!」
ミーナ「心配したのよ」
坂本「無事のようだな」
ニコ「ですね…」
宮藤たちは無事そうであった。
それにミーナ達は安心した。
---------
その日の夜
ハインツ「しかし物騒だな、この基地の下にそんなものがあるとは」
ミラー「宝を守る魔法が残って、その魔法が巨大な石像を動かすとかどこの冒険小説ですかね?」
ハインツとミラーは昼間あったことを話していた。
昼間、ペリーヌ達は偶然にも宝箱を見つけその中に入っていた地図を元にあの洞窟に向かい途中、合流した広い部屋で巨大な動く石像と遭遇したのだ。
結局大した宝など見つからなかったが。
ハインツ「まあペリーヌがガリアの復興に宝を使いたかったんだろうがそもそもなぁ…」
ミラー「大混乱で内乱中、アルデンヌ地方と南部にゲリラが山ほど。
その上最近は北部にも飛び火し始めてる、こんなところで復興なんて無茶ですよ。
すぐ全部焼かれますよ」
ペリーヌが宝に拘ったのはガリアの復興のためだったが現状を考えればそんなのは無茶極まりなかった。
何せガリアは内乱から各地で、特に南部の山岳地帯とランス周辺、そしてセダンからアルデンヌ地方に至る一帯で激しいゲリラ戦が展開されていた。
それはロマーニャ軍のニッツァとサヴォアの併合後悪化の一途をたどりゲリラ戦はペリーヌ達の北部にも飛び火しつつあった。
そのため各地では対ゲリラ戦と称して虐殺や焼き討ちが相次ぐ血で血を洗う血みどろの戦いが続いていた。
ハインツ「ま、うまくいけばいいけどな」
ミラー「ですね」
二人は窓の外を見ながらつぶやいた。
(解説)
・ヴァルター・マリエンフェルト
史実ドイツ空軍爆撃総監。
44年に事故死して飛ばされる。
現在第509統合爆撃航空団司令。
ちなみにニコが左を提案したのは勘がいいからではなく人間は進むべき方向が分からない時左に向かう習性があるんです。
第509統合爆撃航空団のモデルは米陸軍航空隊第509混成部隊(史実で原爆を投下した部隊)です。