WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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ペリーヌが地味に標的にされてます。

この回、恐らく最も狂気に満ちてる。


第31話:戦神と十字路

宮藤「あ、中佐たち帰ってきた。

   あれ?」

 

リーネ「なんだろう?」

 

 作戦会議が終了してから数時間後、洗濯物を取り込んでいた宮藤とリーネがミーナ達が乗った輸送機を見つけるがその後ろに10機ほどのC-54が続いているの気が付いた。

 最初にミーナ達の輸送機が降りた後続いてC-54が順番に着陸する。

 着陸したC-54の機内からは一機からはアイケが、残りのC-54からは完全武装のカールスラント軍の兵士がフィールドグレイの開襟の軍服を着た士官の指示の下降りると整列していた。

 

「第1、第2、第3中隊整列!」

 

アイケ「シュターレッカー、頼んだぞ」

 

シュターレッカー「は」

 

 この兵士はアイケの部下の特別行動部隊から抽出した直卒の護衛・警備部隊だった。

 指揮官のフランツ・ヴァルター・シュターレッカー大佐にアイケが声をかける。

 

アイケ「ああ、間違っても誰も殺すなよ。

    この基地にはリストに載っている奴が数人いるが指一本触れるな。

    やるなら許可を得るかにしろよ」

 

シュターレッカー「分かってます。監視だけにしておきます」

 

 アイケはこの部隊が問題を起こさないよう注意する。

 それはシュターレッカーも同じだった。

 

アイケ「ああ、特にクロステルマンは注意しろ。

    ガリアの王党派との関係が疑われてる、ハイドリヒとネーベも疑ってるんだ」

 

シュターレッカー「は」

 

 アイケは“王党派との関与”が疑われているペリーヌの監視をシュターレッカーに命じると基地に向かった。

 ペリーヌはその生まれや関係からガリアの治安を掌握するラインハルト・ハイドリヒ中将とアルトゥール・ネーベ警察中将から疑われ監視対象となっていた。

 彼らの原則は疑わしきは監視し動きがあれば始末しろだった。

 その怪しい動きをハインツ、ミーナ、坂本は遠巻きに眺めるだけだった。

 

---------

 

 少ししてブリーフィングルームでは黒板にマルス作戦の艦隊陣形図が張られミーナ、ハインツ、坂本がウィッチたちに作戦を説明していた。

 

ミーナ「持てる全ての戦力でネウロイの巣ごと殲滅し一気に片をつける、以上が最終決戦の内容よ」

 

 ミーナがマルス作戦を一通り説明した。

 するとバルクホルンが質問した。

 

バルクホルン「もし失敗したら?」

 

ミーナ「失敗した場合に関してはアイケ大将が」

 

 ミーナはバルクホルンの質問をアイケに振った。

 アイケはそれを聞いて黒板の前に立つと一枚の地図を出して説明する。

 

アイケ「もし失敗した場合その時点で次の作戦、クロスロード作戦が発動される。

    クロスロード作戦も失敗した場合は数日の猶予を置いて陸軍による攻勢、シングル作戦、ダイアデム作戦を発動する。」

 

 マルスが失敗した場合行われるのがクロスロード、更にこれも失敗した場合陸軍部隊による攻勢シングル、そしてダイアデムによって何としても叩き潰すつもりだった。

 

アイケ「この二つも失敗し、更にはネウロイがポー平原を突破した場合、その時は我々はロマーニャ全体に10の防衛線を築き徹底抗戦する。」

 

 その地図にはロマーニャ半島に10本の線が書かれていた。

 アイケはダイアデムやシングルが失敗した場合のことも考慮していた。

 

アイケ「北からポー線、ジンギス・カン線、ゴシック線、トラメジーノ線、ヴィテルボ線、カイザー線、グスタフ線、ラインハルト線、バルバラ線、ボルトゥルノ線、ロマーニャは細く、山がちだ。

    この地形ならばネウロイと言えど機動には大きな制限がある。

    守る程度簡単だ、連中には我々からこの地を奪いたければ痛い目を見ることを教育してやるつもりだ」

 

 イタリア半島は真ん中にアペニン山脈が貫いていた。

 さらに幅は狭い、これは防衛側にとっては非常に有利な条件だった。

 狭く、山がちということは敵の機動を制限できるのだ。

 それは史実でもドイツ軍とイタリア社会共和国軍が43年から終戦までイタリアを守り続け最終的に北イタリアまで連合軍が到達したのは終戦直前だったことからも明らかだった。

 それを逆手に取りアイケはロマーニャに10の防衛線を築くつもりだった。

 

ミラー「ところで、さっきから閣下がおっしゃってるクロスロード作戦って何なんですか?」

 

 するとミラーが手を挙げて質問した。

 

アイケ「そうだな、説明しよう」

 

 ミラーの質問にアイケは指を鳴らして答えた。

 すると室内にMP35やMP18、MP41などの短機関銃やライフルを持ったカールスラント軍の兵士が乱入した。

 

シャーリー「な、なんだ!」

 

ルッキーニ「シャーリー、怖いよぉ…」

 

ノヴァク「なんだこいつらは!?」

 

ヤン「いったい何者だ?」

 

 乱入した兵士はウィッチたちを取り囲み銃を向ける。

 それにルッキーニは怯えシャーリーに抱き着きノヴァクのヤンは混乱し他のウィッチも同じような状況だった。

 兵士たちが全員入ると一人の開襟のフィールドグレイの軍服を着た将校が入ってきた。

 

アイケ「上出来だ、シュターレッカー」

 

シュターレッカー「感謝の極み」

 

 アイケは入ってきたシュターレッカーを褒める。

 それにシュターレッカーは謙遜するがその顔にペリーヌ、リーネ、宮藤、ヤン、ニコは心当たりがあった。

 

ペリーヌ「まさかあの人は…」

 

リーネ「もしかして…うっ…」

 

ヤン「ニコ、彼奴は…」

 

ニコ「ああ…不味いな…」

 

宮藤「ミーナ中佐!私その人知ってます!

   アンナさんの家の近くで見ました!」

 

 ペリーヌ達はあの光景、あのアンナの家の近くで見た虐殺を思い出しリーネは吐き気を催す。

 そして宮藤が立ち上がってシュターレッカーを指さして叫んだ。

 それを聞いてミーナ達は驚いた。

 

ミーナ「なんですって!」

 

バルクホルン「おい!じゃあ!」

 

ハインツ「こいつらが…」

 

 この兵士たちはあの虐殺に関わった兵士たちだった。

 それを聞いて絶句する。

 

アイケ「どうしたのかね?彼の顔に何かついているのか?」

 

ミーナ「閣下…その…」

 

宮藤「アンナさんの家の近くで人を殺してるのを見ました!」

 

ハインツ「宮藤!あのバカ!」

 

 ミーナが誤魔化そうとすると宮藤が叫んだ。

 それを聞いた瞬間、周りの兵士がウィッチたちに銃を向ける。

 だがノヴァクはこの状況を半分理解できず隣のバルクホルンに聞いた。

 

ノヴァク「ちょっと待て、一体何が起きてるんだ?

     宮藤は何を見たんだ?」

 

バルクホルン「アレックス、その…冷静になって聞いてくれ。

       アレックス、この兵士たちは、虐殺に関わった可能性がある」

 

ノヴァク「虐殺?それって…」

 

バルクホルン「ああ、殺戮部隊だ…アレックスの家族を殺したのと同じ…」

 

 ノヴァクはバルクホルンの説明を聞いて怒りに震えるがバルクホルンが抱き着いて落ち着かせる。

 

バルクホルン「落ち着け、アレックス。私はお前を失いたくない、だから…」

 

ノヴァク「分かってる、トゥルーデ」

 

 バルクホルンの説得にノヴァクは落ち着いた。

 だが兵士達、そしてシュターレッカーとアイケに恨みのこもった目で睨んだ。

 向けられたシュターレッカーとアイケはそんなことも気にせずミーナに話しかけていた。

 

アイケ「ミーナ中佐、君らには黙ってもらうことが一つ増えたな」

 

シュターレッカー「ええ、もし口外した場合は…」

 

アイケ「ウィッチ達の諸君、安心したまえ。

    この件とこれから説明する件を一切口外しなければ君らには指一本触れない、但し外部に少しでも漏らせば全員を縄で吊るす、いいね?」

 

 アイケがウィッチ達に口外しないよう脅す。

 だがそれでも恐怖心は拭えなかった。

 

アイケ「少なくとも彼らが処理した連中は大半が犯罪者だ。

    無実の人間は殺してない、そうだろ?」

 

シュターレッカー「ええ、我々が処分したのは共産主義者、無政府主義者、反動勢力、スパイなどです。

         貴方方には法を犯さなければ危害を加える意思はないのでご安心を」

 

 二人はウィッチ達に説明した。

 だがそれで納得できるわけではなかったがアイケは話を進めることにした。

 

アイケ「まあいい、兎に角話を進めよう。

    クロスロード作戦、この作戦の核となるのはリベリオンが開発した新兵器、それが中心となる」

 

 アイケはウィッチ達にクロスロード作戦の説明を始めた。

 クロスロード作戦の核となるのはリベリオンが開発したある新兵器だった。

 

ミーナ「その、閣下。

    その新兵器というのは?」

 

アイケ「いいだろう、フィルムと映写機を持ってきてれ。

    部屋も暗くしろ」

 

 アイケにミーナが新兵器のことを質問するとアイケは部下にフィルムと映写機を持ってこさせ部屋のカーテンを閉め電気を消した。

 そして準備ができると映像と共にナレーションが始まった。

 

『1905年、物理学者のアインシュタインは特殊相対性理論の中で言った、E=mc2と。

 即ち質量=エネルギーである、質量が消えた時、その瞬間膨大エネルギーが放出される。

 だがそれを実証できるだろうか?』

 

 アインシュタインの肖像写真、続いてE=mc2の式とこの式のイメージ映像がナレーションと共に流れた。

 続いて画面が暗くなると砂漠の映像に変わった。

 

『1945年ニューメキシコ州アラモゴード。

 この日、人類の技術と英知の結集によって新時代が開かれた』

 

 砂漠の映像にこのナレーションが被せられた。

 続いて突如カウントダウンが始まる。

 

『5、4、3、2、1、0』

 

 カウントダウンが終わった瞬間、画面が一瞬白くなると砂漠に巨大なキノコ雲が発生した。

 

バルクホルン「な、なんだ…」

 

ルッキーニ「シャーリー!怖いよぉ…」

 

シャーリー「何が起きてるんだ…」

 

 その映像に全員が絶句した。

 彼女たちには何が起きたか理解できなかった。

 そのキノコ雲の映像にさらに続いてナレーションが続く。

 

『これが人類の英知の結晶、人類は太陽を作ることに成功した。

 これが、原子爆弾である』

 

 このナレーションが終わると映像が真っ暗になりクレジットタイトルが流された。

 そこにはリベリオン陸軍の名やリベリオンの有名大学の名が続き最後にはマンハッタン工兵管区と書かれていた。

 すべての映像が流れ終わり電気がつけられカーテンが開いて明るくなってもウィッチ達は絶句していた。

 この映像は彼女たち、それどころかハインツたちでさえ見たことがない程衝撃的なものだった。

 

アイケ「これを、ヴェネチアに投下する。

    君らには投下する爆撃機の護衛を行ってもらいたい」

 

「「え?」」

 

ハルトマン「これを…」

 

バルクホルン「ヴェネチアに…」

 

ルッキーニ「ヴェネチアの街はどうなっちゃうの?」

 

 アイケの発言にさらに驚いた。

 これをヴェネチアに投下するのだ。

 それにさらに驚きルッキーニはヴェネチアの街がどうなるか聞いた。

 

アイケ「まあヴェネチアの街は灰と化すだろう」

 

ルッキーニ「駄目だよ!ヴェネチアの街を壊しちゃ!」

 

アイケ「ガキが、ヴェネチアの街など大したことない。

    どうせよその国の街だ、それに聞くが君らはどちらを取る?

    たかが都市の街並みか、それとも数百万の兵士の命か」

 

 ルッキーニが抗議するがアイケは取り合う気などなかった。

 彼からすればヴェネチアの街など大したことなかった。

 アイケはそのまま演説を始める。

 

アイケ「この爆弾一つで数百万の兵士の命が救われるだけではない!

    この爆弾の威力に世界は恐れおののく、あのオラーシャの劣等民族の共産主義者の心胆を寒からしめることができるのだ!

    想像したまえ、タバコの箱程度の爆弾が爆発するだけで都市の一角を吹き飛ばされるのだぞ。

    もしもこれが爆弾のサイズになって自分達の頭の上から突如振ってきたら。

    この戦略的価値を君らはたかが一つの都市の街並みを守るなる軍事的に全くもって価値のない事のために放棄するのかね?

    これはただネウロイを殲滅する作戦ではない、戦後世界のパワーバランスを決める戦いだ!

    我々が求めるのは何だ!」

 

「「勝利!」」

 

 アイケの演説に周りの兵士達は熱狂しアイケの演説に大声で答える。

 

アイケ「そうだ!勝利だ!

    我々が求めるのは勝利だ!

    ジークハイル!」

 

「「ジークハイル!ジークハイル!ジークハイル!」」

 

アイケ「ジークハイル!」

 

 その熱狂に兵士たちは右腕を挙げ叫ぶ。

 兵士たちの狂気にウィッチ達は恐怖しノヴァクは軽蔑のまなざしを向けた。

 この狂気はウィッチ達にある決意をさせるのに十分だった。

 

ミーナ「ハインツさん、何としてもマルス作戦を成功させるわよ」

 

ハインツ「え?」

 

 突然ミーナは小声でハインツに話しかけた。

 それにハインツは驚いて聞き返す。

 

ミーナ「こんな人たちの思惑に乗ったら戦争がまた起きてしまうわ、だから何としてもマルス作戦を成功させてクロスロードを潰すわよ」

 

 ミーナは何としてもマルス作戦を成功させクロスロード作戦を潰す決意を固めた。

 だがそれはハインツたちの意思に反していた。

 

ハインツ「ミーナ、何言ってるんだ?

     閣下の言うことにも一理あるぞ、共産主義者を心胆を寒からしめることの何が不味いんだ?」

 

ミーナ「え?」

 

ハインツ「そもそもこれで数百万の兵士の命が救われるなら最もじゃないか」

 

 反共主義者でアイケの考えにも共感していたハインツにはミーナがなぜ問題視するか理解できなかった。

 彼からすれば共産主義者を恐怖させるだけでなく数百万の兵士の命が救われることの方が重要だった。

 

---------

 

 それから4日後、501のウィッチ達は数機のB-29を護衛していた。

 だがその表情はハインツやニコ、ヤン、ミラー、ノヴァクを除いて暗かった。

 

ハインツ「どうしたんだよ、そんな時化た顔して」

 

シャーリー「逆になんでハインツは普通で居られるんだよ」

 

ハインツ「そんなに不満か?クロスロード作戦は」

 

 彼女たちが不機嫌だったのはこの飛行がクロスロード作戦の事前演習の一つだということだった。

 原子爆弾を投下後はウィッチと爆撃機は全機一斉に155度の旋回をした後全速で離れるのが命令だった。

 これはもちろん原子爆弾の爆風から守るためだった。

 だが彼女達はそもそも原子爆弾をヴェネチアに落とすこと自体が不満だった。

 

シャーリー「なんで落とさなきゃいけないんだよ」

 

ハインツ「敵を殲滅するためだろ?

     勝つためには仕方ない、コテラテルダメージって奴だ」

 

シャーリー「でも!」

 

ハインツ「シャーリー、お前も知ってるだろ?これが戦争だって。

     俺達はただの駒、考えるけどただの駒だ。

     上の命令に従って作戦を成功させ勝利に導くそれだけだ」

 

 不満を言うシャーリーをハインツが黙らせる。

 すると無線からマリエンフェルトの声が聞こえてきた。

 

マリエンフェルト『ウィッチ達の諸君、そろそろ投下する。

         離脱の用意!』

 

 それを聞いてウィッチ達が身構えると一機のB-29からパンプキン爆弾が投下、眼下のキオッジャの街に落ちていった。

 作戦開始まで6日前、一週間を切った日のことだった。




(解説)
・フランツ・ヴァルター・シュターレッカー
史実アインザッツグルッペンA司令官、オストラント保安警察及びSD司令官
42年にロシアでパルチザンに殺害され飛ばされる。
アイケ直卒の特別行動部隊の司令官。
各地で粛清・清掃作業・情報保全・高官の警護活動を指揮

・ラインハルト・ハイドリヒ
史実ベーメン・メーレン保護領副総督、保安警察及びSD長官、インターポール総裁
金髪の野獣として知られる。
42年に暗殺された際飛ばされる。
現在連合軍ガリア軍行政司令部参謀第2課(秘密警察)課長
ガリアの清掃作業を仕切る。

・アルトゥール・ネーベ
史実国家保安本部第5局(クリポ)長官。
刑事警察のトップ。
44年にヒトラー暗殺に加担したため処刑され飛ばされる。
現在連合軍ガリア軍行政司令部参謀第3課(刑事警察)課長
刑事警察のボスとして治安維持を担当。
ちなみに所属は軍ではなく警察(ドイツでは警察は準軍事組織なので結構調べると戦間期は警官だった人多い。こいつは違うけど)


防衛線の名前は全部史実のイタリア戦線の防衛線の名前です(ただしポー線から南に順番に)
有名なのはグスタフ線とゴシック線だけど沢山あるんですよね…防衛線
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