WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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ガリア情勢回&サン・トロンの雷鳴の最初。

サン・トロン(フランス語読み)とシント・トロイデン(オランダ語読み)が混在してます。
一応現地はリンブルフ(オランダとベルギーに跨る地域)だからオランダ語が優勢らしい。


第4.1章:サンダーボルト
第1話:混迷のガリア


 ガリア、パリ

 パリ市内中心部のエコール・ミリテール。

 このガリア軍の士官学校だった建物は現在連合軍ガリア軍行政司令部の建物になっていた。

 その建物の中で連合軍ガリア軍行政司令部司令官フェードア・フォン・ボック、そしてガリア軍行政司令部参謀第3課課長アルトゥール・ネーベ警察大将、参謀第2課ラインハルト・ハイドリヒ大将、軍行政司令部法務課長アルトゥール・ザイス=インクヴァルト、軍行政司令部達が会議中であった。

 彼らはガリアの影の支配者だった。

 

 ガリア政府は混乱によりまともに機能せずその代わりに連合軍が本来はガリア政府へ移行するまでの間の臨時の行政組織でガリア政府の連合軍側の外部諮問機関であったガリア軍行政司令部が内政を実質的に牛耳り、その中で実際に内政を動かしていたのは法務担当のインクヴァルト、刑事警察を担当するネーベ、そして秘密警察を動かすハイドリヒの3人であった。

 彼らはガリア国民に対して飴と鞭で対処した、即ち軍行政司令部民生部民生部長フリッツ・トートが責任者となりガリア国民に対して連合軍の後方輸送路の確保というお題目を理由に道路や鉄道の整備のために雇用、更には補給関連の仕事や後方警備、後方設備の運用、整備にもガリア人を雇用し始め、その結果ガリア全域で犯罪率が低下、失業率と失業者も急激に減り、更に補給路と後方要員を確保することによりこの地域でまともに機能する港湾施設がシェルブールとマルセイユ、ツーロン、ブレストのみにも関わらず十分な補給を前線に送れるようになった。

 これが飴だった。

 

 そして鞭はハイドリヒが組織した秘密警察、そして各種義勇兵による反対勢力の徹底的な弾圧だった。

 王党派、共産主義者、無政府主義者、労働運動家、全てが徹底的に弾圧された。

 この戦略はそれなりの効果を示しこういった勢力は衰え続けた。

 

 

 ロマーニャのサヴォア・ニッツァ併合事件が起きるまでは

 

 

 この事件によりガリアのナショナリズムは燃え上がった。

 そしてロマーニャに対して及び腰な政府、政府を意のままに動かす真の支配者たる軍行政司令部と連合軍に対する反感が一気に広まった。

 反対勢力は「ガリアを取り戻せ!」「ガリア人のガリア人によるガリア人のためのガリア政府を!」を合言葉に連合軍とガリア政府を攻撃し始めた。

 5月には在ガリアカールスラント大使の暗殺未遂事件が発生し大使が重傷、同行していた秘書と2等書記官が殺害、その翌週には在マルセイユロマーニャ公使館が襲撃され公使と職員5人、警備のロマーニャ兵8人が殺害され死体はマルセイユ市内を引きずり回された挙句打ち捨てられ、公使館も焼け落ちた。

 さらに6月に入るとヒスパニアでヒスパニアを訪問中だったガリア政府外務次官が襲撃、またヘルウェティアでは在ヘルウェティアガリア大使館の参事官が誘拐されガリア政府は要求を拒否、結果参事官の死体が数日後にジュネーブ郊外で発見された。

 それだけでなく各地で連合軍を攻撃したが物量・戦力・訓練に勝る連合軍に平地では大半がすぐに撃破され多数のゲリラが殺害、又は捕縛された。

 一方山岳地帯や森林地帯、特にピレネーやアルプス、アルデンヌや一部地域、ランスやセダン、ディジョン周辺は別であった。

 この地域の掃討作戦は失敗又はかなり早い段階でゲリラそのものが戦術を変更したため完全な掃討をできずランスやセダン、ディジョンでは断続的なテロやサボタージュが続いていた。

 そしてピレネー、アルプス、アルデンヌはこの地域に展開する連合軍に対して継続的に攻撃を続けていた。

 

 その損害は相当なものであり6月だけで全体で約600人の正規兵が死傷、義勇兵、民兵、警察部隊、その他補助的任務に従事する補助要員も含めれば死傷者数は1000人を軽く超えるほどだった。

 そのため各地で血で血を洗う過酷な掃討戦が続き一部地域では1対50ルール、連合軍兵士一人の戦死に対してガリア人50人を処刑する過激なルールまで適応されたほどだった。

 

 さらに不味い事に地下に潜伏した反政府勢力やナショナリズム勢力の一部はゲリラ戦から方針を転換、デモやストライキなどの合法的闘争に打って出た。

 これは効果的で体面上ガリア国法を守っている連合軍は手を出しづらかった。

 

 それで勢いに乗った反政府勢力、左翼は7月14日パリ祭の日に行動に出た。

 この日ガリア全域において大規模なゼネストを敢行、エトワール広場を占拠した。

 これに対して連合軍は警備を強化する以外何もできず全てガリア警察とガリア軍に丸投げした。

 

 そしてこの日はこのデモが始まってから3日目に今後の対策等を話し合うために集まっていた。

 まず刑事警察を担うネーベが状況を言う。

 

ネーベ「デモだが、相変わらずエトワール広場を占拠したままだ。

    ガリア警察も軍もただ外巻きに見ているだけだ」

 

インクヴァルト「でしょうね。

        彼らも内心はデモに参加したいようですし。

        ところでこのデモとゼネストの首謀者は?」

 

 インクヴァルトがこのゼネストとデモの首謀者をハイドリヒに聞いた。

 するとハイドリヒは数人のファイルをテーブルの上に乗せる。

 

ハイドリヒ「こいつらだ、揃いも揃って共産主義者か民族主義者だ。

      こいつらの家族は既に拘束済みだ。」

 

インクヴァルト「そうか、しかしそれだけでは現状打開にはなりません。

        ここは思い切った行動が必要では?」

 

ボック「ああ、だが理由がない。

    相手が武装したとかそういう理由がな、現状は一部が暴徒化して周辺の商店等を襲撃程度じゃないか」

 

 思い切った行動がしたかったが理由がなかった。

 こういった運動の常である一部の暴徒化こそ起きてるがその程度であった。

 だが突如会議室のドアが開くと血相を変えた参謀が飛び込んできた。

 

参謀「大変です!大変です!」

 

ボック「何かあったのか?」

 

 慌てて飛び込んだ参謀に一同は驚きながら参謀を見る。

 すると驚きの報告をした。

 

参謀「警察とガリア軍の一部がデモに寝返りました!

   現在デモ隊はこちらに向かっています!」

 

ネーベ「なんだと!」

 

 警備を行っていた警察とガリア軍の一部が寝返ったのだ。

 それに一同が驚愕するがそれ以上に驚いたのが彼らがこちらに向かっていることだった。

 さらに悪い報告も続いた。

 

参謀「さらにオステルリッツ駅に留め置かれていた補給列車3本が襲撃され武器弾薬合計128トンが強奪されました!

   幸い強奪されたのは小火器のみで重火器等は下せず放置されているようです」

 

 パリ市内にあったオステルリッツ駅で鉄道網がゼネストで停止したため急遽留め置かれていたヒスパニアから来た補給列車3本が襲撃され積載されていた武器弾薬多数が強奪されたのだ。

 幸い荷下ろし設備がないオステルリッツ駅であったため大砲や戦車などは奪われなかったが大量の火器が流出したことには変わりなかった。

 

ボック「こちらの警備はどうなってる?」

 

参謀「は、予想ルート上にバリケードを設置し第325保安師団と第210戦車大隊の戦車を数か所に配置しています。」

 

 ボックが警備状況を聞くと参謀が答えた。

 彼らは市内駐屯の第325保安師団と第210戦車大隊を投入し各所にバリケードを築いていた。

 

ボック「分かった、デモ隊への発砲を許可する。

    ただし発砲していいのはバリケード地点で警告後でも接近した場合に限る」

 

参謀「は」

 

 ボックはデモ隊への発砲を許可した。

 それは最悪の結果を招くことになった。

 

---------

 

 パリ市内のあるバリケードでは兵士たちが準備していた。

 バリケードには兵士たちが銃を構えているだけでなくその後ろにはオペルブリッツにFlak38を積んだ車両や第210戦車大隊のⅠ号戦車やⅢ号突撃砲初期型などが待ち構えていた。

 バリケードには数丁のMG42が設置され周囲の通りにはコサックが待ち構えていた。

 すると通りの奥から群集が現れた。

 

「「ガリアを取り戻せ!」」

 

「「売国奴に死を!」」

 

「「ジャガイモ野郎は出ていけ!」」

 

将校「デモ隊に警告する!今すぐ解散するか移動せよ!」

 

 デモ隊に向けバリケードに設置された広報隊のスピーカー付きトラックから将校が怒鳴るがデモ隊は聞く耳を持たない。

 デモ隊は警告を無視し接近する。

 

将校「駄目だな、発砲用意、俺の指示で撃て」

 

兵士「は」

 

 将校が発砲準備を命じる。

 兵士たちはすぐに配置につき弾を銃に装填するとデモ隊を照準する。

 その間にデモ隊はどんどんと近づきバリケードの100mほど手間にまで接近した。

 

将校「よし、撃て!」

 

 将校の号令で一気に兵士たちの銃が火を噴いた。

 多数の機関銃の掃射にデモ隊の先頭が一斉に倒れる。

 さらにそこに兵士たちがライフルや機関砲を撃ち込み被害を拡大させる。

 そして煙が晴れるとそこには死体と撃たれ動けなくなり呻く参加者と逃げるデモ隊があった。

 

将校「突撃!突撃!追え!一人も逃がすな!」

 

 将校が命じると兵士たちが銃剣をライフルにつけるとバリケードを飛び出しデモ隊を追いかける。

 また一部の兵士は死体を一つずつ銃剣で刺し確認しさらに動けない参加者を射殺する。

 さらに戦車や突撃砲も動き出し動けない参加者をひき潰しながら前進しあっという間にデモ隊に追いつくと兵士たちと共にデモ隊を蹂躙する。

 その日の夕方までにデモ隊はほぼ壊滅、パリ中の通りが血に染まった。

 この日一日だけでデモ参加者合計5000人が殺傷された。

 

---------

 

 その日の夜、司令部に最終的な報告が届いた。

 

参謀「という事です。

   閣下、これは少しやりすぎでは?」

 

ボック「君、このぐらいやらねばいかんのだよ」

 

 参謀の意見にボックは窓の外を眺めながら答える。

 

ボック「飴と鞭、それでもってこの国を統治する。

    それが我々のやり方だ。

    この国に潜むすべての敵を殲滅する、それ以外でもってこの国を平和にすることなどできん。

    むしろ連中は我々に感謝すべきだ、我々がいなければこの国の大半の労働者は職を求めて街をさまようかスラムを作ることしかできないってことにな」

 

 これが彼らのやり方であった。

 

---------

 

 

 その数日後サン・トロン郊外の森

 この森の中で二人のブリタニア軍将校がいた。

 

副官「閣下、いいのですか?」

 

「ん?いいんだよ、どうせ編成中といっても師団長は暇だからな」

 

 それはサン・トロンで編成中だった第1義勇装甲師団ドンブロフスキ師団長イェジー・ノヴァク准将とその副官であった。

 二人は編成中という事から周辺地域の警備以外暇極まりなかったため森の中の川で釣りにいそしんでいた。

 

副官「はぁ、確かに暇ですけど…」

 

イェジー「ハハ、しかしさっぱり釣れないな」

 

副官「釣ったところで食べないですよね、閣下」

 

イェジー「まあな」

 

 雑談しながら釣りをしていると突然後ろから微かに銃声のような音が聞こえてきた。

 

副官「ん?なんでしょうか?銃声?」

 

イェジー「なんだろうな、ゲリラか?」

 

 二人はもしもの時に持ってきていたM1928短機関銃とステンMKⅤを手に取ると構える。

 銃声は徐々に近づきそれと共にエンジン音が聞こえ始めた。

 

副官「なんでしょうか?」

 

イェジー「なんにせよ、銃を持ってることには変わらんぞ」

 

 二人は銃声が向かってくる方向に銃を構える。

 銃声がどんどん近づくと同時に風もざわつき始める。

 

イェジー「来るぞ」

 

 次の瞬間、木々の梢を掠めてウィッチが上空を通過、そして大量のペイント弾が飛んでくると二人に何発も当たってしまった。

 

副官「クルヴァ!てめえら!どこ見て撃ってるんだ!」

 

イェジー「あーあ、新調した軍服がめちゃくちゃだよ」

 

 副官は飛んでいったウィッチに文句を叫びイェジーはぐちゃぐちゃになった新品の軍服を嘆いた。

 

副官「閣下、恐らくシント・トロイデン飛行場のウィッチです。

   抗議しましょう」

 

 副官は抗議しようと言うがそれにイェジーは何か思いついたような表情をする。

 

イェジー「いや、もっといい方法があるぞ。

     少し驚かしてやるか。

     とりあえず帰ったらシャワーを浴びてから車を用意してくれ」

 

副官「は」

 

 

---------

 

 

 この二人を流れ弾で誤射したウィッチ、それはサン・トロン基地のバルクホルンとノヴァクだった。

 二人は久しぶりに模擬戦をしていた。

 この二人の模擬戦は珍しく普段は別々の相手かペアを組んでが大半だった。

 そして二人の模擬戦は互いに実力と動き、癖を理解したうえでやっていたためその横でミーナとサン・トロンに元々いたハイデマリー・W・シュナウファー少佐、ハインツとハルトマンの空戦が終わっても未だ続けていた。

 

ハルトマン「あの二人何時になったら終わるんだろ」

 

ハインツ「さあ?弾が切れるまでじゃね?」

 

ハイデマリー「確かお二人ともそれなりに予備の弾を持って行ってましたよ」

 

ミーナ「はぁ…あの二人、久しぶりの模擬戦で張り切ってものね…」

 

 二人はこの模擬戦でいつもよりも多くのペイント弾を用意していた。

 そのせいで長引いていた。

 そしてそれから15分ほどたった後、二人が戻ってきた。

 二人共一発もペイント弾を食らっていなかった。

 

ハルトマン「トゥルーデ、やっと終わったの?」

 

バルクホルン「ああ、二人共弾が切れた」

 

ノヴァク「もう一発もないよ、あー疲れた」

 

 ハルトマンが聞くと二人は答える。

 二人共弾を使い切って終わっただけだった。

 

ハインツ「はぁ、んじゃあ帰るぞ。

     お前らバラマキすぎだぞ、流れ弾が何かに当たったとかないか?」

 

ノヴァク「あー、一つだけある。

     何発か地上にいた人に当てたな…あれ誰だったんだろうな?」

 

バルクホルン「ブリタニア軍の将校のようだったがどこで当てた?」

 

ノヴァク「さあ?」

 

 二人は地上にいたブリタニア軍将校に何発か当てたようだった。

 だがどこで当てたかもわからなかった。

 これが数時間後に波乱になるとは少しも分からなかった。




(解説)
・アルトゥール・ザイス=インクヴァルト
史実占領地オランダ高等弁務官。
ニュルンベルク裁判で死刑判決を受け46年に処刑され飛ばされる。
IQ141を誇る天才でニュルンベルク裁判にかけられた被告全員のIQの中では二番目(ただし一位のヒャルマル・シャハトは高齢で素点から15から20足されているので調整前だとIQは一位)
ガリア軍行政司令部で元弁護士という事もあり法務関連から統治に関わる。

・フリッツ・トート
史実ドイツ軍需大臣、アウトバーン建設総監
アウトバーン建設を指揮したテクノクラート。
彼の手腕からアウトバーンは交通インフラとしての優秀さだけでなく建築物としても非常に美しい物となった。
軍需大臣としては政治力の無さから特に何もできなかった。
42年に航空事故死して飛ばされる。
ガリア軍行政司令部では交通インフラ整備と失業者対策に手腕を発揮し輸送システムの構築と同時に失業者数を激減させた。


どうでもいいけどあらすじで作者が自己紹介とか挨拶するSS嫌い
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