遠すぎた橋、1944 独ソエストニア戦線、プライベート・ライアンの要素マシマシ。
第1話:猟犬の墜落
1944年7月、ネーデルラント
「援護しろ!」
「了解!」
アルンヘムの市街地でカールスラント陸軍第20義勇擲弾兵師団第21擲弾兵連隊第2大隊第3中隊の兵士たちが戦闘中だった。
PPsh41を持ったユーリ・タミクが崩れた壁の後ろで後ろを進むMG42を抱えたカール・ヨギに援護を頼む。
ヨギは走って壁から飛び出しMG42を瓦礫の上に据え付け一緒に来た弾薬手の弾帯を装填すると数十メートル先のネウロイに向け銃撃を開始する。
ネウロイはヨギに注意を向け攻撃しながら近づく、そしてそれを待っていたかのようにタミクは持っていたパンツァーファウストを取り出し構える。
タミク「よし…これでも食らえ!」
十分に接近するとパンツァーファウストを発射、破壊した。
そして土埃が消えネウロイがいなくなるのを確認するとタミクはヨギに近づく。
タミク「ヨギ!大丈夫か?」
ヨギ「ああ、何とか、ニュカネン、大丈夫か?」
ヨギは何とか無事だった。
ヨギは隣にいた弾薬手のニュカネンを呼ぶが反応がない。
振り向くとニュカネンは血塗れで動かなかった。
それを見るとヨギはヘルメットを脱ぐとそのまま座り込んだ。
ヨギ「またか…俺達は祖国でもないこんなところで何をしているんだ?
これが、エストニアの為なのか…?」
ヨギの呟きは煙と埃にまみれ爆音と銃声が鳴り響くアルンヘムの街に消えた。
---------
同じ頃、数百キロ離れたガリア北部パ・ド・カレー上空を3人のウィッチが飛んでいた。
ペリーヌ「ここも随分人が増えたようですわね」
リーネ「えっと、先週だけで5軒の家が使えるようになったみたい」
アメリー「記録記録っと」
リーネは書類を確認しアメリーは写真撮影を行う。
するとペリーヌのユニットが異音を出し始めた。
ペリーヌ「そろそろオーバーホールが必要ですわね」
リーネ「だったらカレーの基地に整備依頼を出します」
ペリーヌ「ええ、お願い。
ん?」
ふとペリーヌは微かに何かの音を捉え耳をそばだてる。
ペリーヌ「リーネさん、アメリーさん、微かに飛行機の音がしないかしら?」
リーネ「え?」
アメリー「言われてみれば何か聞こえますね」
ペリーヌ「上の方からしますけど何かしら?」
ペリーヌは上を向いた。
すると上空を戦闘機が飛んでいるのが見えた。
それだけならば通常の光景だった、だが問題はその機の国籍章だった。
ペリーヌ「ねえ、リーネさん、あの戦闘機の国籍章、見覚えあるわよね?」
リーネ「ええ、あれって…」
ペリーヌ「エジプト王国空軍…不味いわね、行きましょう!」
リーネ「はい!」
アメリー「え?え?え?ま、待ってくださいペリーヌさん!」
ペリーヌはその戦闘機の国籍章がエジプト王国空軍ものだと知っていた。
すぐにそれが不味い事だと判断しペリーヌとリーネは急いで戦闘機を追いかける。
置いて行かれたアメリーも急いで追いかける。
そして戦闘機の背後から近寄り右側に並んだ。
戦闘機のコックピットではパイロットが驚いた様子だった。
そして同時に追いついたアメリーが機体の国籍章を見る。
アメリー「あの、ペリーヌさん、この機体の国籍章って…」
ペリーヌ「国籍章が少し違うけどエジプト王国空軍機よ。」
アメリーが困惑しながら聞くとペリーヌが答えた。
その間にパイロットはペリーヌ達にジェスチャーで下を指さした。
それにペリーヌはOKサインを見せると戦闘機の前に回った。
リーネ「ペリーヌさん、なんて言ったんですか?」
ペリーヌ「多分どこかに着陸したいと思いますわ。
確か近くに飛行場跡地があったはずですわ、そこに連れて行きましょう」
ペリーヌは前に回ると主翼を振って合図し旋回、降下する。
しばらくすると広い荒れ地が見え始めた。
そこでペリーヌは離脱すると戦闘機は降下、主脚を出し着陸しようする直前、エンジンが止まり機体は高い降下率のまま地面に激突しポーポイズ現象を起こして地面から跳ねた。
数回跳ねると機体は地面を猛スピードで滑走し止まりかけたところで砲弾のクレーターに突っ込み機尾を上げた状態で止まった。
ペリーヌ「大変!」
すぐにペリーヌは止まった戦闘機のそばに駆け寄りユニットを脱いで機体のコックピットをこじ開ける。
中には頭を計器盤にぶつけて負傷したらしきパイロットがいた。
ペリーヌ「大丈夫ですか!?」
ペリーヌは体をゆすって声をかけるが反応はなかった。
次にペリーヌは呼吸を確認する。
ペリーヌ「息はあるようね」
リーネ「ペリーヌさん、手伝いましょうか?」
幸い呼吸はあった。
するとリーネが駆け寄りペリーヌに聞いた。
ペリーヌ「ええ、機体が燃える前に引っ張り出すわよ、せーの!」
リーネ「う、んー!」
二人はシートベルトを引きちぎるとパイロットの服を掴んで引っ張る。
そして何とか機体から引きずり下ろすとペリーヌはパイロットのゴーグルと帽子を脱がせハンカチで頭の傷を抑える。
ペリーヌ「リーネさん、急いで屋敷から包帯を持ってきてください!
アメリーさん、街に行って医者を呼んできてください!」
リーネ「了解!」
アメリー「分かりました!」
二人はすぐにユニットを履いて屋敷と街へと向かった。
二人を見送り出血を抑えようとしているとふと首元にかけられた認識票を見つけると回収する。
ペリーヌ「えっと、ユニオ・ヴァレリオ・レート?階級、少尉。
REAF、名前からしてロマーニャ人、いえイタリア人かしら?」
ペリーヌは回収した認識票からそう判断した。
---------
それから2、3時間後、ペリーヌの屋敷の一室ではあのパイロットが頭に包帯を巻かれて寝かされていた。
「ん…ん?知らない天井だ…」
ペリーヌ「気が付きましたか?」
パイロットが気が付くとベッドの隣に座ったペリーヌが聞いた。
「あ、ああ。ここは?カイロか?それともテルアビブか?」
ペリーヌ「パ・ド・カレーですわよ」
「は?パ・ド・カレー?フランスのか?
シナイ半島から3000キロ以上離れてるじゃないか!」
ペリーヌの言葉にパイロットは驚いた。
パ・ド・カレーはシナイ半島から3400キロも離れている、そのことが信じられなかった。
「私のベルトロならアレクサンドリアからせいぜいアテネまでしか行けないはずなのに…
一体何が…」
ペリーヌ「落ち着いてください、ユニオ・ヴァレリオ・レート少尉、でいいですわよね?」
ペリーヌは混乱するパイロット、ユニオ・ヴァレリオ・レートを落ち着かせる。
レート「なんで私の名前を…ああ、認識票か…
ユニオ・ヴァレリオ・レート、エジプト王国空軍だと少尉だがイタリア王国空軍、イタリア社会共和国空軍の元大尉でもある。
怪我の手当てをしてくれたのか?えーと」
ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマンですわ、レートさん」
レートはペリーヌの名前を聞くとお辞儀して感謝の言葉を伝える。
レート「ミスクロステルマン、怪我の手当てと救助に感謝する。
ところで、あんまり状況がよくわからないんだ、シナイ半島上空でイスラエル軍のBf109擬きと戦っていて撃墜されたと思ったらフランス上空とは…」
ペリーヌ「その、レートさん、恐らくですけど心当たりがあります。」
レート「本当か!」
ペリーヌ「ただ、これから話すことはすべて真実で事実です。
かなり衝撃的で信じられないと思いますが…」
そしてペリーヌは今までのハインツやミラー、ノヴァク、ニコ、ヤンが経験したことを説明した。
それが終わるとレートは茫然としていた。
レート「そんな…まただ、また私だけ生き残った…」
レートはベッドに寝転がると天井を向いて呟いた。
その言葉にペリーヌは引っかかった。
ペリーヌ「また?」
レート「父も母も妹も親友を失い、故郷から追われ、エジプトに逃げ、また戦争に巻き込まれ、そして戦死したと思ったらこれだ…
すまない、ちょっと愚痴みたいになったな」
レートの独白にペリーヌは衝撃を受ける。
レートは少し愚痴みたいになったと思いペリーヌに謝った。
ペリーヌ「いえ、分かります、その気持ち。
私もお父様もお母様も戦争で亡くしましたから…」
レート「そうか…辛い事を思い出させてすまなかった。
なんだろうな、今までこんなこと、一人を除いて話したことなかったのに…」
ペリーヌも家族全員を失っていたからこそレートに同情していた。
それにレートが意味深な事をつぶやいた。
するとレートが話題を変えた。
レート「ところで、これから私はどうすればいいんだ?
戸籍も身分証もない」
ペリーヌ「なら、私たちを手伝ってくれませんか?」
レート「手伝う?」
ペリーヌが復興の手伝いを提案した。
ペリーヌ「ええ、パ・ド・カレーの復興を手伝ってください。
軍のおかげである程度は復興してますけどそれでも全然、人でも何もかもが足りないんですの」
レート「いいだろう、私でよければ」
するとレートは手を伸ばす。
それにペリーヌは握手する。
ペリーヌ「ええ、よろしくお願いしますわ、レートさん」
するとドアがノックされた。
リーネ「ペリーヌさん、入ります」
レート「えーと、彼女は?」
入ってきたのはリーネだった。
レートはペリーヌにリーネの事を聞いた。
ペリーヌ「リーネさんですわ。
リーネさん、こちらレートさん」
リーネ「よろしくお願いします、レートさん」
レート「よろしく、ミスリーネ」
ペリーヌ「ところで、何かあったの?」
リーネ「はい、カレーの基地のユニット整備部隊が移動になってアイントホーフェンに移るそうです。」
前線の移動により今まで整備を行っていたパ・ド・カレー=ダンケルク飛行場の整備部隊がネーデルラントのアルンヘムの手前、アイントホーフェン空港に移動したという話だった。
これにより整備依頼を出したペリーヌ達のユニットはアイントホーフェンに送られることになった。
ペリーヌ「そう」
レート「ところで、ユニットとは何かね?」
するとレートがユニットが何かわからずペリーヌに聞いた。
ペリーヌ「ユニットは私たちのような魔力を持った魔女、通称ウィッチの魔法力で飛ぶ現代版魔法の箒のようなものですわね?」
レート「魔女?」
ペリーヌ「ええ、魔女」
レート「ますます訳が分からない…
ところで、今は48年で戦争なんてとっくの昔に終わったよな?」
ペリーヌ「え?48年ではなく45年ですわよ」
レートの爆弾発言にペリーヌは驚く。
彼女は45年以降の歴史を知らなかった。
レート「え?じゃあ何が一体どうなって…」
ペリーヌ「一応レートさんたちの世界の45年までの歴史の大筋は知っていますけど…」
レート「とりあえず知っている限り45年以降の歴史を話すが、いいか?」
ペリーヌ「お願いします」
そしてレートは45年から48年までの歴史を説明した。
終わるとペリーヌ達は驚いていた。
ペリーヌ「ナチスに虐殺されたユダヤ人が今度は聖地を乗っ取って戦争…
連合軍は敗戦国の首脳を裁判にかけて死刑ですか…」
リーネ「ヨーロッパは東西に分断、ドイツは二つに分割ですか…」
レート「ああ、戦争が終わっても大変…戦後は続くよ何処までも、だ」
レートは自嘲気味に嘆いた。
---------
それから少しして、レートは頭に包帯を巻いてペリーヌとリーネ、アメリー、そして現地の民間人が連合軍から払い下げられたD7トラクターに乗ってレートの乗っていたMC205の不時着地点に来ていた。
ペリーヌ「これを引っ張り出すんでしょ?」
レート「ああ」
機体はクレーターに頭から突っ込み逆立ち状態だった。
そこで現地住民と共に機体の尾輪と主翼の先にロープをつなげ、それをトラクターにつなげた。
レート「よし、じゃあ引っ張れ!」
レートの合図にトラクターが動き出すと機体はクレーターから引っ張り出され元の体勢に戻った。
機体はプロペラが曲がった以外は特に損傷も見られず綺麗だった。
レート「ペラが曲がった以外は綺麗だな、主脚や尾輪にも問題はないし、補助翼、フラップも問題なし。
コックピットは、ああ窓ガラスにひびが入ってるが問題はなさそうだ。
昇降舵動いてる?」
レートは機体をざっと点検し問題がないと確認するとコックピットの操縦桿を動かして昇降舵を確認する。
ペリーヌ「ええ、ちゃんと動いてますわ。
意外と状態はいいようね」
アメリー「ところで、この戦闘機は何ですか?」
するとアメリーが聞いた。
それにレートが機体から滑り降りて説明する。
レート「こいつはマッキ社製マッキMC205Vベルトロ、猟犬だ。
我がイタリアが誇る最強の戦闘機だ。
高い運動性と速度を誇り操縦の癖もない素晴らしい機だ。
俺も休戦前から使ってるよ、こいつに乗ればもう他の戦闘機には乗れないね」
レートが乗っていたのはマッキMC205Vベルトロだった。
この戦闘機は大戦中後期にイタリアの3つの航空機メーカーマッキ、フィアット、レッジアーネが生み出したドイツ製DB605エンジンを搭載した通称スペルガ5と呼ばれた戦闘機たち、フィアットG55チェンタウロ、レッジアーネRe2005サッジタリオ、の一つだった。
スペルガ5はイタリアの非常に高い航空技術とドイツの最新鋭エンジンを組み合わせることにより生まれたイタリア航空史上最強のレシプロ戦闘機たちだった。
その性能はかのP-51とも張り合える程だった。
だが、その足を引っ張ったのが戦前イタリアの無茶苦茶な航空行政、そしてそれ以上に貧弱な工業力であった。
この幻の名機たちは戦前イタリアの航空行政により乱立した中小航空機メーカーという存在と極めて貧弱で頼りない工業力により実戦投入は遅れに遅れ投入されたのはどの機も43年のイタリア休戦直前だった。
そしてイタリア休戦後これらの機体は南王国軍、イタリア社会共和国軍、そしてドイツ軍に分かれて運用された。
その中でMC205は休戦後生産が中止されたRe2005よりかは幸運だった。
休戦後もこの機は生産され続け多くのエースや部隊、かの有名なアドリアーノ・ヴィスコンティやその指揮下にあった第Ⅰ戦闘航空航空群アッソ・ディ・バストーニなどで使用され終戦までに101機がANRに配属されたといわれている。
戦後もこの機はG55などと共に新生イタリア共和国空軍で使用され続け48年の第1次中東戦争ではエジプトにG55と共に輸出されイスラエル空軍とシナイ半島の空で死闘を繰り広げた。
アメリー「へえ、そうなんですか…」
レート「ああ、なあ、こいつはまだ飛べる、ペリーヌ、こいつのレストアできないかな?」
するとレートは機体の胴体を撫でながらペリーヌに聞いた。
ペリーヌ「レストア?ええ、部品さえあればできると思いますわ」
レート「ならやろう、この機は俺の機だ。
誰にもあげないしまだ飛べるんだ」
レートはベルトロのレストアをするつもりだった。
ペリーヌ「いいですわよ」
アメリー「あのー!写真撮りますけどいいですか?」
するとアメリーがカメラを持って聞いてきた。
それにレートとペリーヌは振り返る。
ペリーヌ「ええ、いいですわよ」
リーネ「皆さん並んでくださーい」
そして全員が並ぶとアメリーがカメラを構える。
アメリー「はい、チーズ!」
カメラの撮影音がすると撮影された人たちはバラバラになりそれぞれの仕事を始めた。
機体はマーキングを白いペンキで塗り潰すとトラクターに引っ張られてペリーヌの屋敷へと運ばれていった。
某ストクラのほぼ全員からもげろ発言されているクソガキは次回です。
登場したキャラクターは1944独ソエストニア戦線の主人公カール・タミクとユーリ・ヨギ、それに監督のエルモ・ニュカネンがモデルです(ちなみに見た目はタミクがユーリ、ヨギがカールです)