WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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地味に港湾労働者組合が出てきます。

あのクソガキが出る。


第2話:戦争の惨禍

 翌日、リーネとレート、それに執事のジャン・ポールは港に来ていた。

 レートはREAFの軍服からワイシャツとサスペンダーで吊ったREAFの軍服のズボンを着てボルサリーノの中折れ帽を被っていた。

 

レート「それなりに復旧はしているんだな。」

 

リーネ「はい、この辺りは連合軍の重要補給拠点の一つとされてかなり早い段階で復旧されたんです。」

 

 3人はジープに牽引されたトレーラーに港湾労働者が積荷を乗せる作業を少し離れたところから見ていた。

 すると遠くから物音がして振り向く。

 

リーネ「ん?」

 

レート「なんだ?」

 

 すると通りの角から少年と数人の労働者、それにMPが走ってきた。

 

労働者A「止まれクソガキ!」

 

労働者B「捕まえて舌引っこ抜くぞ!」

 

 すると少年が転び何かの瓶を放り投げる。

 

リーネ「大変!」

 

レート「何かあったのか?解熱剤?」

 

 レートは転がってきた茶色い小瓶を手に取り確認する。

 

少年「返せよ!俺のだ!」

 

レート「え?」

 

 すると労働者とMPが追い付いてきた。

 

労働者C「よう、リネットさんじゃねえか。」

 

リーネ「えっと確か港湾労働者組合の…」

 

 追いかけていたのはパ・ド・カレー港の港湾労働者組合の組員とMPだった。

 この少年が港で薬を盗もうとして労働者組合の組員がMPを呼んで大捕り物を演じていたのだ。

 追いかけていた労働者の中の小太りで一番背の低い労働者がリーネに声をかける。

 するとその隣に立つ長身の男を見る。

 

労働者C「そっちは見ない顔だな」

 

レート「ユニオ・ヴァレリオ・レートだ」

 

労働者C「よろしく。俺達は港湾労働者組合のもんだ」

 

 レートと労働者が握手する。

 それを見て少年が驚く。

 

少年「え!兄ちゃんたち何もんだ!?」

 

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 少しして、少年と3人は市内の中でも治安の比較的悪い地域に来ていた。

 この地域はホームレスや難民は港湾労働者や連合軍に雇用されることで殆ど消えたが未だ主に孤児が残っていた。

 こういった孤児は戸籍もなければ教育も受けていないため非常に扱い難い上に犯罪組織等の温床になる可能性があることから当局も排除を検討していた。

 そしてその孤児たちの家の中の一つでは小さい女児が熱で苦しんでいた。

 

少年「しっかりしろ、ローズ。薬持って来たぞ」

 

 リーネは少女の額に手を当て驚いた。

 

リーネ「凄い熱!ジャン・ポールさん!」

 

ジャン・ポール「はい」

 

 ジャン・ポールが返事をするとすぐにジープを回してきた。

 

ジャン・ポール「どうぞ、こちらに」

 

 ジャン・ポールが来るとリーネは少女を抱えてジープに乗り込む。

 

少年「お、おい、ほんとに助けてくれるんだろうな?」

 

レート「ああ、私だって昨日頭の怪我を手当てしてもらったからな。」

 

 少年の不安にレートが答える。

 帽子で見えにくいが隙間からは包帯が見えていた。

 

---------

 

 その頃屋敷ではペリーヌが書類を確認していた。

 

ペリーヌ「エンジンはDB603だからどうにかなりそうですけどプロペラをどうすればいいのかしら…

     プロペラを直しても内部機構が損傷しているようですし…」

 

 ペリーヌはレートが一晩で確認した機体の損傷個所のレポートを見ていた。

 なぜかペリーヌはベルトロのレストアに積極的だった。

 

アメリー「ペリーヌさん、熱心に読んでますね。

     どうしたんですか?」

 

 その様子を不思議に思ったアメリーがペリーヌに聞く。

 

ペリーヌ「え、ええ。

     レートさんのお願いですからかなえて差し上げようと思って。

     あの人の為に何かしたいと思ったの」

 

アメリー「そうなんですか」

 

 二人が喋っていると突然ドアが開きジャン・ポールと少女を抱えたリーネ、そしてレートと少年が入ってきた。

 

リーネ「ペリーヌさん!」

 

ペリーヌ「どうしました?」

 

 リーネは駆け寄ってきたペリーヌに少女を見せる。

 

リーネ「この子、熱が…」

 

ペリーヌ「急いだほうがいいわね。

     ジャン・ポール、お医者様と客間の用意を」

 

ジャン・ポール「かしこまりました。」

 

ペリーヌ「アメリーさん、お湯を沸かして」

 

アメリー「分かりました」

 

 ペリーヌはすぐにアメリーとジャン・ポールに指示を出す。

 そしてすぐに二人は動き出した。

 

少年「なんだ?ここ」

 

 

---------

 

 

ペリーヌ「どうですか?先生」

 

医者「栄養失調で衰弱したところに肺炎になりかけたようですな。

   栄養をしっかり摂ってこのまま数日安静にしていれば大丈夫です」

 

 しばらくして、少女を診察していた医者がそう診断した。

 それを聞いて険しい顔をしていた少年が笑顔になる。

 

リーネ「よかった…」

 

レート「いやあ、大事にならずに済んでよかった。」

 

ペリーヌ「ありがとうございます、助かりましたわ。」

 

 ペリーヌが感謝を述べると医者は謙遜する。

 

医者「いえいえ、助かっているのはこちらです。

   この器具も薬もペリーヌ様から頂いたものですから」

 

少年「なあ、あの姉ちゃん偉いのか?」

 

 そのやり取りを聞いて少年が聞いた。

 そしてリーネが説明する。

 

リーネ「ペリーヌさんはここの領主さんでこの辺りの一番偉い人だよ。」

 

少年「え!一番!スッゲェ…」

 

アメリー「確か正式に連合軍からカレーのコミューンの行政司令部の民生責任者に任命されてたような…」

 

レート「それは初耳だな」

 

 ペリーヌは連合軍からカレー行政司令部民生責任者に任命されていた。

 そもそも連合軍の軍行政司令部は一定レベルの行政サービスをガリア政府に代行して提供するがその一定レベルとはあくまで戸籍等の役所仕事、年金・補助金・社会保険等の給付、連合軍の輸送に関するインフラ整備のみであり生活物資等の配給に関しては民生責任者に丸投げという形をしていた。

 さらに言えば連合軍はそもそも軍であるため行政サービスを行うこと自体を嫌っていた。

 そのためペリーヌはカレーの民生責任者として連合軍からの物資の払い下げと配給の管理を担っていた。

 

医者「では、私はこれで」

 

 その間に医者は荷物を纏めると部屋から出て行った。

 すると少年がペリーヌに言った。

 

少年「金なんかねえぞ」

 

ペリーヌ「大丈夫よ、落ち着くまで面倒見てあげますわ」

 

少年「ほんとか!メガネ」

 

ペリーヌ「ぐ…口が悪い子ね」

 

 少年の言葉にペリーヌは顔をしかめた。

 

---------

 

 

少年「ぺっ!まっず!なんだこりゃ!」

 

 少年が飲んだハーブティーを吐き出す。

 その横でレートも微妙な表情をする。

 

レート「あんまり美味いものでもないな…」

 

リーネ「カモミールティーは体にいいんだよ」

 

レート「私はどちらかと言えばコーヒー派かな…」

 

 リーネの説明にレートは苦笑いする。

 するとペリーヌが聞いた。

 

ペリーヌ「ところであなた、ご両親は?どこから来たの?」

 

少年「親なんていねえ、疎開先から抜け出してきたんだ」

 

 少年たちは疎開先から抜け出してパ・ド・カレーまで来たのだ。

 

アメリー「ああ…」

 

リーネ「それで、どこに行こうとしてたの?」

 

少年「家に帰るんだ。

   アルンヘムのホルト通り」

 

ペリーヌ「アルンヘム?最激戦地じゃない」

 

レート「今朝の新聞にもアルンヘム周辺の戦闘が書かれてたな。

    リベリオン軍第442歩兵師団が左翼からアルンヘムを圧迫しつつカールスラント軍第20義勇擲弾兵師団が正面攻撃を仕掛け背後にブリタニア軍第7機甲師団が右翼より迂回して進出中だったっけ?」

 

 レートがアルンヘムと聞いて新聞に載っていた状況を言う。

 アルンヘムは現在ネーデルラント方面の最激戦地であった。

 アルンヘムはネーデルライン川にかかる橋のある街でありこの地域のチョークポイント、そして唯一の未だ完全に確保できていないライン川に架かる橋を有した街であった。

 前線は既に沿岸部と南部はカールスラント国境まで到達し一部は既に沿岸部から侵入していたが中央部はアルンヘムを先端とするアルンヘム~ズトフェン~バートベントハイムまでの地域が突出していた。

 そのため連合軍はこの地域を何としても奪取しなければならずその中でもアルンヘムは特に激しい戦闘が続いていた。

 

少年「取りに行かなくちゃなんない大事なものがあるんだよ。

   ローズと約束したんだ」

 

ペリーヌ「はぁ…」

 

 少年の言葉を聞いてペリーヌはため息をついた。

 

ペリーヌ「戦闘はあと2週間ほどで終わる予定ですからその後なら連れて行ってあげますわ。

     それまでここに泊まっていいわよ」

 

少年「ほんとか!嘘じゃないだろな!」

 

 少年が喜ぶがペリーヌは少年の言葉に顔をしかめる。

 

ペリーヌ「疑い深い子ね…」

 

リーネ「疎開先にはこちらから連絡しておきます」

 

少年「約束だぞ!」

 

 すると突然少年の頭から小さな虫のようなもの、ノミが飛び出しペリーヌのティーカップを持っていた手に飛びついた。

 

ペリーヌ「ひゃ!ひっ…ノミ!」

 

 ペリーヌのティーカップを持っていた手が震え始める。

 そして次の瞬間、レートが少年を掴む。

 

少年「おい!何すんだよ!」

 

レート「何ってお前を一旦清潔にするんだよ!

    病人に伝染病うつす気か!?」

 

 レートは少年を引っ張って庭に連れ出すと庭でDDTを吹き付ける。

 

少年「ぺ!何するんだよ!」

 

レート「別に嫌ならやらなくてもいいぞ。

    最悪妹さんがもっと質の悪い病気になって死ぬが」

 

少年「う、それは…」

 

 少年の抵抗はレートの言った正論に黙る。

 レートは少年に入念にDDTを吹き付ける。

 DDTは1873年にオーストリアの科学者が合成に成功したジクロロジフェニルトリクロロエタン(正確には4,4'-(2,2,2-トリクロロエタン-1,1-ジイル)ビス(クロロベンゼン)が科学的な正確な名前)である。

 だがこの物質は殺虫効果が1939年にスイスのパウル・ヘルマン・ミュラー博士が発見する(この発見でミュラー博士は48年のノーベル生理学・医学賞を受賞)まで放置され、更にこの物質が大々的に使われるようになったのも第二次世界大戦中からであった。

 というのも第二次世界大戦が始まったことにより当時最も普及していた除虫材の除虫菊の最大の輸出国の一つである日本から輸入できなくなったアメリカがこの物質に目をつけ大戦中より大量に使用され始めた。

 だが初めはこの「少量で十分な効果を発揮し人体や動物に対して影響のない」と思われていた物質もその後の研究で環境に極めて有害であることが判明、現代では多くの先進国で使用禁止にされている劇薬であった。

 

レート「よし、このぐらいでいいだろう。

    次はシャワーを浴びろ、正直言って臭い」

 

少年「ちぇ、分かったよ」

 

 レートがDDTを十分に吹き付けると少年にシャワーに行くように言う。

 少年はしぶしぶレートと共にシャワーに向かう。

 するとふとレートが少年に聞いた。

 

レート「そういえば、名前聞いてなかったな、名前は?」

 

ユリウス「…ユリウス」

 

 レートにユリウスはボソッと答えた。

 

レート「そうか、私の父と同じ名前だな」

 

ユリウス「そうなのか?」

 

レート「ああ、私の父はジュリオ・レートだからな。

    読み方は違うが綴りも由来も一緒だ」

 

 ユリウスとレートの父親は名前が同じだった。

 ドイツ語のユリウスはイタリア語のジュリオに対応する名前だった。

 

---------

 

 翌日、ネーデルラント、アルンヘムの南岸。

 史実では後にマーケット・ガーデン作戦でこの街で抵抗した英空挺部隊の隊長の名前を取りジョン・フロスト橋と改名されたアルンヘムの鉄橋の南岸のたもとに第20義勇擲弾兵師団司令部が設置されていた。

 そこでは師団長フランツ・アウグスベルガー少将とアルンヘム攻略の主力部隊である第21擲弾兵連隊連隊長となったパウル・マイトラ少佐が戦況を確認していた。

 

マイトラ「師団長、現在戦闘の焦点はここ、ホルト通りとソン通りです。

     この通りを解放すれば何とか北へ向かう道が確保できます」

 

アウグスベルガー「そうか。

         4年前もここに来たがその時より難しいか?

 

マイトラ「ええ、あの時は背後からの強襲だったので楽でしたが今回は正面攻撃です。

     援護もなければ陽動もない状況です。

     我々の手持ちも少ないです、既に連隊の第Ⅰ大隊は戦力の3割が戦闘不能です。

     何とか第Ⅱ、第Ⅲ大隊が支えてますがジリ貧です。

     この状況では航空支援も砲撃も誤射の危険が高く不可能、重砲は瓦礫のせいで橋を渡すこともできません。

     何とか北岸のここと、ここに各大隊の重迫撃砲中隊が120ミリ迫撃砲を据え付けました。」

 

 マイトラが戦況を説明する。

 状況はそれほど良くなかった。

 4年に渡る荒廃により通りの大半が瓦礫で埋もれたため師団装備の重砲も対戦車砲も持ち込めず唯一何とか人力で120ミリ迫撃砲12門を持ち込んでいたがそれ以外はアルンヘム市街を戦う兵士達に火力支援を行える兵器は存在しなかった。

 さらにはその迫撃砲も命中率が悪く誤射の危険も多いため信頼できるものでもなかった。

 

アウグスベルガー「ヘッツァーは?」

 

マイトラ「3回戦車猟兵大隊が投入しましたが視界が悪すぎて使い物になりません。

     やはり何でもいいので戦車か突撃砲が必要です」

 

 アウグスベルガーが師団の戦車猟兵大隊に配備されているこの師団唯一のまともな対戦車車両である1個中隊のヘッツァーの事を聞いたがヘッツァーはその視界の悪さから市街戦ではまともに使えず南岸で川岸まで出てきたネウロイを叩くか橋に展開して補給路の防衛に終始していた。

 兎に角彼らは戦車が欲しかった。

 戦車さえあればなんとかなりそうだった。

 

アウグスベルガー「はぁ、何とか司令部から1個戦車中隊と1個突撃戦車中隊をもぎ取った。

         第2117戦車中隊、装備はⅣ号戦車13両、それと第219突撃戦車大隊第2中隊、装備はブルムベア15両、今日パ・ド・カレー港に卸されて明後日追加の補給と共にナイメーヘンに向け輸送される。」

 

 アウグスベルガーが朗報を伝える。

 アウグスベルガーが何とか上層部からパ・ド・カレー港に卸されたばかりの2個中隊をもぎ取った。

 この部隊はパ・ド・カレー港から港に隣接する鉄道に乗せられ現状最も前線に近い鉄道駅のナイメーヘンまで物資と共に運ばれた後アルンヘムに投入予定だった。

 

マイトラ「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

アウグスベルガー「ああ、苦労したんだよ?大切に使えよ」

 

 その朗報にマイトラが歓喜する。

 だが同時にこの補給が厄介者も連れてきて騒動となることはまだ知る由もなかった。




(解説)
・フランツ・アウグスベルガー
史実第20SS義勇擲弾兵師団(エストニア第1)師団長
45年にシュレージェンでソ連軍の包囲網を突破する際に戦死して飛ばされる。
エストニア人部隊とは長い付き合いであるためよく心情を理解している。
そのためドイツ人ながら部下のエストニア兵からの信望も篤い。

ガルパンですら出てこないブルムベアを出す狂ったSSです。
ブルムベア自体市街戦向きの戦闘車両だし。
Ⅳ号に関しては完全なる好み。
シャーマン、パンター、ティーガーは飽きた。
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