WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

124 / 171
プライベート・ライアンやら遠すぎた橋やらのオマージュだらけです。


第4話:プライベート・ユリウス

 ユリウスが出て行ってしばらくして。

 三人は昼食を摂っていた。

 だが三人とも浮かない表情をしていた。

 

ペリーヌ「いたずら坊主がいないと静かでいいですわね」

 

 ペリーヌが暗い二人の表情を見て言う。

 

リーネ「私達がウィッチだから一緒に食べたくないのかな…」

 

ペリーヌ「どうせおなかがすいたら食べに来ますわよ」

 

レート「そうだといいが…どうも嫌な予感がするんだ。

    気のせいかもしれないが」

 

 するとレートが嫌な予感がするという。

 そしてその予感は不幸にも当たっていた。

 ドアが開く音がするとローズを抱えたアメリーが入ってきて開口一番に叫んだ。

 

アメリー「ユリウス君がいません!」

 

ローズ「お兄ちゃんどこ行ったの!?」

 

 二人の言葉に三人とも驚いた。

 

ペリーヌ「え?」

 

リーネ「いない?」

 

レート「近所も探したのか?」

 

アメリー「あちこち探したんですが…」

 

 アメリーが近所も含めてあちこち探したが見つからなかった。

 

レート「そういえば、今日近くの鉄道操車場からアイントホーフェン行きの補給列車が出るよな?」

 

 するとレートが近くの鉄道操車場からアイントホーフェン行きの補給列車が出ることを思い出した。

 アイントホーフェンはアルンヘムの最寄り駅でありアイントホーフェンで降ろされた車両や物資はそこからほとんどがアルンヘム近辺で戦う部隊の補給として送られていた。

 

ペリーヌ「まさかその列車に!」

 

リーネ「家に向かったのかも!」

 

レート「急いで列車を…」

 

ペリーヌ「無理よ!」

 

 レートは鉄道を止めようというがペリーヌが即否定する。

 

ペリーヌ「補給列車の運行規則で人身事故と線路の破壊、運行上のトラブル以外の理由では当該地区の鉄道責任者の許可が無いと止められないのよ!」

 

レート「じゃあ…」

 

 ゲリラによる鉄道網への破壊工作に備えた結果鉄道を止めることはペリーヌの権限では不可能であった。

 

ペリーヌ「急いでブリュッセルとアイントホーフェンに連絡を!」

 

 ペリーヌは急いでブリュッセルとアイントホーフェンに連絡した。

 

鉄道職員『はい、こちらブリュッセル中央駅』

 

ペリーヌ「カレー地区民生責任者のクロステルマン中尉です。

     先ほどカレーを出発した補給列車の中に有効なパスを持っていない者が乗っている可能性があります。

     至急調べてください」

 

 ペリーヌはブリュッセル中央駅の鉄道職員に補給列車の調査を依頼した。

 

鉄道職員「はいはい、分かりましたよ、着いたら調べますから連絡を待ってください」

 

 鉄道職員はやる気のない声でペリーヌに応対した。

 

---------

 

 その一時間半後、列車はブリュッセル中央駅に到着した。

 

鉄道職員「はぁ…この中に有効なパスを持っていない奴がいるだぁ?

     たく、30両以上あるのにどこを探せばいいのやら」

 

 鉄道職員はため息をつきながら適当に車両を探し始める。

 一方そのそばの貨車に乗ったトラックではユリウスが列車が止まったことに気が付いた。

 

ユリウス「アルンヘムに着いたのか?」

 

 ユリウスは荷台から頭を出して外を見る。

 そしてそのそばでユリウスを探していた職員と目が合った。

 

ユリウス「あ」

 

鉄道職員「あ」

 

 一瞬互いに動きが止まると職員が叫んだ。

 

鉄道職員「いたぞ!不審者だ!」

 

ユリウス「やっべ!」

 

 職員は応援と鉄道警察を呼び貨車に飛び乗ってユリウスを捕まえようとする。

 逆にユリウスは隣の貨車へ飛び移り逃げる。

 それを職員が追いかけるが身軽なユリウスをあっという間に見失ってしまった。

 すると客車から例のシールドをつけた将校が降りてきて貨車で辺りを探す職員に怒鳴る。

 

将校「おい!不審人物が乗っているからここで止めるとはどういうつもりだ!」

 

鉄道職員「いえ、この列車に乗っている可能性があると…」

 

将校「これは軍用補給列車だ!

   軍人以外誰が乗ってるって言うんだ!」

 

鉄道職員「しかし…」

 

 将校の剣幕に鉄道職員は怯える。

 更に将校は大声で職員を脅す。

 

将校「今日中につかないならば遅延の責任は貴様にあるぞ!」

 

鉄道職員「わ、分かりました…

     アイントホーフェンに連絡しますからそこで再度チェックをします…」

 

 将校の脅しに屈して職員は列車を行かせることにした。

 

---------

 

ペリーヌ「え!?見つけたものの見失った?

 

鉄道職員『は、はい…時間がなかったのと身軽だったので…」

 

ペリーヌ「そ、そう…」

 

 列車が出発すると職員はペリーヌに電話して結果を伝える。

 ペリーヌは電話を切ると決断した。

 

ペリーヌ「私達が直接向かうしかありませんわね。」

 

ローズ「私も行く!」

 

ペリーヌ「お兄ちゃんは私達が連れ戻すからいい子で待っていてね。

     アメリーさん、サン・トロンのミーナ隊長の元へ状況報告に向かって」

 

アメリー「はい!」

 

ペリーヌ「リーネさんは私と出撃準備」

 

 ペリーヌは決断を下すとすぐにリーネとアメリーに指示する。

 だがリーネが指摘する。

 

リーネ「でもユニットも武器も全部アイントホーフェンに送っちゃいましたよ」

 

レート「唯一あるのは私のウェブリーリボルバーとベルトロに積んでいたブレダSAFAT機関銃だけだ。」

 

ペリーヌ「は…そうでしたわ…」

 

 ここには武器もユニットも殆どなかった。

 唯一あったのがレートが持っていたウェブリーリボルバーとベルトロに積んでいたブレダSAFAT機関銃だけだった。

 ウェブリーリボルバーはリボルバー拳銃、ブレダSAFATに至っては航空機用の機銃であり弾も一般的ではない12.7ミリ×81ミリSR弾で弾も多くはなかった。

 

ジャン・ポール「お嬢様」

 

 だが彼女達にはまだ武器はあった。

 ジャン・ポールが部屋にあったある本棚を動かす、するとその後ろからブレン軽機関銃、ボーイズ対戦車ライフル、そしてPIATが出てきた。

 

ジャン・ポール「いざという時の為に用意しておきました。

        手入れは十分にしてあります」

 

リーネ「はぁ…」

 

レート「初めて見たよ…」

 

ペリーヌ「素晴らしいわ。ジャン・ポール」

 

 その様にリーネは驚きレートは呆れペリーヌはジャン・ポールの手腕を讃える。

 すぐに準備を整えるとリーネとペリーヌは外に置かれたジープに乗り込んでアルンヘムに向かおうとするとレートが引き留めた。

 

レート「待ってくれ、ペリーヌ」

 

ペリーヌ「レートさん…大丈夫、夕飯までには戻ってきますから」

 

レート「そうじゃない、私も連れて行ってくれ」

 

ペリーヌ「え!?」

 

 ペリーヌはレートの言葉に驚いた。

 レートはまだ頭部の傷が治っていない上に武器もリボルバーしかなかった。

 

ペリーヌ「む、無茶ですわよ!怪我も治ってないし大体武器も…」

 

レート「こうなったのは私の責任だ、私が落とし前をつけなければならないんだ」

 

 ペリーヌは何とか退かせようとするがレートは頑として譲らない。

 それにペリーヌは誰かを重ねたのか溜息をつくと答えた。

 

ペリーヌ「はぁ、いいですわよ。

     ただし、条件がありますわ」

 

レート「なんだ?」

 

ペリーヌ「“絶対に”死なない事。

     死んだら地獄の果てまで追いかけまわしますわよ」

 

レート「ああ、分かった」

 

 レートは返事をするとジープの後部座席に乗り込んだ。

 

---------

 

 

 アイントホーフェンはアルンヘムの手前にあるネーデルラントの都市である。

 ネーデルラント第5位の大都市で史実ではオランダの有名な電機メーカーでホロコーストに立ち向かった事でも知られるフィリップス社やトラックメーカーDAFが創業したオランダ最大級の工業都市であった。

 そのためこの街は交通網の中心でもあり激戦が続くアルンヘム周辺部隊への補給はすべて一旦この街の飛行場か鉄道駅に集められそこから各部隊にトラックで運ばれていた。

 

 この日もまたパ・ド・カレー発ブリュッセル経由で大量の戦車とトラック、兵士を乗せた補給列車がアイントホーフェン駅に到着した。

 列車が到着すると待っていた兵士や労働者が一大ずつトラックや戦車を下ろし始めた。

 

ユリウス「着いたのか?」

 

 そのトラックの一台の中にユリウスが乗ったものがあった。

 ユリウスが乗っていたトラックには大量の木箱が積まれその箱には「危険」や「パンツァーファウスト」、「7.92ミリモーゼル」、「9ミリクルツ」、「.30トカレフ」、「9ミリパラベラム」、「.50」、「M24」などと書かれていた。

 ユリウスはトラックの幌の隙間から外を見るがそこはアルンヘムではない事だけはすぐにわかると頭をひっこめた。

 

運転手「じゃあこいつだな。」

 

兵士「ああ、積荷は弾薬だ。

   気をつけろよ」

 

 その間にトラックの前では運転手がトラックに乗り込むと発進させアルンヘムに向かった。

 1時間半程してトラックはアルンヘムに到着した。

 その頃にはすっかり夕方になっていた。

 

ユリウス「やっと着いたか!」

 

 ユリウスは幌の隙間から外を見てそこが見慣れたアルンヘムの南岸の橋の南岸だと気が付くとトラックから周りに気が付かれないように降りた。

 周りには黒と水色と白のシールドをつけた兵士達が大勢いた。

 ユリウスは気づかれないように物陰に隠れながら橋へと向かう。

 だが橋には大勢の兵士がいた上に橋には数両のヘッツァーと装甲車が展開し物資や兵士を乗せたトラックが行きかっていた。

 

ユリウス「チェ、どうすればいいんだよ」

 

 橋を渡らなければ家に帰ることなどできない、そのためユリウスは頭を抱える。

 すると日が落ちかけていることにユリウスは気が付いた。

 それからしばらくすると日が落ち、辺りは一面真っ暗となった。

 その上この日は新月、外の明かりはトラックのライト程度だった。

 

兵士A「悲しい歌だな…捨てられた女性が捨てた男の事を忘れられないって歌だ」

 

兵士B「ふーん」

 

 橋の出入り口では二人の兵士がガリア語のレコードを聞きながら話していた。

 

兵士A「貴方を至るところに感じる なぜなら貴方は私の心のなかにいるのだから

    貴方を至るところに感じる なぜなら、貴方は私の幸福であるから

    私の周りにあるもの全て、

    人生でさえ貴方なのだから

    そんな感じの歌詞だ」

 

兵士B「フランス語は分からんがお前の声で立って来たぜ」

 

 二人が話してる間にユリウスはその後ろを通って橋を渡る。

 ユリウスは橋の端の歩道を走って渡った。

 橋の上にいた兵士達は誰一人としてユリウスには気が付かなかった。

 

---------

 

 ユリウスが橋を渡ったその頃、橋の袂のトラックやテントが並んだ陣地に一台のジープが到着した。

 Gew98を持った憲兵がペリーヌのジープを止める。

 

憲兵「止まれ!何者だ!」

 

ペリーヌ「カレー地区民生責任者ペリーヌ・クロステルマン中尉以下3名です。

     すぐに現場の責任者を呼んでください」

 

 ペリーヌは身分証を見せて憲兵に伝えた。

 憲兵は身分証を確認するとあるテントに走っていった。

 そのテントの中では師団長のアウグスベルガーとマイトラ、それに参謀将校が会議中だった。

 

憲兵「失礼します、師団長に会わせてほしいというウィッチの士官他三名がパ・ド・カレーから来ています。

   どうしますか?」

 

アウグスベルガー「正規の士官なら会った方がいいな。

         この会議もあと10分ぐらいで終わる、その時に夕食を食べながらだが会おう」

 

 憲兵は士官たちに敬礼して報告する。

 するとアウグスベルガーは返礼し腕時計を確認するとペリーヌ達と会うことを伝えた。

 

憲兵「は、了解しました」

 

 憲兵は敬礼してテントから出るとペリーヌ達を司令部のテントの外に案内すると黒と水色と白のシールドをつけた兵士に引き継いだ。

 そこで3人は待たされしばらくするとテントの中から声がした。

 

アウグスベルガー「入れ」

 

従兵「は、どうぞお入りください」

 

 従兵が返事をしペリーヌ達をテント内に入れた。

 テントの中ではテーブルの上に食事が並べられていた。

 テントに入るとすぐにペリーヌ達は敬礼する。

 

ペリーヌ「カレー地区民生責任者クロステルマン中尉です。」

 

アウグスベルガー「うむ、師団長のアウグスベルガーだ。

         単刀直入に聞こう、何をしに来た?」

 

 アウグスベルガーは返礼するとペリーヌに凄みを効かせながら聞いた。

 ペリーヌは冷静に答える。

 

ペリーヌ「アルンヘムに私が預かっていた少年が迷い込んだ可能性があります。

     彼の捜索・救助の為来ました」

 

マイトラ「なんだと!ここに民間人が紛れ込んだのか!?」

 

 ペリーヌの言葉にマイトラが驚き立ち上がる。

 まさかこの最前線に軍の許可なく民間人が紛れ込むことなどありえないと考えていたからだった。

 

ペリーヌ「はい、ですので救出に来ました」

 

アウグスベルガー「事情はよく分かった。

         我々もここで関係のないガキに死なれたら困る、ましてやここは激戦地だ。」

 

 アウグスベルガーはペリーヌの事情を理解した。

 そして判断を下した。

 

アウグスベルガー「いいだろう、マイトラ君、彼女たちの任務を支援する部隊を至急集めてくれ。

         人選は君とその部下に任せる」

 

マイトラ「は、ならば第Ⅱ大隊第3中隊ヴィーレス大尉を推薦します。

     彼はソ連軍上がりですが極めて優秀です。

     人望も篤く彼の部下も優秀ぞろいです」

 

 アウグスベルガーはユリウスを救助するため部隊を動員した。

 マイトラは第Ⅱ大隊第3中隊のソ連軍上がりのベテラン士官のヴィーレス大尉とその部下を推薦する。

 

アウグスベルガー「いいだろう、至急第3中隊を呼び戻せ」

 

マイトラ「は、伝令を送れ」

 

 第3中隊は橋の反対側にいた。

 そのため急いでマイトラは伝令を送った。

 伝令がツェンダップKS750に跨り出発する。

 

アウグスベルガー「さてと、第3中隊が来るまでは時間がある。

         それで一つ聞きたい、貴様は何処の誰だ?」

 

 伝令が出発するとアウグスベルガーはレートを見ながら聞いた。

 

レート「ユニオ・ヴァレリオ・レート、ただのロマーニャ人です」

 

アウグスベルガー「嘘つけ、正直に答えた方がいいぞ?」

 

 レートが適当に答えるがそれにアウグスベルガーはアイコンタクトでレートの後ろにMP38とMP40を持った兵士を立たせる。

 それを見てレートは両手を上げる。

 

レート「降参です。

    REAF、エジプト王国空軍第2飛行隊所属、元RSI空軍第Ⅰ戦闘航空群アッソ・ディ・バストーニ所属で元ANR大尉です」

 

アウグスベルガー「参謀、今のをメモして上に伝えろ。

         いいだろう。

         一応そのことは上に伝えておく、ヴィーレス大尉が来るまでゆっくりしたまえ」

 

 アウグスベルガーはレートの言葉を参謀にメモさせて上に伝えるよう命じた。




音楽聞いている兵士のシーンはプライベート・ライアンの最後の決戦の直前にエディット・ピアフのレコードを聞いてそれをアパムが解説してるシーンです。

ヴィーレス大尉は1944独ソエストニア戦線のヴィーレス大尉です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。