WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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ヴェネチアのクーデターと統一運動回。

まあ酷い。


第2話:国家への一撃

 事は中央ヨーロッパ夏時間1945年8月3日未明に遡る。

 この日ヴェネチア公国の臨時首都パドヴァの臨時国会では激論が続いていた。

 

議員A「この国難を乗り越えられるのは内務大臣のアルド・フィンツィだけだ!」

 

「「そうだ!彼こそがこの国を救うんだ!」」

 

「「ふざけるな!奴は売国奴だ!悪魔だ!」」

 

 それはこの前日に辞職した内閣に代わる次の首相を巡り貴族院と下院、更に左派と右派で激しく対立していたのが原因だった。

 右派と下院が推していたのは内務大臣のアルド・フィンツィ、一方左派と貴族院が推していたのは別の人物だった。

 フィンツィに反対する勢力の大半はフィンツィが議員ではなく内務官僚である事と彼が極右政党ヴェネチア・ファシスト党の指導者でもあることに危機感を持っていた。

 その上世論も貴族・上流階級はフィンツィに対して否定的な一方、大衆や労働者の大半はフィンツィ派だった。

 

議員B「フィンツィ大臣も何か言ったらどうなんだ!」

 

「「そうだ!そうだ!」」

 

 左派の議員が右派の議員に囲まれて黙っていたフィンツィを名指しで攻撃する。

 するとフィンツィは立ち上がると議場の演台に立った。

 

フィンツィ「親愛なる下院議員諸君、そして忌々しき貴族議員の諸君。

      私からこの国に最後の挨拶を送ろう」

 

 そう言うとフィンツィは胸ポケットから拳銃を取り出し上を向け突如発砲した。

 それに議場は騒然となる。

 

議員C「フィンツィ!何をしたか分かってるのか!」

 

フィンツィ「合図ですよ」

 

 驚いて腰を抜かした右派の議員がフィンツィに叫ぶとフィンツィが振り返り答えた。

 すると突如議場のドアが開き完全武装のヴェネチア兵とロマーニャ兵が雪崩れ込んだ。

 

フリリャーニ「動くな!」

 

議員D「貴様らなんだ!クーデターか!」

 

フリリャーニ「そうだ!」

 

 一人の議員が雪崩れ込んだ兵士達を率いていたフリリャーニを問い詰めると答える。

 それを聞いて一人の議員が逃げ出そうと窓から身を乗り出した。

 

兵士A「逃げるな!」

 

 兵士が止めようとするが議員は窓から飛び降りて逃げようとし、銃撃を浴び穴だらけになって窓から落ちた。

 それに議員たちは顔面蒼白となった。

 

フィンツィ「逃げるのは無駄だ。フリリャーニ大佐、パドヴァの主要施設、官庁街、要人は全て制圧したか?」

 

フリリャーニ「は。大公は宮殿で捕縛、官庁街、主要施設すべて制圧済み。

       国会議事堂も包囲した上で制圧完了です」

 

フィンツィ「分かった、フリリャーニ大佐、ここは任せた」

 

フリリャーニ「は」

 

 フィンツィはフリリャーニと短い会話をすると議場を出て議事堂の車止めに向かう。

 車止めにはカヴァッレーロとカンピオーニがいた。

 

フィンツィ「カヴァッレーロ大将、状況は?」

 

カヴァッレーロ「大公とその家族は王宮で拘束した。

        後は退位させヴェネチア大公位をロマーニャ大公に移譲、憲法の大公権限でヴェネチア公国をロマーニャ公国の保護領とする。

        そうすれば実質は統一だ」

 

 彼らの統一の方法はヴェネチア大公を退位させその位をロマーニャ大公に移譲、憲法に書かれている大公の非常時権限を使いヴェネチア大公領をロマーニャ公領の保護国化するという策であった。

 

フィンツィ「ああ、軍はどれぐらい掌握できた?」

 

カヴァッレーロ「陸軍の7割、掌握できてないのはフィウメ守備隊、ポーラ守備隊、ヴェネチア守備隊、近衛師団、第1師団ヴェネチア、第1高射砲旅団、第5師団フィウメ、第6師団ポーラだ。

        空軍はヴェネチア防空管区以外の全部隊を掌握した」

 

フィンツィ「海軍は?カンピオーニ提督」

 

カンピオーニ「全部隊掌握した。すでに予定通り第1任務部隊がヴェネチア、第2任務部隊がフィウメ、第3任務部隊がポーラ沖に展開してる」

 

 既に彼らは陸軍の4個師団と3つの都市の守備隊、空軍のヴェネチア周辺部隊以外すべてを掌握していた。

 更に主力艦隊を3つに分けヴェネチアの主要都市の沖合に展開させていた。

 

フィンツィ「分かった、私は大公のところに行く。

      君らは今日中にすべて叩き潰せ、どんな手を使っても構わない」

 

「「は」」

 

 フィンツィはカヴァッレーロとカンピオーニに指示すると車に乗り込んで王宮へと向かった。

 王宮には多数の兵士が展開し封鎖されていた。

 王宮に入るとフィンツィは大公がいる執務室を目指した。

 

フィンツィ「フィンツィです、入ります」

 

 フィンツィは執務室のドアをノックし入る。

 中では大公が兵士に取り囲まれて不機嫌だった。

 

フィンツィ「殿下」

 

大公「フィンツィ君、これはどういうことかね?」

 

フィンツィ「イタリアの大義の為です。

      陛下はこれにサインし判子を押せば貴方方一族には一切の危害を加えないと約束しましょう」

 

 フィンツィはそう言うと隣にいた秘書官が一枚の書類を大公の前に置いた。

 その書類を大公が読むと怒りに震え始めた。

 

大公「これは…ふざけてるのか!何たる無礼だ!」

 

フィンツィ「無礼ですか、殿下はご自身の立場をご理解していないようで。

      貴方がサインしなければジェームズ1世やルイ16世の後に続くだけです」

 

 フィンツィは大公を脅す。

 そして兵士達に命令する。

 

フィンツィ「使用人にマリア・グリセンティがいるはずだ、彼女を殺して死体を持ってこい!」

 

大公「なぜ彼女なんだ!」

 

 すると何故かフィンツィは使用人の一人を射殺するよう命じた。

 それに大公も驚いた。

 

フィンツィ「殿下、とぼけても無駄です。

      殿下と彼女の関係は調べがついてます、男女の仲ですよね?」

 

大公「く」

 

 射殺するよう命じた使用人は大公の不倫相手であった。

 それを聞いた大公は苦虫を潰したような表情をする。

 

フィンツィ「サインするか、死体が一つ増えるか、どちらが望みですかな?」

 

大公「畜生…」

 

 すると大公は書類にサインし椅子にもたれかかる。

 

大公「ふん、これでこの国は滅んだ」

 

フィンツィ「そして新たなイタリアが生まれた。

      うむ、至急これをロマーニャ大使館に」

 

兵士「は」

 

 サインした書類を受け取ったフィンツィはそれを兵士に渡しロマーニャ大使館に持っていくよう命じた。

 

---------

 

 その頃、ロマーニャの統合参謀本部ではバルボ、デ・ボーノ、レニャーノが集まっていた。

 すると電話が鳴りそれをバルボが取る。

 

バルボ「バルボだ、分かった。1時間後だな。

    ヘマをするなよ、少しでもミスをすれば全てが終わるぞ、いいな」

 

 短く会話するとバルボは電話を切った。

 その会話を聞いてデ・ボーノとレニャーノが聞いた。

 

デ・ボーノ「なんだったんだ?」

 

レニャーノ「何かあったのか?」

 

バルボ「フィンツィが退位と譲位の書類にサインさせた。

    その書類はさっき輸送機に乗せてローマに輸送中だ。

    1時間後にチャンピーノに到着する」

 

 電話はパドヴァから大公の退位と譲位の書類をローマに輸送中だという話だった。

 するとバルボはどこかに電話をかける。

 

バルボ「バルボだ、チャーノ、やったぞ」

 

チャーノ『バルボ大将、分かってます。

     15分前にパドヴァの臨時大使館から電話が来ました、これでどうにかなります。

     到着が1時間後、その後色々ありますから5時半から記者会見します、いいですか?」

 

バルボ「それでやってくれ」

 

 そう言うと電話を切った。

 

---------

 

 それから数時間後の中央ヨーロッパ夏時間午前5時30分過ぎ、ローマの外務省で記者会見が開かれていた。

 そこにいた記者の大半は叩き起こされたようで殆どが寝癖がついていたり欠伸をしたり中には部屋の隅でいびきをかいて居眠りをしている記者までいた。

 そんな中、記者会見が始まった。

 

チャーノ「記者の皆様、そして全世界の人々に発表します。

     先ほど、中央ヨーロッパ夏時間午前3時半頃、ヴェネチア大公が退位、その位をロマーニャ大公に譲位するとヴェネチア政府より通告がありました。

     これを大公、及び内閣は承認、午前4時を以てロマーニャ大公はヴェネチア大公に就任、また同時に緊急時におけるヴェネチア公国の大公権限に基づきヴェネチア公国をロマーニャ公国の保護国とすると宣言、これを我が国の内閣、及びヴェネチア公国の臨時最高責任者が承諾、これにより本日午前4時30分を以て全ヴェネチア公国及びその植民地、海外領土を我が国の保護領とすることを宣言します」

 

 記者会見を行ったチャーノのヴェネチア公国の事実上の併合宣言に記者達はどよめいた。

 

記者A「そ、それはつまりヴェネチア公国をロマーニャに併合するという意味ですか?」

 

チャーノ「統一、と言って貰いたい。

     これによりロマーニャとヴェネチアは統一、よって本日を以てロマーニャ王国の成立をここに宣言する!」

 

 高々にチャーノがロマーニャ王国の成立を宣言すると会見は終了した。

 そしてこのニュースは世界中に配信されると大混乱を巻き起こした。

 同時にロマーニャ軍は全軍に対してある命令を発令した。

 それは…

 

---------

 

 それから約5時間後、午前10時過ぎ、ヴェネチア沖約3キロ。

 ここにヴェネチア・ロマーニャ連合第1任務部隊改めロマーニャ海軍アドリア海艦隊第1任務部隊が展開していた。

 ヴェネチア海軍はクーデター後即座に事前の協定に基づきロマーニャ海軍の指揮系統に参加した。

 元々ロマーニャ海軍とヴェネチア海軍は共同作戦を行うことが多い為これに関しては何の問題もなかった。

 そしてこの第1任務部隊の指揮官は旗艦インペロ改めローマに再改名された戦艦ローマ艦上のベルガミーニ提督だった。

 

ベルガミーニ「ヴェネチアはどうだ?」

 

士官「これが武装解除に関する交渉の答え、だそうです」

 

 ベルガミーニはヴェネチア守備隊との交渉に向かわせた士官から守備隊側からの返答書類を受け取るがそこに書かれていたのはたった一言であった。

 

ベルガミーニ「Vaffanculo(クソ食らえ)、か。

       ローマから命令は来てるな?」

 

 それを読んだベルガミーニはカラチョッティに聞いた。

 

カラチョッティ「はい、来てますとも。

        『全ロマーニャ軍に下令、直ちに“友好的ではない”全ヴェネチア軍を武装解除せよ。

         もし攻撃を受けた場合、又は武装解除を拒否された場合は攻撃せよ。』

        と」

 

ベルガミーニ「よろしい、全艦艇及びローマに緊急要請、ヴェネチア守備隊との交渉決裂、1200時を以て総攻撃を開始予定、陸軍、空軍部隊の支援要請」

 

通信兵「は」

 

 カラチョッティがローマからの命令を読み上げるとベルガミーニはヴェネチアへの総攻撃を決断、ローマと全艦艇に命令が伝えられた。

 ロマーニャ軍はクーデターに賛同していないヴェネチア軍の武装解除を命じられていた、そしてその際に交渉が決裂した場合は一切の武器使用自由が許可されていた。

 

---------

 

 ローマ

 

通信兵「1TFより入電、全艦艇及びローマに緊急要請、ヴェネチア守備隊との交渉決裂、1200時を以て総攻撃を開始予定、陸軍、空軍部隊の支援要請、です」

 

指揮官「分かった、直ちにヴェネチア攻撃部隊を発進させろ」

 

士官「は」

 

 ローマでは攻撃要請を受けると即座に攻撃部隊の発進を命じた。

 この命令はこちらも事前の規定通り北ロマーニャ各地の飛行場に展開する各部隊に伝えられた。

 そして1時間後には各地より戦闘機・爆撃機合計150機以上の第一波攻撃隊が、その30分後にはトリエステよりロマーニャ空軍の指揮下に移ったヴェネチア空軍・ロマーニャ空軍連合の戦闘機・爆撃機100機が離陸しヴェネチアに向かった。

 

 

---------

 

 その頃、混乱の渦中にあったヴェネチア市内には5人のウィッチがいた。

 

シャーリー「なあ、今何が起こってるんだ?」

 

フェル「分からないわよ!今上に聞いてるけど返答が来ないのよ!」

 

 リアルト橋の傍の道路に置かれたトラックの傍でシャーリー、ルッキーニ、そして赤ズボン隊の3人が無線機に噛り付いていた。

 それは勿論今朝から始まった大混乱に巻き込まれ情報を集めるためだった。

 するとルチアナがフェルに無線が通じたと伝えた。

 

ルチアナ「隊長、やっと通じました」

 

フェル「でかしたわよ!こちらマルヴェンツィです、え?ちょっと待ってください!

    それどういう…攻撃!なんで!?ちょ!」

 

 フェルが代わるが司令部からの情報は信じられない物だった。

 

ルッキーニ「何かあったの?」

 

マルチナ「フェル隊長、どうだった?」

 

フェル「それが…即時ヴェネチアから退避せよって命令よ。

    2時間後に攻撃が始まるわ」

 

 ルチアナとルッキーニの質問にフェルが震えた声で答えた。

 その内容は信じられなくて当然だった。

 

シャーリー「攻撃?」

 

フェル「ええ、ヴェネチアへ艦砲射撃と空襲、それに地上部隊による攻撃が行われるそうよ。」

 

 フェルがシャーリーに答えた。

 その内容はとてもじゃないが信じられないものだった。

 

シャーリー「なんで攻撃するんだよ!折角私達が守ったんだぞ!」

 

ルッキーニ「そうだよ!ヴェネチアの街並みは人類の遺産なんだよ!」

 

フェル「知らないわよ!ただ攻撃するから直ちに退避しろ、退避しなければ生命の保証はしないそうよ、今すぐに避難しましょう!」

 

 ヴェネチアへの攻撃を聞いてルッキーニとシャーリーは反対というがそもそもこれは彼女らにはどうしようもできなかった。

 だがその直後、突如砲声が市内に響き渡った。

 

シャーリー「なんだ!?」

 

ルチアナ「見て!艦隊が!」

 

 すると沖合の艦隊をルチアナが指さす。

 そこには艦隊の傍に多数の水柱が上がり1隻の駆逐艦が炎上していた。

 

---------

 

ベルガミーニ「く、連中先に撃ちやがったか。

       全艦、砲撃用意!撃ち返せ!

       被害報告!」

 

 その頃艦隊ではベルガミーニが驚いていた。

 何故なら彼らはヴェネチア軍が先に攻撃することを予期していなかった。

 この地中海最強クラスの艦隊による威圧行動によって敵は戦わずして武器を降ろすか少々の攻撃で粉砕可能と判断していた、だが実際はヴェネチア軍は市内に多数の大砲を持ち込みその大半を艦隊に向け発砲したのだ。

 通常ならばとるに足らない攻撃だが僅か3キロ沖合に停泊していたため数隻があっという間に被弾してしまった。

 

士官「報告!駆逐艦リベッチオ、艦首に被弾!火災発生!現在弾薬投棄作業中!

   駆逐艦マエストラーレ、2番発射管大破!魚雷投棄!

   コルベットヴェスパ、艦橋直撃、艦長以下艦橋要員が死傷!

   水雷艇カストーレ、アルデバラン、アルテア、クリメン、駆逐艦シロッコ、ヴィンセンツォ・ジョベルディ、ヴィットリオ・アルフィエーリ、ジュニエーレ、コラッツィエーレに至近弾多数!」

 

 士官が報告する。

 敵の砲撃は沿岸に近いところに展開していたコルベットや水雷艇、駆逐艦に対して行われていた。

 そしてこれら軽装甲の艦艇はヴェネチア軍の野砲程度でさえ危険であった。

 史実においてもイタリア海軍の駆逐艦2隻が不用意に沿岸に近づき、沿岸に展開していた僅か8門の88ミリ高射砲の攻撃を受け撃沈されていた。

 

ベルガミーニ「全艦、砲撃用意!

       目標、敵陣地及びヴェネチア市街!

       照準完了次第各個に撃て!」

 

 ベルガミーニが命令した。

 その直後、次々と艦艇は砲撃を開始した。

 ヴェネチアの戦いの火蓋は切って落とされた。




楽しい楽しいヴェネチアを舞台にした陸海軍の殴り合いの始まりだー!(よろしくない)
艦砲射撃に空襲、地上戦に空戦ありの予定
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