コリアンウォーのマリンコ
「しかし、本当にアレが現実にできるとは…
確かにアレは理論上可能だが…」
「アメリカンスキーが実際に作ったんだ、こっちでも作れない訳がないだろう。」
「それどころかこっちの方が簡単に使われるぞ。
何せ民間人の死傷者や捕虜の事を考慮しなくて済むからな」
核兵器投下によるニュルンベルクとプラハの巣の破壊はニュースとなって世界中を駆け巡った。
それはここ、東プロイセン国境近くのリトアニアに設営されたある飛行場で話していたウィッチ達、即ち502にも届いていた。
東部戦線はこの数か月で激しく動き春の雪解け前後にはオラーシャ軍がヴァルダイ突出部を殲滅、更に5月にはナルヴァ川を突破、2か月でバルト三国を横断する電撃戦を敢行し7月には前線はリトアニア・東プロシア国境にまで来ていた。
そんな中で核兵器の投下による西部戦線の実質的な南翼の破壊のニュースは衝撃だった。
特に関心を持っていたのがポーだった。
彼は大学で理論物理学を学んでいたからこそこの物理学的な成果に高い関心を持っていた。
ポーとバーティ、パット、リョーニャ、ヤンはポーカーをしながら雑談していた。
パットの座る椅子の後ろにはひかりが立ち、ヤンの座る椅子の後ろの椅子には椅子の背に持たれたエイラがいた。
ひかり「そうですよね…」
パット「ああ、恋と戦争では何とやらだ。
戦争が早く終わると考えれば少しは気が楽になるがな…」
そう言うとパットはタバコを一口吸うと持っていた手札を置いた。
パット「ところで、俺はこの勝負降りるぞ」
バーティ「俺もだ」
パットにバーティも同調した。
ポー「お?負けるのが怖いのか?」
リョーニャ「いやな予感がするから俺も降りる」
ポーが煽るとリョーニャも勝負を降りた。
残ったのはヤンとポーだけだった。
するとポーが手札を見せた。
ポー「3から7のストレート、どうだ?これで借りは返して貰うぞ」
ポーが笑みを浮かべながら言うとヤンは手札を見せた。
それを見てポーは絶望する。
ヤン「9のフォーカード。
全部貰うぞ」
エイラ「流石ミラクルヤンだな」
ヤンの役の方が強かったためヤンは賭けられていた札と酒の瓶をかさっらった。
それにエイラが感心する。
ヤン「まあな」
ポー「畜生…これで25回目だ…」
ポーが恨めしそうに呟いた。
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それから1週間後、アルデンヌ地方、サン・ヴィト郊外にカールスラント陸軍の部隊がいた。
砲兵A「ヴァイスハオプト大尉、本当に見つかるんですかね?」
指揮官「そんなものは知らん。命令通り何かいるかいないか調べるだけだ」
それはカールスラント陸軍の音響観測部隊だった。
彼らはボックからの命令でアルデンヌ地方で音響観測任務に就いていた。
音響観測によって地中の中に何かがいるかどうかを確認するのが任務だった。
彼らは1週間近くこの場所で観測していたが未だ何も観測できていなかった。
だがこの数日前からサン・ヴィト周辺を震源とするごく浅い震源の地震が繰り返し起きていた。
地質学者の推定ではこの近くに何かがいるのは確実だった。
砲兵A「はぁ、しかしいるわけないですよ。
地下に何かがなんて。
ドラゴンでもない限り」
指揮官「そうだよな、上の連中梅毒にでも罹ってるんじゃないか?」
砲兵A「フッ、そうでもない限りそんな命令しませんよ」
二人は有り得ないと言いながら機材を設置した小屋の外でタバコを吸っていた。
すると突然地面が揺れ始めた。
指揮官「うぉお、地震だ」
砲兵A「ふぅ、今のは前よりも大きいですよね」
砲兵B「大尉!何かがいます!」
地震が治まると突然小屋から観測員の砲兵が飛び出してきた。
その報告を聞いて二人は小屋に戻り音響観測装置に食いついていた兵士に聞いた。
指揮官「何があった!」
砲兵C「大尉、何かがいます。
かなり近いです、距離500メートル以内、地下推定25から55メートル。
サイズは不明ですが何か巨大なものが地下を動いてます」
音響観測装置に食いついていた観測員が報告する。
彼が言うには近くにとてつもなく巨大な何かがいるのだ。
指揮官「まさか本当に…大変な事だすぐに上に報告しないと…」
彼は呟くと電話を取り急いで司令部に連絡した。
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シュヴァルリー「まさか本当にいるとは…」
ディートル「それにしても不味いですね…」
その数時間後、パリでは報告を受けた西部戦線の将軍たちが会議をしていた。
発見されたネウロイの対策会議だったが空気は暗かった。
パットン「確かにいる可能性は指摘したがなぜこの時期なんだ…」
ボック「ああ全くだ。
ニュルンベルクとプラハの巣を破壊したせいで西部戦線南翼が伸び切ってるんだ。
もしこの状況で攻勢を受けたらひとたまりもないぞ」
ニュルンベルクとプラハの巣を破壊した結果、西部戦線南翼の戦線が伸び切っていた。
特にアルザス・ロレーヌ以南の地域はフランクフルト~ヴェルツブルク~バイロイト~ピルゼン~レーゲンスブルク~ミュンヘン~シュタイアー~グラーツの戦線となっていたがこの地域にいたのはヘルウェティア軍(1個軍団程度)、リベリオン第1軍、第9軍、ロマーニャ陸軍第1軍、第2軍、ヘルウェティア作戦軍のみでさらにフランクフルト~バイロイト間の戦線にいたのはヘルウェティア軍と第9軍、それに第25軍が側面から支援しているのみで事実上側面を晒していた。
今のところ第9軍が電撃的な侵攻作戦により戦闘の主導権を握っているがもし北から反撃された場合寸断される可能性が高かった。
そのため現在ヒスパニアで再編されたばかりの田中静壱中将指揮の扶桑陸軍第11軍と前田利為中将指揮の第51軍を緊急輸送中だった。
そしてアルデンヌはこの急激に薄くなる戦線と通常の戦線のちょうど境目の少し北にあった。
もしここを突破されれば南翼の突出そのものが包囲殲滅される可能性が高かった。
ボック「兎に角あらゆる増援をアルデンヌに送り込め、予備兵力は?」
するとボックは参謀に予備兵力を聞いた。
参謀「予備兵力は自由ガリア第2機甲師団、ブリタニア軍第1義勇装甲師団ドンブロフスキ、第1パラシュート師団、第23歩兵師団、王立騎兵師団、扶桑軍第107歩兵師団、第51歩兵師団、第11機甲師団、カールスラント陸軍第200突撃師団、第116装甲師団、第91歩兵師団、第356歩兵師団、第5義勇装甲師団ヴィーキング、第11義勇装甲擲弾兵師団ノルトラント、第40義勇擲弾兵師団ライヒスマルシャル、第61装甲擲弾兵師団フェルト・ヘルン・ハレ、リベリオン陸軍第16空挺師団、第111空挺師団、第82空挺師団、第15機甲師団、第12機甲師団、第16機甲師団、第17機甲師団、第1騎兵師団、第2騎兵師団、第77歩兵師団、第106歩兵師団、第93歩兵師団です。」
西部戦線の予備兵力はガリア軍の1個師団、ブリタニア軍の4個師団、扶桑軍の3個師団、カールスラント軍の8個師団、リベリオン軍の12個師団であった。
この兵力がガリアとヒスパニア、ベルギカ、ネーデルラント、ブリタニアに点在していた。
ボック「うむ…それなりにあるが問題は上部組織がリベリオン軍の第7軍だけという事か…
第7軍はアルデンヌの南の突出部の根元に投入するとして、残りの師団をどうするか、そしてアルデンヌへの増援をどうするかだ。
アルデンヌにいるのは?」
参謀「実戦部隊として一定以上の能力があるのはヴァレンシュタイン師団以外では5個山岳師団と1個騎兵師団のみです。」
アルデンヌはゲリラの活動が激しくその上大規模な部隊の展開には向かない土地であったため元々手薄であった。
勿論この地帯を突破された場合の計画は立てていたがそれは敵をアルデンヌで消耗させつつ突出させ撃破するという典型的な機動防御戦であった。
この場合の絶対防衛線はマース川であった。
これはあくまで現状のライン川沿いの戦線を突破された際の防衛計画であり既に背後に浸透した敵に対する防衛計画ではなかった。
そのため事実上戦線後方であるサン・ヴィト周辺にいたのは各種の義勇兵部隊で任務もゲリラの掃討でネウロイとの本格的な戦闘は考慮されていなかった。
ボック「これは想定以上の大事だ…
至急西方総軍参謀本部に掛け合わないといかんな…」
ボックが事態の重大さを認識し呟いた。
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その頃、そこから数千キロ離れたインド洋、マダガスカル沖を一つの艦隊が船団護衛をしながら航行していた。
それは扶桑海軍第3遣欧派遣艦隊第2任務部隊であり船団はエリトリアのマッサワからジブチを経由しケープタウンに向かっていたMDKa2653船団であった。
この船団はマッサワとジブチでエチオピアの鉱物資源及び各種食糧、負傷兵をケープタウンに輸送していた。
この前月のスーパーチャージ作戦によってアフリカ戦線は大きく動いていた。
北アフリカだけでなく東アフリカ戦線でもロマーニャ軍とブリタニア軍、それにヴェネチア東アフリカ植民地軍(AOV)が反攻を開始し一気に北上しエジプト中部ワーディ・ゲディート県以南を制圧しナイル川沿いに一路カイロを目指していた。
また沿岸部ではスエズ湾の入り口でリゾート地のフルガダを占領しシナイ半島ではスエズ運河の手前60キロまで進出、海上では潜水艦隊がスエズ湾の奥深くにまで侵入し来たるスエズ運河攻略作戦の為の偵察活動をしていた。
だが8月初頭に起きたヴェネチア軍のクーデターと併合、そしてヴェネチア軍の武装解除により東アフリカ戦線でも戦闘が勃発、大多数のヴェネチア軍は武装解除されたがおよそ6000人のヴェネチア兵が武器を持って逃走、エチオピアの山岳地帯で現地の独立運動と協力して抵抗運動を始めてしまった。
そのためエチオピアやエリトリア、ソマリアではゲリラ戦が始まり現地のロマーニャ軍とブリタニア軍が掃討作戦中だった。
遣欧派遣第3艦隊第2任務部隊は空母天城を旗艦とする空母1と5隻の駆逐艦からなる艦隊でありパ・ド・カレー経由でコペンハーゲンに移動、そこで先行していた本隊と合流予定だった。
指揮官は角田覚治少将であった。
その甲板では二人の少女がいた。
宮藤「んー勉強ばかりじゃ大変だなぁ…」
「宮藤少尉!何をやっているんですか!」
それはマルス作戦後退役し二階級特進したもののすぐにヘルウェティアへの留学が決まり向かっている途中の宮藤とその随行の服部静夏士官候補生だった。
宮藤は艦内で勉強ばかりさせられていたため気分転換に甲板に上がったところを服部が咎めていた。
宮藤「静夏ちゃん、ちょっと休憩。
折角いい天気だし」
服部「休憩が終わったらすぐに戻ってください、いいですね?」
すると突如艦内にアラームが響いた。
宮藤「なに?」
服部「なんでしょうか」
「「警戒態勢!方位215より国籍不明機接近!数一!超低空です!」」
それは国籍不明機が接近してきているというアラームであった。
服部「少尉!今すぐ戻りましょう!」
宮藤「うん!」
すぐに宮藤は戻ろうと最寄りの出入り口に向かおうとした直後、上空をその国籍不明機である白い星が書かれたF4Uコルセアが通過した。
そしてその国籍章を見て宮藤は驚いた。
宮藤「あ!」
服部「少尉?どうしたんですか?」
宮藤は立ち止まると上空を通過し左舷側を飛ぶコルセアを眺める。
するとコルセアは機体を旋回させると天城の真後ろに付き主脚を降ろして緩やかに降下し始めた。
その光景は艦橋の角田達にも見えていた。
角田「何をする気だ?」
艦長「まさか着艦するつもりでは…」
角田「今すぐ着艦体制を整えろ!急げ!」
すぐに角田は着艦用意を命じた。
その直後艦の十数メートル上を高速でコルセアが通過した。
「「着艦体制!着艦体制!」」
服部「え…」
着艦体制を整えるよう命じたこの命令に服部は混乱する。
その間に水兵達は急いで着艦体制を整え服部と宮藤は傍の左舷キャットウォークに潜り込んだ。
準備が終わる頃にはコルセアはもう一回りして緩やかに降下しながら着艦フックを降ろして降下し飛行甲板に激突、フックが甲板のワイヤーを掴み機体を停止させた。
全てが終わると宮藤はキャットウォークから顔を出す。
宮藤「止まった…」
様子を見ると宮藤はキャットウォークから飛び出し側面にトレインデストロイヤーⅡと書かれたコルセアに向かった。
服部「少尉!危険です!戻ってください!」
宮藤「大丈夫だよ、危険じゃないから!」
服部は止めようとするが宮藤は聞く耳を持たず機体に駆け寄り未だダブルワスプエンジンが回るコルセアの左翼に上りコックピットを覗き込んだ。
「スロットルレバー、アイドル、点火プラグ、オフ、可変ピッチ、フェザーの位置、フラップ、格納、ギア、油圧ブレーキ解除、緊急時チェックリスト完了。
ん?」
宮藤「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないよ!バードストライクだ、ところでこの空母は?」
宮藤が聞くとパイロットが答えた。
この頃にはコルセアのエンジンは停止していた。
宮藤「天城です」
「アマギ?日本か?」
宮藤「まあ…その…話せば長いです…
ところで、お名前は?」
フランク「俺か?フランシス・ジェイコブ・サレンバーガー海兵隊大尉、フランクでいいぞ嬢ちゃん」
そう言うとフランクは手を伸ばして宮藤と握手した。
(解説)
・角田覚治
史実日本海軍第1航空艦隊司令長官
南太平洋海戦などで知られる日本海軍の闘将の一人。
44年にマリアナ諸島の戦いで戦死して飛ばされる。
これで大体メインキャラ登場