この章、端的な表現をするなら「ガリアにおける連合軍の活動記録1945」又は「正しい治安維持戦」
プロローグ:翼の折れた英雄
「シャイセ、ここはどこだ」
「知るか、ドイツ人。
戦線の後ろだけは分かるぞ」
1945年2月、ハンガリー平原のブダペストの西の原野の森の泥の中を二人の奇妙な兵士が歩いていた。
一人はドイツ軍の武装親衛隊の軍服を着ていたが手にはアタッシェケースを持ち、もう一人はハンガリー空軍の軍服に手にはダヌビア43M短機関銃を持っていた。
アタッシェケースを持ったSS将校は第22SS騎兵師団第22SS工兵大隊臨時大隊長のエーリヒ・ルドルフ・テオドール・フォン・ホスバッハSS少佐(親衛隊大隊指導者)、もう一人はハンガリー王国空軍第102戦闘航空団所属カーロイ・ラヨシュ・ヤーノシュ大尉だった。
ホスバッハはこの数か月前から続いていたこの世の地獄とも思える戦場、即ちハンガリーの首都ブダペスト包囲戦を戦い、最後の脱出作戦でブダペストから脱出することは成功したがソ連軍の攻撃で部下と離れ離れになり一人土地勘のないブダペスト郊外を彷徨っていた所、同じくソ連軍に撃墜され彷徨っていたカーロイと出会ったのだ。
だがカーロイはドイツ人によって出世街道から外されたという経歴を持っていたためソ連ほどではないとはいえドイツ人を嫌っていた。
カーロイ「第一、お前らが俺達マジャール人を振り回さなければこんなところで戦争なんて起きなかったんだよ!」
ホスバッハ「お前はあの劣等人種の害虫どもがヨーロッパを支配し搾取しても良かったのか!?
口にするだけで口が劣等人種になるわ!」
カーロイ「そうじゃねえ!戦争やるなら負けたら意味ねえだろうが!
フランスで芸術品略奪しまくり、祖国にいたユダヤ人をどっかに送って、資源と製品だけ盗みやがって何がアーリアの優れた民族だ、アフリカの黒んぼ野郎共かアジアの猿共の方が礼儀正しいさ!
てめえぶっ殺してソ連軍に投降するぞ!」
ホスバッハ「なんだとフン族!」
カーロイ「自称優勢人種!ナチ!キャベツ食い!ジャガイモ野郎!」
二人は泥の中を歩きながら口論を始めた。
ハンガリーからすればドイツは戦争から離脱しようとするのを散々邪魔した挙句に傀儡にして自分達の国にソ連軍を招いた連中だった。
第二次世界大戦末期、ハンガリーはドイツ軍最後の攻勢として有名な春の目覚め作戦に代表されるドイツ軍最後の機甲部隊の激戦地だった。
この時期この地にはかの有名な第1SS装甲師団ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー、第2SS装甲師団ダス・ライヒ、第3SS装甲師団トーテンコップ、第5SS装甲師団ヴィーキング、第12SS装甲師団ヒトラーユーゲント、装甲師団フェルト・ヘルン・ハレなどのドイツ軍の最後の機甲兵力が展開し、ハンガリー平原を舞台に戦車戦を演じていた。
それをハンガリー軍の残余、有名なものではセント・ラースロー歩兵師団などだった。
だが二人の喧嘩は突然二人の腹の虫が鳴ることで終わった。
カーロイ「はぁ、喧嘩はやめよう。こんなことで体力を使いたくない。
この2、3日碌な物を食ってない」
ホスバッハ「俺なんて最後にまともな食事にありつけたのは3か月前だ」
二人はこの数日、ホスバッハに至っては包囲戦が始まって以降はまともな食事を摂っていなかった。
そのうえ二人は数日間飲まず食わずで寒く泥にまみれた戦場を昼夜連続で一睡もせずに歩いていた。
彼らがいたのはソ連軍の戦線後方、そこら中にソ連兵とパルチザン、ルーマニア軍、ブルガリア軍などの敵がいた。
民間人も敵とつながっている可能性があるかそもそも難民になって逃げたかソ連兵たちに略奪されたかのどれかだった。
二人はこれらを回避するためできる限り人のいないところを進んでいた。
すると二人は木々の隙間から家のようなものが見えるのに気がついた。
ホスバッハ「なんだ?家か?」
カーロイ「だろうな、どっかの村だろう。
人の気配はないみたいだが」
ホスバッハ「とりあえず様子を見よう」
二人は家に警戒しながら近づいた。
周囲にも同じような家がいくつかあったが奇妙な事に人の気配はなく文字通り何もなかった。
どうやら住民はソ連軍が来る前に逃げたかソ連兵に捕まって殺されたかのどちらかのようだった。
ホスバッハ「誰もいなさそうだな、行くぞ」
誰もいないと確信したホスバッハはStG44を構えながら家に近づく。
そして家の陰から村の中を見ると村の中も人っ子一人おらず、あるのは馬の死体やそれを啄むカラス、放置されたドイツ軍の軍用車両、砲弾を受け撃破されたⅢ号突撃砲G型1944年12月生産型とドイツ軍に鹵獲運用されていたT-34/85、置いてけぼりにされたような犬数匹だけだった。
ホスバッハ「誰もいないな、よし行くぞ」
ホスバッハは後ろに着いたカーロイに指示するとある家のドアをゆっくり開け中に入った。
家の中は空っぽで荒らされた様子はなかった。
ホスバッハ「何か食えるものないか?」
ホスバッハとカーロイは部屋に入ると食い物を漁り始めた。
するとキャビネットの中にリンゴがいくつかあった。
ホスバッハはリンゴをかじる。
カーロイもやってきてリンゴを夢中で食べ始めた。
だが二人はリンゴを食べるのに夢中で外に別の集団が近づいてくることに気がつかなかった。
しばらく二人は夢中でリンゴを食べていると突然、後ろのドアが開き二人は振り返った。
そこには数人のソ連兵がいた。
一瞬の静寂の後、ホスバッハは首から下げていたStG44をソ連兵めがけて乱射する。
すると先頭にいたPPSh‐41を持ったソ連兵が撃たれ倒れ、ソ連兵は一旦下がった。
だが次の瞬間、部屋の中に手榴弾が投げ込まれ、爆発した。
爆発で脆い家は大きく揺れ、部屋はぐちゃぐちゃになった。
煙が晴れるとソ連兵は様子を見に部屋に入った。
だがホスバッハはまだ息があった、彼は最後の力を振り絞りアタッシェケースを開け、中に持っていたM24手榴弾を入れ、紐を引いた。
そして数秒後、兵士がホスバッハを確認しようと頭を掴んだその時、手榴弾が爆発しソ連兵を全員吹き飛ばした。
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「しかし、ここだけ見るとフランスみたいだな。
フランス人にアメリカ人が二人で」
「イギリス人じゃねえのか?」
「俺は正真正銘オレゴン生まれのオレゴン育ち、血統書付きのアイリッシュアメリカンさ」
1945年2月、オーストリア南部、季節外れの雨のスロヴェニアとの国境付近の山岳地帯では数人のパルチザンと連合軍航空兵の捕虜の奇妙な集団が移動していた。
第二次世界大戦中、バルカン半島はその50年後に起きた内戦を予知させるような凄惨な殺し合いが行われていた。
クロアチアでは元々クロアチア民族主義者のテロ組織でありユーゴ侵攻後に誕生したクロアチア独立国を支配するクロアチア独立国ポグラヴニク(国家元首)アンテ・パヴェリッチ率いるウスタシャがクロアチア全土で大規模なユダヤ人とセルビア人の虐殺を行っていた。
その惨さはあのドイツさえドン引きし「おいバカやめろ(意訳)」と言うほどの蛮行を行い戦後もユーゴ政府もあまりの凄惨さからこの事を封印しまともな研究が行われ始めたのもユーゴスラビアが崩壊しクロアチアが独立した後であった。
セルビアでは逆にセルビア人至上主義者たちがセルビアのセルビア人以外を虐殺していた。
枢軸側ではセルビア救国政府が各地でドイツの人種政策に基づいた人種政策を行いユダヤ人を虐殺、一方初めは連合軍に属していた元ユーゴスラビア王国軍の軍人を中心とする抵抗組織のチュトニックはセルビア人以外を虐殺した。
更にはあまり知られていないものユーゴスラビア人民解放軍及びパルチザン部隊も又小規模ながら虐殺を行ったこともあった。
この時代、バルカン半島はパルチザンやレジスタンス、ドイツ軍、イタリア軍、クロアチア独立国、セルビア救国政府、ウスタシャ、チュトニックなど大小様々な勢力が入り乱れる混沌とした状況だった。
その中でもヨシップ・プロズ・チトー率いるユーゴスラビア人民解放軍及びパルチザン部隊は最大の兵力と支援を受け最大の勢力を誇っていた。
彼らパルチザンは通常のパルチザンだけでなく戦車部隊、空挺部隊、更には航空部隊と海上部隊も有する強大な勢力となっていた。
彼らはバルカン半島で抵抗運動をするだけでなく時にはオーストリア南部の収容所から捕虜となった連合軍兵士を救出する作戦も行っていた。
この日も彼らパルチザンはチェコスロバキア製の軽機関銃ZB-26を持った元フランス空軍の士官でレジスタンス運動に参加しスロバキア蜂起にも参加したフランス人アラン・ジャン=リュック・マリー・ド・メーストル大尉とユーゴスラビア製FNモーゼルM24ライフルと2丁のコルトM1910を持ったイタリア系アメリカ人のアントニー・カルロス・“トニー”・コルレオーネ少尉とその部下のスロヴェニア人数人が収容所を襲撃しアイルランド系アメリカ人で英空軍士官のジェフリー・パトリック・フィッツジェラルド・ジュニア中尉を救出し山岳地帯を進んでいた。
ジェフ「一つ聞くが、追っかけて来てないよな?」
トニー「さあ?ジェリー共が追っかけてきたら来たで撃退すればいい。」
アラン「流石に来ないだろ、こんな山の中だ。
それにこの季節外れの雨で追いかけてきてもすぐ撒けるさ」
ジェフがドイツ兵が追いかけて来てる不安に思うがトニーもアランもこの雨ではドイツ軍は追いかけてこないと考えていた。
この雨は襲撃時には有利な点となった、だがこの雨は逆にこの山岳地帯では危険な要素となった。
トニー「ん?なんか変な音がしないか?」
ジェフ「音?」
ふとトニーが雨音の中に微かに変わった音がすることに気がついた。
言われた彼らは耳を澄ませた。
アラン「…確かに。」
ジェフ「象の大群が走ってくるみたいな音だ。
何の音だ?」
その音はまるで象の大群が走ってくるような音だった。
だが彼らにはその正体が分からなかった。
すると突然一人のパルチザンが右手の山を指さして叫ぶと逃げ始めた。
他のパルチザンも同じように突然逃げ始めた。
3人は意味が分からず右手の山を見る、するとそこに土砂が突っ込んできていた。
アラン「あ、ああああああ!!!!!」
ジェフ「逃げろー!!!!」
トニー「ファッキンホーリーシット!!!」
3人は逃げようとするが土砂に追いかけられ、飲み込まれた。
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第二次世界大戦中、殆ど国では物資の不足から華やいだ暮らしはできなかった。
一か国を除いて。
それはすなわち米国であった。
米国では大戦中も物資不足とは無縁の生活が続いていた。
確かに男たちは戦場か工場へと行き、一部の物資、ガソリンや金属製品の一部、甘味料は制限を受けたがそれ以外は戦前と何も変わらない華やかな生活を送っていた。
この時代のアメリカを象徴するものと言えば映画だろう、この時代のディズニーは白雪姫やダンボのような傑作アニメ映画が誕生していた、そのクオリティは現代でもなお色褪せていない。
「いいか、各自、2機編隊を維持しろ。
ここで出来なきゃジャップの餌食になるだけだぞ」
「了解」
「了解です、少佐」
「分かりました、教官」
「分かったな?相手は同数のコルセア。
ベアキャットで落とされた奴は基地を10週だ」
その華やかなアメリカ人の暮らしが行われている西海岸最大の都市、ロサンゼルス郊外のサン・ガブリエル山脈上空では4機の米海軍の最新鋭戦闘機グラマンF8F-1ベアキャットと4機のF4Uコルセア戦闘機の模擬空戦が行われいた。
F8F隊は訓練中のパイロットが操縦する訓練部隊であった。
編隊を率いるカート・ロバート・フーヴァー少佐はベテランパイロットであり総飛行時間は既に5000時間を超え、教官としてF8Fのテスト段階から関わった軍人であった。
恐らくこの時点では彼ほどF8Fに慣れたパイロットは米海軍にはいなかったほどだ。
編隊は高度1万フィートで交差するとそれぞれ2機編隊に分かれ空戦を始めた。
コルセアはF8Fを追いかけるがベアキャットはコルセア以上に格闘戦に特化した戦闘機であった。
そのためカートは追いかけてきたコルセアに対して機首を上げ宙返りする。
コルセアもそれを追いかけて宙返りするが気がついた時には目の前にF8Fはなかった。
コルセアのパイロットが振り返った時にはF8Fは背後にいた。
彼はF8Fでひねり込みをしてコルセアの背後についたのだ。
カート「ケビン、ついて来てるか?」
ケビン『はい、少佐!』
カート「次はこちらが追いかける番だ。
距離に注意しろ!」
カートはコルセアの編隊を追尾するとまず後方のウィングマンを“撃墜”、続いて編隊長を追いかけるがコルセアはシザーズで振り切ろうとする。
だがF8Fはコルセアの背後にピッタリとくっついて追いかけ続けた。
しかし突然、カートの機体の左の水平尾翼からトリムタブが脱落した。
ウィングマンはそれを回避したがカートの機体は急上昇すると眼下のサン・ガブリエル山脈に急降下、墜落した。
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1945年8月ほど歴史が動いた月というのはないだろう。
この月は初めから世界初の原子爆弾の炸裂・ソ連の参戦・日本の降伏・インドネシア、ベトナムの独立宣言・世界大戦の事実上の終結という冷戦の始まりと帝国主義の崩壊の始まりとなった月だった。
そしてこの月の初め、日本は既に風前の灯火であった。
制空権を失い、各地で空襲が続き、あらゆる航路に機雷が撒かれ、ガソリンは尽き、殆どの艦船は動けないか海の藻屑となっていた。
そんな中数機の日本機、和製フォッケウルフとも呼ばれることもある川崎五式戦闘機が日本上空を飛行していた。
だが次の瞬間、上空から米海軍のF6Fが襲い掛かり華族の次男でエースだった特別操縦見習士官上がりの大野貫二郎少尉機が被弾、出火、爆発した。
そして空中戦が始まった。
主人公S
・SS将校
・ハンガリー空軍士官
・英空軍のアメリカ人義勇兵でアイリッシュ
・イタリア系アメリカ人の航空兵
・フランス人パルチザン(元レジスタンスで航空兵)
・F8Fの教官
・五式戦闘機乗りの学徒上がりの軍人
マイナーすぎる…