翌日、506に2機のC-54と一機のアブロヨークが着陸した。
1機のC‐54には完全武装の兵士達が、残りの二機にはボックとマロリーが乗っていた。
着陸し護衛の兵士達が格納庫前で整列するとC-54からボックとプレッツ、ヨークからマロリーが降りてきた。
それをロザリーとジーナが出迎えた。
ロザリー「ボック大将、マロリー中将」
ジーナ「お疲れ…」
ボック「めんどくさい口上はいい。彼らの元に案内したまえ。」
ロザリー「分かりました」
ロザリーとジーナが社交辞令を言おうとすると遮り案内するよう命じた。
ロザリーとジーナは言われた通りに二人を部屋に案内し。
---------
カーロイ「ふぁ、昨日徹夜で例の書類の英訳版作ってたから疲れたよ…」
アラン「そりゃ大変だな」
カーロイ「ああ、コーヒーくれ。
何も入れてない奴」
その頃カーロイ、アラン、ジェフ、ホスバッハ、トニー、カートはロザリーの執務室でくつろいでいた。
カーロイは徹夜で例の書類の英訳を行っていたため疲れ切り今にも寝そうだった。
そんなカーロイにジェフがブラックコーヒーを渡した。
するとドアがあいてジーナとロザリー、ボックとマロリーとプレッツが入ってきた。
カーロイ達は立ち上がり整列、敬礼、ボックとマロリーも答礼した。
ボック「うむ、ハンガリー軍、SS、パルチザン?、それにトミーとヤンキー二人か。」
ボックはホスバッハ達の軍服を見て識別した。
それに全員が驚いた。
ロザリー「閣下!?」
ジェフ「ど、どういうことだ?」
トニー「WTF」
カート「失礼ですが閣下は何者ですか?」
ボック「そんなに驚く事かね?単に君らと素性が同じで立場が違うだけだ。
かの世界では“ドイツ陸軍元帥フェードア・フォン・ボック”と呼ばれていたただの老人、今は“カールスラント陸軍大将フェードア・フォン・ボック”だがね」
ボックは驚くロザリーやホスバッハ達を後目にホスバッハ達が座っていた椅子に座り陣取る。
その向かいにマロリー、そしてボックの背後にプレッツが立った。
ボック「ではグリュンネ少佐、状況は大体把握した。
大方彼らの事だろう?違うかね?」
ロザリー「は、はい」
マロリー「なら話が早い、彼らを506に配属させろ。
書類に関しては我々が行うから心配しなくてもいい。
それにウィッチである可能性が高いだろうからウィッチとして配属したまえ」
ロザリー「はい?ウィッチ?」
マロリーの言葉にロザリーが疑問を持った。
マロリー「ウィッチだよ、ウィッチ。
君は違和感を感じないのか?」
ロザリー「言われてみれば…何か違和感を感じます…」
マロリーの言にロザリーも同意した。
ホスバッハ達からは何か違和感のようなものをずっと感じていたのだ。
マロリー「その違和感の正体がウィッチだからだよ。
これで納得したか?」
ロザリー「はい」
ジーナ「しかし、数人はリベリオン人でも貴族でもないのですが…」
するとジーナが数人が506への入隊要件を満たしていないと指摘した。
マロリー「リベリオン人はアメリカ人と同じ扱いにしてあるから可能だ。
それでいいかね?」
ジーナ「しかし、ド・メーストル大尉は“フランス人”です。」
ジーナがフランス人のアランの事を伝える。
フランス人である以上リベリオン人の506に配属するのは難しく思えた。
ボック「ふむ、ド・メーストル大尉」
アラン「は」
するとボックはアランを呼び質問した。
ボック「君は何処生まれかね?」
アラン「一応ワシントンD.Cです。」
ボック「なら大丈夫だ、出生地主義だ。」
アランはワシントンD.C生まれだった。
そのためアメリカの国籍付与条件である米国内での生まれに合致し彼には自動的にアメリカ人としての国籍が付与されていた。
ジーナ「了解しました」
マロリー「ところで君たちは何の機の操縦経験がある?
ストライカーユニットは対応するユニットと特性がそっくりで大した訓練の必要もなく転換できる。」
するとマロリーが操縦経験を聞いた。
カート「私はP‐40、FM‐2、F8Fですね」
トニー「P‐38ライトニング」
ジェフ「P‐40とモスキート」
アラン「昔MS406とカーチスホークを」
ホスバッハ「38年までBf109」
カーロイ「Fw190とCR32だ」
マロリー「分かった、ライトニング、モスキート、FM‐2、P‐51、Bf109、Fw190を手配する。
ド・メーストル大尉には悪いが代替品としてP‐51になるが。
今から手配すれば夕方にはセダンの方は来るはずだ。
カールスラント製はランスのデポにいくつかあったはず」
マロリーはユニットの手配を確約した。
最も近い補給デポはランスであった。
ボック「では次だ、彼、ハンス=アヒム・プレッツ少佐を506に連絡将校として配属してもらう。
彼はパリとの連絡役として定期的に伝えてもらう、いいね?」
次にボックはプレッツの事を伝えた。
ロザリー達はボックの命令に戸惑った。
ロザリー「なぜ彼をここに配属する必要があるのでしょうか?」
ボック「理由?理由なんて聞いて何になる?
これは依頼ではなく命令だよ?命令に理由を聞いても答える必要なんてあるかい?」
ロザリーの問いにボックは悪びれることなく答えた。
彼女はこれ以上の追及はあきらめた。
ロザリー「分かりました。ところで、閣下。
昨日、このような書類を回収しましたがいかがいたしましょうか?」
ロザリーは話題を変えてホスバッハが持っていた例の書類の英訳をボックに渡した。
ボック「ふむ、まさかこの研究が実際にあったとはな。
噂では聞いていたが実際に目にするのは初めてだ。」
ロザリー「知っているのですか?」
ボックの反応にロザリーは驚いた。
ボック「知っている、とは違うな。噂だ噂。
一部の軍の研究者が未知の物体に関する研究をしているという噂を数回耳にした事がある。
まあ眉唾物だと思い気にしてはいなかったが事実だったとはな。
興味深いな、グリュンネ君、この書類は我々がオリジナルと共に回収するがいいかね?」
ロザリー「ええ、構いません」
カーロイ「いくら大将閣下と言えど渡すわけにはいきません」
ボックが原本と一緒に例の書類を貰おうとするとカーロイが拒否した。
ボック「何故かね?」
カーロイ「は、その書類は我がハンガリー軍の最高機密文章であり他国軍の軍人に渡すなど言語道断、もし渡すというのであれば全て私自ら処分します。
ハンガリー軍人として私にはその書類の情報漏洩の責任と義務があります」
ボック「フハハハハハ、いいだろう。今日は諦めるよ。何せ話が急だ。
次はちゃんとした許可と命令を持ってきてやるよ。
グリュンネ君、君はいい部下を手に入れたよ。
この大将である私に面と向かって意見を口にする気骨のある男はなかなかいないよ」
カーロイの意見にボックは高笑いをした。
ボック「少し早いが帰るとするか。失礼したよグリュンネ君。
まあこっちに来て1時間も経ってないがね」
マロリー「では失礼した」
話が済むと二人は立ち上がると部屋を出て行った。
出て行くとロザリーは力なく座った。
ロザリー「はぁ…大変だわ…」
ジーナ「フーヴァー少佐たちはB部隊が引き取りますが残りはお願いします。」
ロザリー「そのつもりよ、それよりも…」
プレッツ「私の事ですかな?レディー」
ロザリーはドアの傍でボック達を見送ったプレッツを見る。
ロザリー「何でもないわよ、何でも」
プレッツ「正直に言ってくださって結構です。
私がここでは厄介者だと分かってますので」
ジーナ「ところで、君も彼らと同じなのか?」
するとジーナがプレッツに聞いた。
それにプレッツは悪びれもせず答えた。
プレッツ「だったら何です?
では」
そう言うとプレッツは出て行った。
アラン「気に食わねえ奴だな」
ジェフ「ああ、なめてるのか?」
トニー「だが信用には足るね。ああいう奴は上の者に対して従順で忠誠を誓うタイプだ。
その上頭も切れる」
アランとジェフとトニーはプレッツをそう評した。
ジーナ「グリュンネ隊長、そろそろ帰ります。
何分二日も向こうを留守にしてますので」
ロザリー「ええ、アランさんたちの事をお願いね」
ジーナ「はい」
そう言うとジーナはカート達を連れて出て行った。
---------
それから2時間後、ディジョン
マリアン「遅いな…」
ジェニファー「向こうで色々あったそうですから…」
カーラ「あ!来たよ!」
ディジョンではマリアン達がジーナ達の帰りを待っていた。
だがまさかジーナがお客を連れ来ているとは思いもしていなかった。
そしてカーラが雲の間からジーナとカートのF8F、そしてその後ろからくるC-47に気がついた。
ジーナ達は次々と着陸するとマリアン達はジーナに駆け寄った。
ジーナ「今帰った、何かあったか?」
マリアン「特に何もありませんでした。
ところで、あれは?」
マリアンが報告すると一緒に来たC-47の事を聞いた。
ジーナ「ああ。新しい仲間、というべきか?」
カート「私の古い戦友もいるがね」
「「?」」
ジーナとカートが簡単に説明するが3人は首をかしげるだけだった。
その間にC-47は駐機して3人の男が降りてきた。
マリアン「その、新しい仲間っていうのは…彼らですか?」
ジーナ「そうだ。」
カーラ「なんか楽しそうじゃん」
ジェニファー「どんな人なんでしょうか?」
それに三者三様の反応を見せる。
降りた彼らも又マリアン達に近づいた。
ジェフ「カート、これがこっちのお仲間か?」
カート「ああ、紹介しよう、海兵隊のマリアン・E・カール大尉、同じく海兵隊のジェニファー・デ・ブランク大尉それに陸軍のカーラ・ルクシック中尉だ。
で、こちらがアラン・ド・メーストル大尉、フランス人だが一応アメリカ生まれだから米国籍を持ってる、でトニー・コルレオーネ少尉とジェフリー・フィッツジェラルド・ジュニア中尉だ」
マリアン「よろしく。」
アラン「よろしく」
トニー「よろしく。」
ジェフ「ああ、よろしく。」
カートが紹介しマリアン達と握手する。
するとマリアンがジェフの軍服に気がついた。
マリアン「ブリタニア空軍なのか?」
ジェフ「いや、イギリス空軍だ。
とはいっても俺はイギリス人じゃなくて血統書付きのアイリッシュアメリカン、一応何故かアイルランド貴族の爵位まである名門だぜ」
ジェフがマリアンに自慢するとマリアンの表情が急に厳しくなった。
ジェフ「どうした?何か不味い事でも言ったか?」
マリアン「なぜ、忌々しい貴族がいるんだ!」
ジェフ「落ち着けマリンコ、今はこの通りRAFだが元は海兵隊だ。
同じ海兵隊員同士仲良くやろうぜ」
声を荒げるマリアンの肩を叩いてジェフが諫めようとするだがマリアンは手を払いのけた。
マリアン「貴族なんかが同情するな」
ジェニファー「すいません、マリアン、駄目ですよ、そんな口聞いちゃ…」
マリアンの言にジェニファーがフォローする。
ジェフ「はぁ、君は海兵隊員か?」
マリアン「そうだ」
するとジェフが真面目な口調で聞いた。
ジェフ「なら聞くが海兵隊のモットーは?」
マリアン「Semper Fi、The Few, The Proud、Once a Marine, Always a Marineだが?」
ジェフ「OK、俺は元海兵隊員だ。
そのモットーを胸に訓練を受け、今でもそのモットーのように海兵隊員、そして合衆国市民の模範たるべき行動を心がけてる。
しかし、君の態度は目に余る。
君は人種差別主義者か?それも貴族を差別するビッチか?」
マリアン「そんなわけないだろう!何がレイシストだ!」
ジェフが大っぴらに人種差別主義者と聞いてマリアンが反論するがジェフの怒りが爆発した。
ジェフ「だが君の態度はまるで貴族に対して嫌悪感を丸出しにするクソみたいなレイシストかコミュニストだ! いいか!俺は差別が大っ嫌いだ!
そもそも海兵隊に戻らなかったのも知り合いのイギリス人に誘われたのもあるが俺の故郷の幼馴染の日本人が日本人というだけで収容されたんだ、アメリカは祖国だがそんな野蛮な行為をする連中の為に戦うぐらいなら同盟国に行って史上最悪の虐殺者相手に戦った方がマシだ!
貴様は海兵隊で何を習った!自由と権利を守るのが海兵隊員だ!
差別をするな!人種や肌の色や生まれで差別するなど言語道断!
レイシストなど海兵隊に要らん!レイシストはその名誉ある軍服を今すぐ脱いでママのエプロンに泣きついて『ママ、今日差別したら海兵隊員に次言ったら(ピー)が馬鹿になるまでファックしてからライフルで頭蓋骨をファックしてやるって言われたの』って言ってろ!」
ジェフは完全にキレていた。
彼からすればマリアンの態度はまさに差別的もしくは「自由と権利の擁護者」である海兵隊員の風上にも置けないような態度であった。
その上ジェフは日系人収容で幼馴染の日本人の家族が犯罪者扱いされたと聞いて愛していた海兵隊に戻らず英空軍に行くほど人種差別を嫌っていた。
その気迫にマリアンもジェニファーもカーラもドン引きしていた。
ジェフ「そうか、それでも脱がないのならてめえのケツ(ピー)を徹底的に再教育してやる!
ケツ(ピー)が泣いたり笑ったりできなくしてやる!
中佐、カート、このサバノビッチの再教育をする許可を」
ジェフが怒りながらカートとジーナに許可を求めた。
カート「そ、そこまでする必要はないと思うが…」
ジェフ「レイシストの血筋を根絶やしにしなければならない。
海兵隊にレイシストなど不要だ、レイシストがいるならそれを排除するのが海兵隊員だ」
カート「いや、しかし…」
ジェフ「再教育の許可を、カート。」
カート「いや、教官をやった事は…」
ジェフ「1939年から40年までパリスアイランドで教官をやってた。
カート、許可を」
カートはジェフの勢いに押されていた。
カートはジーナに聞いた。
カート「中佐、どうします?
やらせます?下手にやらせると色々問題が起きそうな気がします」
ジーナ「はぁ、いいだろう。ただし1週間だけだ」
マリアン「隊長!」
ジーナの決定にマリアンが反応するがジェフは満足していた。
ジェフ「一週間あれば十分です。」
ジーナ「落ち着け、一応は二人共親睦を深めるためだ。
禍根を残すようなことはするな」
ジェフ「は」
ジーナがジェフに釘を刺した。
そして翌日以降、ジェフはマリアンに手加減無しの本物の海兵隊の訓練を行うのだった。
マリアンの貴族に対する態度、あれ見ようによっては差別に見える。
史実だとこの時期の軍ものすごい差別しててタスキーギ・エアメンとかバッファロー・ソルジャーズとか第442連隊戦闘団がその最たる例だけど。
そこに徹底した差別嫌いで海兵隊員だったジェフが入れば…