WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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長くなった…そもそもあの回を一回で纏めようとしたし…


第12話:親の心子知らず

「ボンジュール、メドモワゼール!」

 

イザベル「やっぱり」

 

 ソードフィッシュが着陸後、降りてきた老人と少女を見てイザベルはあからさまに不機嫌になる。

 その老人はイザベルを見ると反応した。

 

「おお~久しぶりだ、我が子よ!」

 

「「我が子!?」」

 

 老人はイザベルに抱き着いた。

 老人はイザベルの父親だった。

 

アドリアーナ「父親って言うと、伯爵?」

 

伯爵「伯爵か、祖国をネウロイに蹂躙されて以来その称号は封印した。

   だから今はただの娘に甘々のダディだよ~」

 

イザベル「や・め・て」

 

伯爵「人前じゃ恥ずかしいのかい?」

 

イザベル「人前じゃなくてやめて」

 

 伯爵はイザベルに抱き着くがイザベルは徹底的に嫌がる。

 

邦佳「あんなアイザック君初めて見た。」

 

カーロイ「ありゃ反抗期だな。」

 

イザベル「やっぱり撃墜するべきだった」

 

ハインリーケ「冗談であろうな?」

 

 イザベルが死んだ魚の目をしながら呟く。

 邦佳とカーロイは二人のやり取りを優しく見ていた。

 そのやり取りをしている一方ホスバッハはもう一人の同行者に気がついた。

 

ホスバッハ「貴様は何者だ?」

 

クローディア「あたし、ル・タン紙の記者でクローディアです。

       伯爵に頼んで付いて来ちゃいました」

 

キーラ「ほう」

 

 もう一人はガリアの中道左派系新聞であるル・タン紙の記者のクローディアだった。

 

クローディア「今回は是非独占取材をお願いしたいと思いまして。」

       ウィトゲンシュタイン大尉の日常を追うコラム!

       その名も『今日もわがままお姫様!』

       どうですか!?」

 

ホスバッハ「身分証は?」

 

クローディア「え?必要だったんですか?」

 

ホスバッハ「許可は?」

 

クローディア「ありません!」

 

ホスバッハ「事前連絡」

 

クローディア「突撃取材なのでありません!」

 

ホスバッハ「分かった、憲兵!こいつをスパイ容疑で拘束しろ!」

 

憲兵「は」

 

クローディア「ええっ!?」

 

 ホスバッハは事情を聴くと憲兵を呼びクローディアは拘束され猿轡を噛まされ、目隠しをされ、ロープで巻かれた後手荒にトラックの荷台に乗せられセダンの憲兵司令部に運ばれた。

 その後、数日後に保釈金が支払われ解放された。

 

 

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伯爵「こちらの火事の話を聞いてね、取るものもとりあえず飛んできたのだよ」

 

ロザリー「よく許可が取れましたね」

 

 少しした後、伯爵を囲んでウィッチ達は茶会を催していた。

 

伯爵「なあに、視察という名目でちょいとね。

   まあ、後で膨大な量の報告書を提出しなければならないのだがね…」

 

イザベル「どうせ自分じゃやらないくせに」

 

 伯爵は表向き視察名目で来ていた。

 だがほぼ抜き打ちでありパリも行われる6時間前にブリタニア大使館から通告があったような状態だった。

 

ホスバッハ「せめて次からは最低24時間以内に通告してくれないと困ります。

      我々としても警備の都合など色々ありますから」

 

伯爵「そうですな、次からは気を付け事にします、ホスバッハ少佐」

 

 ホスバッハが事前通告の件で文句をつける。

 あまりにも通告が遅く、506がこの件を正式に知ったのは伯爵が着陸後にパリに問い合わせた時だった。

 

伯爵「無論、心配できたわけではないよイザベル。

   ベルギカの摂政からお前をぜひ副官に欲しいとお誘いがあった。

   リベリオンの首都ワシントンD.Cの勤務になるから危険もない」

 

邦佳「えと、せっしょう?」

 

ハインリーケ「簡単に言えば国王に次ぐ地位ある人物じゃ」

 

カーロイ「一部例外もあるが。

     いい話じゃないか、出世コースまっしぐらだ」

 

 イザベルに伯爵が摂政の副官打診の件を伝えた。

 摂政は基本的に国王に次ぐ地位ある人物という認識だが一部例外としてハンガリー王国の摂政ホルティ・ミクローシュ提督やスペインのフランシスコ・フランコ・バアモンテのような国王のない摂政という場合もある。

 ハンガリーの場合は国王となる予定であったカーロイ4世(ハプスブルク=ロートリンゲン家のオーストリア=ハンガリー帝国皇帝カール1世)、更に実際にハンガリー国王として擁立されたオーストリア大公ヨーゼフ・アウグスト・フォン・エスターライヒ(ヨーゼフ・アントン大公(神聖ローマ帝国皇帝レオポルト1世の7男)の孫)をハンガリー国王として即位させることを第一次世界大戦後の戦勝国が拒否、そのため国民の人気の高かったホルティを摂政とするしかなかった事情があり、スペインの場合はフランコが47年に国号を王国に変更、彼自身が終身摂政として終身元首としての地位を確立するという役割があった。

 そして摂政の副官に就任するという事は出世コースを意味した。

 

伯爵「そろそろお前も軍での生活を終わりにして…

 

イザベル「父さんには何も見えてないの?

     ネウロイとの戦いは何も終わってないんだよ?」

 

 イザベルはそれに反発する。

 

伯爵「お前は知っているかな、この506がブリタニアで何と呼ばれているか?

   タイタニック、処女航海で沈んだ船だよ。

   名誉隊長であられる少佐には悪いが残っていても溺れるだけだよ。」

 

カーロイ「タイタニック?オリンピックの間違いじゃないか?」

 

 カーロイがジョークを言う。

 ブリタニアでは506の編成作業は滞り気味に見えこのまま暗礁に乗り上げると思われていた。

 実際編成は五月雨式で編成率は8割、部隊の扱いも今の所は「限定的攻勢と局所的防衛にのみ使用可」という扱いを受けていた。

 このような事態になった背景に連合軍とガリア政府のぎくしゃくや政治的妥協もあるが物理的な面で言えば西部戦線の再編で大規模な部隊の再編とインフラ復旧に物資と人員が割かれたため後回しになったという面もあった。

 だが現在再編もひと段落しインフラ復旧をガリアの民間企業に外注することでコスト削減を行ったため506の編成作業はかなりの速度で進んでいた。

 

イザベル「僕は、僕は卑怯もになる気はないから!」

 

邦佳「ちょっと!アイザック君!」

 

カーロイ「おい!」

 

 イザベルは立ち上がると出て行ってしまった。

 

伯爵「はぁ、困った子だ…」

 

 

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 それから少しして、イザベルは基地の一室に置かれたピアノを弾いていた。

 

カーロイ「イザベル、ここにいたのか」

 

 するとカーロイがやってきた。

 

カーロイ「ピアノ弾けたのか?」

 

イザベル「まあね」

 

カーロイ「ちょっと貸せ、一曲弾いてやる」

 

 カーロイはイザベルを退けるとハンガリー舞曲第5番を弾き始めた。

 弾き終わるとイザベルは腕を褒めた。

 

イザベル「僕より上手いね」

 

カーロイ「それはどうも、ミスイザベル・バーガンデール。」

 

 彼はもったいぶった口調で返すとカーロイは立ち上がり席をイザベルに譲った。

 

カーロイ「どうぞ、レディーファーストだ。」

 

 イザベルが席に座ると突然聞いた。

 

イザベル「ねえ、僕って恵まれてると思う?」

 

カーロイ「心配性な親父さんに中々の資産家と見える、悪くはないと思うぞ」

 

 彼女の問いに答える。

 

イザベル「小さい頃、何でも買って貰えたよ。

     本もお菓子も玩具も、欲しいって言えば幾らでも。

     でもそれはみんな自由とイザベルって名前を奪われた代償なんだ。

     魔法力が発現してから父さんたちは僕がベルギカという小国の外交に利用されるんじゃないかと思って女の子ってことを隠してずっと屋敷から出さなかったんだ。

     おかげでたくさん本は読めたけど」

 

 イザベルは自分の過去を話した。

 小さい頃は外交に利用されると思い屋敷に閉じ込められていたのだ。

 

カーロイ「そうなのか、じゃあ黒田とかに“アイザック”って言われるの嫌か?」

 

 綽名のアイザックと呼ばれるのが嫌いかと聞いた。

 だが彼女は否定した。

 

イザベル「ううん、“アイザック”ももう僕の一部だからね。

     家を出たのも憧れの外の世界を見てみたかっただけ。

     軍に入ったのは食べるのに困らないし、それに、怖かったから。

     バーガンデール家の人間は臆病者だって後ろ指をさされるのがね。

     戦いで死ぬより蔑まれることの方が怖いよ」

 

 イザベルは哀しげに語った。

 するとカーロイが頭を撫でた。

 

カーロイ「強いな、イザベルは」

 

イザベル「へ?」

 

カーロイ「俺は子供の頃から美術商の親父に連れられて世界中を回りそれこそ名だたる芸術家、作曲家、演奏家、作家、詩人、評論家、哲学者、学者に会ってきた。

     親父は家に閉じ込められて暮らすことがこの世で最も不幸な事だと言っていた。

     だから家庭教師を無視して俺を連れて世界を見せた。

     トゥーランドットの初演も見に行ったし、パリではピカソのアトリエに行き作品が生まれる過程を目撃したよ。

     だけど親父は俺を芸術家にも美術商にもしたがらなかった、親父は美術商は芸術を冒涜するために生まれた職業だって言って憚らなかった。

     『芸術に値段をつけるとは何事か、芸術とは誰が描いたか、誰が作ったか、それを誰が幾らで買ったか、それが幾らしたかで評価されるものではない!

      だが愚かにも殆どの人間は芸術を値段や描いた者でしか評価しない、そしてその芸術に優劣をつけるのだ。

      あらゆる芸術とは本来その作品の芸術性でのみ評価されるべきであり、値段など付けられるものでもない。

      そして人類の偉大な残すべき遺産に値段をつける美術商はこの世で最も芸術を愚弄している。』

     ってな。自分の仕事を憎む変人だったよ。」

 

 カーロイは自身の思い出を語った。

 美術商の父親に連れられて世界中の名だたる芸術家に会ってきた彼だが彼の父親は自身の仕事を憎み嫌っていた。

 

カーロイ「だから芸術に関わる仕事を禁じられた。

     それで軍人になった。

     こう見えても出世欲は人一倍あるんでね、出世は男の本懐だ。

     そんなわけで俺は死にたくはない。祖国の為と言われてもね。

     なんせ死ねば出世できない。

     変な話だがこの世に死にたい人間、死を恐れない人間なんていない。

     いるとすれば自殺志願者だけだ。」

     

 カーロイが軍人を目指したのは出世欲だった。

 俗物的な理由だが派閥や人間関係が大きな影響を与える通常の官僚とは違いある意味実力主義である軍の方が実家が名門貴族だが美術商の彼に向いていた。

 

イザベル「…何でそんな事話したの?」

 

 ふとイザベルが聞いた。

 彼は帽子を深めに被ると答えた。

 

カーロイ「“何で?”世の中理由のないことの方が多いぜ?

     強いて言えば、本質的には君と俺は同じような人間だからだ。

     例えジョークと虚言で固めようとも中身を推察することはできる。

     その中身を侮蔑する訳ではないがね」

 

 カーロイは鋭い言葉で切り込むと立ち去った。

 その言葉にイザベルは得体のしれない恐怖を感じるのだった。

 

 

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伯爵「おや、君はオストマルク軍の…」

 

カーロイ「伯爵、お帰りですか?」

 

 少し後、カーロイが廊下を歩いていると伯爵とばったり出会った。

 伯爵は荷物を纏めて帰ろうとしていた。

 

伯爵「ええ、もうロンドンに帰ろうかと思いましてね。

   あの子に嫌われてはここにいる意味もないですしな」

 

カーロイ「そうですか、荷物をお持ちしますよ」

 

伯爵「ありがとうございます」

 

 カーロイは伯爵の荷物を持つ。

 

伯爵「あの子の言うことも分からなくもない、ウィッチの使命を全うするのは立派な事だ。

   ただ、私も戦争を経験してましてね、あの子には危険な目に遭ってほしくない一心でしたが…」

 

カーロイ「そういうものですよ、親心というのは。

     それに彼女はそういう年頃ですから。」

 

 伯爵とカーロイは会話しながら歩いていた。

 

伯爵「君のご両親は軍に入ることに反対しなかったのですか?」

 

カーロイ「私はこう見えても空軍士官学校上がりでして、反対とは無縁でしたよ。

     今は前線部隊の士官ですが数か月前までは参謀本部の将校でした。

     危険とは無縁でしたが生き馬の目を抜く熾烈な競争社会、何人もの同僚や級友、後輩、先輩が体や心を病んで入院したりしたのを知ってます。

     だからこそ彼女は中央に送るべきではないですよ。」

 

 カーロイが自分の考えを伝えた。

 

伯爵「確かに」

 

カーロイ「ましてや彼女はまだ子供です。

     多感な時期にストレスの多い場に置くべきではないでしょう。

     ここも相当なものですが中央の比ではないですよ。

     どうです?ディナーでも、ここのシェフの腕は素晴らしいですよ」

 

伯爵「ではいただきましょうか」

 

 彼は伯爵をディナーに誘った。

 

 

 

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 翌朝、伯爵は帰ろうとしていた。

 

伯爵「では皆さん、お騒がせしました。

   元気でな、マイハニー」

 

イザベル「消えて」

 

 伯爵はイザベルに挨拶するが彼女は無視した。

 

ホスバッハ「カーロイ、黒田、大野は伯爵を護衛しろ。

      どうにも嫌な予感がする」

 

カーロイ「嫌な予感?」

 

ホスバッハ「前線士官の勘って奴だ」

 

 ホスバッハは黒田と貫二郎とカーロイに伯爵の護衛を命じた。

 ホスバッハは長く前線士官であったため所謂勘というものがあった。

 

ホスバッハ「出なければそれで万々歳だ。黒田を連れて行くのはリハビリだ。」

 

貫二郎「出なければいいですね」

 

ホスバッハ「ああ、出なければ。」

 

 

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伯爵『すまないね、カーロイ大尉、黒田中尉、大野少尉。

   私の為にたいそうな護衛をつけてくださって』

 

カーロイ「命令ですからね、それに伯爵に万が一があれば彼女も悲しみますし」

 

 離陸後、3人はソードフィッシュを護衛しながら話していた。

 

伯爵『うちの子に君のような戦友がいてうれしい。

   どうだ?うちに婿に来ないか?』

 

 突然カーロイに伯爵が婿に来ないかと誘ってきた。

 彼はジョークだと思い返す。

 

カーロイ「ええ、戦争が終わって食い扶持が無けりゃお世話になりますよ」

 

伯爵『本気で考えているのだよ。

   君のような人を誰かの婿にするのは惜しい、イザベルとも気が合うようだし駄目か?』

 

カーロイ「本人に聞いてくださいよ、男と女の仲ってのはこの世で…」

 

 一番難しい事、と言いかけたその瞬間、カーロイは背後に何かの気配を感じ上を見た、そこにはクラゲとエイのようなネウロイの二体がいた。

 

 

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 その頃、基地ではイザベルが浮かない表情をしていた。

 そしてアドリアーナが昨日伯爵と共に来た記者の事を聞いた。

 

アドリアーナ「ところであの記者はどうしたんだ?」

 

キーラ「憲兵が拘束してセダンに運んだそうだ。

    今頃拘置所に放り込まれてる頃だろう。」

 

ホスバッハ「上は今朝早くに新聞社に抗議したそうだ。

      正規の手順を踏んでなかったから当たり前だ」

 

 記者は既に留置所に繋がれていた。

 

アドリアーナ「見たかったもんだな『今日もわがままお姫様!』」

 

イザベル「そーだね」

 

アドリアーナ「うわの空だな」

 

 アドリアーナが隣に座るイザベルに話しかけるが彼女はうわの空だった。

 

アドリアーナ「それなら黒田たちと一緒に見送りすればよかったのに」

 

イザベル「どうして僕が…」

 

 言いかけたその時、突如サイレンが鳴り響いた。

 

レーダー手『北北東220キロ付近の地点で中型ネウロイ2機とカーロイ隊が交戦中。』

 

ホスバッハ「出たか!」

 

レーダー手『ソードフィッシュも交戦域内に入る模様です』

 

ホスバッハ「ハインリーケ、イザベル、アドリアーナが迎撃に向かえ!

      万が一があれば首が吹っ飛ぶだけじゃ済まないぞ!」

 

 

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カーロイ「クソ、黒田は伯爵の援護、伯爵は左に急旋回して降下しろ!

     給料分だけ働けよ!」

 

伯爵『うむ!』

 

邦佳「了解!」

 

カーロイ「大野、伯爵が離脱するまで食い止めるぞ!」

 

貫二郎「了解!」

 

カーロイ「パガニーニを弾くより楽だぞ!」

 

 カーロイと貫二郎はネウロイの攻撃を防ぎながらネウロイを攻撃していた。

 クラゲのようなネウロイは攻撃をする一方、エイのようなネウロイは全く攻撃してこないように見えた。

 カーロイは先に攻撃しないエイを潰そうと近づくが突如不快な音が響いた。

 

カーロイ「く、ひっでえ音だ…俺がこっちをやって正解だな」

 

 カーロイは悪態をつき同時に固有魔法の為このような攻撃を食らえば大変な事になる貫二郎を当てなくて良かったと思った。

 すると攻撃の一部が邦佳の方に向かい邦佳はシールドを張る、だが跳ね返った攻撃の一部がソードフィッシュの翼の一部を破壊した。

 

邦佳「しまった!」

 

伯爵『操縦が…!』

 

 ソードフィッシュは落下し始めた。

 邦佳は咄嗟に機体の下に周り落下を止めようとする。

 

伯爵「黒田さん!」

 

邦佳「上がれえええええ!」

 

 だが邦佳一人では機体を支えられず落下し続ける、すると別の手が翼を支え、落下が止まった。

 

ハインリーケ「つくづく損な役回りが得意じゃな?」

 

邦佳「大尉~!」

 

ハインリーケ「ほれ、気を抜く出ない」

 

 ハインリーケが救援に来たのだ。

 上ではカーロイと貫二郎にアドリアーナとイザベルが加勢していた。

 

伯爵「大尉殿!私はどうなっても構わないどうか娘を…」

 

ハインリーケ「案ずるな、あやつは立派なエース。

       伯爵も刮目するがよい、そなたの娘の雄姿を」

 

 心配する伯爵にハインリーケが語る。

 一方上空ではイザベルがカーロイ達と合流していた。

 

カーロイ「イザベル、ヴィスコンティ、良かった。

     俺とイザベルがエイを潰す、お前と大野の二人でクラゲを潰せ、いいな?」

 

 カーロイは手短に指示すると上昇、エイの方に向かった。

 

カーロイ「イザベル、エイは近づくと不快な音を出してくる、気をつけろ。」

 

イザベル「了解!」

 

カーロイ「お前の親父さんにカッコいいところ見せるチャンスだぜ?」

 

 二人は近づくと腹に回り込みカーロイがゲバウエル航空機関銃を乱射する。

 そしてコアを見つけた。

 

カーロイ「あったぞ!今だ!撃て!」

 

 イザベルはコアを狙うとボーイズを撃ち、破壊した。

 同時にクラゲの方もアドリアーナと貫二郎が破壊した。

 

カーロイ「やったじゃねえか!」

 

イザベル「わ!」

 

 戦闘が終わるとカーロイが手荒くイザベルの頭を撫でた。

 

カーロイ「親父さんにお前が一流のエースだって証明できただろ?違うか?」

 

イザベル「そうだけど…」

 

カーロイ「照れるなよ、褒めてるこっちが恥ずかしいじゃねえか」

 

 べた褒めするカーロイに彼女は照れてしまった。

 カーロイが褒めていると後ろから邦佳が呼びかけてきた。

 

邦佳「アイザックく~ん!」

 

 振り返ると邦佳とハインリーケがソードフィッシュを支えながら飛んできた。

 そして元気そうに手を振る伯爵の姿を見ると邦佳に向かって抱き着いた。

 

イザベル「黒田さん!ありがとう父さんを守ってくれて。

     どんなに感謝してもしきれ…」

 

カーロイ「イザベル…放してやったらどうだ?」

 

イザベル「え?あ」

 

 抱き着いて感謝していると突然カーロイに言われて気がついた。

 彼女は強く抱きしめすぎて治りかけの邦佳の肋骨の事を忘れていた。

 

邦佳「ろ、肋骨が…」

 

イザベル「あ、ごめん」

 

 イザベルは邦佳を離すと謝った。

 

伯爵「うむ、やはりカーロイ大尉はふさわしいな」

 

イザベル「何に?父さん」

 

 伯爵が突然言ったことにイザベルが聞いた。

 

伯爵「何ってイザベルの婿にだよ。

   イザベル、カーロイ大尉のような人はなかなかいない、どうだ?」

 

イザベル「え?えええええええ!!!!!」

 

 伯爵の言葉に彼女は生まれて初めて出すほどの大声を出した。

 その後も10日程伯爵は基地に滞在したがその度にカーロイとイザベルの縁談を纏めようとし等々二人が折れ消極的ながらも縁談の事を考えるようになった。




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一応506(A)の陸戦部隊編成
・戦闘団“フォン・ザヴォイエン”(陸戦部隊としての運用時の名称。フォン・ザヴォイエンは陸軍部隊への偽装名称)
 ・第506/1高射砲連隊(高射砲師団“セダン”第3連隊)
  ・第Ⅰ大隊(88ミリ高射砲装備)
  ・第Ⅱ大隊(105ミリ高射砲装備)
  ・第Ⅲ大隊(128ミリ高射砲装備)
  ・第Ⅳ大隊(20ミリ及び37ミリ、40ミリ高射機関砲装備)
 ・第506/1空軍大隊(第5061猟兵大隊)
  ・第1山岳猟兵中隊(アントン・モザンドル予備役中尉)(自動車化)
  ・第2山岳猟兵中隊(ヘルマン・ムグラー大尉)(自動車化)
  ・第3山岳猟兵中隊(クラウス・ゲオルグ・ファウルミュラー予備役中尉)(自動車化)
  ・第4降下猟兵中隊(ヘルムート・アウプケ予備役中尉)
  ・第5戦車中隊(フランツ・ベゲマン予備役中尉)(Ⅲ号戦車15両)

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