ホスバッハが慌てていたその頃、B部隊はディジョンに向かっていた。
その中の一台ではマリアン、ジェフ、トニー、カーラ、ジェニファーそして邦佳が乗っていた。
マリアン「いきなりやってきて何者なんだあの刑事は…」
ジェニファー「さあ、何か物騒でしたね」
運転席に座るマリアンの言葉に後部座席のジェニファーが同調する。
カーラ「面倒事じゃないといいけどなぁ」
トニー「早く帰ってくれねえかね」
マリアン「そうだな、これ以上増えるのは勘弁だ」
邦佳「え?」
そう言うとマリアンは後部座席に座る邦佳を見る。
後部座席は本来5人乗りなのになぜか6人乗ったため4人が座ってすし詰め状態だった。
邦佳「だってもっと刑事さんみたいじゃないですか!」
ジェニファー「よくグリュンネ隊長の許可が下りましたね」
マリアン「Aで厄介払いされたんだろ」
邦佳「酷い!」
カーラ「黒田、コーラ飲むか?」
マリアンは面倒そうだったがカーラは暢気にコーラを渡していた。
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一方、先頭のジープにはジーナ、カート、スペード、そしてキーラとプレッツが乗り込んでいた。
キーラ「さて刑事殿、詳しく話を聞かせてもらうか?」
スペード「なんで取り調べみたいになってるんだよ」
プレッツ「その件に関しては我々の治安問題に関係する可能性もある。
まずそのマーフィとは誰かね?」
後部座席右側に座るキーラとカートを挟んで反対側に座るプレッツが助手席に座るスペードに聞いた。
プレッツはキーラを警戒し右手を拳銃のホルスターにかけていた。
するとスペードの代わりにジーナが質問に答えた。
ジーナ「彼は私と同郷のリベリオンの記者だよ。
よく仕事を頼んでいたが、少し前から消息を絶っていた。」
キーラ「ほほう、つまり中佐はその彼が消息を絶つ前に何かを依頼していたという事かな?」
スペード「俺が知りたいのは奴に何を負わせていたかだ。
教えてくれ」
ジーナは後ろのキーラとプレッツをちらりと見ると答えた。
ジーナ「まあいい、これには何の確証もないが彼に探らせていたのは506の解散を目論む動きだ。」
プレッツ「それは例の記者が行方不明になった件か?」
ジーナ「そうだ。
水面下で動くそれを察知した私達はリベリオン政府の動きもあると考えマーフィに探らせた。
そして何かを掴んだと連絡してきた数日後…」
カート「冷たくなって見つかった、と」
ジーナがマーフィとの関係を話した。
彼女は彼に506解散の動きを探らせていたのだ。
実際に連合軍が掴んでいる動きはガリア政府に限られておりリベリオンやブリタニアなど他国の動きは関知していたなかっただけにこれは盲点だった。
するとスペードがトレンチコートの中からファイルを取り出した。
スペード「ここに奴の遺産がある。」
プレッツ「レポート?」
スペード「これによればセダン基地内に内通者がいる可能性が指摘されている。
爆破事件を起こしたのもそいつかも知れいない」
プレッツ「それに関しては我々と同じ認識だ。
彼を殺した者と今回のテロに関しては同一組織による犯行という線を濃いようだね。」
スペード「そうみたいだな。
俺はマーフィを殺した奴が許せねえ、内通者を必ず見つけ出し黒幕を突き止めるつもりだ。
なあ、しばらくあんた達の基地にいてもいいか?」
スペードがジーナに聞いた。
軍の基地である以上そのトップであるジーナの許可が必要であった。
ジーナ「私としては構わないが…宜しいですね?」
ジーナが後部座席のキーラとプレッツを見る。
キーラ「私の捜査の権限はセダンに限られたものだ。
従ってその質問に意味はない」
プレッツ「身分に問題が無ければどうぞ、我々としては細かい事に干渉する趣味はない。
まあ後で詳細な身辺調査を行うがね」
キーラはそもそも関与できない、プレッツには興味のない事だった。
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それから少ししてディジョンの基地に到着した。
到着しウィッチ達が降りるとジーナがマリアンとジェフに声をかけた。
ジーナ「カール大尉、フィッツジェラルド中尉」
マリアン「はい」
ジェフ「なんでしょう」
ジーナ「こちらの刑事さんが滞在することになった、カートと共にできる限りの便宜を図ってくれ」
マリアン「どうして私なんです!?」
ジーナはスペードの世話を二人に任せることにした。
それにマリアンが驚き聞き返す。
ジーナ「消去法で大尉と中尉が適任だ。」
ジェフ「まあ仕方ないだろ、殺し屋とある意味テロリストだからな。」
マリアン「はぁ…分かりました…」
マリアンは納得するが怠そうに答える。
すると暢気な声で邦佳がやってきた。
邦佳「刑事さ~ん!」
マリアン「お前は暇そうだな…お前も手伝え」
邦佳「はい?」
マリアンは手伝いに邦佳を巻き込もうとした。
そのそばでスペードがカートと共にいたジーナに最後の質問をした。
スペード「最後に一つ、マーフィはあんたにとってただの情報屋だったのか?」
聞かれたジーナが振り返る。
ジーナ「前に取材を受けた時に同郷という事が分かって意気投合したんだ。
友人、と言った方が近いだろうな」
スペード「そうか、友情に殉じるなんて古いタイプのブン屋だぜ」
ジーナ「そう言う男の事件を追って海を渡るのも古いタイプの刑事だ。」
スペード「ふ、違いない」
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「「506を解散させる動き!?」」
少しして、基地の隅ではスペード、マリアン、邦佳、ジェフ、そしてカートがスペードから事情を聴いていた。
邦佳「一大事じゃないですか!」
ジェフ「カート、知ってたのか?」
カート「まあな、一応聞いてはいたよ。
上が絶対に解散させない腹積もりらしいから気にしてなかったが」
彼女達には初耳となる506の解散の件だったがジェフはこの話を聞いていた。
ただ上には解散させる意思がなくそれどころか早急なる編成を望んでいたためあり得ないと踏んでいた。
スペード「ああ、マーフィを消した黒幕を暴くためにもまずはその内通者を炙り出す。
地道だが聞き込んで回るしかないだろうな」
ジェフ「この広い基地をか?」
プレッツ「君らだけでやるつもりかね?」
話していると突如プレッツが現れた。
カート「プレッツ少佐」
プレッツ「君は信用できるようだ。
どうだね?君の持っている情報と我々が持っている情報を交換するというのは?」
スペード「どの口が言うんだか」
プレッツが取引を持ち掛けるが彼女は信用していなかった。
プレッツ「一応言っておくが私は元はハイドリヒ閣下の副官だ。
私の伝手ならばガリアの全連合軍の支援が受けられるがどうするかね?」
キーラ「そのレポートを渡して貰えれば情報部でも分析できるが?」
邦佳「キーラさん」
更にキーラがやってきて話を持ち掛けた。
だがスペードは二人の申し出をきっぱりと拒否した。
スペード「いや、これは俺の事件だからな、あんたらの手は借りない」
キーラ「孤立無援での調査で成果が上がるかな?」
邦佳「そんな事ありませんよ!
マリアンさんやカートさん、ジェフさんが便宜を図ってくれますし私だっているし、それにキーラさんだってもう一緒に劇をやって仲間だし!」
邦佳の言葉にキーラが珍しく驚いた。
そしてすぐに話題を変えた。
邦佳「それにしても何で506を解散させたいんでしょうね?」
カート「無法ではないが秩序がない、それがこの国だ。
共和派から見れば506はかつての絶対王政の名残を残すし王党派、権威主義者から見ればリベリオンの差し金、って感じだ。
さらに言えばバスク独立派やブルターニュ独立派、植民地の独立主義者、アナーキスト、コミュニストから見ればそもそもそれらを弾圧するガリア政府とそれを支援する連合軍自体が敵だからな」
ジェフ「成程ねぇ、ややこしい政治の論理だ。
俺達市井の人間にゃ手の届かねえお上の話だよ。
まあ、やったのは王党派でほぼ決まりって言ってたろ?」
カートがガリアの政治状況を説明した。
政治状況は刻一刻と変わっていた。
相変わらず国内は数多くの勢力が入り乱れ、政治のバランスは極めて危うい状況だった。
キーラ「どちらにせよまだ犯人は捕まっていない。
そのマーフィのレポートにしたところでただのアルコール中毒者の妄想かもしれず証拠能力はゼロだ。」
邦佳「う~!だんだん映画みたいになってきた~!」
ジェフ「喜ぶなよ、面倒になってきてるってことだろ?」
段々状況が複雑になってきていることに何故か邦佳が喜んでいた。
するとマリアンが振り向くと手を振った。
マリアン「おーい!ジェニファー!トニー!」
マリアンが偶々通りかかったジェニファーとトニーに声をかけた。
トニーは嫌そうな顔をするがジェニファーと共にマリアン達と合流した。
マリアン「ジェニファー、トニー、実はな…」
マリアンが事情を説明した。
ジェニファー「内通者…ですか?」
トニー「その裏切り者の名前のイニシャルとかなかったのか?」
事情を聞いた二人がスペードに聞くがヒントはなかった。
スペード「ああ、突き止める前に殺されたんだろうな」
トニー「もし仮に、その裏切り者がいるとしたら爆破する理由がない。
下手に騒ぎを起こせば軍と憲兵が出張ってきて捕まるリスクが増えるだけだ。
正攻法で考えればこうだ」
スペード「内通者がいたとしても爆弾騒ぎとは関係ない可能性もあるってことか?」
トニーが彼の経験から仮説を出す。
トニー「或いは、その内通者が別の内通者が動きやすくするために起こしたかのどちらかだ」
トニーはキーラやプレッツを睨みながら言う。
キーラ「それも一つの可能性だ。」
スペード「ふーむ、まずはセダンの捜査から始めるのが常套か。
明日にでも向かってみるか」
スペードは立ち上がり言うとマリアンが反応した。
マリアン「え?おいまさか私にもセダンに行けって言うんじゃ?」
邦佳「みんな歓迎してくれますよ」
マリアン「な訳ないだろ!なあジェニファー頼むから変わって…あれ?いない」
マリアンが気がつくと誰もいないことに気がついた。
周りには誰もいなかった。
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数時間後の日付が変わった頃、ディジョンはすっかり日が暮れていた。
そして自分の部屋でスペードはくつろいでいた。
そのドアを誰かがノックした。
スペード「誰だ?こんな時間に」
警戒しながらドアを少しだけ開けると意外な人物が立っていた。
スペード「驚いたな、あんたが訪ねてくるとは。
何の用だ?」
キーラ「昼間は邪険に扱って済まない。
私が彼と違って君を信頼しているように見られたくなくてね。
ぜひ君と話がしたいと」
ウィスキーの瓶と氷の入ったグラスを二つ持ったキーラが立っていた。
スペードは警戒しながらドアを開け彼女を迎え入れ二人でウィスキーを飲み始めた。
スペード「で?話って何だ?」
キーラ「君は民間人だ、つまり部外者と言ってもいい。
つまり、内通者の疑いのかからない唯一人の品減だ。」
スペード「俺を味方につけようと?」
キーラ「ご名答。
さっきのレポートは?」
薄暗い部屋の中で二人の会話が始まった。
二人共互いの腹の内を探るかのようだった。
スペード「ここだ、常に身から離さないようにしている。」
キーラ「いい心がけだ。
それが唯一のオリジナルなのか?」
スペード「後は俺のここにあるだけだ」
キーラ「ますます結構」
キーラがニヤリと笑う。
そしてその瞬間、スペードは何かを盛られた事に気がつき床に倒れた。
キーラ「そのレポートと君が消えればもうこの件を手繰る糸はないわけだ。
そろそろ効いてきたようだな」
スペード「てめえ…何か盛りやがったのか…?」
キーラ「君のグラスの氷に致死量のジキタリスを混ぜておいた。」
キーラはスペードのグラスの氷に猛毒のジキタリスを混ぜていたのだ。
キーラは床に落ちたスペードの帽子を手に取る。
キーラ「本来ならもうしばらく内部から揺さぶりをかけるつもりだったんだが、そのレポートの始末を優先しろと上層部からお達しがあってね。
ニューヨークの君の職場でもそういう事はあるだろ?
悪く思わないでくれよ」
キーラがスペードに向かってそう言った直後、窓の外から金属音が響いた。
次の瞬間、窓の外から大量の銃弾が浴びせられ部屋のあらゆるものが穴だらけとなった。
キーラは咄嗟に伏せ無事だったが銃声がやみ周りを見る。
キーラ「く、何が起きた」
窓の外の硝煙が晴れるとそこにはホスバッハと彼に率いられた兵士達がいた。
そして同時に後頭部に冷たい金属がつきつけられる感覚を感じた。
トニー「まだ生きてたか裏切り者。
早いとこ楽になろうぜ?」
キーラ「アントニー・コルレオーネ」
振り返るとそこにはM1928を持ったトニーが彼女の背中を踏みつけて見下ろしていた。
キーラ「射撃の腕はトップクラス、どういうわけか裏社会にも通じ殺しのテクニックはトップクラス。
だが506配属以前の記録が一切なし、何者だ」
トニー「何者?マーダーインクの社員ですぜ。
本日は裏切り者に死を配達に来たのさ」
ホスバッハ「クリス・キーラ、貴様を国家反逆罪、情報漏洩、不正に機密情報にアクセス、窃盗、爆破、テロ容疑で逮捕する。」
ホスバッハが罪状を読み上げる。
すると部屋にプレッツとウィッチ達が入ってきた。
キーラ「気づいていたとはね、何時からだ?」
プレッツ「我々の情報網を舐めないでほしい。
軍の情報部が王党派の強い影響力を受けている事自体とっくの昔に知っている。
そもそも君らの初動が早すぎた、それだけで疑いの目を向けるのには十分だ。
そして更なる調査を行い、貴様が偽物だと確信した。
君の逮捕はこの国から背信者共を駆逐する最初の動きなのだよ。
これから君には死よりも辛い尋問の後、全てを話してもらう。
話せなくともサインさえできればよろしい、後でどうとでもなるからね」
キーラ「成程、君ら連合軍を甘く見ていたようだ」
ジーナ「こちらからも訊かせてもらおう。
なぜ506を狙う?」
ジーナがキーラに聞いた。
それを聞いて彼女は不敵な笑みを浮かべる。
キーラ「ふ、全てはバランスの上に成り立っている。
私は天秤の均衡を保とうとしているのに過ぎないんだよ。
そうそう私の部下の諜報員を責めないでくれ。
彼らはただの駒、何も知らない。」
スペード「あんた何者だ?」
立ち上がりスペードが訊いた。
キーラ「そろそろ時間だ」
そう呟いた瞬間、大爆発が起きた。
大爆発の音で外では騎兵の馬が暴れ始め大騒ぎになり部屋でもトニーがよろめいた。
その瞬間キーラは転がりトニーの足を退けると足を引っかける。
トニーは倒れるがすぐにトミーガンを構え撃つ。
キーラは回し蹴りをしてトミーガンを払うと窓から逃げようとする。
邦佳「また爆発!?」
キーラ「セダンだけに打撃を与えたら不公平だろ?
さっきも言ったがバランスだよ」
ホスバッハ「クソ!逃がすな!撃て!」
マリアン「逃がすか!」
ジェフ「立ち上がれクソッタレ共!あのサバノビッチを追いかけろ!」
マリアンとジェフが立ち上がり窓から逃げようとするキーラを追いかける、だが窓の外には驚きの光景があった。
キーラ「さて、私を捕まえられるかな?」
そこには黒いユニットを履いて飛んでいるキーラの姿があった。
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