WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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2巻終わり、ではない…


第17話:夜と霧

マリアン「あいつ…」

 

ジェフ「クソ!あの雌犬ウィッチだったか!」

 

トニー「裏切り者を逃がすな!」

 

 黒いストライカーユニットを履いたキーラを見て彼女達は驚いた。

 そしてすぐに行動した。

 

マリアン「く、私も出る!」

 

ジェフ「俺も行くぞ!」

 

トニー「俺が仕留める!」

 

邦佳「私も…あ!私ストライカー持ってきてない!」

 

 マリアンとジェフ、そしてトニーが先に格納庫に向かう。

 それを追い邦佳も向かおうとした。

 だが彼女はストライカーを持ってきていなかった。

 

ジーナ「黒田中尉は私のP-51Dを!」

 

邦佳「はい!」

 

カート「残りは消火だ!急げ!

    黒田!あの愛すべきバカたちを頼む」

 

邦佳「うん!」

 

 邦佳はカートの声に振り返りうなづいた。

 するとスペードが彼女を止めた。

 

スペード「おい!私も連れてけ!」

 

邦佳「無理ですよ刑事さん、ウィッチじゃ…」

 

スペード「これでどうだ!」

 

 渋る邦佳に彼女は1ドル札を取り出した。

 邦佳は二つ返事でOKすると追いかけ始めた。

 

 

---------

 

 

 先にキーラを追いかけたマリアンはその最高速の速さからジェフやトニーを放置して先行していた。

 そして彼女を見つけていた。

 

マリアン「見えた!」

 

キーラ「やれやれ意外と熱くなるタイプだな君は。

    丸腰でどうするつもりだカール大尉?」

 

マリアン「丸腰はそっちも同じだろ!」

 

 キーラを捕まえようとマリアンは手を伸ばすがキーラは彼女を簡単に躱してしまった。

 

キーラ「最高速に振りすぎている。

    まるで猛牛だ、動きが大きすぎて話にならん」

 

 躱してマリアンを評価する。

 彼女は速度に極端に振る調整をしてたため細かい動きが大の苦手であった。

 そのため低速ながら格闘戦を得意とするFM-2を使うカートとは模擬戦での相性が極端に悪いのは余談だ。

 そしてキーラは紐を取り出し両手で構えた。

 

キーラ「B部隊のウィッチは極力傷つけるなとのことだったが仕方ない。」

 

 そう言うと彼女はマリアンの首に紐を巻き付けた。

 

キーラ「空中で縊り殺される最期なんて想像していなかったようだな」

 

マリアン「なっ…!」

 

キーラ「海兵隊ではこういう戦い方は教わっていないのか?」

 

 首を絞めるキーラにマリアンは必死で抗う。

 

マリアン「当り前だ…ウィッチの力は…人を殺すためにあるんじゃない!」

 

キーラ「そうか、アデュー、マリーン」

 

スペード「ストップだアホ!」

 

ジェフ「させるか!ビッチ!」

 

 マリアンにとどめを刺そうとした瞬間、突如後頭部と背中に衝撃と銃声が響き紐が切られた。

 マリアンを追いかけていたジェフとトニーが間一髪で助けに入りジェフが持っていたM1911の銃床でキーラの頭を殴り邦佳とスペードが体当たりしトニーが紐を拳銃で撃ち抜いたのだ。

 

キーラ「コルレオーネ、黒田、スペードそれにフィッツジェラルド?」

 

マリアン「助かった…」

 

 キーラは振り返り驚いた。

 

ジェフ「ランバージャック!貴様は海兵隊で何を習ったボケ!

    説教は後だ!てめえをぶち殺す、我らが兄弟を殺そうとしたからだ」

 

スペード「ああ騎兵隊の登場だぜ!」

 

邦佳「第7騎兵隊登場!」

 

トニー「裏切り者には死の制裁を」

 

 キーラを取り囲むように前にマリアンと邦佳達が、後ろにジェフとトニーが回り込んだ。

 

キーラ「時間をかけすぎたか。

    振り切れないなら此処で肩をつけるしかないな」

 

 キーラは月光を背にナイフを取り出す。

 

キーラ「忠告しておくがこちらは空中での各当選の訓練を積んでいる」

 

マリアン「あんたが軍にいたら間違いなくエースだよ」

 

 次の瞬間、キーラはナイフを構え邦佳達に突進する。

 

キーラ「魔法力の発現とほぼ同時に私は親に売られた、軍のスカウトが来る前の事さ!」

 

邦佳「わ!」

 

 キーラは邦佳に切りかかり間一髪髪の毛が切れただけで済んだ。

 邦佳は一旦離れるとキーラに向かって語り掛けた。

 

邦佳「やめましょうよ!こんな事!

   ウィッチ同士分かりあえるはずですって!

   戻ってちゃんと話をしましょう!

   きっと悪い奴に命令されてやったんですよね!?」

 

キーラ「ふ、君のそう言うところ嫌いじゃなかったよ。」

 

ジェフ「よく歌うカナリアだ!」

 

 キーラが邦佳達に夢中の間にジェフが拳銃を発砲するが弾はシールドに止められた。

 

キーラ「私もグリュンネ少佐同様ウィッチとしては年齢的な限界に来ていてね。

    シールドは張れるが完全に防ぎきれる自信はない。

    だから撃たれると非常に不愉快なんだ!」

 

 キーラはジェフの方に向かう。

 

キーラ「チェック…」

 

ジェフ「ふ、Bg6#」

 

トニー「フールズ・メイト」

 

キーラ「ぐふ!」

 

 キーラのナイフをジェフが躱すとキーラをトニーが襟首を掴み放り投げ回し蹴りを食らわせる、更にジェフがみぞおちを殴る。

 その衝撃でキーラはナイフを落とした。

 

ジェフ「まだまだ!」

 

 更にジェフは彼女の両肩を掴むと頭突きを食らわせ、一旦押して放し右フックを食らわせる。

 

トニー「ニューヨーク一の殺し屋を舐めるな」

 

 その衝撃で彼女は右を向くとトニーがアッパー、更に股間を蹴り上げ、顔面にストレートを打ち込んだ。

 そして最後にジェフがよろめくキーラの首をスリーパー・ホールドで絞める。

 

ジェフ「てめえは絶対許さねえ」

 

キーラ「ぐっ…」

 

ジェフ「が…」

 

 キーラは肘鉄をジェフの体に打ち込みさらに右腕に噛みつくが彼は離さない。

 

キーラ「この…」

 

ジェフ「スタミナ勝負だ…!マリンコを舐めるな…!

    フライングタイガースを舐めるな…!」

 

 ジェフが負けずに絞め続けると段々力が弱くなりとうとう糸が切れたような状態になった。

 

トニー「こちらコルレオーネ、奴を捕らえた。」

 

スペード「そいつを渡せ」

 

ジェフ「ああ」

 

 ジェフは落ちたキーラの体をやってきたスペードに渡す。

 スペードはキーラの両手に手錠をかける。

 

ジェフ「痛ぇ、あの雌犬かむ力だけは一丁前だ。」

 

マリアン「大丈夫かジェフ?」

 

ジェフ「ああ、大丈夫だよ」

 

 キーラの噛みつきでジェフの腕からは血が流れていた。

 それをマリアンが心配するがジェフはいつものような様子だった。

 

マリアン「大丈夫なわけないだろ。腕を出せ。止血してやるから」

 

 マリアンはジェフの腕を取るとハンカチを取り出し止血した。

 

ジェフ「ありがとな、マリアン。

    ところで勝者へのキスはないのか?」

 

マリアン「は?」

 

ジェフ「冗談だよ冗談」

 

 ジェフがふざけた事を言うがマリアンは冷たい表情で返す。

 ジェフが取り繕うがマリアンは無視し止血をする。

 

マリアン「終わったぞ」

 

ジェフ「ありがと、マリアン」

 

 止血が終わりジェフが感謝を伝えるとマリアンは返事の代わりにジェフの額にキスした。

 

ジェフ「ふぇ?」

 

マリアン「して欲しかったんじゃないかったのか?

     さ、さっさと帰るぞ」

 

 マリアンは顔を真っ赤にしてそそくさと基地へと戻って行った。

 

 

 

---------

 

 

 翌日昼過ぎ、ディジョンのB部隊基地にはこの基地には似つかわしくない高級将校たちが集まっていた。

 

「まだ奴は落とせないのか」

 

「上からも文句が五月蠅いんだ。」

 

「ホスバッハ、何とかならんか?」

 

 それは第4騎兵師団師団長ルートヴィッヒ=フェルディナント・プリンツ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベアレブルク大佐と第8騎兵師団師団長ヨアヒム・ルモーア大佐、第22騎兵師団師団長アウグスト・ツェーエンダー大佐たちだった。

 彼らは昼食に出されたリベリオン風のステーキを食べながら今同時並行で基地内で行われているキーラの取り調べをツェーエンダーと旧知の仲であるホスバッハに聞いていた。

 

ホスバッハ「残念ながら奴は黙秘を続けています。」

 

 ホスバッハは珍しく緊張していた。

 というのもこの中にいるツェーエンダーとルモーアはかつての上官であった。

 二人はブダペスト包囲戦の際の第22、第8SS騎兵師団の師団長だった。

 

ヴィトゲンシュタイン「早くしないとガリア政府に先を越される。

           ガリア国内での殺人事件で先に送検されたらこっちの管轄がから離れるぞ」

 

ルモーア「拷問でも何でもしてくれ」

 

ツェーエンダー「もういいよ、適当にサインだけさせろ。

        調書は後で幾らでも改竄できる」

 

ホスバッハ「分かりました」

 

 ツェーエンダーはしびれを切らしイライラしていた。

 というのもキーラのパリへの移送が行わなければガリア軍諜報部の武装解除は出来なかった。

 何せ連合軍がガリア政府の一部機関をテロ容疑で武装解除するという前代未聞の事態にボックやハイドリヒでさえ慎重にならざるを得なかった。

 

 

---------

 

 

 彼らのイラつきの原因たるキーラは別の一室でジーナとカートの取り調べを受けていた。

 だが二人の取り調べに黙秘を続けていた。

 すると部屋のドアがノックされトニーが入ってきた。

 

ジーナ「トニー」

 

カート「どうしました?」

 

トニー「ホスバッハとかはかなり焦ってる。

    今すぐにでもパリに送りたいらしい」

 

 トニーが外の状況を伝えた。

 

ジーナ「そうか」

 

トニー「中佐、俺達にやらせてくださいよ」

 

 トニーの提案にジーナは数秒考えた後結論を出した。

 

ジーナ「いいだろう、行こうフーヴァー少佐」

 

カート「分かりました、危害は加えないように」

 

トニー「あいよ」

 

 ジーナとカートはトニーに交代した。

 トニーはキーラと向かい合わせに置かれた椅子に座り間に置かれたテーブルに足を組んで座った。

 

トニー「クリス・キーラ、何時から名乗ってる?」

 

キーラ「68日だ、新任の諜報部将校を名乗っていた期間はね」

 

トニー「68日、2か月と少し前か。」

 

 トニーの質問に答えた。

 そして二人の静かなやり取りが始まった。

 

トニー「生まれは」

 

キーラ「忘れた」

 

トニー「親は」

 

キーラ「覚えていない」

 

トニー「育ちは」

 

キーラ「さあ、何処だったか」

 

トニー「生まれはいつだ」

 

キーラ「レディーに歳を聞くのは失礼だと習わなかったか?」

 

トニー「誰に育てられた」

 

キーラ「色んな人だ」

 

トニー「誰から学んだ」

 

キーラ「知らない人たちだ」

 

トニー「何をしに来た」

 

キーラ「バランスを保ちに」

 

トニー「貴様は誰だ」

 

キーラ「その言葉を丸ごと君らに返そう。

    君らは何処から来たのかね、どこで生まれ、何処から来て、何処に行きたいのかね」

 

 キーラの逆質問にトニーは笑い始めた。

 

トニー「ふ、フフフフハハハハハ!!!

    良いジョークだ。」

 

キーラ「それはどうも」

 

 次の瞬間、トニーが拳銃を構えた。

 

トニー「面白い奴だ、殺すのは最後にしてやる」

 

キーラ「まるで中盤で殺されそうだな」

 

トニー「君の質問について特別に答えてあげよう。

    ニューヨーク、ニューヨーク生まれのニューヨーク育ち」

 

キーラ「親は」

 

トニー「荷役業経営者」

 

キーラ「生まれは」

 

トニー「1915年2月14日」

 

キーラ「誰に育てられた」

 

トニー「親と教師たち、そしてゴットファーザー」

 

キーラ「何をしに来た」

 

トニー「自由と権利を与え、悪と圧制者からの解放」

 

キーラ「何処から来た」

 

トニー「こんな世界を想像したことがあるか、ネウロイとウィッチが存在せず、アッティラや始皇帝、イワン雷帝をも凌ぐ極悪の虐殺者がヨーロッパを支配しただけの世界を」

 

キーラ「何とも恐ろしい世界だな。」

 

トニー「その世界に自由と権利を齎すべく新大陸と日の沈まぬ帝国と北の大熊が戦った世界を」

 

キーラ「御伽噺みたいだな」

 

トニー「この世界の方が御伽噺ではないか、科学では説明できないような代物が飛び交い殺し合う世界の方が」

 

キーラ「面白い考え方だ。気に入ったよ。」

 

 すると突如、ドアがノックされた。

 

トニー「はい」

 

ジーナ「トニー」

 

 入ってきたのはジーナだった。

 

 

---------

 

 

 30分ほどした後、キーラは黒づくめの男に連れられて基地に止められたシトロエン・トラクシオン・アバンに乗り込もうとしていた。

 

プレッツ「連中に先を越されるとはな、どれもこれも馬鹿共がさっさとサインさせなかったのが悪い。」

 

ホスバッハ「ああ、諜報部が先に出てくるとはな。

      どうする?監視をつけるか?」

 

 それはパリから来た諜報部の人間がキーラの身柄を引き取りに来たのだ。

 未だ送検もパリへの移送も手続きを終えていないため連合軍としては引き渡す以外に選択肢はなかった。

 その事にホスバッハもプレッツもツェーエンダー、ヴィトゲンシュタイン、

 

邦佳「じゃあ本物のクリス・キーラさんはもう…

   あのキーラさんは?」

 

スペード「なりすました誰かさ。

     彼奴がマーフィ殺しを突き止める唯一の手がかりだってのに!」

 

マリアン「諜報部も身内が殺されて躍起になってるのかもな」

 

 スペードは悔しそうに吼えた。

 キーラの身柄が離れることは真相究明がより一層困難になることを意味した。

 

トニー「あの連中が偽物とかないよな?」

 

ジーナ「書類上に不備はない」

 

カート「だが疑うには十分だ」

 

 カートが不安を漏らす。

 彼女と迎えがグルという可能性もありカートは信用していなかった。

 

ホスバッハ「ああ、その通りだ。

      だから監視をつける」

 

トニー「監視?」

 

ホスバッハ「俺の乗ったキューベルワーゲンと駆逐戦隊群“ガリア”の兵士達の乗ったシュタイヤー1500を2台監視に付ける。」

 

 ホスバッハは監視に兵士達を乗せた車両2台と自分の乗ったキューベルをつけるつもりだった。

 それを聞いて珍しくジェニファーとトニーが動いた。

 

ジェニファー「あの、隊長、私がパリまで同行します」

 

トニー「ホスバッハ少佐、俺にも付いて行かせろ。」

 

 ジェニファーはジーナに、トニーはホスバッハに志願した。

 

ジェニファー「諜報部もそれくらいなら拒まないと思いますから」

 

トニー「あんたらだけじゃ不安だ。

    お前らに俺より腕の立つ殺し屋はいるか?」

 

ジーナ「分かった、無理はするな」

 

ホスバッハ「いいだろう」

 

 二人をジーナとホスバッハは許可した。

 ジェニファーはキーラの乗ったシトロエンに、トニーはキューベルワーゲンの助手席に座り武器と弾薬を乗せた。

 

 そして一行がパリへと出発した。




(解説)
・ルートヴィッヒ=フェルディナント・プリンツ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン=ベアレブルク
史実ドイツ陸軍騎兵連隊“南”連隊長
1943年に戦死して飛ばされる。
ちなみに姫様とは一切関係ない(ザイン=ヴィトゲンシュタイン系の貴族だけど違う一族)

・ヨアヒム・ルモーア
史実第8SS騎兵師団フロリアン・ガイエル師団長
1945年2月のブダペスト攻防戦の最後の脱出戦で行方不明となり飛ばされる。
ホスバッハの元上司

・アウグスト・ツェーエンダー
史実第22SS騎兵師団マリア・テレジア師団長
1845年2月のブダペスト包囲戦の最後の脱出戦で行方不明になり飛ばされる。
ホスバッハの元上司


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