WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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後2、3話ぐらいか?


第23話:Uボートを追え

 翌日昼前、ロマーニャのローマの空軍参謀本部の一室ではロマーニャ軍の幹部が集まっていた。

 

バルボ「例の作戦が実行されるのは確か今日だったね」

 

デ・ボーノ「ああ。グラディオ作戦の実行は今日の1100、後30分後だね。」

 

レニャーノ「しかし、イタリアの統一という大義の為に自国民に犠牲を強いるのはどうかと思うが。」

 

 レニャーノがある作戦の内容に疑問を感じていた。

 それはグラディオ作戦、この30分程後に開始される作戦だ。

 

デ・ボーノ「犠牲なくして統一無し。

      リソルジメントという正義の為だ。」

 

 レニャーノの意見に作戦の立案・実行を指示していたデ・ボーノは無視する。

 なぜレニャーノがこの作戦に反対するか、それは30分後に分かった。

 

 

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 ミラノはロマーニャ北部にある工業・金融の中心都市である。

 ロマーニャ最大の金融街などがある文字通りの経済の中心地だ。

 毎日数万リラや数億リラという巨額の金が飛び交うこの街の中心部にあるミラノ中央駅の待合室には今日も多くの人でごった返していた。

 だが待合室の片隅にあるスーツケースに気がつくものはいなかった。

 数分後、そのスーツケースが大爆発を起こし、待合室は丸ごと吹き飛んだ。

 

 

 

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 そのほぼ同時刻、ミラノの代表的建築物と言えるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア、更にそのすぐ傍のドゥオーモ広場でそれぞれスーツケースとトラックが大爆発を起こした。

 その衝撃でヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリアではランドマークの天井のガラスが全て砕け散り地上を歩いていた数百人に降り注いだ。

 

 のちにミラノ同時爆破テロと呼ばれるこの事件で合計139人が死亡、500人以上が負傷する大惨事となった。

 数日後ロマーニャ政府はガリア・ロマーニャ国境付近で不審な車両を発見、財務警察が調べようとして銃撃戦となり乗っていた全員を射殺、その車両内からテロで使用されたのと同じスーツケース、爆薬、そしてガリア語で書かれた指示書などを発見。

 ロマーニャ政府はこの事件をロマーニャ国内にいるガリア系テロ集団による犯行と断定、これを支援しているとしてガリア政府を非難した。

 そしてこの事件を機にロマーニャとガリアの外交関係は急激に悪化、3週間後にロマーニャによるニッツァ・サヴォイア・コルシカ併合に繋がるとはこの時はまだ知る由もなかった。

 

 

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 ミラノで大惨事が起きて半日ほど経った後の午後9時30分ごろ。

 ブレストの南西47キロ付近上空を一機のブリタニア空軍のショートサンダーランドが北に向かって飛行していた。

 

通信手「こちらドッグオーバーキング、ブレスト。

    現在グリッドHS24、レーダー及び磁気探知機に感無し。」

 

副操縦士「准将閣下、本当に連中いるんですかね?」

 

「さあ、だが見つからないと困る。」

 

 このサンダーランドの機長は只者ではなかった。

 それは空軍准将ケント公爵ジョージであった。

 彼はブレストのコースタルコマンド部隊の司令で本来出撃する必要などなかったがノブレス・オブリージュと空軍での定期的な飛行能力維持のための飛行の為出撃していた。

 コールサインも専用のデューク・オブ・ケントの略称を使用していた。

 

ジョージ「早く帰りたいよ」

 

副操縦士「そうですね閣下。」

 

 二人は愚痴を言いながら目の前の漆黒の大西洋と夜の空を見る。

 機内はまさに平穏と言える程静かだった。

 突如レーダー手が叫ぶまでは。

 

レーダー手A「!機長!ハフダフに感あり!」

 

ジョージ「なんだと!」

 

副操縦士「方位と距離は!」

 

 レーダー手が短波方向探知機ハフダフに反応があったと叫んだ。

 ケント公と副操縦士は驚き振り返る。

 

レーダー手A「方位085、距離不明。

       ASVの方は!」

 

レーダー手B「ビンゴだ!ASVにも感あり!

       方位085!距離20カイリ!

       IFFに反応なし!国籍不明艦と識別!」

 

 更に別のレーダー手が搭載されている対艦レーダーにも反応があったと告げる。

 

副操縦士「どうしますか?」

 

ジョージ「了解、司令部に打電。

     ブレスト沖10キロ付近にて国籍不明の艦をレーダーで探知、これより調査に向かう。

     右旋回085」

 

 サンダーランドは右に旋回しレーダーの探知した場所に向かった。

 

 

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 そのレーダーが探知した場所、そこには一隻のUボートⅦ型と漁船が漂泊していた。

 漁船にはキーラとジェニファーが乗っていた。

 二人はUボートに乗り込むと船長らしき男と会話する。

 

キーラ「ガリア我が喜び」

 

船長「ガリア我が喜び」

 

 二人は合言葉を言う。

 そして聞いた。

 

船長「それが船荷か?」

 

キーラ「ああ」

 

船長「我がUボートにようこそ」

 

 船長はジェニファーに挨拶する。

 だがその落ち着いた空気は次の瞬間、突如エンジン音が聞こえると変わった。

 

キーラ「!エンジン音だと!」

 

船長「まさか!」

 

 エンジン音がする方を甲板に出ていた乗組員が見る。

 すると頭上を超低空で巨大な飛行艇が通過した。

 

キーラ「サンダーランド!」

 

船長「ブリタニア空軍機だと!?」

 

 

 

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副操縦士「いたぞ!至急司令部に打電!

     国籍不明の潜水艦を発見!

     至急増援を要請!」

 

通信手「了解!こちらドッグオーバーキング、グリッドヴィクターマイクチャーリー134にて国籍不明の潜水艦を発見!

    至急支援要請!」

 

 サンダーランドの機内では乗員が慌ただしく動いていた。

 通信手は司令部に報告する。

 

ジョージ「上空を通過してから左旋回、艦尾から突っ込む」

 

副操縦士「了解、爆撃手!警告用爆雷投下用意!」

 

爆撃手「了解!爆雷安全装置解除!」

 

 ケント公が作戦を伝える。

 機体は超低空で潜水艦を飛び越える。

 さらに発光信号の用意も叫ぶ。

 

ジョージ「通信手、発光信号で警告!」

 

通信手「了解!文面は?」

 

ジョージ「こちらブリタニア空軍機、ブレスト沖にて漂白中の国籍不明の潜水艦に問う

     貴艦の所属と艦名を答えよ、答えない場合貴艦を海賊として攻撃する」

 

通信手「了解」

 

 通信手は席を立ちあがると斜めに傾いた機内を歩いて窓から発光信号を送る。

 

 

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乗員A「ブリタニア空軍機より発光信号。

    コチラブリタニアクウグンキ

    ブレストオキニテヒョウハクチュウのコクセキフメイノセンスイカンニトウ

    キカンノショゾクトカンメイヲコタエヨ

    コタエナイバアイキカンヲカイゾクトシテコウゲキスル」

 

 乗員がサンダーランドの発光信号を読み上げる。

 その内容は所属と艦名を明かさなければ撃沈するという警告だった。

 

船長「どういうことだ!最大戦速!

   急速潜航!ダウントリム最大!深度150急げ!」

 

 船長は驚きながら急速潜航を命ずる。

 艦内からサイレンが鳴り響き潜水艦のディーゼルエンジン音、艦首を目指す乗組員の足音などが聞こえ甲板にいたキーラ達も慌ただしく艦内に滑り込んだ。

 

 

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副操縦士「閣下!潜水艦が潜航を開始!」

 

ジョージ「了解、警告用爆雷投下!」

 

爆撃手「投下!」

 

 

 潜航しようとするUボートに艦尾からサンダーランドが追いすがる。

 そして艦橋の半分まで潜航した状態のUボート上空にまで到達すると一気に警告用の爆雷6発を投下、6本の大きな水柱が立つ。

 Uボートはその中で木の葉の様に揺れる。

 

 

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 その頃潜水艦の艦内は激しく揺れていた。

 

船長「く!」

 

ジェニファー「キャアアアアア!」

 

 ジェニファーは泣き叫ぶ。

 更に艦内では衝撃で艦内配管の一部が破損、海水が噴き出し電球が割れる。

 

船長「く、被害は?」

 

 揺れが収まると船長が乗員に聞く。

 

乗員B「艦内配管一部破損、電球3個破損、一部燃料配管破損です。」

 

 損害は想像以上に微小と言えた、だが次の報告で状況が変わった。

 

機関長『こちら機関室!蓄電池が一部破損!

    持続潜航時間推定13時間!』

 

船長「何!」

 

 問題は蓄電池の破損だった。

 蓄電池が破損し潜航時間が限られてしまった。

 この時代の潜水艦はせいぜい可潜艦程度の能力しかない、更に潜航中はシュノーケル装置を使わない限りディーゼルエンジンを使用できない。

 潜航できる時間はこの蓄電池が持つ時間に限られた。

 

 

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ジョージ「逃げられたか…」

 

副操縦士「後は水上艦が見つけてくれることを祈りましょう」

 

 

 サンダーランドの乗員は自分達の警告爆雷が重大な損害を与えた事も知らず上空を旋回していた。

 だがこのサンダーランドの報告は周囲の大艦隊を動かした。

 すぐに多数の駆逐艦、フリゲート、コルベット、スループ、海防艦、駆潜艇、水雷艇、掃海艇、武装トロール、巡洋艦、航空機が夜の街灯に集まる蠅のように集まってきた。

 

 

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 その中で最も早く現場に到着したのが扶桑海軍の鵜来型海防艦屋久と丙型海防艦第1号、第9号海防艦の3隻だった。

 この部隊は伊集院松治少将指揮の扶桑海軍遣欧派遣艦隊第2護衛戦隊群指揮下の艦艇だった。

 これらの艦はリベリオン製又はブリタニア製の高性能ソナーとレーダーを装備、熟練の水測員を乗せていた。

 その中の一隻、第1号の水測員がサンダーランドが接触した地点から3カイリ西に1時間後辿り着いた時、何かの音に気がついた。

 

水測員『こちら水測!何かいます!』

 

「何?どこだ?」

 

 水測員からの報告を受けた艦橋で艦長の有馬國夫少佐が反応する。

 3隻は斜めに並びながら対潜警戒を行って航行していた。

 その中で第1号は最も右側の先頭に立っていた。

 

水測員『距離深度不明、方位174』

 

有馬「了解、発光信号、ワレ敵船ラシキモノヲ発見ス。

   右転舵174、総員戦闘配置、対潜戦闘用意、爆雷投下用意」

 

 有馬は独断で艦を向かわせる。

 

 

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 その音はUボートからも聞こえていた。

 

ソナー員「船長、前方より船舶接近中」

 

船長「何?」

 

ソナー員「二軸艦3隻、方位356。

     速力13のっと。」

 

船長「タイプは?」

 

ソナー員「恐らくフリゲートかコルベット。

     スループの可能性も」

 

船長「分かった」

 

 ソナー員の報告に船長とソナー員は二人で小声で話していた。

 一方自分に宛がわれた部屋に座っていたジェニファーは最初の爆雷、更に艦内気圧と相まって気分が悪くなっていた。

 その様子にキーラは気がついていた。

 

キーラ「どうした?」

 

ジェニファー「少し、息苦しくて…

       一体さっきから何が…」

 

 ジェニファーが状況を聞く。

 この一連の動きにジェニファーは理解できていなかった。

 

キーラ「ブリタニア空軍機が来て爆雷を投下した。

    それで潜航を余儀なくされた、それだけだ。」

 

ジェニファー「それって…」

 

キーラ「恐らく数時間以内にこの艦の周りには数十隻の連合軍艦艇が集まってくる。

    ブリタニアに辿り着くどころか最悪もう二度と水面には上がれない」

 

 知る限りの情報を伝える。

 状況は最悪だった。

 そして次の瞬間、艦内に大きな反響音が響いた。

 

ジェニファー「わ!」

 

キーラ「シッ!音を立てるな」

 

 驚いたジェニファーが大きな声を出す。

 咄嗟にキーラはジェニファーの口に手を当て注意する。

 

ソナー員「く、敵艦接近。距離2500、355、速力10ノット」

 

船長「大丈夫だ、こちらには船荷がある。

   これがある限り撃沈はされない」

 

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水測員『かかりました!敵船方位175、深度90、速力5ノット、距離2500!』

 

有馬「かかったなアホが!警告用爆雷投下用意!深度調停120と50!」

 

 大きな反響音は第1号が出したピンガーだった。

 ピンガーの反響音で正確な潜水艦の位置を確認した。

 位置を把握した3隻の海防艦はUボートの位置に向かい真上に到達する、そして一気に3隻から20発の爆雷が発射、大量の水柱が起きる。

 そしてこれがその後12時間に渡って続くことになる大捕り物の号令となった。

 

 

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 接触、そして攻撃の連絡はすぐにブレストの司令部に届いた。

 作戦室の大きな地図を見ていたアルノーに将校が報告する。

 

将校「提督、先程扶桑海軍の海防艦3隻が潜水艦を捕捉、攻撃したと連絡が入りました。」

 

アルノー「狐は網にかかったか。

     全艦艇、航空機を向かわせろ。

     絶対に逃すな、そして沈めるな。」

 

将校「は!」

 

 アルノーは指示を出すと地図の傍に置いていたコーヒーカップを取り一口飲む。

 

アルノー「さて、根競べといこう。

     気が狂わないようにせいぜい神に祈るがいい。」

 

 アルノーの言葉の真意は潜水艦乗りにしか分からないだろう。

 

 

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キーラ「く!」

 

ジェニファー「キャ!」

 

 数時間後、Uボートは水中で木の葉の様に揺れていた。

 周囲にはたくさんの水泡が浮かびドラム缶のようなものが沈んでくると爆発する。

 それを繰り返しながら追い詰められていた。

 閉鎖された空間で終わることのない爆雷の爆発と衝撃にジェニファーは憔悴していた。

 

ジェニファー「なんで…なんで…こんな目に遭うんですか…

       殺すなら早く殺してくださいよ…」

 

 もはやジェニファーは限界が近づいていた。

 だが終わることはなかった。

 それからさらに数時間、夜が明けてもなお続くことをまだ知らなかった。

 

 

 




(解説)
・ケント公ジョージ
史実ケント公爵、セント・アンドルーズ伯爵、ダウンパトリック伯爵ジョージ
42年に航空機事故で墜落して飛ばされる。
現在空軍将軍としてコースタルコマンドを指揮。
出たがり。

・伊集院松治
史実第1護衛船団司令
44年にボルネオ島沖で潜水艦レイトンに旗艦壱岐を撃沈され戦死、飛ばされる。
扶桑海軍で護衛部隊を指揮。
リベリオン製やブリタニア製の最新電子機器と船団護衛ノウハウを学んでいる。


・有馬國夫
史実第1号海防艦艦長
45年にホモ03船団護衛中に乗艦の第1号が撃沈され飛ばされる。
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