WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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あと少し…


第24話:信頼

 翌日早朝、セダンには多くの賓客が集まり多数の兵士が警備に就いていた。

 

カーロイ「あと15分で開始か…

     隊の結成宣言と宣誓は最後だからタイムリミットは昼前か」

 

 カーロイが腕時計を見ながら呟く。

 傍にはイザベルもいた。

 

イザベル「黒田さんたちはもうル・アーブルに着いたかな?」

 

カーロイ「昨日の夕方には着いてるそうだ。

     ジェニファー達が乗った潜水艦も今海軍が総動員で追いかけてる。」

 

 カーロイは伝え聞いた情報を言う。

 ジェニファー達の事を気にしていたのは彼らだけではなかった。

 

ボック「海軍の方はどうなってるんだ?」

 

ハイドリヒ「情報では現在も捕捉中、現在地はシェルブールの北東120キロだそうです。」

 

ボック「分かった、ぺリエール提督に1100までに投降しない又はどこかの国の領海を侵犯した時点で撃沈しろと伝えろ。」

 

 ボックは決断した、最悪の場合の撃沈を許可した。

 その命令はぺリエールを通じてシェルブール沖で追跡中の艦艇に伝えられた。

 

 

---------

 

 

水兵「司令官、電文です」

 

伊集院「ありがとう」

 

 電文は対戦掃討を指揮していた海防艦八十島(元中華民国海軍軽巡洋艦ピンハイ(平海)に座上する伊集院提督の下に届けられた。

 電文を一読すると彼は双眼鏡で前方でブリタニア海軍の駆逐艦ヴァンパイアが爆雷を投下する様子を覗く。

 

伊集院「全艦にあの電文と同じ内容の命令を出せ。」

 

水兵「は」

 

伊集院「そろそろ例のウィッチ達が来るはずだ。

    電探に出てるか?」

 

 伊集院は来ているはずのウィッチ達の事を聞いた。

 

 

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アラン「さてと、総仕上げだ。

    お前ら!ヘマするなよ!」

 

トニー「で、お前らそんなの持ってどうするんだ?」

 

 その頃、ル・アーブル空港ではアラン達が出撃準備を終えていた。

 だがトニーは邦佳と貫二郎の二人の持ち物が気になっていた。

 

アラン「ジャパニーズサムライとカタナか?

    日本人は近代戦でもカタナを振り回すってのは本当だったんだな」

 

邦佳「いいのいいの」

 

貫二郎「違いますよ、キーラは接近戦が得意ですからだったらこっちもそれに備えればいいんですよ」

 

 二人が気になっていたのは邦佳が背負う槍と貫二郎の持つ日本刀だった。

 そして一行は離陸する。

 既に潜水艦の位置は連絡を受けて分かっていた。

 ふとアランは腕時計を見る。

 

アラン「もう式典が始まったころだな」

 

カーラ「なぁ」

 

 するとカーラがいつもとは違う弱気な声でアランに聞いた。

 

カーラ「もし私達がミスって遅れたりしたら…もう…

    私のせいで506が結成できなかったら…」

 

邦佳「大丈夫だって!船が爆発したときに比べれば希望が持てるよ!

   らしくないねえ」

 

 カーラを邦佳が励ますが逆効果だった。

 カーラは泣き始めた。

 

カーラ「らしいって何だよ?

    ほんとの私は前向きでも陽気でもない!

    嫌われるのが怖いからそう見せてるだけだ!

    小っちゃい頃から転校ばっかで周りの顔色伺う事が得意になっただけなんだ…」

 

 するとアランが肩を組んだ。

 

アラン「大丈夫だ、上手くいくさ。

    俺達の仕事は海中深くに建てられたお城に閉じ込められたお姫様を悪ーい魔女にキャリバー50の正義の鉄槌を浴びせて救い出すことだ。

    なんだ簡単な事だ。

    それにお前はムードメーカーだ、君からは散々元気をもらったよ。

    さっさと終わらせて上手いフランス料理でも食いに行こう」

 

 アランがカーラを励ました。

 カーラは涙をぬぐう。

 

カーラ「ありがとうアラン!」

 

アラン「さあ行くぞ!ここからは時間との勝負だ!

    一分一秒たりとも無駄にできないぞ!」

 

トニー「望むところだ」

 

 アランが号令をかける。

 眼下には多数の軍艦が現れていた。

 

アラン「さあ行くぞ!」

 

 だがその直後、艦隊内部で爆発が起き一隻の軍艦から煙が上がる。

 

邦佳「ねえ!アレ!」

 

アラン「何が起きた!」

 

 

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 数分前、潜航中のUボートは追い詰められつつあった。

 

船長「く、バッテリーはあと何分持つ?」

 

乗員A「恐らく30分…脱出は無理です。浮上、投降しましょう」

 

 もはやバッテリーは残り僅か、残された選択肢は浮上して突破するかこのまま海面下に永遠に押し下げられるか、浮上して投降するかの3つに一つだった。

 

船長「いや、まだ手はある。

   魚雷戦用意、潜望鏡深度まで浮上」

 

乗員A「え?」

 

船長「敵艦を雷撃しその混乱をついて脱出する!」

 

キーラ「それでは撃沈させる口実を作るだけでは?」

 

船長「このまま袋の鼠にされるよりも袋のどこかに穴をあけ脱出を図る方が理にかなっている」

 

 キーラや乗員の意見を無視し船長は潜望鏡深度まで浮上させると魚雷を装填させる。

 潜望鏡から周りを見ると多数の軍艦が取り囲んでいた。

 

船長「どこかに獲物は…いた、方位050、速力20ノット、扶桑海軍フブキクラス駆逐艦。

   腹を見せてる。やるぞ、魚雷用意、深度調停3メートル」

 

水雷長「魚雷装填、装填1、2番」

 

 水雷員たちは急いで魚雷を装填する。

 

 

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 その音は水上艦からも聞こえていた。

 最も近くにいた駆逐艦コサックの水測員がソナーの音を報告する。

 

水測員「敵艦、注水中、魚雷です…!」

 

士官「分かった、艦長!敵艦魚雷装填中!」

 

 士官は伝声管に向かって叫んだ。

 数秒後、水測員が叫んだ。

 

水測員「敵艦より突発音!数2!魚雷です!」

 

士官「方位は!」

 

水測員「恐らく方位045に向かって発射!」

 

士官「不味い!そっちにはアケボノがいる!

   艦長!敵艦アケボノに向かって魚雷発射!」

 

艦長『何!』

 

 

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見張り員「左舷より魚雷接近!数2!」

 

艦長「取り舵一杯!最大戦速!」

 

操舵手「取り舵一杯!」

 

 魚雷が向かってくる扶桑海軍特型駆逐艦曙では急いで回避行動を取っていた。

 そして一発が艦首を掠める。

 

見張り員「魚雷一本回避!うわ!」

 

 見張り員が叫んだ直後、艦を衝撃が襲う。

 

艦長「く!食らった!被害報告!」

 

水兵『魚雷艦尾直撃!2番砲塔以降の艦尾切断!火災発生!』

 

副長「急いで浸水と火災を止めろ!

   負傷者を運び出せ!」

 

艦長「支援要請を出せ!

   クソ!やりやがった!」

 

 曙の損害は甚大だった。

 艦尾を喪失し大破、火災と浸水が発生していた。

 

 

 

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水兵「司令官!曙被雷!大破!」

 

伊集院「何!やるしかない、コサックに下令、ヘッジホッグ用意!」

 

 攻撃を受けた事で伊集院は撃沈の判断を下した。

 だがすぐに別の報告が入った。

 

水兵「コサックより発光信号!敵艦から排水音!急速浮上中!」

 

伊集院「分かった!全艦対水上戦闘用意!

    主砲砲撃戦用意!」

 

 潜水艦が浮上中という連絡に水上戦闘の用意を命ずる。

 数十秒後、Uボートが艦隊のど真ん中に浮上した。

 

 

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 なぜ急浮上したか、それは数分前に遡る。

 

水雷長「命中まで20秒…15…10、9、8、7、6、5、4、3、2、1…」

 

 艦内で水雷長が時計を見ながら呟く。

 そして数秒後艦の外から大きな爆発音が聞こえた。

 

乗員A「やった!命中だ!」

 

船長「静かにしろ」

 

 爆発音を聞いて乗員が喜ぶがそれを船長がたしなめる。

 一方ジェニファーはますます状況が悪くなっていることに気がついていた。

 終わることのない爆雷攻撃、魚雷の発射、そして命中、確実に撃沈される要素が揃っていた。

 そして行動を起こした。

 

乗員B「艦内で火災発生!緊急浮上の許可を!」

 

船長「な!

   く、仕方ない…アップトリム最大、バラストブロー、最大戦速、水上戦闘用意」

 

 突如艦内に火災警報が鳴った。

 それにキーラには思い当たる節があったようで艦橋から傾いた艦内を走ってジェニファーの下に向かった。

 ジェニファーの部屋に行くとジェニファーが何か細工をしていた。

 

キーラ「やはりお前かジェニファー」

 

ジェニファー「ベッドのスプリングと照明のソケットをお借りしました。

       このままじゃ永遠に海上に出られそうになかったので」

 

 ジェニファーが配線を弄って偽の火災警報を鳴らしたのだ。

 

キーラ「自分も焼け死ぬ可能性も…」

 

ジェニファー「まだ海の底深くに押しやられるよりマシです、それに私は506のみんなを信じてますから。

       私には絶対に信じられる仲間がいるんです!」

 

 その間に艦は急速浮上し海面に出て水平になった。

 すると部屋の外から声が聞こえた。

 

乗員C「上空にウィッチ発見!数2!」

 

キーラ「まさか!」

 

ジェニファー「黒田さんたちが来たんですね。

       貴方には私のような絶対に信じられる仲間がいない、可哀想な人です。」

 

 ジェニファーがキーラに言う。

 するとキーラは自嘲気味に零した。

 

キーラ「ふ、今更生き方を変えられる程器用じゃない…来い!」

 

 するとキーラはジェニファーを無理やり連れて行く。

 

 

 

---------

 

 

 

 その頃セダンでは式典が始まり最初にホスバッハ率いる地上部隊の閲兵式が行われていた。

 軍楽隊が行進曲ケーニヒスグレッツ行進曲とカドリーユの主題による速歩行進曲を奏でながら兵士達と戦車部隊が行進する。

 戦闘ではホスバッハとその後ろに軍旗を持った兵士がガチョウ足行進をする。

 

ホスバッハ「敬礼!」

 

 演台の前を通ると立てていた軍旗を前に倒し兵士達は左手の演台に向かって銃を持った兵士は顔を向け、将校は敬礼する。

 それにボックやド・ゴール、ハイドリヒ、マロリーなどの将軍たちも敬礼する。

 すると一人の将校が将軍たちの合間を縫ってボックに耳打ちした。

 

将校「閣下、例の潜水艦が扶桑海軍の駆逐艦を雷撃、大破させたようです」

 

ボック「そうか、ぺリエール提督に早く片をつけろと伝えろ」

 

将校「は」

 

 ボックは一切動揺せず淡々としていた。

 

 

---------

 

 

 

貫二郎「邦佳、分かってるね?」

 

邦佳「うん」

 

 水面に潜水艦が浮上したのを確認した貫二郎と邦佳は準備する。

 一方何故かアラン達はいなかった。

 数秒後、突然潜水艦から何かが射出された。

 それはユニットを履いたキーラとジェニファーだった。

 二人は貫二郎たちの前に立ちふさがる。

 

邦佳「ジェニファーさん!」

 

ジェニファー「黒田さん!大野さん!」

 

 すると邦佳は銃を捨てた。

 

キーラ「?人には決して銃口を向けない…か?

    相変わらずの甘ちゃんだ。」

 

貫二郎「もういいだろう、ジェニファーを返してください」

 

 キーラに向かって貫二郎が言う。

 するとキーラは薄気味悪い笑みを浮かべると返事をした。

 

キーラ「いいだろう、来い!」

 

邦佳「返してくれるの!?」

 

 キーラは急上昇する。

 そしてジェニファーを掴んでいた手を離した。

 

キーラ「受け取れ」

 

邦佳「ジェニファーさん!」

 

 驚いた邦佳は咄嗟に急降下してジェニファーを捕まえようとする。

 

邦佳「手を伸ばして…!もう少し…!間に合っ…」

 

 ジェニファーの手を邦佳が掴んだ瞬間、邦佳が何かに気がついた。

 突如、背中に鋭い痛みを感じる。

 そして金属同士がぶつかり合う音も。

 

キーラ「な!」

 

貫二郎「間に合った!」

 

 キーラが邦佳を刺そうとした、だがその直前に貫二郎が割って入って刀でナイフを吹き飛ばしたのだ。

 貫二郎は綺麗にナイフだけを吹き飛ばし邦佳の怪我はナイフで肩を切りつけられただけだった。

 ナイフを吹き飛ばされたキーラはもう一本のナイフを持って日本刀を構える貫二郎と相対する。

 

キーラ「大野貫二郎…貴様…」

 

貫二郎「どうしますか?正々堂々、武士らしくやり合います?

    それとも…少しは眼下の事を気にしてはいかがでしょうか?」

 

キーラ「眼下の事…?」

 

 貫二郎に言われ下を見る、眼下では一隻の駆逐艦がUボートに強行接舷しあたかもトラファルガーやアルマダのような切り込み攻撃が発生していた。

 

キーラ「そうだな、だが、君も彼女の事を気にしてはどうかね?」

 

貫二郎「え?」

 

 キーラに言われ貫二郎は邦佳の方を見る。

 邦佳は肩を深く切りつけられていた。

 そのためジェニファーを片手で掴むのが難しく苦しそうだった。

 

貫二郎「邦佳!」

 

キーラ「貰った!」

 

 次の瞬間、キーラが貫二郎に突っ込む。

 咄嗟に刀でナイフを受ける。

 

キーラ「戦いの最中によそ見はいけないよ」

 

貫二郎「く…リーチの短いナイフでここまでやり合えるとは…」

 

キーラ「私を舐めないでくれるかな?」

 

 キーラと貫二郎は鼻と鼻が当たりそうなほどの距離で睨み動けない。

 

ジェニファー「出血が…手を放して私を…」

 

 邦佳を心配するジェニファーが叫ぶ。

 邦佳は苦しそうに返事をする。

 

邦佳「私を信じてくれる?」

 

ジェニファー「はい」

 

 ジェニファーが返事をすると手を離した。

 

キーラ「やはり貴様もわが身がかわいいか!?

    仲間を見捨てても自分は助かりたい!それが人間だ!」

 

 キーラが嘲笑う。

 だが二人は笑みを浮かべるだけだった。

 

貫二郎「違う」

 

邦佳「仲間を信じてるから!」

 

 二人が言う。

 数秒後、雲の中からカーラが飛び出しジェニファーをキャッチする。

 

カーラ「邦佳!キャッチしたぞ!」

 

キーラ「ルクシック中尉!?最初から雲の中に隠れていたのか!?」

 

 キーラが驚く。

 突如雲の中から前触れもなく現れたのだ。

 

邦佳「カーラ!ル・アーブル空港に先に戻ってて!」

 

カーラ「え!?けど…」

 

貫二郎「大丈夫、僕達で足止めしますから」

 

 先にカーラ達を帰らせる。

 

カーラ「そいつの相手は適当にして追いつけよ」

 

キーラ「させるか!」

 

邦佳「行かせない!」

 

 キーラが追いかけようとするがその前に邦佳が立ちはだかる。

 更に後ろに貫二郎が立ちはだかる。

 

キーラ「目の前のバカ二人を仕留めてから追いかければいいか。

    お互い時間がない、お前は出血が止まってないし私はあの二人に追いつかなければならない」

 

邦佳「そうだね」

 

 すると邦佳は背中に背負ったものを取り出した。

 

キーラ「槍?」

 

邦佳「大尉が言ってたけど槍は騎士の魂が宿るって、だからジェニファーさんを助けたいってみんなの思いをこの扶桑号に乗せて戦う!」

 

 槍を構え邦佳が叫ぶ。

 

キーラ「ふ、笑わせる。

    私は古き良きガリアを再興するため厳しい訓練に耐え己を制し人さえ殺め人生を捧げた!

    信念の無いお前に私が負けるはずない!」

 

アラン「バカだなお前ら。」

 

トニー「全くだ、今は20世紀だ、それももうすぐ半分も経つぐらいのな」

 

 キーラがナイフを構え邦佳に突進した瞬間、2発の銃声が響いた。

 音の方向を見るとそこには双眼鏡を持ったアランとウィンチェスターM70を構えたトニーがいた。

 そして二発の銃弾はキーラのユニットを貫いた。

 

アラン「命中だ。後の始末は…」

 

トニー「ああ、俺達の仕事だ」

 

 二人は急いで邦佳の下に向かう。

 一方彼女は咄嗟にキーラを掴む。

 

キーラ「一体何が…

    …トニー・コルレオーネか…」

 

 何が起きたかキーラは分からなかった、だがライフルを持ったトニーを見て納得した。

 

トニー「黒田、こいつは借りるぞ。」

 

邦佳「え?」

 

アラン「お前は今すぐ空港に戻れ、貫二郎、黒田を助けろ。」

 

貫二郎「了解」

 

邦佳「でも…」

 

アラン「この先は俺達が始末する」

 

 トニーは邦佳からキーラを奪い、アランが空港に戻らせた。

 そして数分後、邦佳達の下に追いついた。

 そこにはキーラはいなかった。

 

邦佳「キーラさんは?」

 

トニー「放してやった」

 

 邦佳の問いにトニーは一言答えただけだった。




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