WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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3巻終了。
暫く休載します。


第25話:始まりの終わり、そして…

将校「閣下、先程確保したようです」

 

ボック「分かった」

 

ハイドリヒ「想定よりも少し遅いですね」

 

ボック「演説だが、プランBで行く。

    用意したまえ」

 

将校「は」

 

 将校から終わったことを耳打ちされたボックはこのすぐ後に行われる演説の話をする。

 するとアナウンスがなった。

 

アナウンサー「続きまして、連合軍ガリア軍行政司令部司令官フェードア・フォン・ボック大将による訓示であります」

 

 アナウンサーに呼ばれボックは座席から立ち上がると演台に演説の原稿を持って向かった。

 そして演台に上がりマイクの前に立った。

 

ボック「ご来賓の皆様、親愛なるガリア国民、そして506と全ての将兵たち、今日という日を迎えられたことを連合軍を代表して祝いの言葉を述べよう。

    506はこの西部戦線の要ともいうべき部隊である。

    この部隊無くして西部戦線の守り、そしてカールスラントの奪還などありえないと断言しよう」

 

 ボックは演説を始める。

 最初に所謂典型的な祝辞を述べる。

 

ボック「連合軍とは文字通り国家の連合による軍隊だ、それも自由と権利という二つの決して奪われてはいけない物を守るという事を標榜した軍隊である。

    そしてこの部隊も同様だ、ガリアにおける自由と権利を守るため世界中各国から集められた人々からなっている。

    カールスラント、ベルギカ、ロマーニャ、扶桑、そしてリベリオン。

    人類の協調を表す構成だ。

    そして半分は貴族だ。

    私も貴族だが、貴族の責務、ひいては持っている者の責務とは持たざる者への奉仕だ。

    彼ら彼女らは持っている者だ、彼らは持たざる者たるガリア国民の為、そして世界の自由と権利と平和の

為にその身と血を捧げるのだ。

    この英雄たちに私は最大限の賛辞を贈ろう。」

 

 ボックは更に506のメンバーを称賛する。

 

ボック「私は連合軍を指揮する者としてここに宣言しよう。

    もしも、彼ら彼女らを攻撃せんとする者が現れるのなら、それは我々連合軍、ガリア、そしてこの国の全ての人の自由と権利への宣戦布告だという事を。

    もしそのような者がいるのならこの場で神の名の下に宣言しよう、我々は決して降伏しない、引かない、そして負けないと。

    我々の神聖なる権利を奪い古の制度に戻らんとする者共に向かって伝えよう、攻撃は貴様らの負けだと。」

 

 ボックは更に王党派を念頭に置いた文を続ける。

 

ボック「そして、この場で全世界に悲しいお知らせをしなければならない。

    それは、我々の神聖なる権利を奪い古の制度に戻らんとする者共が彼ら彼女らを攻撃してしまったという事を。」

 

 そしてボックが爆弾発言を落とした。

 その言葉に会場がざわつく。

 

ロザリー「え!?」

 

ハインリーケ「正気か!?」

 

ジーナ「まさか…」

 

カート「あの事を…」

 

 そして506のメンバーは絶句した。

 この後の話などすぐ理解できた。

 

ボック「数か月前、この部隊の格納庫の爆発を覚えている者は多いだろう。

    そしてそれはテロだった、実行したのは王党派と呼ばれる組織だ。

    彼らの目的は何か?この国を混乱に陥らせあわよくば政治の実権を握り、王政を復古させ、国民の神聖なる権利と自由を奪い、富を搾取し、弾圧し、奴隷にせんとするつもりなのだ。

    そして連中の攻撃は軍だけではない!数日前、パリ北駅を連中が爆破した。

    これは連合軍への攻撃ではない!ガリア国民への攻撃なのだ!

    我々にできることは何だ!」

 

 ボックが叫ぶ。

 すると聴衆から声が聞こえ始める。

 

「我々の権利と自由を守れ!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「祖先が戦って手に入れた権利と自由を守るんだ!」

 

「彼らは血を流して手に入れたんだ!守るために血を流してなんだ!」

 

「連中を再びギロチンにかけろ!」

 

「武器を取れ!奴らと戦うんだ!」

 

ボック「そうだ!戦うのだ!

    Aux armes, citoyens!

    Formez vos bataillons!」

 

 ボックが絶叫する。

 すると誰ともなしに歌い始めた。

 

「「Allons enfants de la Patrie,

  Le jour de gloire est arrivé !」」

 

 それはガリア国歌ラ・マルセイエーズだった。

 気がつけばウィッチ以外のほぼ全員が起立し大声で大合唱していた。

 

「「Contre nous de la tyrannie,

  L'étendard sanglant est levé,

  L'étendard sanglant est levé,」」

 

 更に軍楽隊も合唱に合わせて演奏を始める。

 

「「Entendez-vous dans les campagnes

  Mugir ces féroces soldats ?

  Ils viennent jusque dans vos bras

  Égorger vos fils, vos compagnes !」」

 

「「Aux armes, citoyens,

  Formez vos bataillons,

  Marchons, marchons !

  Qu'un sang impur

  Abreuve nos sillons ! 」」

 

ボック「そうだ諸君!奴らに向かって高らかに宣言しよう!

    我々が国民だ!我々が国家だ!我々がこの国の王だという事を!」

 

「「ガリア万歳!自由万歳!」」

 

「「我々が国民だ!我々が国家だ!我々が王だ!」」

 

ボック「奴らに見せつけるのだ!ガリア国民は決して悪逆非道のテロなどに屈しないと!」

 

 ボックの演説に会場のボルテージはマックスとなった。

 

ボック「諸君!かの革命のときのように武器を取れ!

    軍を組織せよ!」

 

 会場は拍手喝采とガリア国歌を歌う声に包まれた。

 その様子はまさにかの史上最悪の独裁者の演説のようだった。

 

 そしてこの演説の影響は506の結成式典のロザリーの訓示を曇らせ、感動ではなく怒りと義憤を齎した。

 

 

 

---------

 

 

 

「「我々が国民だ!」」

 

「「民衆の声が聞こえるか!」」

 

「「自由万歳!権利万歳!民主主義万歳!」」

 

 数日後、パリのレピュブリックの広場には2万人は軽く超えるであろう人々が集まり国旗を振り大声で叫んでいた。

 王党派の攻撃という事実は結成式典の翌日、ガリアの全主要新聞の一面を飾りボックの演説の全文が掲載された。

 

「「自由と権利を守れ!」」

 

「「我々が権利だ!」」

 

「「我々が自由だ!」」

 

 国民の多くはこのニュースに衝撃を受けていた。

 彼らの多くにとって共和主義、民主主義、自由、権利は不可侵でありこの国のアイデンティティたるものだと考えていた。

 それを真っ向から否定する勢力が突如現れ、そして実際に攻撃したのだ。

 彼らの怒りと義憤は最高に達した。

 そして彼らは“民主主義的な”行動を起こした。

 のちに共和国の行進とガリア史上最大のデモ行進と呼ばれることになるデモであった。

 デモ隊は警察と軍の警備と統制を受け平和的に行進していた。

 

「「我々が国民だ!」」

 

「「我々が王だ!」」

 

 このようなデモは同じ日に、ガリアのほぼ全ての都市で行われた。

 

「「我々はテロに屈しない!!」」

 

「「自由と権利と民主主義を守れ!」」

 

 モットーはただ一つ「自由と権利と民主主義を守れ」

 

ボック「素晴らしい、全くもって素晴らしい。

    我々の思惑通りになった」

 

ハイドリヒ「ええ。ガリア国民にとって王党派は自国のアイデンティティを踏みにじる存在ですから。

      連中の存在を訴え、そしてアイデンティティを踏みにじる存在だとアピールすることで全ガリア国民に義憤を促す。」

 

ネーベ「所詮、王党派と言えど国民の支持無くして勝てるわけがないだろう。」

 

 そのデモの声を聞きながら3人は自らの策が全て上手く行ったと感じていた。

 このデモも何もかもが彼らの策だった。

 

ボック「王党派という存在を利用し、民衆を扇動し、敵を作る。

    そして混乱に陥れ、この国を切り刻む。」

 

 そう言うとボックは壁にかけられたガリアの地図に向けテーブルの上に置かれたダーツを投げる。

 

ボック「まずはニッツァ、サヴォイア、そしてコルシカ。」

 

 最初に投げたダーツ3つはガリアの地図のニース、サヴォア、コルスと書かれた文字の上に刺さる。

 

ボック「次はエルザス・ロートリンゲン、そして植民地だ」

 

 そしてアルザス、ロレーヌにも刺さる。

 

ボック「全ては祖国の為に」

 

 

---------

 

 

「イタリア万歳」

 

「イタリア万歳」

 

 そこから数千キロ離れたヴェネチアの最高級レストランでは二人の男がワインの入ったグラスを掲げる。

 

「ロベルト・デッラ・カルヴィ、カポディストリア侯爵、ヴィッラフランカ・パドヴァーナ伯爵、ノヴァ・ゴリツィア男爵。

 まさに貴族というべき経歴、そして…」

 

 片方の男の名はヴェネチア空軍大尉カポディストリア侯爵、ヴィッラフランカ・パドヴァーナ伯爵、ノヴァ・ゴリツィア男爵ロベルト・アンミトレ・ヴィットーリオ・デッラ・カルヴィ、そして片方はヴェネチア政府内務次官のアルド・フィンツィだった。

 

カルヴィ「パルチザン」

 

フィンツィ「ふ、Una mattina mi son svegliata, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao! 」

 

カルヴィ「Una mattina mi son svegliata, e ho trovato l'invasor. 」

 

 フィンツィがある歌の一節を口ずさむ、するとカルヴィも続けた。

 

カルヴィ「O partigiano,」

 

フィンツィ「portami via, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao! O partigiano, 」

 

「「portami via, ché mi sento di morir. 」」

 

 二人は歌いながら席から立ち上がる。

 

「「E se io muoio da partigiano, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao!

  E se io muoio da partigiano, tu mi devi seppellir. 」」

 

 そしてもうグラスを掲げる。

 

「「E seppellire lassù in montagna, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao!

  E seppellire lassù in montagna, sotto l'ombra di un bel fior. 」」

 

 二人は両手を広げ大声で歌う。

 

「「E le genti che passeranno, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao!

  E le genti che passeranno, Mi diranno Che bel fior! 」」

 

「「È questo il fiore del partigiano, o bella, ciao! bella, ciao! bella, ciao, ciao, ciao!

  È questo il fiore del partigiano, morto per la libertà! 」」

 

 更にフィンツィが歩いてカルヴィの下に向かうと握手する。

 

「「È questo il fiore del partigiano, morto per la libertà! 」」

 

フィンツィ「カルヴィ、命令だ、506に所属し、ガリア政府内部の情報を探れ。

      内部の動きを探り、ニッツァ、サヴォイア、そしてコルシカを切り取る手伝いをしろ。」

 

カルヴィ「分かってます、イタリアの為に」

 

フィンツィ「イタリアの為に」

 

 そう言うと二人はワインを飲み干した。

 

 

 

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ロザリー「ホスバッハさん」

 

ホスバッハ「なんでしょうか少佐?」

 

 結成式典から一週間後、ロザリーは書類を確認するとホスバッハを呼んだ。

 

ロザリー「上層部から506のA部隊にウィッチを増員する連絡が来たわ。」

 

ホスバッハ「増員ですか?」

 

ロザリー「ええ」

 

 それは506の増員に関する書類の事だった。

 そこには増員されるウィッチの書類があった。

 

ロザリー「一人はヴェネチア公国からカポディストリア侯爵ロベルト・デッラ・カルヴィ大尉だそうよ。」

 

ホスバッハ「イタリア人か、役に立てばいいが」

 

ロザリー「そんなこと言わないの」

 

 ホスバッハが漏らす。

 彼はイタリア軍の能力を疑っていた。

 

 

 

---------

 

 

 

「全く、今度は何をするつもりだ」

 

 一人の女が二人のカールスラント軍人に連れられて薄暗い廊下を歩く。

 両手には手錠がかけられ一緒にいる二人の兵士は銃を持っていた。

 そしてある部屋に連れてこられた。

 

「ふ、ハイドリヒ中将ともあろう方が何用ですかな?」

 

 連れてこられた部屋、そこは廊下とは違い日光が入り窓の外にはパリの街並みが見えていた。

 その窓の前でハイドリヒが椅子に座って両手をテーブルに置いていた。

 

ハイドリヒ「君の能力を見越してだね、諜報員にならないかね?」

 

「気でも違ったかね?

 私はあんた達と敵対していたはずでは?」

 

ハイドリヒ「そうだ、だが優秀な者は敵であろうとリクルートしたいのだよ。

      既に君は死んだことになっている、クリス・キーラ」

 

キーラ「つまり今の私は幽霊という事かね?」

 

 ハイドリヒの前に置かれた椅子にキーラが座った。

 キーラは生きていた。

 

ハイドリヒ「そうだ。君はあの日、コルレオーネ少尉とド・メーストル大尉によって撃墜され死亡、数日後にシェルブールにそれらしき遺体が漂着するも腐敗が激しく即日火葬、遺灰は大西洋にまかれたことになっている。」

 

キーラ「それで」

 

ハイドリヒ「あのUボートの乗員は既に全員裁判にかけられている。

      Uボート自体カールスラント海軍に引き渡され修理中だ。

      君の戻るところはないぞ」

 

キーラ「それで私を諜報員にか?」

 

ハイドリヒ「ああ。給料は君が王党派にいた時の最低2倍は出そう。

      独自の裁量権も与える、どうするかね?」

 

 ハイドリヒが問いかける。

 返事はその数週間後、明らかになる。




はい、グリュンネ隊長の演説の代わりにボックの扇動演説です。

新キャラカポディストリア侯爵ロベルト・デッラ・カルヴィ大尉登場。
ロマーニャ情勢が絡み始め王党派は国民の支持を失った上に名指しでテロリスト扱い

歌っていたのはパルチザンの軍歌「ベラチャオ」です。

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