WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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戦闘シーンはカットです
小説とそんな変わらんもんにしかならんのです。


第28話:ジェニファー・デ・ブランク

 ジェニファー・デ・ブランク大尉についてあるイタリア系の男は次のように表現した。

 

 人畜無害だがそれを由としない、がそれについて悩んでいる女

 

 実際彼女について、人畜無害で優しく、気弱気味な性格、圧や勢いの強い人の多い506の中でも物静かさではカートに類する。

 しかし、彼女自身がそれを由としていたかは別だった。

 

 F7F-Nのテスト飛行を派手な離陸失敗で終わらせ泥まみれとなったジェニファーはトニーに回収されると、自室に放り込まれた。

 

 自室のシャワー室でシャワーを浴びながら自嘲するジェニファー。

 

ジェニファー「こんなの…私じゃない…」

 

 自分の殻を破りたくて海兵隊に入ったのに全く変わっていない自分自身の本質に悩む。

 シャワーを止めるとそのままベッドに潜り込んだ。

 

 

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 少しして、基地のブリーフィングルームではジェニファーの現状をどうすべきか緊急の話し合いが始まっていた。

 眉をひそめてこめかみを押さえたジーナが集まった面々に聞く。

 

ジーナ「…で?」

 

トニー「末期的だな」

 

パット「あのままだと墜落して死んでしまうかもしれない」

 

カーラ「信じられないぐらいガチガチだよね」

 

 あまりの惨状にトニー、パット、カーラが三者三様に表現する。

 

アラン「前回の模擬戦はそれほどでもなかった気がするが。」

 

ジーナ「そうだ。だから単刀直入に今回、こうなっている理由を聞きたい」

 

 ジーナが単刀直入に聞いた。

 それにジェニファーはゆっくりと半泣きになりながら言った。

 

ジェニファー「…から。

       私には無理なんです、新型機でたくさんの来賓の前を飛ぶなんて!

       きっとミス します!

        そうしたら、隊のみんなに迷惑がかかります!」

 

 必死で訴える。

 

カーラ「そっか!要するに注目されるのが苦手なんだ!」

 

ジェニファー「いけない!?」

 

カーラ「いけなく、ありません…」

 

 指を鳴らして気が付いたカーラを威圧して縮こまらせる。

 ジーナとカートは理由が分かると説得に移った。

 

カート「ジェニファー、もし模擬戦で何かやったとして、それを私たちが責めると思いますか?」

 

ジーナ「例え失敗して君を責めると思うか?」

 

ジェニファー「それは…思いません」

 

カート「だから、上手くやろうと考えなくてもいい。

    今までやってきたことをやるだけで十分だ。」

 

ジーナ「何かあればしっかりフォローするつもりだ。」

 

トニー「その辺りは俺達の仕事でもあるな、な?」

 

アラン「そうだな」

 

パット「何かあれば俺がいるから気楽にやればいいさ」

 

カーラ「そっちは任せなって!」

 

 口々に言っているとジェニファーは叫んだ。

 

ジェニファー「それよりも代わってください!!」

 

 机を叩いてブリーフィングルームから逃げ出した。

 

カーラ「あっ!逃げた!」

 

トニー「どうする?捕まえるか?」

 

 呆気に取られる皆。

 それに眉を上げてどこか嬉しそうなジーナとカート。

 

カート「いい傾向ですね。前よりはいい」

 

ジーナ「ふむ、その通りだな。」

 

マリアン「あれがいい傾向なんですか?」

 

 マリアンが尋ねる。

 どう見てもいい傾向とは思えないからだ。

 

カート「以前ならばきっと負の感情を貯めこんでいた。

    こうやって外に出して爆発させるのは前進したというべきだろうな。」

 

ジーナ「概ね、少佐と同意見だ。

    結果的にはこの任務は彼女の成長にとって良い物になるだろうな。」

 

マリアン「二人共、案外楽天的なんですね?」

 

カート「そうでもない。ジーナ中佐の頭の中を覗き込めるぐらいには観察してきたつもりだ」

 

ジーナ「君はまだ、私のほんの一部しか知らないんだよ。

    殆ど全部を知っているのは曹長と少佐ぐらいだ。」

 

 ジーナはいつものポーカーフェイスで答えた。

 

 

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 暫くして、ついに夜間演習の日が訪れた。

 併合事件から暫く経っていたがそれでも警備は厳重に行われていた。

 演習場にはVIPなども多数訪れていた。

 その席の中には夜間演習の立役者のリベリオン大使が真ん中に陣取り、その周囲には彼に付き合わされているボックやその他将校や政治家や外交官がいた。

 更にその近くには記者席や放送席もあり、邦佳を解説役に欧州全土に生中継の予定だった。

 

ボック「やはり、フソウはそのように?」

 

「ええ。大本営は陸軍部隊の投入を渋っています。

 我々第11軍もヒスパニアでの待機が続いています。」

 

 ボックは演習に招待した扶桑陸軍軍人、田中誠壱大将と話していた。

 彼はヒスパニアに在する第11軍の総司令官であり、ボックとしては扶桑軍、その中でもレンドリースされたリベリオン製戦車やその他装備で武装した精鋭の第11軍は戦力としてほしかった。

 

田中「命令一つあればいつでも馳せ参じる所存ですが、阿南曰く、如何せんガリア情勢に巻き込まれることを憂慮しているようです。」

 

ボック「我々としてはアルザス・ロレーヌ方面の疲弊したカールスラント軍と交代で配備したいところなんだがな」

 

 扶桑軍の重い腰にボックは悩んでいたするとそこへもう一人、葉巻をふかしながらアジア人がやってきた。

 

「おや、ボック閣下が扶桑人と一緒とは珍しい」

 

 流暢なイギリス英語から彼が高度な英会話の教育を受けた人物だと分かる。

 その上スーツの仕立ても明らかにブリタニア趣味であった。

 ブリタニア趣味で高度な英会話のスキルを持ったアジア人は一人しかいなかった。

 

ボック「特命大使の吉田閣下、お久しぶりです。」

 

吉田「そんな気を使わないでください。

   特命大使と言っても所詮は素浪人のようなものです。」

 

ボック「噂では次の外相候補と目されていると聞いているのですがな。」

 

吉田「ハハ。どこから出た噂やら。」

 

 それは特命大使の吉田茂氏だった。

 彼が外交面では高く評価され、次の外相候補となっている、というのは本国中枢の噂である。

 扶桑の陸軍装備などの面でのリベリオンのレンドリース法適用範囲内への参加や、欧州への扶桑軍の派遣など欧州とリベリオンで高い実績を上げており、現在リベリオンとブリタニア主導で計画されている「大西洋国際新秩序」に扶桑が一枚噛むという実績も挙げていた。

 

 さて、水面下の政治闘争が行われる中、ウィッチのアクロバット飛行とお披露目飛行の後、黒く塗った風船を撃ち落として行くという夜間演習が開始された。

 AとBそれぞれがナイトウィッチのハインリーケとパットとジェニファーの誘導を受けながら破壊していく。

 Bにはナイトウィッチ二人、Aは一人と対等ではないように見えるがナイトウィッチとしては最上級のハインリーケと素人程度のジェニファーの違い、更にはパットはあくまで限定的なので能力的な差があるためこれで対等と見做された。

 そしてそれは正しかった。

 いざ演習が始まれば、ベテランのハインリーケは的確に発見し、仲間に伝えて誘導、撃破していた。

 一方でパットは能力的な問題から探知範囲が狭く、一定の範囲内に目標がいる事だけ伝えて仲間の誘導はそこからカートが選択したウィッチに任せるという二重の手間になっていた。

 ジェニファーの方はそれ以前に流入してくる情報を整理するのに圧倒されていた。

 

ハインリーケ「少佐、 10時 方向、距離200!

       カーロイ、3時から4時の方向、距離350に5つ!

       ヴィスコンティ大尉、1時方向、距離150!

       貫二郎、12時方向目の前じゃ!」

 

 ハインリーケの的確な指示に次々と的を撃破していく。

 A部隊の装備はB部隊に負ければ末代までの恥とばかりに用意できるもの全てを用意し、徹底的な整備を行って準備してきた。

 そのため装備面でもBに圧倒していた。

 一方B部隊では。

 

パット「2時方向から3つ、少し上に二つと下、アランできるか?」

 

アラン「何とか」

 

パット「次、正面12時方向距離500、数不明、フーヴァー少佐お願いします」

 

カート「承知した」

 

パット「11時の方向、姫様の捕捉しているターゲット4つ、距離は1500、誤射に注意。

    トニーと隊長お願いします」

 

 的確な指示を出してはいるが範囲が狭かったり妙な物をターゲッティングしていた。

 そしてジェニファーは必死で実地で飛びながら慣れようとしていた。

 

ジェニファー「慣れなきゃ…この模擬戦が終わるまでに…

       ええと、マリアン、2時方向に標的、ええと距離は120!」

 

カーラ『ジェニファー!こっちは!』

 

ジェニファー「待って!えっと、5時、距離300!」

 

 カーラに指示を出して慌てふためくジェニファー。

 何とか処理して飛んでいるパットや優雅にこなしているハインリーケを見て思わず口を滑らせる。

 

ジェニファー「あんな風には…」

 

ハインリーケ『無理とは軽々しく口にすべきではないぞ?』

 

 無線に突如ハインリーケが割り込んだ。

 

ハインリーケ『味方が不安になるからの』

 

ジェニファー「ヴィトゲンシュタイン大尉!?』

 

 本来別の周波数を使っているはずのAとBだが、ハインリーケはそれを破って秘密裏にジェニファーに接触してきた。

 

ハインリーケ『そなたの不調は聞き及んでおるし、先程のアクロバット飛行からも一目瞭然じゃ』

 

ジェニファー「ごめんなさい」

 

 アクロバット飛行ではマリアン達にフォローされていたがそれでもハインリーケから見れば不調は一目瞭然。

 そこで驚きの提案をする。

 

ハインリーケ『本来なら模擬戦では敵同士じゃが、援護する』

 

ジェニファー「え?」

 

 ジェニファーは口をぽかんと開いて答える。

 

ハインリーケ『勘違いするでない。

       同じ506の一員として、マスコミの前で醜態を晒すのを見逃せぬ。

       それに、戦場では助け合う。

       そういうものじゃ』

 

 ハインリーケの言葉に憑き物が落ちたような顔をするジェニファー。

 ハインリーケは彼女の頭の中に入ろうとする。

 

ハインリーケ『デ・ブランク大尉には、周りがどのように見えておる?』

 

ジェニファー「それ が…入っ てくる情報が多すぎて」

 

『わらわの動きを見て学べ。

焦る必要はない。

それに…初めてであまりうまく飛ばれては、わらわの立場がなかろう』

 

「…… はい!」

 

 暗がりの中、ハインリーケの動きを観察する。

 すると、目標一つを捕捉指示を出す時には既に次の目標を把握している。

 それを繰り返している。

 それに味方の位置を立体的に把握しているようだった。

 それを見ていると頭の中から焦りや来賓の事が消えうせた。

 すると的確に指示を出せるようになっていた。

 

ジェニファー「マリアン!11時方向、やや下方、距離180!」

 

マリアン『了解!』

 

ジェニファー「カーラ、1時、距離140!」

 

カーラ『任せて!』

 

ジェニファー「隊長、2時、距離280、3時、距離250!お願いします」

 

ジーナ『了解した』

 

 的確に指示を出せるようになりその様子は相手から、そして同僚のパット達からもよく見えていた。

 

パット「元気そうになって良かったな」

 

トニー『ああ。心配して損した気分だ。これでネウロイが来ず勝ったら最高の気分だから誘導頼むぜ?』

 

パット「了解、距離300、1時30分、楽勝だろ?」

 

トニー『そうだな』

 

 そういうとトニーは遠く離れた目標を撃ち抜く。

 そして皮肉なことに、トニーの願いは届かなかった。

 

管制『隊長!北北東80キロにネウロイ発見!例によってパリに向かっています!』

 

 ネウロイの出現であった。

 506は演習を中断、迎撃へと向かった。

 

---------

 

 

 数日後、新聞を見てリベリオン大使は微妙な顔をしていた。

 

大使「うむ…」

 

武官「今日でしたか、記事が載るのは」

 

 遠目に訝しげに言う武官に書記官が答える。

 

書記官「ですが、書き方はどれも506が夜間模擬戦中にネウロイを撃墜ですからね」

 

 一人だけ大損していた。

 何せ書き方は微妙であり、リベリオンの国力を見せつける!という目的の演習と公開だったのに現実に記事になったのは506の団結だった。

 まさに一人だけ大損だ。

 

 一方ほくほく顔なのがボック達だった。

 

ボック「いやぁ、やはりウィッチはいい物だね」

 

ハイドリヒ「閣下、気色が悪いです」

 

 記事を読みながら笑顔のボックに鋭く突っ込むハイドリヒ。

 

ボック「すまないね。孫娘ぐらいの歳で強くて色々と役立つとなるとどうにもこうなってしまうもんだよ。

    君もウィッチに手を出してるだろ?」

 

 無言は時に雄弁である。

 このブロンドの女好きの悪癖の噂はこの世界でも残っていた。

 そしてその相手も。

 

ボック「まあいいさ。相手は例のアレだろ?」

 

ハイドリヒ「その例のアレからの情報です」

 

ボック「何かね?不快な情報かね?」

 

ハイドリヒ「使い道次第です」

 

 ボックはそれを聞くと新聞を閉じて煙草に取り出した。

 

ボック「ほう、それはどんな情報かね?」

 

 




戦闘シーンはカット!その代わりに計画者が大損するシーン追加!
フラグも立てます!
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