WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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お姉ちゃん&ノヴァク回です。
同性愛へのヘイト表現あり。(当時そんなもんだから仕方ない)


第12話:亡国の軍人

 サイレンが鳴り響き、悲鳴が聞こえ、空には飛行機が飛び、建物が燃えている。

 まだ太陽は出ていないのに喧騒としていた。

 

「な、なにが…」

 

 青年がそう呟く、次の瞬間、

 

「伏せろ!」

 

 その声が聞こえると、体を誰かに押し倒された。

 

 それからどれだけ時間が経ったのだろうか…太陽が出、飛行機は消えていた。

 青年は動こうとするとなにかがのしかかり動けない。それは死体、下半身は前に飛ばされ、上半身だけとなった死体だった。

 

「うぅぁあああああああああああ!」

 

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ノヴァク「あああああ!

     ハアハア、夢…か。」

 

 アレクサンデル・ノヴァクは悪夢で飛び起きた。時計を見るとまだ太陽はその姿を見せていない時間だった。

 

ノヴァク「今日も見たな…主よ、我が罪を悔い改め、我を悪夢から救い給え」

 

 そう十字を切って異世界の神に祈った。

 彼にとって悪夢は日常茶飯事、いわゆるPTSDと呼ばれる病気の症状だった。

 

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 街が燃えている。

 

 かの戦争ではヨーロッパの多くの都市が燃えた。

 ベルリン、ハンブルク、ドレスデン、ケーニヒスベルク、レニングラード、スターリングラード、ブダペスト、ウィーン、ワルシャワなどなど。

 この全てが戦火によって燃えた。

 その多くはいとも簡単に破壊された。

 ハンブルク、ドレスデンは一晩で、レニングラード、スターリングラード、ベルリン、ケーニヒスベルク、ブダペスト、ワルシャワは多くの民間人と共に破壊された。

 これらに都市が元の栄華を取り戻すのには数十年と言う長い月日が必要なことは45年の時点で明白だった。

 

 だが、この街はこれらの都市とは全く違う。

 この街を破壊しているのはあるものが見ればヨハネの黙示録第6章第8節にある第4の騎士と解釈するものもいるだろう。

 この第4の騎士はネウロイと言った。

 そしてそれが街を焼いているのである。

 

「くっ!」

 

 それを見ていた三人の少女のうち、1人が怒りに身を任せネウロイに銃を乱射する。

 

「っうあああああああああ!」

 

 弾はネウロイを貫き破片となって街に落ちていくがその少女の目にあるものが飛び込んできた

 

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バルクホルン「クリス!」

 

 バルクホルンはノヴァクのように悪夢で飛び起きた。

 周りを見て夢だと理解する。

 

バルクホルン「なんで今頃あんな夢を…」

 

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 翌朝、食堂に目に隈をつけたハインツとミラーが入ってきた。

 

ハインツ「眠い…」

 

ミラー「昨日寝ました?僕はぐっすり寝れましたけど。」

 

ハインツ「うるせえ、昨日夜遅くまで某ウィッチと夜遅くまでイチャコラしてた奴が言うな。」

 

 それにミラーと食堂のキッチンのリーネが反応する。

 

宮藤「ハインツさん、ミラーさんおはようございます。」

 

ハインツ「ああ、おはよう。なんの匂いだ?」

 

 宮藤の挨拶に返すと匂いの元を聞く。

 

宮藤「お味噌汁です。今作ってるんです。」

 

ハインツ「味噌汁?」

 

ミラー「M’s sear?(ミス シール:ミスアザラシの意)」

 

 味噌汁がなんなのかわからずハインツとミラーは聞く。ミラーに至っては聞き間違いすら起こしていた。

 

ノヴァク「日本の料理だよ。子供の頃爺ちゃんがWWⅠで捕虜になってた頃の話で出てきたな。」

 

 すると後ろから食堂に入ってきたノヴァクが説明する。

 

宮藤「あ、ノヴァクさんおはようございます。

   日本?WWⅠ?」

 

ノヴァク「なんでもない。宮藤」

 

 異世界の話を宮藤にしていなかったことを思い出したノヴァクは何気なく言った話を誤魔化す。

 

リーネ「そういえばミラーさん、ハインツさん、ノヴァクさん知ってます?

   カウハバ基地が迷子になった子供の為に出動したんですって。」

 

 リーネがミラーたちに話しかけてきた。少し前ならミラーですら話しかけないといけないぐらい怯えてたのに今ではそう言うことは一切なかった。

 

ミラー「それはまたすごいなリーネ。」

 

リーネ「ですよね。」

 

 リーネの話にミラーが反応する。心なしか両者の表情は非常に明るかった。

 

宮藤「でも、そうやって一人ひとりを助けられないと皆を助けるなんて無理だもんね。」

 

リーネ「そうだね。」

 

 それにハインツ、ミラー、ノヴァクは苦笑いする。

 あの戦争では守るどころか民間人と軍人の違いすらなかった。

 ノヴァクはポーランドや各地でのナチスの蛮行、ミラーはドイツの街を焼く爆撃機や東部戦線で見た建物からぶら下がったパルチザンの死体やパルチザンに捕まり無残に殺された戦友、ハインツは東部戦線での数え切れない虐殺、強姦、略奪、死体、パルチザンなどなどを思い出していた。

 

バルクホルン「みんなを助ける…そんなのは夢物語だ…」

 

リーネ「え?」

 

宮藤「ん?」

 

 突然後ろから朝食を取りに来たバルクホルンが言う。

 それに苦笑いしていた三人が(おいおい言っちゃったよ…)みたいな顔をしていた。三人にも人の夢を壊さない程度には良心ってものはあった。

 

宮藤「え?なんですか?」

 

バルクホルン「済まない独り言だ。」

 

 バルクホルンはそう言うと朝食を取って席に歩いて行った。

 その後他のウィッチもやってきて朝食を食べ始めた。

 そんな中1人バルクホルンだけ食事に手をつけなかった。

 クソみたいな納豆でさえ隣ではハインツが(まあ東部戦線で食った粥擬きか腐りかけの缶詰かネズミに食われたパンよりはマシか…)と思いながら食べていた。

 

ミーナ「どうしたのトゥルーデ?浮かない顔で。」

 

ハルトマン「食欲もなさそう。」

 

ハインツ「この腐った豆がダメか?少なくとも見た目よりはいけるぞ。腐りかけの缶詰かネズミに食われたパンよりかはうまい。」

 

ミラー「朝食は食べた方がいいですよ。朝食がその日の体を作るって言いますし。」

 

 なぜか朝食を取らないバルクホルンをミーナ、ハルトマン、ハインツ、ミラーが心配して聞く。

 

バルクホルン「…そんなことはない」

 

 そう反論して1口食べると宮藤の方を向く。

 

宮藤「ん?」

 

リーネ「どうしたの?」

 

 宮藤が振り返る。

 

宮藤「誰か見ているような気がしたんだけど…」

 

リーネ「誰か?」

 

宮藤「…気のせいかな」

 

 宮藤は気のせいだと納得して食べ続ける。すると、

 

ルッキーニ「お代わりー!」

 

宮藤「あ、はーい。」

 

 ルッキーニのお代わりに宮藤は席を立ち上がりお代わりを取りに行くとバルクホルンの朝食が目に入った。

 

宮藤「あの…お口に合いませんでしたか?」

 

 宮藤がバルクホルンに聞くが反応せずそのまま立ち上がって片付けようとするがハインツが止める。

 

ハインツ「バルクホルン、食わねえなら貰うぞ。せっかく勿体ねえんだし。あと後で話がある。」

 

 バルクホルンが朝食をハインツにあげると宮藤を見て固まるがルッキーニが駄々をこね始めたため宮藤はバルクホルンからルッキーニに意識を移す。

 その間にバルクホルンは外に出たがそれをノヴァクは心配そうな目で見ていた。

 

ペリーヌ「バルクホルン大尉じゃなくてもこんな腐った豆なんて、とても食べられたんじゃありませんわ」

 

 するとペリーヌが納豆への文句を言い始めた。腐った常々はハインツもミラーもノヴァクも同意していたがまだ3人が食べたことのある食べ物の中では割とマシな方に入っていたため特に問題なかった。

 だって腐った缶詰とかネズミに食われたパンとか砂の混じった米とか毎日スパムよりはマシじゃん。

 

宮藤「納豆は体にいいし、坂本さんも好きだって」

 

ペリーヌ「さ、坂本さんですって!?少佐とお呼びなさい!私だってさん…付けで…」

 

 ペリーヌが盛大に自爆している光景をハインツは笑って見ていたが、ミラーとノヴァクは嫌悪感を持った目で見ていた。

 

ハインツ「それ言ったら俺なんてキレた時は呼び捨てだぜ。

     それとご馳走さん。美味かったよ。」

 

 ハインツはそう言うとトレーを片付け出て行った。

 

ノヴァク「なあミラー、バルクホルンのことどう思う?」

 

ミラー「どうって…何かあるんじゃないですか?」

 

 ハインツが出て行くとノヴァクがミラーに話しかけた。

 この二人は宗派が同じ(どちらもカトリック)で書類処理の関係でよく一緒に仕事をしていたため仲が良かった。

 

ノヴァク「まあ何かあるんだろうけど同性のことをあんな目で見るか普通。」

 

ミラー「確かに。大尉が精神異常だとは思いたくはないですね。」

 

 ノヴァクは実はバルクホルンと仲が良かった。

 これはハインツが来てから尉官クラスで決済可能だったり尉官クラスが本来やるはずの書類(なぜか大量に左官クラスの書類に紛れ込んでた)のほとんどをバルクホルンに回していたからだった。

 そしてその量はバルクホルンがそれ以前にやっていた書類の2倍近い量だった。そのためこれをどうにかして処理するためにバルクホルンはノヴァクに書類の一部を回すことで処理していた。

 そしてその書類の一部がさらに暇してるミラーに回っていたため二人はバルクホルンと付き合いがあったためそれなりに気になるものだった。

 

---------

 

 その日の昼前、バルクホルンとハルトマンは模擬戦をしていた。

 空には2人のユニットで作った飛行機雲が描かれていた。

 それをミーナと坂本が見ていた。

 

ミーナ「乗れてないわね。」

 

坂本「完璧主義のあいつらしく…」

 

ハインツ「あのクソッタレ!ふざけんじゃねえ!」

 

 坂本が何か続けようとした時建物からタバコを吸ったハインツが大声でキレながら出てきた。

 

ミーナ「ど、どうしたのかしら?ハインツさん?」

 

 その尋常ではない剣幕に驚いたミーナが聞く。

 

ハインツ「中佐、聞いてくださいよ!

     バルクホルンの野郎、今朝書類出したかと思ったらその書類のほとんどでミスしまくってとてもじゃないが上に挙げられるもんじゃねえんですよ!

     その上期限切れの奴も結構あるんだよ!」

 

ミーナ「え、ええ。それは大変ね。」

 

ハインツ「でしょ。降りてきたらすぐにでも部屋に呼び出してやり直しさせますよ。」

 

 軍隊はいつの時代、どこの軍、ナチスやソ連軍でさえ徹底的に書類によって管理されていた。

 そのため本来なら書類の誤記、提出期限切れは重大な問題だった。

 

ミーナ「書類の正確さに定評のあるトゥルーデの書類が問題だらけなのは不安ね。」

 

坂本「次の出撃は外した方が良さそうだな。」

 

ハインツ「全く、早いとこ調子戻ってくれないと残業で殺されるぞ。一体なんで不調なんだか。」

 

ミーナ「宮藤さんが来てからなのよ。」

 

坂本「宮藤と組ませてみるか。」

 

ハインツ「荒治療になるといいが下手すれば…

     わかっていると思いますけど死に金って物があるんですよ。」

 

 ハインツは最悪のパターンにならないことを祈った。

 

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ハインツ「バルクホルン、ちょっといいか?」

 

 模擬戦後、格納庫でユニットを脱いでいたバルクホルンをハインツは呼び止めた。

 

バルクホルン「何の用だ?」

 

ハインツ「いやあんたが今朝出した書類のことだが…」

 

 そう言うとハインツは服のポッケから四つ折りにした書類を出した。

 その書類は今朝、バルクホルンが出した前日の哨戒報告書だった。

 

ハインツ「ここと、ここ。それにここ。

     間違えてるしこの手の書類の間違いが多い上にこの書類は本来昨日提出のはず。

     これはどういうことだ?」

 

バルクホルン「すまない、昨日は疲れてた…」

 

ハインツ「疲れてただと?まあそうかもしれんがとにかく最近お前大丈夫か?

     今朝も朝食食ってなかったし、最近様子おかしいぞ。いい加減休暇とったらどうだ?」

 

バルクホルン「休暇は必要ない。だから大丈夫…」

 

ハインツ「いや、大丈夫とかじゃ無くて規定であんた休暇取らなきゃいかんし。

     ついでにあんたに死なれたら死に金っていう無駄金が発生するんですよ。

     兵士の命は一厘五銭じゃないって分かってます?」

 

 ハインツが休暇を取るようにしつこく迫った。

 

バルクホルン「だから大丈夫だ。それ以上ようがないなら失礼する。」

 

 そう言うとバルクホルンはハインツを押しのけて出て行った。

 それをノヴァクは格納庫の外から見ていた。

 

ハインツ「はあ、めんどくせぇ事になりそうだなぁ。」

 

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 イギリス人にとってティータイムとは1日の生活の中で最も重要と言えるだろう。飯はクソなのに。

 戦争中もティータイムをとっていたし、センチュリオンではティーを作るための電気ポッドがあった、朝鮮戦争中にはティータイムのため味方の支援砲撃を中止したと言う話や、紅茶のお供の定番であるビスケットの工場が洪水で操業不能になった時にはメディアで「いかにして我々はビスケット不足を乗り切ればいいのか?」というニュースが乗るほどティータイムは重要であった。

 このもっと他にやることないのかと思うこだわりは世界を超えた同位体であるブリタニア人、そしてブリタニア軍も同様であった。

 

 この日は午後からお茶会をすると言うのだ。

 ある意味戦争を舐めてるとしか思えない沙汰でありハインツとミラーもふざけてるとしか思えなかったが英軍での経験が長いノヴァクは特に疑問に思うことはなかった。

 なにせ英軍が同じことしていたのだから。

 

ミーナ「作戦室からの報告では、明後日が出撃の予定です。

    ですので皆さん、今日はゆっくり英気を養ってください。」

 

坂本「宮藤とリーネ、二人はこの後訓練だ」

 

「「はい!」」

 

 ミーナが音頭を取り坂本が宮藤とリーネに連絡を入れる。

 お茶会が始まると宮藤は音を立てて紅茶を飲み始めた。

 

ミラー「宮藤さん、紅茶は音を立てて飲んではいけないんですよ。」

 

 同じテーブルでリーネの隣に座ってるミラーが宮藤に注意する。

 

宮藤「すいません。ところでミラーさん、バルクホルンさんのこと知りませんか?」

 

 宮藤が謝るとミラーにバルクホルンのことを聞いてきた。

 

ミラー「知らないなぁ…あんまり自分のこと話す人間じゃないからよく知らないんだよなぁ。

    まあ少佐なら知ってると思いますけど。大尉関連の書類を管理してますから。」

 

宮藤「坂本さんがですか?」

 

ミラー「いや、ヴァレンシュタイン少佐の方。」

 

ノヴァク「あいつが管理してるのか?」

 

 すると隣のテーブルで持ち込んだジャムを入れた紅茶(一人だけレモンティー)を飲んでいたノヴァクが聞いてきた

 

ミラー「ええ、もしかして知らなかったんですか?

    この時期になると毎日『税金死ね』とか『誰か手伝えお前らの給料だぞ』とか愚痴ってますよ。」

 

ノヴァク「アイツそんなことしてたのかよ…」

 

ハインツ「ヘブっし!こんな時期に風邪?」

 

 ミーナ中佐のテーブルで半分現実逃避中のハインツがくしゃみした。

 そしてそれをバルクホルンは見ていた。

 

バルクホルン「……」

 

ハルトマン「どうしたの?」

 

バルクホルン「なんでもない…」




当時の同性愛への考え方は基本的に「イかれてる」・「狂ってる」・「精神異常」・「キチガイ」なんですよね。
カトリックでは同性愛はハラム(なのによく教会関係者の少年への性的暴行がニュースになる謎)だし、伝統的に東欧は同性愛への偏見・嫌悪感が強い地域、史実では50年代までイギリスでは同性愛は犯罪で精神疾患扱いだった。(有名な例だとアラン・チューリングが同性愛の容疑で裁判にかけられ有罪食らってる)
この辺無視してる人多いんですよね(でもこれが時代だから容赦なくブチ抜く)



どーでもいい話だけどこの間の某クソアニメでリーネの中の人が出たらしい
つまりリーネ=ピピ美だった!?
ネタにできねーかな
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