WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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レンレンが死んだと言う事実に現在思考停止中。


第16話:340m/s・内陸国出身者にとって最も遠いところ・男のロマン

 さて、ハインツは意外なことに料理ができる。

 しかもかなり上手い。

 なおノヴァクはチーズケーキぐらいなら作れる。

 ミラー?作れないことはないが雑。お坊ちゃんだからね。

 

 シャーリーがハインツが料理を作れることを知ったのはある日、仕事終わりに一人で食堂で晩酌していたハインツが夜食として久しぶりに料理を作っていたところに、偶々夜遅くまで機械いじりしていたシャーリーがやってきて流れでシャーリーの分も作った事があったからだった。

 ちなみにその後匂いにつられて夜中まで仕事していたミーナがやってきて3人で夜食を食べることになったが。

 そしてこの日もシャーリーが飯を作ってくれとおねだりしてきたせいで食堂で得意料理を作っていた。

 

ミラー「まさか少佐が料理作れるなんて知りませんでした。」

 

宮藤「以外です。料理どころか掃除さえ出来ないと思ってました。」

 

シャーリー「あいつの料理はうまいぞ。料理に腕なら多分私よりあるんじゃないか?」

 

 料理を待つ間、シャーリーはユニットの整備をしながら、残りは横でそれを見ながら話していた。

 すると後ろから中ぐらいの鍋を持ったハインツが入ってきた。

 

ハインツ「はい、おまたせ。グラシュだ。」

 

 そう言って床に置いたのは中欧で最も一般的な料理、グヤーシュ。

 表記については地域差がありグヤーシュはハンガリー語と正式なドイツ語での発音。中央ドイツやオーストリアではハインツの発音のグラシュ、北ドイツではグーラッシュ、スロバキア語ではグヤーシュ又はグリャーシュと発音するらしい。

 ハンガリー発祥(さらに辿ればモンゴル料理に行き着くとされる)の料理でいわゆるシチューの一種で戦中はドイツ兵の糧食でえんどう豆のベーコン添えに並ぶ前線の食事の定番の品だった。またフィールドキッチンがグヤーシュキャノンと呼ばれる語源でもある。

 その中でもハインツが作ったのはチェコにおいてよく食べられていた野菜が炒めた玉ねぎだけで小麦粉でとろみがつけられたタイプのものだった。

 

シャーリー「やっときた。いただきまーす! んーうまい!」

 

ミラー「少佐、自分もいいですか?」

 

ハインツ「別に良いぞ。一応全員分のスプーンと小皿持ってきたし。」

 

 ハインツは自分の隣に置いたナプキンで包んだスプーンを取り出しお玉で小皿に入れると食べ始めた。

 それを見て残りもスプーンと小皿を取って食べ始める。

 

宮藤「いただきます。 お、美味しい。」

 

リーネ「美味しいです。」

 

ミラー「美味しいけど何か物足りないというか…ダンプリングがないのが物足りない。

    あと味付けが薄いような?」

 

ハインツ「うちの地元は薄めの味付けだぞ。チロルだともっと濃いのか?」

 

ミラー「チロルじゃなくてザルツブルクです。いい加減覚えてください。」

 

 ハインツのグラシュを食べて各々感想を言う。

 グラシュ含めたドイツ料理全般は地域差がかなりあり、チェコでは比較的薄めでオーストリアはチェコ料理の影響が強く、オーストリア料理の名前にはチェコ語のものがそのまま使われていると言う。

 ミラーが言ったのはウィーン風グヤーシュでダンプリングという小麦粉の団子と目玉焼きがついたもの。

 すると横で写真アルバムを開いていた宮藤とリーネがシャーリーに聞いてきた。

 

宮藤「これなんですか?」

 

リーネ「グラマラスシャーリー新記録って、バイクの記録ですか?」

 

ルッキーニ「シャーリーはパイロットになる前は、バイク乗りだったんだって!」

 

 ルッキーニが答える。

 更にそれに続けてシャーリーがグラシュを食べながら答える。

 

シャーリー「ボンネヴィル・フラッツって知ってるかい?」

 

宮藤「ぼん…?」

 

シャーリー「リベリオンの真ん中にある、見渡す限りすべて塩で出来た平原さ。」

 

宮藤「そんな所があるんですか?」

 

シャーリー「ああ。そこは、あたしらスピードマニアの聖地なんだ。」

 

 シャーリーの説明に全員が感心する。

 

ハインツ「で、ユニットの方が速いことを知って軍に入ったってとこか?」

 

シャーリー「そう、だからこうして任務のない日は記録に挑戦してるわけ。」

 

ハインツ「責任がないってのは良いねぇ…俺なんて給料日前後はサービス残業…辛い…」

 

 ハインツが悲しいオーラを出しながらグラシュを食べる。

 2人の会話を聞いていた宮藤がシャーリーに聞く

 

宮藤「それってどこまで行けば満足するんです?」

 

シャーリー「そうだなぁ……」

 

 宮藤の質問に少し考えると、

 

シャーリー「いつか…音速、マッハを超えることかな?」

 

宮藤「へ?音速って何ですか?」

 

ミラー「音が伝わる速度。確か条件によりますけど平均で340m/sでしたよね?」

 

ハインツ「でも昔聞いたけどプロペラだと音速は超えられないらしいぞ。」

 

宮藤「え?どうしてですか?」

 

ハインツ「ああ、プロペラは音に近づくと効率が低下して全く役に立たなくなるらしい。」

 

宮藤「それじゃあユニットでは超えられないんじゃないんですか?」

 

ハインツ「俺は超えられないと思ってる。」

 

シャーリー「私は超えられると思うけどな。」

 

 レシプロユニットでは音速を超えられないと主張するハインツと超えられると主張するシャーリー。

 

ハインツ「は?物理的に無理だからね?800ぐらいが限界でしょ。」

 

シャーリー「超えられるかどうかは試してみなきゃわかんないでしょ。」

 

ハインツ「賭けるか?」

 

シャーリー「もちろん。私が勝ったら私の言うことして貰うから。」

 

ハインツ「じゃあ俺が勝ったらお前の胸揉ませろ。いいな?」

 

シャーリー「ああ、良いよ。さてと今日はここまでにするかー。

      で、二人は何か用かい?」

 

 話しかけられたリーネと宮藤は顔を見合わせると、

 

「「あーっ、忘れてた!」」

 

 思い出したように声を出すとハインツは食器と鍋を片付けに食堂へ、ルッキーニ以外の4人は滑走路に向かった。

 この後暫くして黒豹がユニットを損傷させた事も知らずに…

 

---------

 

 翌日、綺麗に晴れた真夏日。

 

ハインツ「よく晴れた青い空、白い砂浜、青い海、そして11人の絶世の美女たち。

     ああ、最高の日。

 

 

     泳げない以外は。」

 

ミラー「少佐、現実逃避してないで現実を見ましょう。現実を。

    あとしれっとウィスキーの瓶を持ち込まないでください。死にますよ。」

 

 ハインツとミラーはドイツ軍で支給される水着(ドイツ軍では水着やジャージもスポーツ用として支給されてる。戦場写真で水のかかる作業中のドイツ兵が履いてる黒いパンツがそれ)を着て遠い目をしていた。

 目の前ではルッキーニとシャーリーが飛び込んだり、ハルトマンとバルクホルンが泳いでいたり、エイラとサーニャが日焼けを気にする平和な光景があった。

 だが2人の脳内は泳げないのに訓練というどう考えても悲劇か喜劇しか待ち受けていない現実でいっぱいだった。

 

ハインツ「頼むから泳げないと言う事実とこの後くだらない訓練だと言うことを忘れさせてくれ。」

 

ミラー「無理ですよ。ノヴァクはもう覚悟決めてるみたいですし。」

 

坂本「よし、ハインツ、ミラー来い。」

 

ハインツ「はぁ…はーい。」

 

 2人が坂本に呼ばれて行くとそこにはユニットを履いた状態のリーネ、宮藤、ノヴァクがいた。

 

ミラー「で?何するんですか?」

 

ハインツ「まさかとは思うがユニット履いたままドボーン?」

 

坂本「そのまさかだ。」

 

ハインツ・ミラー「「え?」」

 

 その瞬間2人は回れ右して逃亡しようとする。だが、坂本の横にいるミーナの謎のダークオーラに蛇に睨まれた蛙のように動かなくなった。

 そしてそのまま無理やりユニットをつけられた。

 

ハインツ「あのー。私泳げないんですけど…」

 

坂本「大丈夫だ。そのうち泳げるようになる。」

 

ミラー「まず海に入ること自体初めてなんですが…」

 

ミーナ「大丈夫よ。だいたいみんな最初はそう言うものだから。」

 

ノヴァク「まず犬かきすらできません。」

 

坂本「つべこべ言わずさっさと飛び込め!」

 

「「ギャー!」」

 

 そう言うと5人は海に放り込まれた。

 リーネと宮藤がもがくがそこに全く泳げない3人が抱きついてそのまま沈んでいった。

 坂本とミーナはそれを見ていた。

 

坂本「…浮いてこないな」

 

ミーナ「ええ…それよりハインツさんたち大丈夫かしら?あの反応からしてかなりマズイ気がするのよ。」

 

 そしてその危惧は当たっていた。

 坂本は懐中時計を取り出すと時間を確認した。

 

坂本「やっぱり飛ぶようにはいかないか」

 

ミーナ「そろそろ限界かしら?」

 

 しばらくするとリーネと宮藤だけが浮いてきた。

 2人は浮いたり沈んだりを繰り返していた。

 

坂本「いつまで犬かきをやってるかー、こら。ペリーヌを見習わんか!」

 

ミーナ「ところでハインツさんたちはどこ行ったのかしら?」

 

 坂本がリーネと宮藤を叱り、ミーナがハインツたちがいないことに気がついた。

 その横をペリーヌが泳いできた、

 

ペリーヌ「まったくグブァ!」

 

 次の瞬間ペリーヌが何かに引っ張られて沈んだ。

 

ハインツ「グハ!死ぬ!助けてくれー!」

 

 ペリーヌに真面目に死にかけていたハインツが抱きつく。

 するとさらに宮藤とリーネが沈みミラーとノヴァクが現れ助けを求めた。

 この明らかにヤバイ反応にやっと危険だと気がついた坂本とミーナ、バルクホルンが3人を救出した。

 3人はそのまま浜辺に横にさせられた。

 

坂本「まさか泳げないと言ってたが本当に泳げないとは…」

 

ハインツ「次からは最初に4泳法教えてからにしてください…」

 

 そのまま3人は浜辺で海を見ながらタバコを吸ってリーネと宮藤の訓練が終わるのを見ていた。

 暫くすると宮藤とリーネがクタクタになって上がってきてハインツたちの横に倒れた。

 

宮藤「…もう動けない」

 

リーネ「私も…」

 

宮藤「遊べるって言ったのに…ミーナ中佐の嘘つき…」

 

シャーリー「すぐ慣れるさ」

 

 見上げるとシャーリーがいた。

 

シャーリー「まだ隣にいるのよりはマシだと思うよ。」

 

ハインツ「俺ら、さっき死にかけた。マジで。」

 

シャーリー「大丈夫か?」

 

ハインツ「多分大丈夫。だと思う。」

 

 シャーリーは死にかけたハインツたちに話しかける。

 

シャーリー「そう。それに、」

 

 シャーリーはそう言いながらリーネと宮藤の間に寝っ転がる。

 

シャーリー「こうやって寝てるだけだって悪くはない」

 

ハインツ「まあ泳げないとそれしかできなんだけどな。」

 

 シャーリーはそのまま両腕を広げて寝た。それを見てリーネと宮藤も両腕を広げて寝転んだ。

 

リーネ「お日様あったかい…」

 

宮藤「うん、気持ちいい…」

 

ハインツ「あー暇!泳げないとクソ暇!」

 

シャーリー「ハインツ、空気読めよ…」

 

ハインツ「だってクソ暇だもん。」

 

シャーリー「いやそれでも…」

 

 更に話を続けようとしたその時シャーリーが何かに気がついた。

 それにハインツの軍人としての勘がすぐに反応。魔導針を展開して索敵する。

 

シャーリー「敵だ!」

 

ハインツ「敵は一機、行くぞシャーリー!」

 

シャーリー「おう!」

 

 2人はすぐに立ち上がり基地に走っていった。

 それにリーネと宮藤は置いていかれた。

 すぐに基地から警報が鳴り響き他の隊員も動き始めた。

 

坂本「敵は一機、レーダー網を掻い潜って侵入した模様!」

 

ミーナ「っ、また予定より二日早いわね!」

 

坂本「誰が行く!?」

 

ミーナ「既にシャーリーさん達が動いているわ!」

 

 ミーナと坂本がネウロイの情報を得ていた頃、ハインツとシャーリーは基地の格納庫についていた。

 

ハインツ「シャーリー、俺が指揮する。」

 

シャーリー「了解!イェーガー機、出る!」

 

 シャーリーとハインツが出撃する。

 

宮藤「シャーリーさーん!うわぁ!?」

 

 滑走路に来ていた宮藤が2人が通り過ぎて倒れる。

 

リーネ「芳佳ちゃん、私達も!」

 

宮藤「うん!」

 

 さらに続いて宮藤とリーネが出撃する。

 その間、2人は上昇して地上からの指示を待った。

 

ミーナ『ハインツさん、聞こえる?』

 

ハインツ「中佐、聞こえますよ。」

 

ミーナ『敵は一機、超高速型よ。既に内陸に入られているわ。』

 

ハインツ「進路は?」

 

 ハインツが地上に敵の情報を求める。

 

ミーナ『方角はここから西北西、目標はこのまま進むと…』

 

ハインツ「ロンドンだな。俺たちが昔使ってたルートだ。

     シャーリー、お前の方が足が速い。先に行ってくれ。」

 

シャーリー「了解!」

 

 加速力や上昇力はあるが足の遅いMe410であるハインツはシャーリーに先行するように指示する。

 

---------

 

 その頃地上では完全な奇襲を食らった他のメンバーがミーナのところまで来ていた。

 完全な奇襲であったため出撃できたのはハインツ、シャーリー、リーネ、宮藤だけ。

 そのため残りは彼らがネウロイを撃破することを祈ることしかできなかった。

 するとルッキーニが気になることを言った。

 

ルッキーニ「あ~、シャーリー行っちゃった…まさかあのままなのかな…」

 

ミラー「あのままってどういうことですか?」

 

 すかさずミラーが聞く。

 

ルッキーニ「えっとね、夕べね。あたしシャーリーのストライカーをね…」

 

ミラー「は?」

 

 その話にミラーとミーナの態度が変わる。2人から恐ろしいオーラが出ていた。

 そのオーラに圧倒されてルッキーニの言葉が途切れる。

 

ルッキーニ「あの、なんでもないです…」

 

 そう言って振り返ると黒いオーラを出したミーナとミラーがいた。

 

ミーナ「続けなさい?フランチェスカ・ルッキーニ少尉?」

 

ミラー「どうしたんだい?ストライカーをどうしたんだい?」

 

 完全に目が笑っていない2人の笑顔にルッキーニは詰んだことに気がついた。

 そして話されたのは昨日シャーリーのユニットを破損させ、それを適当に直したと言うのだ。

 ユニットは非常に高い精度を要求される精密機械である。

 普通に考えれば飛行していること自体奇跡的だった。

 

---------

 

 そんなこともつゆ知らず、空ではシャーリーがものすごい勢いで加速していた。

 

ハインツ「ほぉすごい加速だなぁ…もう一キロも離されたよ。」

 

 割合呑気なこと考えていたハインツだったがシャーリーは不思議な感覚に襲われていた。

 

シャーリー(何だ?全然加速が止まらない。今日はエンジンの調子がいいのか?)

 

 シャーリーの脳裏にバイクで速度記録を叩き出した時のことを思い出す。

 彼女の耳にはノイズ混じりの無線は入ってこなかった。

 

シャーリー(この感じ…似てる…似てる…あの時と!)

 

 シャーリーはエンジンに魔力をあるだけ全て流し加速をかけた。

 

シャーリー「いっけえええええええええ!!」

 

 次の瞬間、爆音が響いた。

 

ハインツ「は?これってソニックブームじゃ…」

 

 それはソニックブーム、物体が音速を突破した際に発生する音。鞭のバチンという音もこの一種である。

 だがものすごい衝撃と音を出し、コンコルドがコケた理由の一つがこのソニックブームの騒音がアメリカ当局に止められ陸地では音速で飛べないというものだった。

 シャーリーは音がなくなり静かになった世界に驚く。

 

シャーリー(これは…私、マッハを超えたの!?これが超音速の世界…?)

 

 それに喜びバレルロールを始める。

 

シャーリー「すごい!すごいぞ!やった!私やったんだ!」

 

坂本『聞こえるか大尉!返事をしろ!』

 

シャーリー「少佐!やりました!私音速を超えたんです!」

 

 やっと無線が耳に届くが音速を突破したこと以外全てを忘れていた。

 

ハインツ『おいバカ!突っ込むぞ!』

 

 次の瞬間、ハインツの無線を聞いて前を見るとネウロイが目の前に来ていた。

 すぐにシールドをはるが激突、ネウロイは破片となって消えた。

 

ハインツ「あー、目標撃破。あとあのバカが音速を超えた。」

 

ミーナ『シャーリーさんは?』

 

ハインツ「多分、無事だと…あ、うんかなりヤバいぞおい。」

 

 すぐに双眼鏡でシャーリーを探し、見るとユニットが外れて落ち始めていた。

 すぐにハインツは全力で向かい海面ギリギリでキャッチしたのだが…

 

ハインツ「あー中佐?憲兵は呼ばないでください。」

 

ミーナ『へ?憲兵?』

 

宮藤「ハインツさん!シャーリーさん!きゃ!」

 

リーネ「きゃー!」

 

ハインツ「宮藤!リーネ!これは事故だ!偶然だ!」

 

 ハインツの手がシャーリーの胸に当たっていた。

 この後、ハインツはリーネと宮藤に事故だと弁明した。

 なお基地に戻っても弁明した模様。




ハインツは父親が仕事の都合で家にいないことが多いのと母親が全く料理できない、かと言ってお手伝いさん雇えるほど裕福じゃないという理由で祖母からみっちり料理を教えられたという設定です。

遊泳時の飲酒は危険ですので気をつけましょう(というかアルコール類は覚醒剤より危険性が高いらしい)
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