その日の夜、ハインツは自分の部屋にいた。
その部屋はいつもなら空き瓶やタバコの吸い殻で汚いのだがこの日はチリ一つ落ちていなかった。
そしてテーブルの上にはウィスキーとコップが二つ置かれていた。
部屋の主人のハインツは真ん中に置かれたテーブルの両側に置かれたソファーに座って誰かを待っていた。
しばらくするとドアがノックされた。
入ってきたのは昼間の体当たりで念のため医務室で検査を受け特に何もないことが確認されたシャーリーだった。
ハインツ「シャーリー、その…まあ座ってくれ。」
そう言ってシャーリーに着席するよう促す。
そしてシャーリーが向かいの席に座ると、
ハインツ「昼間はすいませんでした!」
ハインツは向かいの席に座ったシャーリーに土下座した。
シャーリー「まあ私が指示無視して体当たりしたのが原因だから謝らなくて良いよ。
で、私の胸はどうだった?」
シャーリーはハインツに聞いた。
ハインツ「そのー柔らかかったです。ハイ。」
シャーリー「しっかり揉んでるなぁ…」
ハインツ「本当に申し訳ありませんでした!許してくださいなんでもしますから!」
ハインツはシャーリーにさらに謝る。
シャーリー「ん?今?なんでもするって言ったよね?」
ハインツ「あっ」
なんでもすると言ったことを揚げ足取られた。
シャーリー「じゃあ、」
ハインツ「じゃあ?」
シャーリー「じゃあ毎日あれ、作ってよ。」
ハインツ「あれ?」
シャーリーはハインツにあれを毎日作れと言ってきた。
あれがわからないハインツは聞き返す。
シャーリー「あれだよ。グラなんとかってやつ。」
ハインツ「グラシュか?」
シャーリー「そうそれ。あれ美味いんだよね。気に入ったんだ。」
ハインツ「まあそのぐらいなら良いぞ。」
シャーリーの要求はハインツのグラシュを毎日作って欲しいと言うものだった。
本人からすれば大したことのない事だったのですぐにOKを出した。
シャーリー「それと…賭けのこと覚えてる?」
ハインツ「賭け…あっ…」
音速を超えれるか否かの賭けの話になる。
この賭けはハインツの負けだった。
ハインツ「で、でもこれでおあいこに…」
シャーリー「なるわけないでしょ。」
ハインツ「デスヨネー」
必死で逃れようとするが約束した以上どうしようもなかった。
シャーリー「それじゃあ…私に料理教えてよ。」
賭けの代償は料理を教えてくれと言うものだった。
ハインツ「別に良いけどさ、なんで料理なんだ?」
シャーリー「そりゃあ、お前に私の手料理いつか食べてもらいたいからね。」
ハインツ「え?」
シャーリーのその言葉にハインツは目を丸くする。
なにせ解釈の使用によっては好きだと告白している言葉であった。
ハインツ「シャーリー、今お前なんて言った?」
シャーリー「え?…あっ…」
どうやら無意識で言っていたようで顔を真っ赤にして俯く。
ハインツ「へぇ、お前俺のこと好きだったんだ〜へ〜」
シャーリー「頼む、この通りだから忘れてくれ!」
シャーリーは両手を合わせて忘れてくれるよう頼む。だが、
ハインツ「残念でした!お前の口滑らしたシーン記憶しちゃったもんね!」
よく見るとハインツに使い魔の耳が生えていた。
それでさらに顔を真っ赤にする。
シャーリー「もぉやめてよぉ…恥ずかしいんだからさ…」
涙目でハインツの方を見る。するとテーブルにウィスキーの瓶があることに気がつく。
するとそれを取って栓を開けた。
ハインツ「へ?シャーリー?何する気だ?お、おいそれやめろー!」
ハインツが叫んだ。
なにせシャーリーがウィスキーを瓶ごとラッパ飲みし始めたのだ。
そしてそのまま全部飲んでしまった。
飲み終わった頃にはシャーリーの目は酔っ払ってトロンとしていた。
シャーリー「ハインツ。私のこと、どう思ってるの?」
今にも泣き出しそうな声で聞いてきた。
ハインツ「どうって…まあそのあれだあれ」
シャーリー「どうせ胸が大きいとか尻が大きいとか考えてるんでしょ?」
ハインツ「まあそのぉ…否定できない部分があることは認めます。」
ハインツはシャーリーの質問に正直に答える。
それを聞いてシャーリーは悲しげな声で言う。
シャーリー「私ってさ胸とかあるじゃん。
他の人はあるだけ良いでしょって言うでしょ、でも私からすればそれだけ?
私は胸とか抜けば何も残らないの?ハインツだってそう思ってるでしょ。」
ハインツ「シャーリー…」
シャーリー「ハインツと出会うまではそんなこと少しも思ってなかった。
実はさ、私、ハインツに一目惚れしたんだよね。
ハインツが気が付かなかったってことは相当上手く隠してたんだなぁ。」
シャーリーがハインツに告白する。最後の方にはいつものような笑顔で話していた。
シャーリー「でもさ、ハインツ、エイラと仲いいでしょ。
それに料理作ってくれた時に料理のできない女とは結婚したくないって言ったよね。
私は料理も何も家事もできないからさ、それで私は料理を習いたかった。
いつかハインツの奥さんになるために。」
ハインツ「シャーリー…お前そんなこと考えてたのか…」
シャーリー「ああ、だって私にはハインツが初恋だからね。
ハインツ、いつか、私を嫁さんに貰ってください。
ダメかな?」
その話にハインツはふっと笑うと、
ハインツ「ダメだな。まず料理、家事、洗濯が出来てない。その上書類は適当。
とてもじゃないが俺の嫁さんにはできんな。」
ハインツの話にシャーリーの顔が暗くなる。
ハインツ「それに俺は軍人、お前も軍人、いつ、どっちが先に死ぬか分からん。
故郷に恋人、妻、婚約者を残して戦死したやつを大勢見てきた。
俺はそんな不幸を味わいたくないし味合わせたくない。それにもうちょっと遊んでいたい。
それでも良いなら、もう一度出直して来い。今度は俺が料理を教えてからな。」
最後の言葉にシャーリーの暗かった顔が一気に明るくなった。
シャーリー「え?それって…良いってことなのか?」
ハインツ「まあ、その、あれだ。来るもの拒まず去る者追わずだ。
ただし、付き合うわけじゃない。第一恋愛関係はご法度だ。
俺に片思いしてても構わんが俺が何しようが何も言うな。俺もお前が別の男と付き合おうが知ったこっちゃない。」
照れ隠しで頭を掻きながらハインツが言う。
それにシャーリーは一気に笑顔になるとそのままハインツに抱きついた。
シャーリー「ありがとう!ハインツ!じゃあ早速明日から教えてくれよ!」
ハインツ「おま、キツイ!痛い!てか明日の朝まで覚えてるのか?」
シャーリー「だーいじょうぶ。一度バーボンの瓶3本一気飲みしても前の日の記憶残ってたし!」
ハインツ「はぁ?俺ですらウィスキー2本飲んだら寝落ちするぞ!
まさかお前酒乱癖あるんじゃ…」
シャーリー「え?私あんまり酒は飲まないからさ!大丈夫だよ。」
すっかりシャーリーもハインツも元の調子を取り戻し明るい声が戻った。
2人はこのまま日付が変わる頃まで酒宴を繰り広げ、あまりのうるささにミーナがやって来ると逆に酒宴に巻き込むほど飲みまくったのだった。
なお翌朝、食堂のキッチンでシャーリーと酒宴の中で巻き込まれたミーナがハインツから料理を教わって朝食を作っていた光景があった。
こういう回を一度書きたかった…
割と話は行き当たりばったりでやってるんで唐突かもしれんがそれでも構わん。