翌朝、ハインツはいつも通り起きたが昨夜のことはあまり覚えていなかった。
ハインツ「あー頭がいてぇ…あ中佐おはようございます。」
廊下を歩いているとミーナを見つけて声をかける。
ミーナ「え…ああハインツさん、おはよう。ところで昨日のこと覚えてるかしら?」
なぜかよそよそしく返事をする。
ハインツ「今日から夜間哨戒するとこまでしか覚えてねえ…」
ミーナ「そ、そう。仕事は全部私がするから安心して。」
ハインツ「そうですか。」
ハインツは気づかなかったがミーナの態度はどことなくぎこちなかった。
ミーナ(いくら酔っていたとはいえ公衆の面前であんな事するなんて…本人の記憶にないのが唯一の救いね)
ミーナはそんな事を思っていた。
何をやらかしたか?酔っ払い仕事の話が片付くとエイラとミーナを口説き始めた。
それをバルクホルンとシャーリーに殴られ気絶、そのまま自分の部屋に放り込まれた。(なおミラーは流石にここまで行くと助ける気などなかった。)
そのためこの日一日中ウィッチ全員から余所余所しい態度を取られた。
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ペリーヌ「あら、ブルーベリー。でもどうしてこんなに?」
朝食後、ペリーヌが食堂に積まれたブルーベリーが山ほど積まれた籠に気がついた。
それに籠を持ったリーネが話す。
リーネ「私の実家から送られてきたんです。ブルーベリーは目にいいんですよ?」
この山のようなブルーベリーは全てリーネの実家から送られたものだった。
バルクホルン「確かに、ブリタニアでは夜間飛行のパイロットがよく食べるという話を聞くが…」
ノヴァク「そんな話聞いたことあるな。リーネ、ブルーベリー少しもらえるか?」
ブルーベリーに含まれるアントシアニンが目にいいと言うのは科学的には証明されているがそのプロセスは未だに解明されていない。(マジ)良いと言っても抗酸化作用で疲労を抑える方向らしいが。
そのため日本では保険は効かないがヨーロッパなどでは代替医療の一つとして認可されている。
ちなみにこの話が広まったのは大戦中に英軍がレーダーの存在を隠すためにプロパガンダで夜戦パイロットはニンジンやブルーベリーを食べていると流したのが原因である。ニンジンは真っ赤な嘘だが。
リーネ「良いですけど。何に使うんですか?」
ノヴァク「紅茶に入れるジャム作ろうと思ってさ。」
バルクホルン「あの飲み方は悪くないからな。」
ポーランドでは(というかロシア含めた東欧では)ベリー系のジャムが主流である。
そしてロシアンティーの定番はベリー系のジャムである。
そのためこんなにあるならジャム作ってもいいだろうと考えたのだ。東欧ではジャムは自家製造なので作った経験もあった。
その後ろでは、
ルッキーニ「芳佳、シャーリー!ベ~して、べ~!」
宮藤「こう?」
ルッキーニが宮藤とシャーリーに舌を出すようにねだり三人が揃って舌を出すと舌はブルーベリーで紫だった。
それを見て三人が笑いあっているのを横目にペリーヌはナプキンで口を拭いていた。
ペリーヌ「まったくありがちなことを……」
エイラ「お前はどうなんだ?」
ハインツ「お前も人のこと言えねえな。うん。」
そこにこっそりと後ろから近づいたエイラが無理やり口を開けるとペリーヌの口の中が紫一色に染まっているのが曝け出された。
それをほとんど同じぐらい口の中が紫のハインツが見て笑っていた。
ハインツは前線での経験から食える時にとにかく食うため全員の中で一番食べていた。
そんなことをしているとタイミングよく坂本が通りかかった。
そしてペリーヌの歯を見ると、
坂本「…何事もほどほどにな」
そう言って立ち去っていった。
ペリーヌは半泣きになりながら三人に詰め寄る。
ペリーヌ「な、なんてことなさいまして!エイラさん!ハインツさん!」
エイラ「なんてことないって」
ハインツ「俺なんてとばっちりじゃねえか。全部こいつのせいだろ。」
なぜかとばっちりでハインツも怒られていた。
その横でサーニャとミラーは静かにブルーベリーを食べていた。
サーニャ「美味しい…」
ミラー「これのソースをカイザーシュマーレンにかけたら美味しいだろうなあ。」
リーネ「今度作りましょうか?ブルーベリーはまだたくさんありますし。」
カイザーシュマーレンはオーストリアの菓子で皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が好んだことでも知られる菓子で引き裂いたパンケーキに果物のコンポートを添えたものである。
ミラーはこれが好きだった。そのため自分で作ろうとしたが料理の腕が伴わないため最近ではリーネに頼んでそれっぽいもの(パンケーキを裂いたものにジャムをかける)を作ってもらっていた。
なおハインツは普通に作れるしたまにパラチンタ(パンケーキで作ったクレープ擬き)作って食ってる。
坂本「さて、朝食が済んだところで…」
あらかた朝食が済むと夜間専従班の方に向き直った。
坂本「お前たちは夜に備えて寝ろ!」
「「了解」」
ハインツ「りょーかーい。それじゃあおやすみー」
4人は返事すると自分の部屋に戻っていった。
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ハインツ「もう蜂蜜はいいからさぁ…「夕方だぞ~おっきろー!」ファ?ああ時間か…
あー寝た。二日酔いも抜けたみたいだし絶好の夜間飛行日和だな。」
その日の夕方、ハインツは昼寝しながら昼寝しようと忍び込んだハルトマンを窓から放り投げたり、廊下に投げたら、寝ぼけながら本投げたり、ダーツ投げたり、ナイフ投げたり、トマホーク投げたりしていた。そのせいでドアにはトマホークが刺さったままだった。
なお全部ウルトラCな方法で回避されたりして最終的に騒ぎに気がついたバルクホルンに投げてそのまま寝た。
ハインツはそのまま起きて食堂に入り眠気覚ましにコーヒー(豆)を飲もうとしたが部屋に入ると紅茶を出された。
ハインツ「なにこれ?コーヒーある?豆の方。代用出したら殺すぞ。」
宮藤「これは?」
ハインツが脳内ではコーヒーだったのに紅茶(らしきもの)を出されて不機嫌になる。
宮藤も出された紅茶(らしきもの)が分からず聞く。
ペリーヌ「マリーゴールドのハーブティですわ!これも目の働きを良くすると言われていますのよ」
ハインツ「あ、なるほど。なら俺はパスで。すでに持ってるし。」
それにペリーヌが答えるとハインツはポッケから小瓶を取り出す。それにはアダプチノールとカールスラント語で書かれていた。
アダプチノールは第二次大戦中にイギリスの「ブルーベリーは目にいい」というプロパガンダを真に受けたドイツがマリーゴールドから抽出することに成功した物質、ヘレニエンを配合した暗順応改善薬である。
本来医薬品であるため厳格な規則が設けられているはずだがハインツは基地の軍医からポーカーで一瓶巻き上げていた。
リーネ「あら?それって民間伝承じゃ?」
ペリーヌ「失敬な!これはおばあ様のおばあ様のそのまたおばあ様から伝わるものでしてよ!!」
リーネ「う、ごめんなさい」
リーネに迷信と指摘されペリーヌが怒る。
それを横目に宮藤はハーブティーを飲む。
宮藤「山椒みたいな匂いだね?」
リーネ「山椒?」
宮藤が感想を言うがリーネは山椒が何かわからない。
ルッキーニ「芳佳、リーネ、もっかいべ~して」
するとルッキーニがひょっこりと現れて下を出すようにせがむ。
二人が舌を出すが舌は特に変わっていなかった。
ルッキーニ「つまんな~い!つまんない!ないないないない!つまんない!」
それを見てルッキーニが騒ぎ始める。
さらに、
ノヴァク「なんというか…俺の知ってるハーブティーじゃない…
絶対どこかで作りかた間違えてるか違うもの入れてるぞ…」
ミラー「こんなまずいハーブティーが存在したとは…」
ハインツ「怖いもの見たさで飲んでみたが端的に言ってクソマズイ。
今度淹れ方教えようか?」
自重とか遠陵なくハーブティーを3人がボロクソに批評する。
言葉を選ぶといったことを全くせずに言ったためペリーヌは完全に落ち込んでいた。
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夜間飛行、ひいては盲目飛行というのは非常に難易度の高いことである。
特に計器飛行という能力はパイロットの中でも特に難易度の高い能力である。
パイロットは計器の飛行姿勢が如何に自分の感じている姿勢とはかけ離れていてもそれを信じて機体をコントロールしなければならないのである。
人間は平衡感覚を重力、内耳の中で流れるリンパ液、そして視界で判断する。
この三つは地面の上や天気が良く水平線が見える状況では特に問題はないが夜間など水平線が見えない状況では視界の中の基準が見つからず視界の中の姿勢と内耳の中の姿勢が一致しないことが発生する。
これを空間識失調という。
空間識失調に陥ったパイロットの操縦を例えるならスイカ割りのような感じである。自分の中でまっすぐ進んでいても実際にはあらぬ方向に進んでいるそのような感じだ。
空間識失調が恐ろしいのは飛行経験が浅いパイロットだけでなく時にベテランの、戦争で実際に戦果を挙げたエースや元戦闘機乗りでさえ陥ることがあるのだ。
例えば2004年にエジプトのシャルムエルシェイク沖で起きたフラッシュ航空604便墜落事故では第4次中東戦争で実際に戦ったパイロットだった機長が空間敷失調に陥りその上で
そのほかにも1999年イギリスのロンドン・スタンステッド国際空港を離陸した大韓航空8509便貨物機が機長の空間識失調と
さらには2007年のアダム航空574便、2010年のエチオピア航空409便、1985年の中華航空006便など多くの事故で直接的間接的にせよ原因の一つとなっている。
現代の非常に安全な旅客機ですら起きる可能性があるのに1940年代の飛行機で起きる可能性は比べ物にならないほど高い。
そのため当時の計器飛行の免許はトップクラスの難易度を誇る難関だった。
有名なのがドイツ軍のC2飛行免許。盲目飛行に習熟しているという資格でありハインツも持っていた非常に難易度の高いものだった。
クソみたいなマリーゴールドティー(擬き)を飲んだ後4人は夜の滑走路にいた。
滑走路には規定通りに誘導灯が一直線に並んでいた。(ちなみに誘導灯がついてる=安全ではなく稀にこのライトの海に飛行機のライトが紛れ込み滑走路上で衝突することがある。USエア機がLAXでウィングスウェスト機と衝突した事故がその例)
そもそも夜間視能力を持っていたハインツはなぜかパイプタバコを吸っていたが全く慣れてない宮藤は怯えていた。
宮藤「あっ…震えが止まんないよ」
サーニャ「何で?」
宮藤「夜の空がこんなに暗いなんて思わなかった」
エイラ「夜間飛行初めてなのか?」
サーニャ「無理ならやめる?」
ハインツ「早い事出たいんだが?なんだったら置いてくぞ。」
エイラとサーニャが心配するがさっさとくだらない任務を終わらせて寝たいハインツはイライラしていた。
宮藤「…て、手つないでもいい?サーニャちゃんが手を繋いでくれたら、きっと大丈夫だから」
それを聞いてサーニャの魔導針が赤くなり使い魔の尻尾が揺れていた。
サーニャが宮藤の手を繋ぐとエイラはそれが面白くないのか反対側に回り手を繋いだ。
エイラ「さっさと行くぞ!」
ハインツ「んじゃあ用意できたと言うことで俺を先導に行きますか。」
そう言ってハインツが先頭に、続いて宮藤たちが離陸した。
4人は数分後には雲の上に来ていた。
星空が綺麗なことに気がついたハインツが冗談めかして言う。
ハインツ「ようこそ夜の空へ。一面綺麗な星空と明るい月は見放題。
ただしサービスは一切ございません。
また途中下車および団体行動から外れますと当方は一切の責を負いません。
では快適な空の旅をご堪能ください。」
それを聞いて3人が笑う。
結局この日はネウロイに会うこともなく快適な空の旅を過ごしたのだった。
話の都合上ペリーヌの扱いが雑な件。
別に作者が嫌いなわけではない。むしろ好きですよ?