その点WOWSは仏戦出ただけで特に変わらねえ。
ハインツが自身の戦争体験を語った後、3人の表情は暗かった。
3人とも現代人のように”人間同士で殺しあう“世界に慣れてないためショッキングすぎた。
話した本人であるハインツですら流石に不味いと思うほど空気が重かった。
空気を換えようとハインツが宮藤に話しかける。
ハインツ「そういや宮藤、お前今日誕生日だよな?」
宮藤「え?何で知ってるんですか?」
ハインツの質問に驚く宮藤。
ハインツ「なんでって…お前らの書類管理してるの俺だぞ。その中にはお前の履歴書もあるんだからさ。」
エイラ「なんで黙ってたんだ?」
エイラが宮藤に質問する。
宮藤「でもこの日はお父さんの命日でもあるの…それにハインツさんの話もあったし…」
それを聞いてハインツとエイラが溜息をつく。
ハインツ「バカだねえ、宮藤。」
エイラ「こう言う時は楽しいこと優先したっていいんだぞ。」
宮藤「そうかな?」
ハインツ「ああ。お祝いに一杯どうだ?なに遠慮するな。」
そう言ってハインツがポッケから金属の水筒を出し宮藤に渡す。
宮藤は蓋を開けて飲むが口に強烈なものが流れ込みすぐに吐き出す。
宮藤「ぷっ!ハインツさん!これなんですか!?」
ハインツ「あー勿体ねえ…それハイランドコーヒーだぜ。
せっかく入手したブルーマウンテンで淹れたコーヒーにバランタインを入れた高いやつなんだからさぁ…」
エイラ「なに未成年に酒飲まそうとしてるんだよ!」
ハインツの話を聞いてエイラがハインツに突っ込む。
ハインツが宮藤に飲ませたのは眠気覚まし用に夜間哨戒時に用意していたハイランドコーヒー(スコッチウィスキーにコーヒーを混ぜたもの)だった。
その光景を見て宮藤が笑っているとサーニャが近づき何かをいじった。
すると何か聞こえることに宮藤が気がついた。
宮藤「あれ?何か聞こえる」
ハインツ「こりゃあ…」
エイラ「…ラジオの音」
インカムに流れてきたのはラジオの音だった。
サーニャ「夜になると空が静まるから、ずっと遠くの山や地平線からの電波も届くようになるの」
ハインツ「まあ俺も普段はやってるんだがな。」
2人の話を聞いて宮藤は興奮してはしゃぐ。
宮藤「へええ、すごいすごい!こんな事が出来るなんて!」
その横でエイラが静かにサーニャの横に行く。
エイラ「三人だけの秘密じゃ無かったのかよ」
サーニャ「ごめんね。でも、今夜だけは特別」
ハインツ「まず秘密だったのかよ…」
エイラ「それどう言う意味だよ!」
ハインツ「この裏技ミラーにも教えたぞ。リーネも確か最近使ってるはずだし。」
エイラ「勝手に教えんなー!」
ハインツの発言にエイラが突っ込む。
それを見てサーニャと宮藤が笑う。
ハインツ「まあまあ、今日は特別なんだから良いじゃない、ね?」
エイラ「ちぇ、しょうがないなぁ…」
そう言ってエイラはハインツを許す。
その反応が気になった宮藤はサーニャに聞く。
宮藤「えっ?どうしたの?」
するとその間にエイラが割り込む。
エイラ「あのなっ、今日はサーニャの…」
次の瞬間、サーニャとハインツの魔導芯が赤くなる。
エイラ「どうした!?」
すると今度は無線から謎の音が流れてきた。
エイラ「何だ!」
宮藤「これ、唄だよ!」
ハインツ「唄ならもうちょっと上手く唄ってほしいもんだな。
サーニャをパクってる割にはヘタクソじゃねえか。」
その音は声に近かった。
そしてその音程はサーニャの唄に近かった。
宮藤「どうして?」
エイラ「敵か!?サーニャ!ハインツ!」
宮藤「ネウロイなの?どこ!?」
エイラ「どこにいるんだ!?」
エイラと宮藤は状況の分かるハインツとサーニャに聞く。
サーニャ「三人とも避難して!!」
ハインツ「は?何言ってんだ?」
サーニャの意図が分からずハインツが聞き返したその時、サーニャは急上昇し始めた。
ハインツ「サーニャ!来るぞ!」
宮藤「あっ!?」
未来予知が限定的ながら使えるハインツがサーニャに警告し宮藤が声を上げた瞬間、赤いビームがサーニャめがけて飛んできた。
ビームはサーニャのユニットを掠め左のユニットを吹き飛ばし、サーニャはバランスを崩し落ちていく。
エイラ「サーニャ!!」
落下していくサーニャを加速力と急降下性能が最も良いハインツがキャッチする。
ハインツ「ふー。大丈夫か?怪我は見たところないみたいだな。」
サーニャをキャッチし怪我がないか確認する。
サーニャ「敵の狙いは私……間違いないわ。私から離れて……一緒にいたら……」
ハインツ「リトビャク中尉。君は何の筋合いがあって言ってるんだ?」
サーニャ「え?」
震える声で逃げるように言うサーニャに向かってハインツがいつもの冗談交じりの声とは違う冷静な声で言う。
普段のサーニャ呼びではなく苗字に階級を付けた軍隊的な呼び方だった。
ハインツ「君はなんの筋合いがあって言ってんだ?君の階級は?中尉だ。それじゃあ俺の階級は?少佐だ。
俺の方が偉い。つまり貴官には俺の命令に従う義務がある。
君も一端の士官ならそのぐらい分かるだろう。」
エイラ「ハ、ハインツ?」
ハインツ「それに戦略の大原則とはなんだ?答えろ!」
普段とは違う怒り混じりの声だった。その迫力にサーニャはおろか仲のいいエイラでさえ驚く。
サーニャ「せ、戦力の集中、各個撃破…」
ハインツ「そうだ。ナポレオンはおろかスキピオとハンニバルの時代から変わらない大原則だ。
君はこの大原則を破るのかね?戦力の分散は愚の骨頂だ。士官学校でそう習っただろ。」
戦略の大原則に戦力の集中と各個撃破というものがある。
常に戦力は集中して運用し敵を各個撃破する。スキピオの時代から変わらない大原則である。
ハインツ「よろしい。ならば今我々にできる選択は?あのクソッタレを落とすかクソッタレに落とされるかクソッタレと戦う前に逃げる。
戦わずして逃げると言うのは軍人らしくない。そうだろ?ならば簡単だ。クソッタレを落として基地で祝杯をあげる。なに、簡単なことだ。
エイラ、宮藤、俺とサーニャが位置を指示する。俺が援護、エイラはサーニャの指示に従いフリーガーハマーを使え。
宮藤はサーニャを支えろ。
分ったなら今すぐ動け!敵さんは待ってくれんぞ!」
ハインツは声を普段の調子に戻すと即座に作戦を指示した。
指示に従いエイラがフリーガーハマーを受け取り宮藤がサーニャを支える。
それを見たハインツは、
ハインツ「それじゃあ、諸君!ショータイムだ!」
次の瞬間、ハインツの4門のMG151が火を噴く。
ハインツ「サーニャ、奴に当てたぞ。エイラ、次だ!」
弾が直撃しネウロイはハインツに向かってビームを乱射する。
ハインツはそれを回避する。
それを横目にサーニャとエイラは迎撃準備を整える。
サーニャ「…ネウロイはベガとアルタイルを結ぶ線の上をまっすぐこっちに向かってる。距離約3200…」
エイラ「こうか?」
サーニャの指示を聞いてフリーガーハマーを構えるエイラ。
サーニャ「減速してる。もっと奥を狙って…そう、後3秒」
エイラ「当たれよ!」
サーニャの指示で修正後三発発射し爆発する。すると爆発した方向からビームが撃たれる。
それを4人は回避する。
エイラ「外した!?」
サーニャ「いえ、さらに速度が落ちたわ!ダメージは与えてる…戻ってくるわ!」
エイラ「戻ってくるな!」
更にロケット弾を発射する。だがネウロイはそれを回避する。
宮藤「避けた!」
ハインツ「ならこいつを喰らえロクデナシ!」
それを見たハインツがMG151を撃ちまくる。
これをまともに食らったネウロイは悲鳴と爆炎をあげながら雲から出てきて4人に向かって突進する。
エイラ「これでどうだ!」
ハインツ「さっさと死ねゴミ野郎!」
それを見たハインツとエイラは機関砲とロケット弾を撃ち込む。
単体で強力なロケット弾と一発の威力が強烈で普通のナイトウィッチの4倍の火力を持つハインツの雲の中への不正確な射撃とは違う正確な、それも魔眼を使い朧気ながらコア周辺を的確に狙った攻撃にネウロイは正面から粉砕されていきとうとうコアを露出させた。
そしてそれを見ていたサーニャも背中にかけられた13ミリ機銃を使い撃つ。そしてその弾はコアを破壊しネウロイは白い破片とかした。
ハインツ「ふう。くたばったか。」
それを見たハインツは機関砲を下ろすとポッケからパイプタバコとマッチを取り出し火をつけて吸い始めた。
するとその耳に何かが入ってきた。
エイラ「…まだ聞こえる」
宮藤「なんで?やっつけたんじゃ…」
ハインツ「いや、違うぞ。しかし、なかなかこう言うのも悪くはないな。」
エイラと宮藤は混乱するがハインツは落ち着いていた。彼にはこの音の心当たりはないが少なくとも敵ではない事は分かっていた。
そしてサーニャはこの音に心当たりがあった。
サーニャ「これ…お父様のピアノ…」
そう言ってサーニャは片方が完全になくなったユニットで上昇する。
宮藤「そっか!ラジオだ!この空のどこかから届いているんだ!すごいよ!奇跡だよ!」
宮藤は奇跡だと言ってはしゃぐがハインツとエイラは首を振った。
ハインツ「奇跡なんかじゃねえぞ。」
宮藤「えっ?」
エイラ「今日はサーニャの誕生日だったんだ」
宮藤「そうなんですか?」
ハインツ「ああ、書類が偽造でなければ本当だ。まあ正確には昨日だな。日付変わってるし。」
宮藤「え…じゃあ私と一緒?」
腕時計を確認したハインツが付け足す。
エイラ「サーニャのことが大好きな人なら、誕生日を祝うなんて当たり前だろ?
世界の何処かにそんな人がいるんなら、こんなことだって起きるんだ。奇跡なんかじゃない」
ハインツ「それに家族っていう生き物は口に出さなくても離れていても心配するものだろ?
俺だって父さんや弟のリヒャルトのこと心配してるんだぜ?」
宮藤「エイラさんとハインツさんって優しいですね。」
ハインツ「やめてくれ。そう言うのは柄じゃない。」
エイラ「そんなんじゃねえよ、バカ」
宮藤「ば、ばかって…」
宮藤に優しいと呼ばれ照れる2人。
ふと見上げるとサーニャが綺麗な満月をバックに飛んでいた。
サーニャ「お父様、お母様、サーニャはここにいます…ここにいます」
すると宮藤が声をかけた。
宮藤「お誕生日おめでとう!サーニャちゃん!」
サーニャ「貴方もでしょ」
宮藤「へっ…?」
サーニャ「お誕生日おめでとう、宮藤さん」
エイラ「おめでとな」
ハインツ「おめでとう。で、2人ともいくつに…グフ!」
エイラ「レディーに年齢聞くのはアウトだろ!」
しれっと年齢を聞こうとしたハインツにエイラが腹パンする。
それをまともに喰らい悶絶する。それを見て2人は笑っていた。
ハインツ「エイラ…痛いよ…もうちょっと手加減をしてください…」
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翌朝、食堂にはなぜか大きなブルーベリーがトッピングされたチーズケーキがあり、その上には「HAPPY BIRTHDAY」と書かれたプレートが置かれていた。
宮藤「えっと…」
サーニャ「これって…」
エイラ「チーズケーキ?」
するとキッチンからノヴァクとバルクホルンが出てきた。
ノヴァク「ああ、それか?サーニャと宮藤とミラーにもだよ。」
宮藤「え?ミラーさんもですか?」
ミラー「まあね。正確には19日だから今日だけど。」
ノヴァクの言ったミラーにもと言うことが分からず聞き返すと後ろからバイオリンを持ったミラーが出てきて話した。
ミラーの誕生日は宮藤たちの翌日、8月19日である。
シャーリー「お、ニューヨークチーズケーキか?」
ノヴァク「セルニックだ。ポーランドの伝統的な菓子だよ。まあ今回は少しアレンジさせて貰ったが。」
ノヴァクが作ったのは世間一般で言うところのニューヨークチーズケーキ、ポーランド南部発祥の伝統的なお菓子セルニックをアレンジしたものだった。
ノヴァクはポーランド北部出身だが母がポーランド南部のクラクフ出身だったためこのお菓子の作り方を知っていた。
ハインツ「まあ今日は無礼講だ!みんな!こいつらの誕生日を祝って盛大に騒ぐぞ!ご馳走と酒は早い者勝ちだ!」
最後にハインツが両手にビール瓶を足元にビール樽を置いて大声で叫んだ。
それを合図にウィッチ達が騒ぎ始める。軍人という生き物はいつ死ぬかわからないからこそ目の前で楽しめるものは全力で楽しむ生き物である。
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数時間後…
ハインツ「もっと酒もってこい…」
ミーナ「なんでどいつもこいつも仕事を手伝わないのに仕事ばかり増やすのよほんと分かってるの…」
坂本「ワッショーイ!」
ノヴァク「zzzzzz」
ミラー「酷い…」
宮藤「あのー…」
エイラ「サーニャ見るな!」
サーニャ「え?エイラ?何?」
バルクホルン「お前ら…弛んでる…zzzzz」
ハルトマン「お芋♪お芋♪」
シャーリー「一体何が起きたんだろ…」
年長組の殆どが酒を飲みどんちゃん騒ぎの大宴会とかし、坂本はキス魔に、ミーナは愚痴を延々と吐き続け、ハインツは誰彼構わず口説き始め、ノヴァクとバルクホルンは割と早い段階で居眠りを始め、ハルトマンは芋の山に溺れていた。
オチは大人の醜態を晒すというもの…
おそらくここまで感動と美しさに程遠いストパン1期6話はないな
ちなみにアイリッシュコーヒーでは?と思った方に言いますがアイリッシュコーヒーの正確なレシピはクリームとか入れなければならないしこのカクテルができたのは大体40年代のアイルランド、フォインズ水上飛行場、現在のシャノン空港です。なのでこの時代にはあまり一般的ではないので彼は知りません。
ハインツの弟の名前のモデルはリヒャルト・フライヘア・フォン・ローゼン(1944年7月グッドウッド作戦時の第503重戦車大隊第3中隊中隊長)からです。
一応需要ないですがハインツのお父さんはハンス・ヴァレンシュタイン(ハンス・フォン・テッタウ大将から)です。