WWⅡウィッチーズ   作:ロンメルマムート

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ぶっちゃけ軍歌ネタのためにミラーはピアノできるようにしただけ。



第23話:軍歌と規則

ミラー「ねえリーネ。これ使えるの?」

 

 ある日のこと、ふとミラーはずっと談話室に置かれていたグランドピアノに興味を持った。

 

リーネ「ええ、確か使えるはずですよ。弾けるんですか?」

 

 質問に答えたリーネは弾けるのか聞く。

 

ミラー「まあね。それほどうまくないし数年ぶりに弾くから覚えてるかな?」

 

 そういうとミラーは椅子に座りピアノを弾き始めた。

 その旋律は少し高いがある曲にそっくりだった。

 しばらくすると弾き終わったのかミラーはリーネのほうを向いた。

 

ミラー「どうだったかな?久しぶりだったけど案外体は覚えてるものだね。」

 

リーネ「上手でした。でも少し変でした。そのカールスラント国歌。」

 

 リーネはミラーが弾いたのがカールスラント国歌だと思っていた。

 

ミラー「カールスラント国歌?いや、今弾いたのはオーストリア=ハンガリー帝国国歌『神よ皇帝フランツを守り給え』だけど。」

 

 ミラーが弾いたのはオーストリア=ハンガリー帝国国歌「神よ皇帝フランツを守り給え」だった。

 この曲はその旋律がドイツ国歌にも転用されていることでも知られている。

 そして筋金入りのハプスブルク家支持者であった彼はこの曲を暗記していた。

 

リーネ「へえ、そうなんですか。ほかの曲も弾けるんですか?」

 

ミラー「弾けないことはないかな。ちょっと部屋に楽譜取りに行ってくる。」

 

 ミラーは立ち上がりリーネを置いて自分の部屋に楽譜を取りに行った。

 ドイツ軍では軍歌の楽譜などは酒保で普通に売っているものである。ミラーはそれを買っていた。

 暫くするとミラーは手に楽譜の入ったファイルをもって帰ってきた。

 

ミラー「さてと、何を聞きたい?クラシックなら有名どころは大体あるし軍歌もそれなりにあるよ。」

 

リーネ「えっと…好きなのでいいですよ。」

 

 ミラーはリーネにリクエストを聞くがクラシックや軍歌に疎いのでミラーに任せた。

 

ミラー「そう言われるとなぁ…」

 

 リーネの何でもいいというお題にファイルの中の楽譜をあさっていいのがないか探す。

 するとある軍歌の題名が気になりその楽譜を取り出す。

 そしてそれを見ながら少しピアノをいじると、

 

ミラー「まあこれでいいかな。軍歌だけど結構いい歌だよ。」

 

 そういうとピアノを弾き始めた。そして歌い始めた。

 

ミラー「Im Wald, im grünen Walde,(緑なる森のうちに)

 

    Da steht ein Försterhaus(林務官の家がある)

 

    Da schauet jeden Morgen,(そこでは毎朝)

 

    So frisch und frei von Sorgen,(元気に溌剌と)

 

    Des Försters Töchterlein heraus,(林務官の娘が外を眺めてる)

 

    Ta-ra-la-la, ta-ra-la-la,

 

    Des Försters Töchterlein ganz frisch heraus,(ほんとに元気な林務官の娘が)

 

    Ta-ra-la-la, ta-ra-la-la,

 

    Des Försters Töchterlein heraus,(林務官の娘が外を眺めてる)

 

    Ta-ra-la-la, ta-ra-la-la,」

 

 歌っていたのはドイツ軍歌、ローレローレローレだった。

 ドイツ語(カールスラント語)だったためカールスラント語に疎いリーネには全く分からなかったが次の歌詞で赤面した。

 なぜならこの次は本来はローレローレローレと続くのだがミラーはそこを替え歌にしてリーネリーネリーネと歌ったのだ。

 一番だけ歌っただけだったがすっかりリーネは二人しかいないのに顔を真っ赤にしてミラーをぽかぽか叩いていた。

 

リーネ「ミラーさん!好きなのって言いましたけど恥ずかしいですよ!

    聞かれたらどうするんですか!」

 

ミラー「ごめんごめん。

    でも聞かれたところでノリでやったっていえば言いし、第一少佐以外僕たちが付き合ってること知らないでしょ?それに本当はちょっと嬉しかったりして。」

 

リーネ「まあそうですけど…恥ずかしいものは恥ずかしいんですから!」

 

 そう言って二人は笑いあった。

 そしてこのやり取りをミーナがドア一枚挟んで聞いていた。

 

ハインツ「あ、中佐。どうしました?」

 

 すると後ろからハインツがミーナに気が付き声をかけた。

 

ミーナ「あらハインツさん。どうしたの?」

 

ハインツ「ピアノの音が聞こえて気になって来てみた。

     中佐もそんな感じですか?」

 

 ハインツがミーナに聞く。

 

ミーナ「ええ、そんな感じよ。」

 

 ミーナは始めから聞いていたのを話さず答えた。

 

ハインツ「そうですか」

 

 そういうとハインツはドアを開けた。

 そこにはびっくりして振り向いたミラーとリーネがいた。

 

ハインツ「なんだ、リーネとミラーか。

     大方ミラーが弾いてたって感じか?」

 

ミラー「ええ、そんな感じです。何か弾きましょうか?」

 

ハインツ「それじゃあ、戦時報道中隊の歌を頼む」

 

 ハインツはドイツ軍歌「戦時報道中隊の歌」を頼んだ。

 

リーネ「戦時報道中隊の歌?」

 

ミーナ「それどういう歌なのかしら?」

 

ハインツ「まあ軍歌ですけど面白い奴ですね。」

 

 ミーナとリーネの質問に返すとハインツとミラーは歌い始めた。

 

ハインツ「We're going to hang out the washing on the Siegfried Line.

 

     Have you any dirty washing, mother dear?

 

     We're gonna hang out the washing on the Siegfried Line.

 

     'Cause the washing day is here.」

 

 ここまで歌うと口笛を吹き手元にあったものを叩いた。

 続いてさらに歌うが

 

ハインツ「We're going to hang out the washing on the Siegfried Line…

 

     スツーカ!スツーカ!

 

     We're going to hang out the washing on the Siegfried Line…」

 

 

 弱弱しくなっていった。

 すると今度は今までの曲調から変わってケーニヒスグレッツ行進曲が流れ始めた。そして今度はドイツ語で歌い始めた。

 

ハインツ「Ja, mein Junge, das hast du dir gar zu leicht gedacht

 

     mit dem großen Wäschetag am deutschen Rhein

 

     hast du dir auch deine Hosen tüchtig vollgemacht,

 

     brauchst du gar nicht traurig sein!

 

     Bald seifen wir dich gründlich ein

 

     von oben und von unten her

 

     wenn der deutsche Waschtag wird gewesen sein,

 

     Mensch, dann brauchst du keine Wäsche mehr!」

 

 その歌詞はドイツ語で連合軍兵士を冷やかす内容に変わっていった。

 戦時報道中隊の歌とはイギリスの軍歌僕たちはジークフリート線に洗濯物を干しに行くの替え歌だった。

 その歌詞にミーナとリーネは複雑な表情をしていた。

 この後ハインツは調子に乗りドイツ国歌とホルスト・ヴェッセルリートを歌い気が付けばウィッチたちが集まり、ホルスト・ヴェッセルリートを歌うとノヴァクが対抗してドンブロフスキのマズルカを歌った。

 

---------

 

 翌日、ハインツとミラーは中庭でタバコを吸っていた。

 赤城の艦長がきていたため普段なら屋内でタバコを吸っても問題ないのだがこの日は匂いや吸い殻の関係上、2人とも外で吸うしかなかった。

 

ハインツ「なんで今日だけ屋内全面禁煙なんだよ。」

 

ミラー「全くそうですよね。別に普段は屋内でも問題ないですし第一あの艦長だってタバコ吸ってるでしょ。」

 

ハインツ「だよな。」

 

 2人がタバコを吸っていると風が吹き一枚の手紙が飛んできた。

 それをハインツがキャッチし見る。そしてなんなのか分からず顔を見合わせていると宮藤と扶桑人らしき青年を連れてやってきた。

 咄嗟にハインツはキャッチした手紙をポッケに入れる。

 

ハインツ「よお宮藤。どうした?」

 

宮藤「あの、手紙飛んできませんでした?この人が私に渡そうとしたのが飛んできたはずです。」

 

 それがラブレターであり、この部隊ではラブレターは禁止であることを理解したハインツはある名案を考えついた。

 

ハインツ「ああ、それならあっちに飛んでいったぞ。」

 

宮藤「そうですか。ありがとうございます。」

 

 そう言うと宮藤はハインツの嘘を信じてその方向に走っていった。

 扶桑人の青年もそれについて行こうとするとハインツが呼び止める。

 

ハインツ「ちょっと君、いいかい?」

 

青年「はい、何でしょうか?」

 

ハインツ「この部隊さ、ラブレターとかこう言う手紙ダメなんだよね。」

 

 そう言うとハインツはポッケから手紙を取り出す。

 

青年「え、向こう飛んで行ったんじゃ…」

 

ハインツ「ああ、それは真っ赤な嘘。なに話しは簡単だ。

     取引といこう。君からならダメだが俺なら書類の一部として渡せる、そうだろ?

     そこでだ。君の手紙を俺が渡す、勿論お駄賃は貰うぞ。どうだい?悪くないだろ?」

 

青年「わ、分かりました。で、そのお駄賃は…」

 

 ハインツは青年に取引を持ちかける。

 

ハインツ「扶桑にはショウチュウなる酒があるんだろ?

     セイシュは飲んだことあるがショウチュウはまだでね。

     種類はいくつかあるらしいが全くわからない。

     とりあえず種類はなんでもいいからショウチュウ、できれば高いやつ一本で手を打とう。」

 

 ハインツはラブレターを渡す代わりに焼酎を求めた。

 それを聞いて青年はうなづく。それを取引成立と理解したハインツは握手する。

 

ハインツ「ではこれで取引成立。あ、わかってると思うが口約束も約束だ。

     証人もいるからお駄賃は忘れるなよ。」

 

ミーナ「何をしているのかしらヴァレンシュタイン少佐?」

 

 すると後ろからミーナの声が聞こえた。その声色には僅かながら怒りが混じっているのが分かった。

 

ハインツ「何って商売取引ですよ。別に悪いことじゃないでしょ?

     それともなんですか?この若造が俺と会うのにヤキモチでも焼いているのかな?」

 

 ハインツが悪びれることもなく答える。ハインツにとってこれは普通のことだった。

 

ミーナ「今ポッケに突っ込んだ手紙は何なのかしら?」

 

ハインツ「さあ?こいつは重要な書類なんでね。

     それとも何ですか?ラブレターらしいから取り上げると?

     疑わしきは罰せずなんですから中佐には全く関係ないことですよ。

     それじゃあ失礼しますね。」

 

 そう言うとハインツはミーナたちを置いて立ち去った。

 

ミラー「まあ怒らないでくださいよ。疑わしきは罰せずは司法の基本ですから。」

 

 ミラーもそう諫めると同じようにどこかへ行ってしまった。

 

 

---------

 

 

 それから数分後、宮藤とリーネは自分の部屋に戻って赤城の艦長からもらった包みを開いていた。

 包みの中は扶桑人形だった。

 

宮藤「わぁ、扶桑人形だ!」

 

リーネ「かわいい~!」

 

 それを二人が見ているとドアがノックされた。

 

宮藤「はーい」

 

ハインツ「よう宮藤、ちょっと話がある。」

 

 ノックしたのはハインツだった。

 ハインツは周りを見渡して誰もいないことを確認するとポッケから手紙を出した。

 

ハインツ「はい、これ。さっきの奴の手紙だよ。」

 

宮藤「え、でも飛んで行ったんじゃ…」

 

ハインツ「ああ、それ真っ赤なウソ。本当はあの時ポッケに突っ込んでた。

     まあそうしないとあのクソババアに奪われてたと思うし。」

 

 しれっとミーナのことをクソババア呼ばわりするハインツ。

 彼からすればどういうわけか男女の付き合いに厳格な彼女の態度が気に食わなくて仕方なかった。

 彼からすれば整備士や警備部隊、高射砲部隊や監視部隊との業務外での交流は重要であり人間関係の構築によって物資の融通などで有利になるというのにそれを理解しないため物資の調達に支障をきたしていた。

 数か月前にデポから旧式の軍用車を融通して貰おうとした時にはまさか後方支援部隊との、特に周辺の一般部隊や整備部隊、ウィッチ部隊があまり使わない車両関連部隊との関係があり得ないほど希薄だったことに頭を抱えるぐらいだった。

 現在ではハインツが中心になって何とか周辺のブリタニア軍部隊やドーバーの特別編成師団ドーバーの補給部隊と繋がりを作っていた。

 

宮藤「ありがとうございます。」

 

ハインツ「おう、今度そいつと会うから伝えたいことあったら俺に言ってくれ。じゃあな。」

 

 ハインツはそう言って部屋から出て行った。




戦時報道中隊の歌(僕たちはジークフリート線に洗濯物を干しに行く)は数ある軍歌の中でも特に変わり種の品で全く同じ時期に3カ国語で替え歌があるっていう。(なおロシアのシベリア狙撃兵行進曲は白軍、赤軍、ドイツ語版、ウクライナ語版、セルビア語版、中国語版、韓国語版、ギリシャ語版、フランス語版が。スラブ娘の別れには白軍、赤軍、ポーランド語版、フィンランド語版、中国語版、ヘブライ語版、タンボフ州版の替え歌がある模様)
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