艦隊これくしょん 麒麟の凱旋   作:ひろつかさ(旧・白寅Ⅰ号)

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亡霊篇 第五話 『望郷』

 

六月十七日。午前十時より始まった連合艦隊幕僚会議は昼食をはさみ、三時に突入しようとしていた。

「ならん。作戦の最高指揮官が機動戦力として前線に立つことは容認できない。」

連合艦隊司令長官、東雲宗一郎大将の重々しい言葉が会議室に響いた。

白の夏季服、それに見合わぬ幼い顔立ちと、浅葱色の髪をツインテールに編んだ女性将官は、いささか優れぬ表情で東雲長官に視線を向けていた。

長テーブルの歪な位置に座する両者の間に、女性佐官が慄然と声を上げた。

「機動部隊参謀長、本田歩美少佐です。長官の意見は正しく、それに見合う答えを持ちあわせておりません。

この件については私も同意見です。しかし、瑞鶴少将は今作戦の根幹となる機動部隊を統合運用する任を帯びています。

また、密な連携と速度を要求する夏季攻勢RW作戦は陽動・強襲・奪還を主軸とする三柱戦術の、連動性を確かとして作戦を実行するには、機動部隊やその他の主力部隊指揮官には荷の重い事項、そこで長官に提言します。

今回の作戦指揮系統を連合艦隊司令部に統一すべきと具申します。

長官御自身の指揮統一であるならば各部隊からの通信統括も進みます。何より、有事の判断の際他部隊を納得させられます」

「だが、敵の妨害工作は必須、通信機器の強化がなされたとはいえ通信の細密化は不可能だ」

「確かに清水少佐のおっしゃる通り、通信の問題は払しょくしきれないでしょう。そこである士官に妨害通信に対する工作作戦の中核として招きたいのです」

「その作戦があれば、今攻勢の不備を補えるというのだな」

「その通りであります閣下。その士官は第百七十期海軍大学校主席、現・海軍特務通信科課長、町田勉中尉です」

一同がその話に聞き、首を傾げた。

特務通信科は傍受と暗号の強制受信を専門とする部隊であり、作戦首脳部が近距離通信を推奨していたため、流れ者の行き着く場所として有名であった。

 士官候補生が送りこまれるものの、本来すぐに転属となってしまうため、書類上の待機場所にしか過ぎなかった。

 本田歩美も第一七〇期の出であり、町田とは立場も場所も、まるで異なっていた。

艦娘部隊指揮官の道へ進んだ彼女は、順調に出世し機動部隊の作戦全般を預かる立場にある。

「では後日、私自ら町田中尉と面会し作戦について意見を伺うこととしよう。本田少佐の提言通りに方針を進めていこう。構わないか、瑞鶴少将」

 瑞鶴は異論ありませんと、静かに口を開いた。本田はゆっくりと席に着いた。

「山本君、まとめてくれ」

 連合艦隊参謀総長、山本啓一中将が眼鏡を整え、手元の走り書きに目を通しながら起立した。

「本会議は夏季攻勢『RW作戦』における、機動部隊司令長官瑞鶴少将が提出された作戦計画の概略、および計画の修正に関する質応答、作戦方針の決定まで議論するものである。

作戦の最終決定は、工作作戦の幕僚町田勉中尉より作戦の可否を吟味、瑞鶴少将からの作戦人員の選定を完了次第、次期幕僚会議にて軍令部部長を招き作戦計画の決定を行う。これを今後の日程とし、行動方針したく存じます」

 東雲がゆっくりと席を立つと息を整えながら、幕僚たちを見渡した。

「機動部隊司令部および、作戦課の努力は目覚ましいものである。連合艦隊幕僚はこれを全力で支援することを約束しよう。この戦役で太平洋の趨勢が決する。諸君らの奮闘に期待するものである」

 一同が起立し、東雲へ敬礼した。東雲もそれに答え、敬礼を返した。

 

 会議室を出る瑞鶴少将の後を、参謀である本田が追った。

「作戦は難なく通ったわ」

「元々東雲長官の戦術理論に乗っ取ったものだもの、通らない通りはない。でも直下の参謀たちは工作作戦には懐疑的だったわね」

「あの人たちだって前線でそれを肌身で感じてきた。東雲長官がああ言ってくれなければ、お飾りの軍令部からも作戦を却下された」

「あれが優しみだと」

「違うわ、この戦争が戦略的に詰将棋に入った時点で、東雲長官は逆転されぬよう細心の注意を図っている。駒の不調和は敵に逆転の隙を与えかねない。冷徹な方なのよ、今の戦況にも自分の立場にもね」

「あなたもその一人ではないの?失うことにも、冷徹であらなければならないのは」

 本田のその言葉に、瑞鶴は口を閉ざしてしまった。少佐は気にすることなく前方に視線を向けた。

「例の工作部隊の件、吹雪は承諾してくれたわ」

「そう…吹雪以外にやれる佐官がいないから助かった。木下中佐には遊撃部隊の統合を掛け合わなければね」

「あと、梟部隊の隊長に金剛が着くこととなったわ」

「とうとう軍令部が動き始めたわね。今度は吹雪の予感が外れてくれればと、思うわ」

 言葉を濁したと思い、瑞鶴はその出かかった言葉を封じ込めた。

「私が前線からも中央からも追い出される日は近い。早くあなたを将官に押し上げなければ」

「私を将官にさせて、何を考えているのです」

「近いうちに必ず私たちは淘汰される。でも深海棲艦は完全に消滅はしないだろう。その時、あなたには軍のトップに居てほしい」

「難物ね、でもいいでしょう」

 

 

 横浜府の奥には山肌を切り開いた住宅街があり、それは谷間を縫うようにして延々と続いている。

下から階段を一つ、二つ登った先に木下中佐の住む落ち着いた木造二階建ての一軒家が建っている。

「ごめんください。雪風です」

 奥から顔を覗かせた女性がゆっくりと玄関へ歩み寄った。

「いらっしゃい。雪風ちゃん」

「お加減はいかがですか桜さん」

「大事ないわ、お腹の子も時々元気に動くわ。日々の食事と隊長に気を遣えば家事をしていても問題はないわ」

「どうか無理をなさらないでください。今夜は私と天龍、それに大鳳が用意しますから」

「二人も来ているのね、嬉しいわ」

「近所の商店街へ買い出しに行っていますから、直に来ますよ。中佐はあと十分ほどで帰宅しますよ。それまで家事をやりたいと思います」

「軍務もあるでしょ、ごめんなさいね」

「いいのです。それに中佐だけだと、家事がやれるかどうか心配です。仕事はできるのはいいのですが」

「ふふふ、あなたが言うのだから間違いないわ。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」

 彼女は木下桜、旧姓若津宮。

海軍では遊撃部隊の隊長代理を務めており、木下が軍大学校を出たのちからは軍を退役、予備役に属すると木下中佐と結婚。艦娘からも慕われていた彼女は木下との恋愛関係にあり、艦娘たちの後押しがなければ木下のような男が結婚することはなかった。

 桜は優しく、厳しさを秘めた美しい大和撫子。間違いなく木下のような男に似合わない男である。

それを結ばせるために注がれた、現第二遊撃部隊面々の苦労は読者諸君には語るに及ばないであろう。

「昔、円満退職なんて言葉があったわね。でもいずれは私も復帰を考えないといけないわね」

「それでも親元を離れないでいられるその子は幸せです」

 

 台所で割烹着を身に着け、保冷庫から一通りの食材を取り出し、釜土に火をつけるため割り木を増す火の中へ放り込んでいく。

一昔前なら、全て電気製品によってわずかな手間で完成しえたものが十や二十の行程を経なければ完成しない。

家庭への電気供給量が少ない昨今では、百年も昔に廃れかけていた調理方式が復活しつつあった。手間はかかるものの家族に温かいものをという母心はどの時代であっても変わりはしない。

 裏戸が開くと、軍支給の灰色の新型夏季軍服を着て二人が入ってきた。

「お使いありがとう。天龍さん、大鳳」

 裏口から出て荷物を受け取ると、天龍は嬉しそうに大鳳の荷からあるものを取り出した。油紙にくるまれた濃い赤の澄み切った赤身が姿を現した。

「鰹ですか、それじゃあ」

「最近、太平洋の掃海も終わったおかげでやっと漁が解禁されたそうだ。初鰹には間に合わなかったが、数は十分に流れているとよ、いつもの魚屋でな」

「丁度ミョウガもあります。鰹のたたきにしましょう」

「任せるぜ、魚屋二代目ちゃん」

「諒解しました。ふふふ」

 大鳳は荷を抱えて、台所に戻る雪風を見守りながら天龍の隣に立った。

「魚屋の娘だったという話、本当なのですね」

「あいつだって一人ぼっちになる前は、親だって友達だっていたんだ。艦娘だって全部失っているわけじゃない。お前だってそうだろう」

「ええ、そうですね」

 歩き出した彼女の背中を望みながら、静かに呟いた。

 

 日が暮れ始めると、街は赤く染まり深いエジプシャンブルーの奥に溶け込んでいく、深い紫が藍色との境を曖昧にしていくなか、男はいつものように玄関の戸を開けた。

「ただいま」

「おかえりなさい。真之介さん」

 桜に無理を着せぬよう制しつつ、しかし家に上がってしまえば、桜は何事もなく彼のジャケットを預かった。

 ただ、手元のブリーフケースだけは手放さなかった。

「やっぱりシャツは新調しましょ、吹雪ちゃんにも佐官としてみっともないとか言われていない?」

「ああ、まったくその通りだ。お前と吹雪さんに言われては返す言葉もない」

 真之介と桜の仲人は、吹雪である。 

「そうかと思いまして用品店で二着注文してきましたよ、義兄さま」

 大鳳が二人を見上げながら言った。

「さすが照美、手際がいいわね」

「隊員からも目に余るって文句言っているのに、この人まるで聞かないから皆さん諦めていたのです」

「ふふふ」

「おい、笑うことないだろう」

「だっておかしいじゃない。面倒を見るはずの指揮官が、部下であるこの子達に面倒を見られているなんて、なんだか微笑ましいわ。大鳳、これからもお願いね」

「私達でよければ何なりと」

 真之介は苦笑いしたまま上の空であった。

 

 

夕食を終え、風呂に入ってのち、雪風は二階の窓辺に座りながら、静かな町を眺めていた。

「雪風、ラムネ持ってきてやったぞ」

 階段を上ってきた天龍は真っすぐ雪風に歩み寄り、青い瓶のラムネを一本彼女へと差し出した。

 雪風と並ぶように窓側へと腰を下ろし、蓋をゆっくり押した。

「酒じゃねぇが、今日もお疲れ様」

「お疲れ様です」

「ところで、調子はどうだ」

「どうって、この通り万全です」

「そうか、なら良かった」

 ラムネを一口飲むと、天龍の表情を見ながら口を開いた。

「天龍さん…また、ですか」

 予定されていただろう一言を返した。

「ああ、待機任務中に変な挙動をしていたから、明日にでも工廠に顔を出すつもりだ」

瓶を水平にしながらラムネ飲料を口に入れていく、その瞬間、天龍の喉を何とも言い難い感触が支配した。

「前にあった亡霊との海戦から、昨日の洗い出しまで、義肢が信号を受け付けないことが何度もあった。医師は新型ウィルスの汚染を疑っているが、明石は後遺症の付随を疑っている」

「棲体物質、義肢神経浸食型硬化症、義肢を使用する者に残った後遺症に漬け込む病気でしたね。」

「汚染が四十パーセントを越えないと検査には引っかからない。

気づいたときには体が義肢を受け付けなくなってしまう。原爆症の完治は不可能、俺は潜在的にその可能性を孕んでいた。明石の話じゃあ、お前のように全身義体にすれば防げるそうだ」

「ならもっと早く教えてくれれば」

「明石も最近その論文を見つけたらしくてな、わざわざ骨折って調べてくれたんだ。言わないでやってくれ」

「では、全身義体になるのですか?」

 残りを飲み干そうとすれば、ラムネが天龍の喉を通ることはない。瓶の口がガラス球に塞がれている。

「それだよ、俺みたいにあの地獄を全身火傷で生き延びて、失った両腕と皮膚を取り換えた奴は、体に残った痛みしか過去の自分を知る方法がない。

いや、その痛みが俺の過ごしてきた全ての幸福に勝っちまった。全身義体になるっていうのはどういう感覚なんだ。自分の体が入れ替わる瞬間、痛みは消えるのか?」

「義体になる感触なんてものは無きにしてあらずです。

ましてや体が変わったところで、今まで感じてきた全ての感覚が義体を知覚させる。文字通り、体が変わるだけです。」

「それじゃあ、お前が親からのものを一つ捨てる瞬間、その身に起こる不快な感情を『痛み』とは言わねぇのか」

「皮肉ですか」

 雪風の暗く冷たい視線が、天龍に向けられる。

「俺がいつそんな風に聞いた、馬鹿」

 天龍は今度こそ、瓶を水平にしてラムネを飲み干した。ビー玉が乾いた音を立てる。

 カラカラ、と。

「雪風、お前は夕立をどう倒すつもりだ?」

「吹雪さんは受け身でしたが、それは吹雪さんの戦術を理解していた敵がその逆手をとった」

「それで」

「私たちはいつも通りの手でかかります。

シンプルですが臨機応変が売りの私たちのためにある戦術なので、十分でしょう」

「ツーマンセルによる、緊密な偵察・迎撃戦術か、それで」

「は」

それ以上何を聞くのかと、自然と返していた。

「また俺たち、いやお前が被るのか、友の血を」

 天龍の鋭いにらみが雪風へ走った。

「任務です。そういう私情は持ち込まないようにしています」

「そうやって言葉並べるんじゃねぇ、お前は今度こそ引き金を引くことを躊躇うだろう、プリンツ・オイゲンと戦った時のように……やめたっていいんだぞ、無理に俺達がやる必要はないからな」

「私は引きますよ。あの時も引いた」

 飲み干した瓶を音もなく静かに置いた。

 風鈴が鳴ると、時折そよ風が二人の髪を撫でる。二人は黙って無視した。

「桜さん、寝ましたか」

「ああ、大鳳は今風呂に入っているよ」

「中佐、二階に上がってきませんね」

「寝たんじゃないか?酒もあまり進んでいなかったからな」

 もう一度風鈴が鳴り、沈黙が促される。雪風はそれを嫌った。

「私にも迷いはあるつもりです。

自己の贖罪や懺悔よりも仲間の安全や外郭の安定に努めてきた。これは士官になって必然的に思考や心理を統制するものだと疑わなかった。

でも自分を推し量るものと他人を推し量るものに境目は存在しない。自分の価値観を他人に押し付けるのではない。

共有された価値観の中で自他を隔てて相違点を分析しているだけ、私に与えられる物は常に有り触れているわけではない。

限られている中からごく一部を得て満足しているに過ぎない。どこにあるのか分からない。その世界を見据えることもせずに」

「同情してほしいか」

「そんな、殺生な」

「すまない。お互い、負っているものが多いな」

 目の前に広がる家々の灯が一斉に消え始める。灯火管制では9時半の消灯が定められている。

「寝るぞ、話はまた今度だ」

 電灯が消されると、天龍は黙って自分の布団に潜り込んだ。

雪風の傍らに置かれた二本の瓶が月明かりによって青白く輝き、幻灯のごとく瓶の幻を形作っている。

夜空は澄み切っていた。

 

 十八日午前三時二十分、第二遊撃部隊本部棟、管制室。

「捉えた!これで追尾できる」

〈座標及び予想進路を算出する〉

 呼応するようにAIの合成音声が、浦風の電脳に響く。

 彼女はバイザーを上げると、タッチパネルキーボードに手を置いた。

 この夜、龍驤の飛ばした偵察機が亡霊の姿を捉えていた。

〈天山艦攻二一三号機との周波数同調。発信域特定。206海域細密海図を合成。目標、リアルタイム座標を特定、天山との交信快調。座標算出。現在位置と予想進路を表示します〉

 透明な有機ディスプレイに表示された太平洋の海図、拡大され小笠原沖で停止し、CG合成された目標の現在地と予測進路が表示された。

だが、進路は宇都宮沖から西へ反転、予想された北進路へ進んではいなかった。

「天山が見つけた時には既にその身を翻して転進、しかもまた小笠原沖に戻ってきている。何を考えていることやら」

 と、天津風が囁くと、天山から送られてきた敵の詳細な編成図が表示された。

「おかしい、第一遊隊から報告のあった数と合わない。浦風、報告書の編成図あるかしら」

「はいよ」

 金剛の声を聴いて既に作業を開始、短く返事が返された。

 確かに第一遊隊の報告にあった夕立似の亡霊と戦艦がいない。戦闘時では最大戦力だった存在がなぜ消えているのか、浦風は口を開いた。

「本当は別に目的があるんじゃないのか、亡霊部隊の数は第一遊撃部隊の沈めた二体を除いて五隻だ。

偵察のために2体が別行動をしている可能性もある。深海棲艦用と思しき信号発信域が小笠原沖・東京湾近海に集中している」

「じゃあ、例の艦娘は」

 その秋月の問いに龍驤が答えた。

「それを察知されたくなかったのかもしれない。敵の航路が誘導によるものだと早い段階からわかっていたのかもしれないで。いい加減、諜報部から主導権と情報を取り上げたほうがええな」

「でも、その信号さえ追っていけば、深海棲艦も内部の秘密部隊も尻尾を出すというわけだ。なら、誘導役になっている敵艦の正体を暴く必要がある」

 金剛の提案に異論はなく、浦風は逆探の作業に入った。

「浦風、今飛んでいる横須賀管区の哨戒機東海に協力してもらうとええ、洋上逆探なら24時間でも48時間でも付き合ってくれるはずや、ウチの艦攻じゃあ燃料補給が間に合わへんから、通常の航空機の方が分がええ」

「諒解、厚木基地哨戒部隊にコンタクトを取ります」

「浦風と金剛、それにウチは監視と逆探に専念するとして、天津風と秋月はしばらくどないする」

「俺らは昨日洗い出した件で練馬まで事情聴取に、どうせ聞き込みだけだと思うがな、やらないよりはよさそうだ」

 と天津風は答えた。

「練馬になんかあったかいな」

「練馬には金剛の新しい転勤先がある」

「司令は嫌がったやろうなぁ」

「その逆だよ。司令が俺たちの提案を快諾したのさ、しかも雪風も付けろと言われればどういうことかわかるだろう?」

「私が提案した雪風の転属。自分で決める気はないというね」

「よくも言えたことだね、金剛さん。人事にまで足を踏み入れられるのは好きじゃないだろ。

引き抜きに関して口を出さないが、簡単に連れ出せるなと思うなってあんたに警告したのさ」

「雪風は私の部隊に来ると思う?」

「本人の反応を見れば、答えは出ているだろうさ」

 龍驤が咳き込むと、二人の視線が彼女に向いた。

「私らは端末室に入って作業を進める。あと金剛、ここで梟の話はやめろ、ただでさえ黙って事を進めたんや、吹雪があんたに会いたがらない理由、分かっているのだろう?」

「吹雪には関係ない話だもの、向こうもわかっていると思うわ」

「嘘も大概にしろ、あんたらは昔からそうやって互いに読み違いをしている。

さて、今日は各自の持ち場で仕事をしてくれや、何かあったら緊急回線で報告しろ」

 浦風がヘッドディスプレイを取り、外部端末の回線をオンラインにしたまま退出していった。金剛も同様にして退出していった。

「ほな、練馬の件を頼むわ」

 そう言い残すと龍驤を後にすると、秋月と天津風が機器にもたれながら、3人が通路の奥に去っていくのを見守った。

「朝は7時出発だけど、その間どうする?」

「今から一杯引っかけるわけにはいかねぇしな、雑魚寝して、雪風を早くに迎えに行くのが妥当だろう。うまくいけば木下家の朝食にもありつける」

「それでいきましょう。ところで、聞きたいことがあるのだけど」

「梟部隊の件か」

「そう、天津風は金剛さんに誘われたの」

「そう言うお前も、だろ」

「それが、気の合う古参にだけ声をかけているみたいで、龍驤、天龍、新参の私と大鳳には声をかけていないらしい」

「なるほどな。俺は誘われた。だが、すぐに断った。元々人の上で戦うのは嫌いだからな、士官学校から軍大学への編入を断って、わざわざ駆逐艦に志願した。  今さら中隊長の座なんかほしくはねぇよ」

「なるほど、それで出世が止まった」

「同じ釜の飯で食っているんだ。どこで仕事しようが、おかずの一品やに品に文句付けるのは変わらねぇさ、お前もそうやってここに来ちまった口なら、わかるだろう」

「ええ、わかるから困るのよ。本当に」

「お互い、のっぴきならねぇ場所で生きていくしかないようだな」

 

 




前回から期間が空いてしまいましたが連載を再開します。
これからは毎週日曜の午後6時に更新します。
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