元地方公務員は無難を選択しました。【ひっそりのっそり更新】 作:airel
家令は胃薬を常備する
初めまして、皆様。私は本編にてその他に数えられる霍家貴陽別邸に家令を勤めさせて頂いております【繙虞(ほんぐ)】と申します。
取り敢えず、自己紹介でもさせて頂きましょうか。私の生まれは白州、育ちは沛封、元孤児にございます。親が飢え死にして私も死にかけた時に、偶然諸国漫遊なされていた大奥様に拾われて沛封の孤児院に入りました。
孤児院で12年ほど様々な職業の勉強を受け、私は憧れと尊崇の念がある霍家の侍従として働く事になりました。全く以て運が良かったとその時は思いました。
奥様の第一姫が薄着でお屋敷の屋根に登り、庭の木々に飛び乗って回っている姿を見た時、心の中で何かが崩れ落ちましたね。その後も勝手に奥様の愛馬に乗ろうとして振り落とされたり、山に入ったと聞けば熊やら虎を狩ってきたり、川に入ったと聞けば川にいる主と三時間も水中戦していたとか、棒を手にすれば沛封にいる悪ガキを残らず叩きのめしたとか、…その度に本家付きの侍従と侍女は揃って領内を駆け回りましたね。その頃から胃薬が手放せなくなりました。
今思えばよく胃がねじ切れなかったものです。
そう言えば、一度だけあの方を本気でお叱り申し上げた事がありましたね。まだ第一姫が沛封に居られた頃、棒を手に丁晃君を連れ山賊を捕まえに行かれました。事前に丁晃君から報告が入ったので私兵団を送る事が間に合ったのですが、共に連れていかれた丁晃君が負傷したのです。山賊に斬られた怪我は後遺症なく完治しましたが、呆然とする彼女の頬を叩く。
「懐かしいわ『部下を守れないなら剣など持つな!!!』だったかしら、ねぇ繙虞?」
痛かったわ~今でも思い出すもの、何処で覚えてきたのか甘ったる~い声とわざとらしく頬に手を添える。とめどなく噴き出る汗で前が見えなくなりそうだ、いや寧ろ見えなくなってくれ!周囲にいる奥様と大奥様、柚瓊様も一様に苦笑い。
「私、初めてだったのよ?頬を叩かれた事も、誰かに泣かされた事も、ね」
「何だって…、白瑛に振り落とされてタンコブが出来ても泣かなかったあのアンタが?」
その場にいた誰もが驚愕を露わにする。
「そうよ、だから私は強くなる為に家を出たの」
いけしゃあしゃあと、8年強の家出を正当化しようとしてらっしゃいますが、周りは誰も認めていないが。
ここ数年でやっと胃薬を手放せそうになったのに…、許せ私の胃よ。奥様も大奥様も、どこか申し訳なさそうにしながらもこちらから目をそらす。
「………何がお望みで?」
「貴陽に別邸を作ることになって、そこに私と夫、これから生まれる子供と住もうと思っていてね」
アナタにそこで家令をして欲しいの。
あの日の若奥様の見せた眼を、私は生涯忘れられないでしょう。獲物を狙う肉食獣なんてモノではありません。あれはその命尽き果て死ぬまで苦しめてやらんとする地獄の羅刹の眼と言えるでしょう。しかしこのまま辛労で胃に穴を開けて死ぬ訳にはいかない。私はある条件をお願いしたのだった。
「お嬢様方、廊下は走ってはならないとあれだけ申し上げたというのに、何故同じ過ちを?」
目の前で、正座している2人の少女。この邸の主である若奥様の御息女の梢姫様と茅姫様です。現在お説教中であります。
「全く何度も何度も…」
「繙虞、アタシ脚疲れたんだけど」
「アタシもー」
パパン!!とお二人の頭を馬鞭で叩く。
「「いったーいッ!!」」
「黙らっしゃい!今日という今日は反省して頂きます!しなければ夕餉は抜きですよ!!」
おーぼーだー!!と騒ぐ2人の膝の上に石座布団を積む。
「…ほんぐ、あんまりねえさまたちをいじめないでね?」
お説教部屋の扉から、幼い男児が顔をみせる。この方は若奥様のご子息の桐莉様。利発ながら可愛らしいお顔とお優しい性格は、我ら貴陽組の心の癒やしです。
もう1人の説教員に2人を任せて、桐莉様を部屋から連れ出す。2人の断末魔が聞こえてきますが無視します。あのお二人はそう簡単に根を上げませんからね。
「ご安心下さい、お二人が心から反省すれば夕餉はご一緒出来ましょう」
※※※※※※
「まさか、叱る権利を求めるなんて思いもしなかったわ」
お茶を飲みながらあの日を思う。決死の覚悟を決めて、私に御子をお叱り出来る権利を下さるならば家令を勤めさせて頂きます、無理ならば職を辞させて貰う所存です!なんて。
まぁ最初はどうなるかと思ったけれど、私の仕事が減ってこうやってゆっくりお茶を飲める。流石は私が選んだ家令、有能だわ~。
本編よりもお喋りなあとがき!
いえーい!裏話二本めー、如何でしょうか。
最初は繙虞さん、モブとして話を進めようと思ったんですがね~、やっぱり名前あった方が覚えやすいし、書くのに感情移入しやすいので付けました。名前の由来は三国志で呉の孫権に仕えた虞翻をモデルに、というか読みを反対にして翻の字を、繙にしただけですが(笑)
イメージだとモノクル付けたちょっと初老っぽいナイスミドルな雰囲気、但し実年齢30代!
何気に武闘派、じゃないと霍家のじゃじゃ馬姫達と渡り合えないからね。ビリー隊長と身体作りの二週間的な奴を孤児院にいる間、皆日課としてやるので霍家の侍従・侍女達は細マッチョ軍団なのです。
とりあえず、裏話は一旦終わりです。
ホントはもう少し色々と書きたいのですが、諸般の事情により、次からは二章です!
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それでは、また次話でお会い出来る事を
楽しみにしております!
ありがとうございました~!(*・ω・)ノ